2018/9/19 12:52:35
BE4を購入しました。
ブラウン系シャドウが似合わないのは殆ど諦めていました。コスデコのアイグロウジェムの単色使いでなんとか楽しんでいましたが、DSで通りすがりにこちらを見つけて若干ピンク寄りのこちらを購入しました。
リシェのシャドウは、以前ピンク系を底が見えるまで使っていましたが、年齢とともに「いかにもピンク」はイタイなと思っているところでした。だんだん目元のくすみも強くなってきてるし(涙)。
このところずっと単色シャドウばかり使っていました。とにかく楽だし、年齢とともに色物はシンプルにしています。
こちらも「5色・・・きっと使いこなせないから2−3色をキブンで使えればよいかな」くらいに思っていましたが、まずは説明通りに5色使ってみたところ。良いですね!(笑)単色使いでは出せない奥行が出ます(当社比)。
5つすべての色がドギツクないので主張しすぎず、それでいて5色すべて存在感があります。
ただし、単色使いに慣れ過ぎているので5色重ねるのが面倒くさい・・・(笑)。
でもしかし。同年齢の皆さま、安心しましょう(笑)、このモチの良さ。朝アイグロウジェムの上から使うとほぼ1日退色せずにもっています。むしろランチ後に重ねすぎると、私にはやりすぎ感が出てしまうくらいです。特に最後のピンク(ヴィセによると下まぶた用)はやりすぎ注意です(笑)。
手順は、シャネルCCクリームをファンデ下地、日焼け止めとして使うので薄くまぶたにも→エスティのモーブピンクをうわまぶたに→ディオールシャドウベース→コスデコアイグロウジェムを薄く薄く→こちら、です(全て口コミスミ。私の溺愛コスメばかりです)。
アイグロウジェムがキラキラしているのでオフィスなら省いても良いかもしれません。
パールシャドウにありがちの、時間とともにパールだけ残る、ということもあまりありません。
はやりのマットシャドウは私の年齢だと厳しいので、やはりパール入りを使いたい、、、でもどうしても(特につけたて)ギラギラしがちなのはイタイので避けたい、、、と最近はアイシャドウ選びが難しかったのですが、こちらは(ヴィセのターゲットからは完全に外れていますが)私の年齢でも使いやすいです。もっとキラキラが欲しいかたには物足りないと思います。
そのパールもブラウン系にありがちのゴールドパールではなくシルバーなのが良いです。「ブラウンorベージュ+シルバーパール」を求めて伊勢丹中「ここぞ」というブランドを探し回っても見つけられなかったのにこのプチプラで巡り合えるとは(笑)
ブラウンとの組み合わせはゴールドが定番、良くてピンクパールまたはゴールドとシルバーの混在が殆ど。ピンクパールシャドウは付けたてはとてもきれいなのですが、時間とともにくすんくる、、、ゴールドやブロンズ系は最初から選択肢にありません(涙)。
粉質も、パールが飛び散ることもなく、しっとりしています。この価格でここまでしっとりできるのかと驚きます。
そういう意味でも「リッチ」なのかもしれません。
ブラウンの色出しも名前の通り「ヌーディ」で、赤や茶色に転びすぎず、アイボリーやベージュ系なのでありがたいです。3番目が若干黄色味がありますがぎりぎりイケます。4つめのシメの色が若干赤味が強いので、色の乗せ方に気を付けています。
5色ありますが、4番、5番を使わない時もあります。5番を上瞼に使ってもよさそう。
アイメイクはやりすぎないことを日々心掛けていますので、こちらはそれにぴったりでした。
ケースの上蓋のアラベスクもほんの少しプチプラ感を減らしてくれますね。
ひとつ使いづらいのは、5色でチップ1本というのは色がまじりあってしまうので、1回塗るごとに簡単に粉を払わないといけないのが面倒です。ティッシュを常備しています。
