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doggyhonzawaさん
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Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン) / バイオレット & アンバー アブソリュ

Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)

バイオレット & アンバー アブソリュ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:100ml・40,150円発売日:2019/3/14

4購入品

2020/4/11 12:40:15

紫は心が本当に落ちているときに選ぶ色。そんな話を聞いたことがある。カラー心理学の詳細は知らない。ただ自身の経験から言っても、そんな感じあるかもしれないなと思う。

最近の世情を反映してか、ここのところ、気分をリフレッシュするためのライトなシトラス香か、紫色を思わせるバイオレットやアイリス香を選択することが多かった。

そんな紫色の香りの中で、よく手を伸ばしていたのが、ジョー・マローンのバイオレット&アンバーアブソリュだ。

この作品は、店舗限定の最高セレクション「アブソリュ・コレクション」第二弾の香りとして2019年にリリースされた。これまでもティーシリーズなど高価格帯のコレクションや限定作品は多かったが、今回のポイントは2つ。1つはトップノートの香料を用いていないこと。もう1つは英国を象徴する花とアラビアンナイトをイメージした中東の香料の共演だ。価格は100mlで35000円+税。調香師はマスターパフューマーのアン・フリッポ。

英国人に愛される花、スミレ。そして中東を代表する甘くかぐわしい香料アンバー。ブランドいわく「アラビアンナイトを表したスミレの香り」。このスミレと樹脂の共演はどんな香りを奏でるのか?

バイオレット&アンバーアブソリュのボトルは、メタリックなディープパープルの塗料でキャップと上半分を染めたようなデザインになっている。1作目のローズ&ホワイトムスクアブソリュのときはメタリックなローズピンクだった。おなじみのスクゥエアなステッカーもあえて外した大胆な意匠だ。逆に言えば、ステッカーがなくとも、キャップとボトルのシルエットだけでジョー・マローンと認識してもらえるであろうという自信の表れともとれる。

そんなメタリックな紫のボトルからスプレーする。その瞬間、まず感じられるのは、酔わせるような洋酒の香り。アンバーのバルサミックな香りが強く主張してくる。その中から次第にやや土の香りを思わせるバイオレットリーフ、わずかな粉っぽいフローラルが感じられてくる。のっけから中東感満載だ。

とはいえ、ルタンスのアンバーのようにムッとくるようなアニマリックな雰囲気はないし、比較的スッキリしたアンバーだ。薬草のようなハーバルな感じに、コーラ系で感じられるスパイスを混ぜたような雰囲気。通常アンバーは濃厚で重たい香料なので、これらを揮発誘導させるにはトップに軽くて揮発しやすいシトラス系、特にベルガモットをもってくるとよく合うのだけれど、ここでは確かにトップ香料は感じられない。ただ、わりと爽やかにアンバーが感じられるので、逆に不思議な感じもする。

やがて3分もすると、薬草&樹脂なアンバー香の下から、パチュリ独特の苦味と黒さ、その上でかすかに白くパウダリーに展開するスミレの香りが出てくる。スミレというよりアイリスを感じさせるイオノンだ。それらがいい感じに主張し合い、中東っぽさはうすれ、柔らかいフロリエンタル風に感じられてくる。

ジョー・マローンといえばコンバイニング。重ねづけ推奨ブランドだけに、香料の厚みとしてはうすい。そして展開も付けてからあまり変化しない。イオノン系でもかなり暗めのウッディよりの香料が使われているように思う。わずかに酸味のあるウードっぽい香料もずっとベース音のように下で響いているので、スミレというよりもパウダリックアンバーといった感じの印象だ。

持続時間は4〜5時間。つけて30分もすると薬草っぽさやパウダリーな感じはうすれてきて、ウード調のベースとスッキリ甘いアンバー香がずっと続いていくイメージ。スミレというほどスミレはなく、バルサミックな香りが強めの作品。これなら35000円で特別シリーズにしなくても黒ボトルのインテンス系に加えてもよかったんじゃないかと個人的には思う。

それでも、この香りをつけていて感じる不思議なリラグゼーションは特筆に値する。この香りに包まれるとき、気持ちがおだやかになり、安らぎを感じる。心に思い浮かぶ風景は、中東の琥珀色の夕暮れ。砂漠の黄土の上に夜のとばりが降り始める。満点の星々が深紫の夜空に音もなくまたたき始める。そんな静寂のクロージングタイムに、今日1日つつがなく終えられたことを感謝したくなるような、おだやかで聖なる香りがする。

夜が来る。今夜も、明日も、よい日であってほしい。暮れゆく空の合間、琥珀色と深紫のグラデーションの間に、人は心の安息を願う一夜の夢を見る。紫の千夜一夜の香りとともに。

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ディオール / メゾン クリスチャン ディオール サクラ

