2020/3/29 16:24:37
香水歴は浅いですが、昔からお香が好きでウッディ系の香水を探していてたどり着きました。
人生初・パルファムはゲランの夜間飛行です。
名前は知っていたものの、実際にカウンターで試してみるまで興味をひかれることも無い香水でした。
ゲランのBAさんに「ウッディ系の香水を探している」と伝えたところおすすめされたのがサムサラと夜間飛行でした。ムエットにつけてもらって2時間ほど、街をウロウロしながら香りが変化するのを試しました。結果、サムサラは自分には甘すぎると判断してこちらの夜間飛行に決めました。
トップはお香の香り。お寺のような厳かで静かな香りです。ミドルは甘くパウダリーで、あまりの変化に驚きます。ラストは甘めのお香の香り。サンダルウッドのおかげかお香のイメージが強いです。白檀を身に着けたいと思っていたのでまさに理想の香りでした。
オーデトワレではなく香水にしたのは、最初にムエットにつけていただいたのが香水だったのであまりにインパクトが強く、EDTに全く惹かれなくなってしまったからです。本当にお上手なBAさんでした。
街を歩きながら香りの変化を試し、香水を買う決心をしてゲランのカウンターに戻った時、最初に対応してくれたBAさんに「おかえりなさいませ」と言われ、もうこの夜から逃げられないと思いました。
金額的にも見た目にもインパクトのある買い物でしたがとても満足しています。立派な箱に詰められていて、眺めているだけでも幸せな気分になります。
香水歴が浅いためか先入観がなく、気負わず毎日オフィスにもつけていってます。香水は香りが強いものと思っていましたが、夜間飛行は香り方が穏やかなので、みぞおちに1滴だけ着けると自分だけが一日中香りを楽しめます。落ち着く香りなので、仕事中にふと香るとリラックスできます。
他人にアピールするためではなく、自分だけのために着ける香水。とても贅沢でロマンのある香りです。
購入した経緯を書きたかったのですがレビューには収まらなかったのでnoteにもエッセイを投稿しました。とても素晴らしい香りと購入体験でした。
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- 50歳
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2016/10/29 18:03:37
まさかエルメスの「庭」シリーズに5作目が出るとは思っていなかった。「地中海」「ナイル」とヒットを飛ばしたものの、「モンスーン」で商業的にふるわず、「屋根の上」でフランスに戻って、「やっぱりここが一番」的な、チルチルミチルの青い鳥な楽屋オチで、旅は終わったと思っていたからだ。
しかも、今回の旅先は中国。以前から調香師エレナが並々ならぬ関心を寄せている国だ。かつて訪れた紫禁城で出会ったキンモクセイの香りの感動のみならず、漢字や中国文化、シノワズリ(中国の美術様式)への興味も高いようだが、正直「またそちらですか」という気がしないでもなかった。では、肝心の香りはどうか。
「李氏の庭」を肌にスプレーすると、まずトップで感じるのは、甲高い黄色い柑橘の香り。レモンの酸味にキンカンの香ばしい甘酸っぱさが穏やかに鼻をくすぐる。そしてすぐ消失。3分とせずに、これまでの「庭」系に共通するウォータリーなベースが香り始めてくる。ここからがミドル。
それは、内省的でややはかない印象のジャスミンと、フィグ系を思わせる少し青っぽい印象のウォータリーノート、藻や苔を思わせる暗めなグリーンノートのミックス。アーティフィシャルな香りだが、とてもしっとりとして、落ち着いた透明感あるミドルだ。まさに、これまでの「ナイル」「屋根の上」あたりに通ずる「庭ベース」ともいうべきみずみずしい香り。ただ、よく見ると、少し草木が枯れている。沼の水にもカーキの濁りがある。しだれ柳が作る翳りが思いのほか濃い。そんな印象。水墨画とまではいかないものの。
ミドルは思ったよりも短いと思う。1時間もせずに、柑橘やジャスミン、グリーンな雰囲気は消失して、気が付くと、透明感あるウォータリーな香りとほのかな木の香りとが相まった、庭系独特の艶のあるラストになっている。香料じたいがかなり少ない印象で、庭ベースを元に再チューンしただけのような印象も。そして、このラストがどことなく「モンスーンの庭」のようにこんもりした温かみのあるスパイス感をもっているように感じられる。ジンジャーやカルダモン、クミン系のスパイスがほんのわずかアクセントとして効いている、そんな感じがして、キラキラのスイレンアコードで終わる「ナイルの庭」や、甘ったるく終わる「屋根の上の庭」よりも、「モンスーンの庭」のインド寄りに思える。