色物コスメは、探しまくってる時には見つからず、期待せずにふと手にしたものが、予想外の大ヒットだったりするので、面白いですね。
これまでブラウンシャドウが苦手、というかたもこの5色のなかから2ー3色を選んで使ってみると、案外イケルと思いますので挑戦してみては。失敗しても1色くらいは使える色があると思いますので丸々大損にはならないかと。プチプラなので手を出しやすいですし。
しばらくオフィスメイクで活躍してもらいます。
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2022/5/14 06:11:43
「フィジーっていう香水をつけるとモテるんだって。」
今も忘れない。今から40年前。俺は16才だった。何にも増して「モテ」という言葉に敏感な青いガキだった。ちまたでは「青い珊瑚礁」で大ブレイクした松田聖子さんのクルクル巻髪をした女性たちがそこら中にあふれかえり「このブリッ子が!」と野次られながらも、その実したたかに生きていた。
おう、昭和だよ。そらもう、めっちゃ濃い昭和だったよ。
髪を赤くして、ツンツンおっ立てて、野良犬パンクスのくせにちょっとチェッカーズのフミヤ君の前髪意識して垂らして、バンドやってライブハウスに出入りして、喫茶店で仲間と落ち合って悪いことばっかやって。そらもう全部「モテ」たかったからだろうよ。認めるよ。
そんなとき、女子高生の会話を聞いたんだ。「フィジーって香水つけるとモテる」って。そら気になるさ。モテたかったもん。失恋して1年グダグダ荒れてたもん。気になるさ。あの娘を振り向かせられる?そんなこと毎日考えて、勉強もしねえで窓の外ばかり見てたもん。
フィジー。名前もグッときたよ。南太平洋の諸島。青い空、どこまでも続くエメラルドグリーンの海、白い砂浜。揺れるパームツリーの木陰で、優雅に過ごすひととき…。そんなステレオタイプな「南海の楽園」ムードにみんな憧れてたから、どストライクな名前だった。ちょうど大滝詠一さんの「君は天然色」とか「カナリア諸島にて」とかが大ヒットしてて、どこか遠くの南太平洋の島とか高跳びしてさ、優雅に過ごす。そういうバカンスってのがブームだったんだよ。ハワイとかグアムとかめっちゃ人気で、日本人が海外に出かけ始めてた。そんな時期だったから。
で。フィジー買ったよ。買うさ。青くさい飢えた野良犬だから。車も金も地位も、何一つ男の武器をもっちゃいない青くさいガキなんか、そんな万能薬みたいな魔法のアイテムがあると聞いたらイチコロなんだよ。イチコロ。
初めてつけたフィジーの香り。今もはっきり覚えてる。
トップ。パーンと広がる青い草の香り、でもそこにしっとりした低い花の香りが寄り添ってた。今嗅ぐとはっきり分かる。ヒヤシンスノート。強くてしっかりしたブルーな開幕。それがシャネルN°5っぽい透明なアルデヒドで思いきり拡散される。なんていうか、アルデヒドって油絵の絵の具を溶かす「溶き油」みたいな感じ。香料どうしを上手くミックスさせて香りを拡散するような。そんな脂っぽい香りのアルデヒドの下から、ヒヤシンスともう少しグリーンなガルバナムが出てくる。アルデハイディックで、グリーンで、冷たく青いローラル。
だけど
すぐさま、香りの奥からパワフルなムスクの香りが押してくるんだな。パウダリーが7、ソーピーが3くらいの割合で。アルデハイドの効果でムスクも浮き上がってくる。なんか女性の色香を感じる複雑なトップ。派生としてはN°5系統とすぐわかる。
5分もするとアルデハイドは消えて、わずかなグリーンの影から花々が咲き乱れてくる。ヒヤシンス、イランイラン、ジャスミン、そしてほんのりローズ。ジャスミンとイランイランの妖艶さが強く出てくる印象。下からはパウダリーでほんのり蜜の香りも漂ってきて、もう昭和用語で言ったらこの一言に尽きる。
色気ムンムン! ←死語な