ラストはほのかに7〜8時間も残っていて香るけれど、どこか入浴後のジャスミン系入浴剤の残り香のようにも感じられる。ジャスミンとウォータリーノートを合わせているのだから、さもありなんとは思うけれど。
全体に、とても落ち着いてしっとりした香りだと思う。であればこそ、やはり空気が乾燥してくる秋〜冬にかけて、シックな色合いの服やシーンに纏うとよい雰囲気になるだろう。そんな意味でも、この春に出た新作だけれど、自分にとっては秋のイメージの方が強い美しい香り。
ただ、いくつか言いたいことはある。
まずは、とにかくこのネーミング。どうにかならなかったのだろうかと言いたい。「李氏」は、中国や韓国で最も多い姓の1つであり、中国の架空の庭をイメージするための象徴として使用したようだが、「香水は何をお使いですか?」と聞かれて「あー、はい。『李さんの庭』です。」という会話だけは絶対にしたくないし、避けたい。欧米ではどうか知らないが、「李氏の庭」というネーミングは、明らかに日本人の心には響かない。響かなさすぎる。(←みんな遠慮して言わないから言ったな。パンクスめ。)
せめて仏語のまま「ムッシュリーの庭」、あるいは「シノワズリの庭」くらい、ぼかしてほしかった。加えて言うなら、もし日本をイメージして第6作を作ることがあれば、「佐藤さんの庭」なんて名前で出そうものなら、本気で青空に向かってあらん限りの罵詈雑言をシャウトします。(全国の佐藤さん、すみません。日本で一番多い苗字という意味で、他意はありません)
また、皇帝のイエローと呼ばれるボトルの美しいイエローグラデも、土色の黄河や、苔むした岩、よどんだ沼の色のイメージではやや残念だ。この香りやボトルから自分が思い浮かべるのは、陽に向かい、美しい黄色の扇を満開に広げたイチョウの木と、落葉が作る一面の黄色の絨毯。中国の観音寺には、樹齢1300年をこえると言われるすばらしいイチョウの木があるという。そんな紅葉ならぬ「黄葉の庭」のイメージが似つかわしい。
空が青くどこまでも高い。その空に向かって、鮮やかな黄色の葉をつけたイチョウの大木が、思い思いに気持ちよく枝を伸ばしている。その青と黄色のコントラストが目にまぶしい。
秋の午後、どこからかジャスミンティーの温かな湯気の香りがしている。柔らかな黄金色の日差しが降り注ぐシノワズリの庭で。
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税込価格:- (生産終了)発売日:-
2018/1/14 11:17:38
密かなマイブーム中のディオールのラ コレクシオン プリヴェ。もちろん21種類の豊富なナインナップ全てをチェックできていないが、天然素材が持つ複雑でやわらかな香りを楽しめる傑作が多い。(一部、!?と鼻を疑うような駄作もあるけれど)
なかでもラインナップ最古参の、2004年に発売されたボア ダルジャンは流行りに流されることのない、希少かつ高級なフィレンツェ産アイリス アブソリュートの香り。調香師はアニック・メナード。
香りの全体像はやわらかく静寂。それでいて、やさしく包み込んでくれるような包容力のある、どこか懐かしさを感じさせる淡い香り。
トップはオリエンタル-ウッディ。トップから一瞬、シャリマーを思わせるような、みずみずしいオリエンタルな香りと、うっすらとサイプレスの力強い香り。ジュニパーベリーが、パチョリやアイリスを軽くさせているのか?と感じる。
ミドルはパウダリー-バルサミック。しばらくすると、トップのみずみずさの正体こそが、アイリスの香りだったと気づかされる。この透明感のある軽やかなアイリスと、酸味とまろやかなコクのあるミルラを骨格に、サイプレスなどの硬質なウッディ感、バニラの柔らかな甘い香り。キーの高いところでフワッと漂う、アイリスとミルラの組み合わせは、包み込むようなやわらかさと、心地よいやさしさを感じる。中ほどに、アイリスのパウダリー感とやわらかなバニラ、低いところに重厚なウッディが香る。
ベースはバルサミック-ウッディ。酸味のあるミルラの残香と、淡いキャラメルのようなバニラの甘さと、パウダリーなウッディの香り。最後はレザーやドライアンバーのビター感と、ムスクが加わりフィニッシュ。
アイリス(イリス、オリス)はアヤメ科の植物で、花ではなく根茎を乾燥熟成させてからオイルを抽出するため、オリスルートとも呼ばれる。過去に、このオリスルートをかいだ時の印象は、スミレに似たグリーンフローラルと、パウダリーウッディを合わせたような重厚な香りだった。
ボア ダルジャンに使われているフィレンツェ産アイリス アブソリュートは、重厚なパウダリーだけでなく、とてもみずみずしくて軽やかな香りなので、ぜひこのアブソリュートそのものをかいでみたくなる。そう考えると、ミルラは効きすぎかもしれない。
まるで肌を優しく抱擁するように、静かに包み込んでくれる香りなので、男女や季節や時間を問わずに使うことができるのでは。下半身に少量使うと、ほぼ終日、やわらかな甘さや、パウダリーウッディの心地よい温もりを感じることができる。
日本では、表参道限定であるとはいえ、ここまでのクオリティの香りが1万円そこそこで買えることは、とてもとてもありがたい。
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2015/7/29 16:13:16
「125mlで3万円の香水、あなたはどう思いますか?」そう聞かれたら、どう答えるだろう。「高い」「買えない」「いらない」の3拍子に始まり、「スキンケアみたいに肌に効果のあるものならまだしも」「600mlで800円の高級柔軟剤使ってるから必要ない」などなど、いろんな声が聞こえてきそう。わかる。自分もそう思っていた。ボア・ダルジャンのような香りに出会うまでは。
この香りに出会ったとき、またしても撃沈した。「またそんな高い香りか。購入はないな」って思ってたのに、出会ったとたん、「あ、欲しい・・・」と、ひと嗅ぎ惚れしてしまった。人って不思議な生き物だ。嫌いな香りだと、たとえ100円でも買わないのに、本当に欲しいと思うと、たとえ3万円以上の香水でも、そのお金をどう工面しようかと考えてしまうのだから。頼むから25mlで6000円にしてくれ、ディオール。←切実だな
ボア・ダルジャンは、2004年にディオールから発売された3種類のユニセックス・フレグランスのうちの1つだ。これらは、コロン・ブランシュ(白のコロン)、オー・ノワール(黒の水)、そして、ボア・ダルジャン(銀の木)というラインナップで、3つの色をキーワードにして創造されたオー・デ・パルファン。中でもボア・ダルジャンは、高価なアイリスをふんだんに使った香りとして、発売当時からヨーロッパで一番人気だったという。現在の物は、ラ・コレクシオン・プリヴェに選ばれた際、ウッディを抑えてリファインされたものだ。
そんな高級な香りの展開を詳しく見ると。
トップから土っぽさのあるパチュリが鼻をくすぐる。その下でほの暗いアイリスの香り。だが、これまで味わったアイリスとはどこか違う。ほこりっぽさというか、くすんだ感じというか、通常アイリス(イリス・オリス)の根茎から感じられるそういった雰囲気が少ない。スミレの香気でもなく、白い穏やかな花の印象。そして同時に、高いところで香木を炊いたような香りがじんわりと鳴り響く。これがイエメン産のインセンスだろうか。そんなオリエンタル風も感じられる温かみのあるトップ。ほんのりスパイシー。
5分とせず、ミルラの酸っぱさが感じられてくる。鼻の奥に軽く刺激を残すような、発酵した樹脂のような香り。そして、気がつくと、アイリスの香りが美しいパウダリーなテイストに変わってくるのを感じる。あー、なにこれ。これが噂の「フィレンツェから送られてくるディオール秘蔵のアイリス」の香りだろうか?それは、これまでの「暗いくぐもった香り」というアイリスのイメージを大きくくつがえした。
これは粉だ。美しく柔らかい銀色の粉。白粉ほど石けんぽい香りでなく、小麦粉ほど生っぽくもない。例えるならそれは、月光に照らされた夜の海の波光。静かで,キラキラと明滅するかのような、妙なるパウダーの香り。
やがて、3〜4時間もすると、微細なパウダーのきらめきがフェードアウトし、洋酒っぽい柔らかいレザーテイスト、ほんのり甘いハニー、そして、ムスクのソーピーな雰囲気に落ち着き、ドライダウン。ムスクは苦手という方も、この不思議な透明感あるラストなら、あまり気にならないかもしれない。
全体の印象としては、まろやかなお香とアイリス。そのエッジを際立たせるミルラとパチュリ。しめくくりは、甘くおだやかなハニー&レザー、ムスクで消えていくイメージ。香りのピラミッドでいうと、おだやかな変化だし、終始アイリスのノスタルジックで安らぎに満ちた香りが持続する印象。