このグリーンフローラル&エキゾティックなミドルが3時間ほど続く。意外にスッキリ消えていくのはクラシカルなオードトワレの特徴。トップからガツンとフローラルをアピールするけど、ラストは意外に清潔感あるパウダリー&クリーミーなムスクで終息。
久しぶり。ほんと久しぶりにフィジーをつけたら、40年前の自分が蘇ってしまって、やたら堕ちた。あの頃の空気感、日本という国がどんどん経済成長して、日々ビルが建ち並び、人と街が流行を追いかけて活気づいていた頃を思い出した。そして
結論。フィジーをつけても自分はモテなかったな。がっかりだよ。(←女性用香水だぞ)
コンテンツの少ない時代に生まれた。テレビで情報が伝わると、一夜にして大流行し、みんなが真似する昭和に育った。みんな同じ歌を口ずさみ、髪型も同じ、そして「この香水が人気!」と聞けば、みんながそれに飛びついた。フィジーはそんな昭和に爆発的に売れた香水。誕生は1966年。奇しくも自分と同い年だ。そして今なお世界中で愛されている香り。50mlで3500円ほど。安いよね。でも昔はこれが当たり前だった。クラシカルだけど、とてもバランスがよくて、気分をあげてくれる香り。これをつけて、いつか南海の楽園とやらに行ってみたいと、憧れを募らせた思い出の香り。
「フィジーをつけるとモテるんだって。」
あの声、今も覚えてる。そりゃもう、見事に昭和だったよ。
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2022/4/30 02:05:45
「カルメン!いつになったら振り向いてくれるんだい?」
「さあね、分からないわ。でも、今日でないことは確かね。」
世界中で愛されているオペラ「カルメン」の第一幕、大勢の男たちに言い寄られるジプシー娘、カルメン。彼女は鼻をツンとあげて次々と男たちを傷つける。棘だらけの野バラのように。
この歌劇「カルメン」をアートボードに据えた香水がある。ゲランの「最高素材による香水」シリーズ、ラールエラマティエールの最初の3作品として2005年に出たローズバルバルだ。ラールエラは2021年ボトル変更と共に、1つ1つの香水にアートイメージを添えて新生した。公式サイトでは『野生で反逆的な赤いローズ』と紹介されているローズバルバル、それはどんな香りなのか?
洋酒ライクな新型角ボトルからローズバルバルをスプレーする。つけた瞬間に広がるのは、爽やかに抜けていくハーブ様の透明な香り。これがフェヌグリークだろうか。ほんのりセロリ様の感はある。すぐさま追いかけてくるのはワクシーな薔薇の香り。薔薇の口紅によくある感じ。これはアルデハイドC-11の艶めいた香りだ。ピンク色のローズ・ド・メイを表しているのだろう。芳醇でボリューム感があり、ふんわりと漂う八重の薔薇の香り。けれど気を付けないとその棘で痛い目に合う。さながら官能的な見た目で男たちを魅了するカルメンの登場のような華やかなトップ。
5分後、わずかに蜜の香りが奥から感じられてきて、バラの香りがフルーティーに変わってくる。それはライチのようにみずみずしくピーチのようにふくよかな2つめの薔薇香だ。先ほどのワクシーローズよりも軽く、甘くかぐわしい。色に例えるならこちらの方がピンクだけれど、これが真っ赤なローズダマッセナの香り。公式サイトに「ダーマシーナローズ」と書かれているダマスクローズの香りだ。このフルーティーさは本当にすごい。もともとダマッセナが持っているフルーティーさに、ピーチ香がするアルデハイドC-11を合わせて増幅しているように思う。ミツコに使われた手法だ。
このミドルのフルーティーローズがこの香水の全て。これはバルバル(野蛮)ではない。男心をメロメロにする完熟果実ローズボムボムだ。
どんな男も、ひと目でカルメンに恋してしまう。それでもただ一人、群衆の中で彼女を見もしない男がいた。カルメンはその兵士に心を惹かれる。なぜ彼はあたしを見ないの?つかつかと歩み寄って、胸の谷間に入れていた花を男に向かって投げつける。それは弾丸のように男の心を撃ち抜いた。有名なアリア、カルメンの歌う「ハバネラ」が、兵士ホセを恋に引きずり落としてゆく。
”愛してくれない男を好きになる でも私に惚れられたらその時はご用心”
絡み合う視線。火傷しそうな心の熱量。カルメンの棘はホセの身体を貫き、真っ赤な血潮をたぎらせる。その噴き出す血を浴びた喜びのように彼女は歌い踊り、赤いドレスをひるがえす。
2人は激しく燃え上がり、そして互いに傷付け合い、やがて破局を迎える。
野蛮な薔薇。
つけて30分、ローズバルバルはこの上なく柔らかくセンシュアルなライチ&ピーチの薔薇になって続いていく。どこまでもカルメンを愛そうとするホセの心のように。ラストは、ほんのりパチュリのアーシーが効いたまっすぐなフルーティーローズの香りが引き波を作ってゆく。時間にして8〜9時間。どこまでも緩やかに優しく。
カルメンはすで新しい男、闘牛士に恋をしていた。すがるホセを冷たく突き放すカルメン。それでもホセは彼女の匂いから離れられない。復縁を迫り続ける。
彼女のローズ口紅の香りが忘れられない。ライチのような薔薇肌の匂いが狂おしく心をかき乱す。彼女が愛した2つの薔薇の匂いが憎しみを増大させる。その妖艶なのに清純な薔薇&薔薇への嫉妬にあらがえず、ホセは遂に短剣を握りしめる。彼女の匂い全てがあの闘牛士の元へ行くなら、いっそこの手で…。
闘技場の中でひときわ大きな歓声が上がる。カルメンの新しい情夫となる闘牛士が、赤いムレータで牛を誘いこみ、鋭い剣で牛の肩を突き刺したのだ。カルメンはホセの腕を逃れて闘技場の中へ入ろうとする。
そのとき
ホセの短剣がカルメンの赤いドレスに突き刺さった。地面にぽたぽたと薔薇の花びらが広がってゆく。
闘技場の中で、赤い布に包まれて牛が倒れる。
闘技場の外で、赤いドレスのカルメンが手折れる。
一人の男が歓声を上げる。男の一人が天を仰いで慟哭する。
2人は 出会った頃の女の歌を思い出している。あの日 真っ赤な薔薇は自分に微笑えんでいた。
”あたし好みの男はそうは居ない 週末だというのに 私を愛する人はいないかしら?”
いいところにいたわ
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Maison Margiela Fragrances(メゾン マルジェラ フレグランス)
[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
容量・税込価格:10ml・4,840円 / 30ml・9,900円 / 100ml・19,800円発売日:2015年 (2020/11/18追加発売)
2022/1/29 09:10:04
「親父?奴はいねえ。とっくの昔に死んだよ。」
そのひげづらの男は吐き捨てるように言った。山奥の粗末な小屋。暗い室内には、赤々と燃える暖炉のオレンジの光だけが揺れている。男は椅子に座ってこちらに背を向けている。
「奴の借金だか何だか知らねえが、俺には何も関係ねえ。」
男はそう言うなり、サイドテーブルにあったガラスボトルをつかむと、不意に空気中に何かを噴霧した。とたん、あたりに木を燃やしたような香りが広がった。
「何ですか、それ?」思わずたずねた。
「あぁ?香水だよ。ふん、いやな気分のときは、こいつを空気中にふりまくのさ。」
ははあ。「お前は煙たいやつ」ってことか。そう思いつつスマホを取り出し、香水の名前を調べる。バイ・ザ・ファイヤープレイス。なるほど。暖炉で木を燃やした時の香り…か。でも、目の前に本物の暖炉が燃えてるのに、なぜわざわざそんな香りを持ってる?