1日の時間帯で言うなら、トワイライトからナイトタイムがおすすめ。厳しい季節である夏であっても、気温が落ち着く夕暮れ以降の時間なら、この香りはとても心地よいリラグゼーションを与えてくれると思う。1日の終わり、好きな音楽や美味しいお酒、世界の扉を開いてくれる小説や映画、そうしたものに心を寄せてまどろむひととき。そんなクロージング・タイムに、この香りは似つかわしい。誰にも邪魔されない自分だけの時間を楽しみたいとき、この銀色のパウダー香は、ゆったりくつろぐ心に寄り添いながら、時の澱を静かに積もらせていくだろう。
夏の夜半。開けた窓の外、ぬるびた風が運んでくるのは、木々の葉をあたためた生っぽさ。日中、蒸散した森の水分が、未だムンとした気配を漂わせている。星々のまたたき。宝石箱を散らかしたような遠くの街の灯り。かすかに響いてくる電車の音。汗をかいたグラスの中で、氷がカランと揺れる音。部屋の明かりを少しトーンダウンして、月明かりのベランダに出てみる。
月はレモンの形。煌々と下界を銀色に照らし出している。そのほの明るい水底のような世界に、一人でいる切なさと恍惚。少しべたつく夜気に立ちのぼる、ボワ・ダルジャンの香り。それは天上のアイリス。
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2018/12/27 14:57:20
Annick Menardの調香したオリジナル版を入手したので新たに書き込みます。
リニューアルされ、現在海外で手に入るDumachy版と比べ、肌馴染みがダントツにいいです。
プワゾンシリーズはHypnoticとPoison Girl EDTを持っていたのですが(両方ともDumachyの作品)、どちらも主張が強すぎて、香りに酔うことが多かったです。今ではHypnoticは寝香水専門、Poison Girlは愛用している友達にプレゼントしました...好きな香りなのに、恐らく彼の調香と相性が悪いんですね。とにかく付けようものなら2回に1回は酔って気持ち悪くなってました。
それと比べてオリジナル版は肌なじみが良くて、洋酒とチョコレートの香り。以前同じくAnnick Menardが調香したロリータレンピカのレビューでも書きましたが、彼女の香水はすっと肌に馴染むので大好きです。
多分調香師が違うだけで、同じ香水なのにこんなに変わってしまうのは、きっと同じカクテルを違うバーテンダーに作ってもらうのと同じなんですよね。ベースになるレシピは同じでも、少しの癖とか、合わせるお酒の量の違いで個性が浮かんでくる。それが自分に合うか合わないかの話なんです。
Dumachy版は変わらず寝香水、
今では貴重なオリジナル版はお出かけする時にTPO似合わせて使おうと思います。
オリジナル版はシンクロノートでその日のコンディションで香りが変わる香水のようなので、また気づくことあれば書き込むかもしれません。
**以下、2018年10月4日 Francois Dumachy版**
特別な思い入れのある香水です。
「最近この香水気になってるんだー」と友達に話したところ、「え、それ私が普段使ってるやつだよ」とたまたま話したところ、なんと目の前に愛用者がいたという。
地球の反対側で、何度も私を助けてくれた、同じ日に生まれた友人が愛用していたものです。なんというか、香水の好みまで同じことにびっくり。周囲から一目置かれる存在感のある友人に似合う香水で、彼女に因んでハートの女王と呼んでる香水です。
まぁ彼女そっくりになんともクセの強い香水で、持っている香水の中でも断トツ重い。日本の気候だと耐えきれないくらいに重い。夏に付けようものなら、体温の高い私の場合爆死します。酷い時は香水の匂いに自分で酔って気持ち悪くなることも。
けれどピンと張り詰めた空気の冬の日には最高なんです。キャラメルのような、杏仁豆腐のような甘さとアマレットのようなほろ苦さを混ぜ合わせた香りがクセになります。人生の酸いも甘いも知った女性の強さと色気と優しさを描いたような香り。
個人的にその友人を思い出させてくれて、勝手に元気になれる香水です。
暑い夏を終えて、少しずつ秋の香りが深まってきたので、いつ使おうかとずーっと機会を伺ってます。
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