「親父が残した物は、家の借金とこの香水、それだけだ。俺には返す金なんかねえ!」
「でも、死亡届は出されていませんよね。」
「知るか、んなもん。奴はいつものようにここを出て鹿撃ちに行った。で、それきり帰ってこねえ。何度も言ってるだろ!」
男の表情を探りながらスマホにメモする。借金回収の件はともかく、香水の話は初耳だ。親父さんの香水?何かありそうだ。
暖炉では時折、パチッ、パチッと薪がはぜている。先ほど男が空中にスプレーした香水が、スパイシーな香りに変わり始めている。スマホで調べる。これはクローブか。香辛料だ。ハンバーグに使うナツメグの香りもしている。燃えた木の香りにスパイスのトップノート。こげ茶色の強い香りが、男と自分の間に壁を作っている。くん、くん。
「お前、さっきから鼻を鳴らしてるな。そんなに香りが気になるか?」
「ええ、まあ。今、調べてみました。これは暖炉で木が燃える香りなんですね?」
「だったらどうした?」
「ええ。不思議だなと思いまして。目の前の暖炉で火が燃えてるのに、わざわざ似たような香りをスプレーするって、どういうことなのかなと。」
「そりゃ、おめえが煙てえからだよ。」
「やっぱり?(笑)」
「は!おめえ、自分が疎まれてるのを知ってて食い下がってるわけだ。」
「ええまあ。これも仕事なんで。」
男の態度が少し和らいだ。同時に、先ほどまでギリギリと焦げていた香水の匂いに、ほんのり甘い栗のような香りが混じった気がした。スマホで確認する。チェストナット、なるほどこれか。少し時間がたって、さっきより空気が甘くなってきている。暖炉の火と時間に溶かされて、栗のほくほくした甘さが出てきたようだ。どこか洋酒っぽい香りもする。あー、これはお菓子のモンブランの香りだ。しかも、ブランデーと砂糖で煮詰めたマロングラッセを乗せた本格的なやつ。スマホでさらに香水のラベル詳細をチェックする。
来歴&時期「シャモニ― 1971」 …ん?
「俺はな、親父が大嫌いだった。こんな山奥で暮らし始めて、おふくろが出てってからは、俺を学校にも行かせなかった。それからはずっと奴の鹿狩りの手伝いさ。夏には木を切って薪を割り、冬はその薪を焚いて雪に埋もれて過ごす。それだけの人生だ。奴は俺をこの山に閉じこめたんだ。」
「お父様は…、なぜこの香水を大事にしてたんでしょうね?」
「は?知らねえよ。街に下りたとき、どっかの飲み屋の女にでももらったんじゃねえのか?香水なんてガラでもねえくせによ。」
「もしかしてあなたは、1971年生まれ…ですか?」
「え?なんだ急に。…なぜわかった?」
「え?じゃ、もしかして生まれも海外とか?例えばモンブランの見える街…。」
「おい!どこで調べた!なぜ知ってる?確かにそうだ。うちの親父は若い頃、モンブランでシェルパをしてたんだ。登山客の案内でな。で、そこでおふくろと出会って俺が生まれた。」
「…なるほど。1971年、シャモニー=モン=ブラン。ラベルに書いてますもんね。」
「えっ?」
ボトルを男に手渡して言った。
「シャモニー1971。場所と時間ですよ。この香水は名峰モンブランの麓にあるシャモニーで過ごした思い出から作られた物です。だからきっと…お父様は大切になさってたんですよ。あなたの生まれた場所と年が、たまたまこの香水に書いてるから。」
「!…」
ボトルを握りしめた男の手が少し震えた。
「…よければ、もっとお父様のお話を聞かせてもらえませんか?」
赤々と燃える薪がパチリと音を立てた。男がうなだれるように頷く。2人の間に、グラッセしたヴァニラの柔らかいラストノートが香っていた。
バイ・ザ・ファイヤープレイス、赤々と燃える暖炉のそばで。
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税込価格:-発売日:-
2022/7/30 01:52:02
人は、何かを得るときに、同じくらい大きな何かを失う。たとえ「夢」をつかんだ時であっても。
夢を実現していく過程で、人は代償として何かを失うこともある。それを教えてくれたのは、2016年にアカデミー賞史上最多ノミネート、6部門受賞に輝いたミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」だった。
ルイ・ヴィトンのパルファン・デ・コローニュ、6番目の作品となるシティー・オブ・スターズは、この映画の中でアカデミー賞歌曲賞を受賞した同名の曲からインスパイアされて作られた香水だ。
”シティ・オブ・スターズ その輝きは俺のため? スターの街よ 見えないものばかりさ…”
映画の冒頭、自分のジャズ・クラブ経営を夢見るピアニスト、セブが夕暮れの桟橋で一人この歌を口ずさむシーンが描かれている。暮れなずむピンクの空、紫の海。この2色グラデーションこそ、香水シティーオブスターズのボトルカラーの配色だ。夢追い人があふれるキラ星の大都会LA。いつか夢を叶えると日々頑張ってはいるけれど、時折自分は本当にこれでいいのか?と堕ちてしまうことも。映画はそんな主人公のやるせない心情をメランコリックなメロディーにのせて静かに語り始める。
LVのシティーオブスターズにも、そんな大都会の夜が香りで表現されているという。
シティオブスターズをスプレーすると、まず最初に感じられるのは、シトラスミックスの香りだ。その中でも甘くさっぱりしたオレンジの香りが強めに出て、そこに何とも言えずまろやかでエキゾティックな白い花の香りが重なってくる。これはタヒチアンティアレの香りだ。紫色のビル群のシルエットの向こう、ブラッドオレンジの夕日が沈む頃、マジックアワーに包まれるLA。この刹那、風が止まり、心にも夕凪が訪れる。一日の終わり。トワイライトに照らされて心が静かに吐息を漏らす。そのニュートラルな心に染み渡って行くような可憐なティアレの香り。まるでこのままどこか遠くへ逃げてしまいたくなるような、郷愁を誘うクリーミーな花弁の香りに、気持ちが一気に持って行かれるトップ。
このトップは個人的に大変弱い。ただでさえタヒチアンティアレやガーデニア系偏愛傾向があるので、自分はこのトップでいつも腰がくだけてしまう。街なかで誰かがつけていたら、香りの引き波につられてフラフラついていってしまいそう(←絶対やめろよ)
とまあ個人の嗜好はさておき、このブラッドオレンジ&ティアレのトップハーモニーは本当に可憐でフルーティー。で、このままいってくれと願うところだが、香りは少しだけ変わってくる。すぐさまココナッツが強めに感じられてくるのだ。いわゆるタヒチやハワイ土産のモノイオイルそのものの香りになってくる。もっと言うと、真夏のビーチにあふれかえっているココナッツ風味日焼けローションの香りになってくる。
ここだ。この香水が気に入るかどうかは。
つけて5分。さっきまでティアレの香りでよろめいていた自分はスッと真顔になって「これじゃコパ○ーンの日焼けローションと変わらないのでは?というか、ジャック・キャバリエが以前レプリカで作ったイランイラン&ココナッツな香りのビーチウォークをちょいと変えただけでは?」などと思ってしまう始末。果たしてこれが天下のLVが高価格で出してくる香りなのか?とついクリティカルに見てしまう点はある。
このミドルではオレンジも消え、ティアレのクリーミーな花の香りも隠れて、ひたすら塩味のポップコーンぽい香ばしさを伴ったココナッツノートが強く主張してくる。自分はココナッツ系の香りは割と好きな方だが、うーん、もう少しティアレのロマンティックモードが継続してほしかったなあという印象。ラストはココナッツに軽くウッディが入って3〜4時間ほどでドライダウン。
シティーオブスターズ。星々のまたたく街。スターがあふれかえる街。誰もがスターを夢見てこの街に暮らし、たった1つの物を欲しがっている。それは何?夢?
映画「ラ・ラ・ランド」のラスト、互いに夢を叶えた2人が偶然出会うシーン。「もう一つあったはずの道」が夢のように繰り広げられる。それは、夜に見た幸せな白日夢。最後に見つめ合ったとき、2人は夢の代わりに失った物の大きさを初めて互いの瞳の奥に見いだしたのだろう。ティアレの花言葉は「幸せすぎてこわい」だ。あのとき、2人でいる幸せを選んでいたら、2人とも夢を諦めていたかもしれない。
だが、2人は別々に互いの夢をつかんだ。そのとき失ったものは何だったのだろう?
それは いつも隣で「大丈夫!」と 夢を応援してくれた
あの人の笑顔。
愛だ。
今夜もLAに夜が訪れる。また、新しいスターたちが光り出すだろう。地上にまたたく灯りの星々の下で。
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