ディオールディオールからのお知らせがあります

メゾン クリスチャン ディオール サクラ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:40ml・14,850円 / 125ml・31,680円 / 250ml・45,100円発売日:-

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4購入品

2020/3/28 21:43:17

花冷えの夜だった。「一緒に夜桜が見たい」とサクラが言ったので、彼女の誘いにしぶしぶ応じて、深夜の公園に繰り出していた。それでも、にわかに冷え込んだ夜気にあてられ、ぼくは来たことを後悔し始めていた。

そんな気持ちなどおかまいなしに、サクラは満開の桜を見上げながら、軽く鼻歌を口ずさんでいる。淡い光を放つ提灯が深夜の道行きをぼんやり照らし出している。「なあ、寒いからそろそろ…」そう言いかけたときだ。

「ね、ここにある桜って何本くらいあると思う?」彼女が見上げたまま言った。
「え…?そんな分からないよ。数百本ってとこかな?」

彼女の突然の問いの真意を探ろうと横顔をちらりと見る。サクラは夜桜を見上げて微笑んだまま、誰にともなく虚空につぶやいた。

「ううん。ここにある桜はね、1本しかないんだよ。この桜、全部ソメイヨシノでしょ?これ全部たった1本の木から増やしたクローンなんだよ。」
「クローン…?」
「そう。接ぎ木でね、人が増やして。だからみんな同じ木なんだよ。それで一斉に咲いちゃうわけ。」

驚いて空を見上げた。漆黒の夜空を埋め尽くすように、白く艶めかしい花が咲き乱れていた。不意に桜の花に襲われるような感じがして足をとめた。どこか苦味のある鋭い花の香りがした気がして、立ちくらみしそうになった。

「どうしたの?」
「あ、いや…なんか桜の花の香りがすごいなあと思って」
「桜の香り?…それあたしがつけてる香水じゃない?これ。」

そう言って彼女は左手首をぼくの顔の前に差し出した。ふんわりと柔らかくて、スッキリした苦味の混じった白い花の香りがした。

「あ、そ、そうかも。」
「これ、ディオールのサクラっていう香りだよ。いい香りでしょ?」
「あ、うん。そうだね。」
「でも気付いてなかったよね。いつも。」
「え?」

彼女は後ろ手にバッグを抱えたまま、ゆっくりとぼくの前を歩き出した。そして言った。

「ずっと…気付いてないよね。あたしが髪を切っても、どんな可愛い服を選んで着ても。で、もっと関心をもってほしくて香水をつけてても。あたし、いつもこの香水つけてたんだよ。この2年間。」

急に呼吸が浅くなった気がした。どこかにとんでもない忘れ物をしてきたような気がして。

「2018年発売。調香師はディオール専属のフランソワ・ドゥマシー。彼が日本の桜を見て、小さな白い花が何千もの木に咲き乱れている息を飲むような光景に圧倒されて作った香り。」

突然の独り言に二の句がつげないぼくの気配を確認して、彼女はさらに続けた。

「トップはグリーンノート。若葉の頃。ハートノートは日本の桜の香りをメインにジャスミンとローズ、それにきらめきを与えるヘディオン。花盛りのイメージ。そしてラストは…」

息苦しくなっていた。なぜ今そんな香水の説明なんて…、それよりさっき彼女の手首の香りをかいだときに、ブレスレットの隙間からのぞいていた真新しい傷…、あれは、まさかサクラ…。

「ラストは黄色いミモザ、紫のスミレ、そして石鹸のように消えてゆくホワイトムスクのアコード。それは春の訪れ。」
「サクラ、いったいどうしてそんな…?」
「急に香水の説明なんかするのかって?」
「いや、それもだけど、さっきの…」

手首の傷、それはためらい傷じゃないのか?その一言が言えない。言葉がのどの奥でつかえて胸がつまった。

「だって、知らないでしょ?あたしのこと。香水とかすごく好きなことだって」
「…え?そうだったんだ。ごめん、ぼくは…」
「ねえ、あなたは、いつも誰のことを思ってるの?」
「…えっ?」
「知ってる。あなたの中に、誰か忘れられない人、いるよね。あなたはずっとその人のこと見てる。あたしといても。こうして桜を見てても。」

不意にざあっと一陣の風が吹いた。漆黒の夜空に花吹雪が舞った。前を歩いていた彼女が振り返り、寂しそうに微笑んだ。

「あたしはその女(ひと)のクローンじゃないよ」

そのとき、ぼくははっきりと見た。幾千もの桜の花びらが雪のように降り注ぎ、その花弁の山にうずもれてゆくサクラの幻影を。それは一瞬の幻視なのに、どこまでも残酷に美しく、心に突き刺さった。

ふと我に返ると、もうそこに彼女の姿はなかった。ただ、どこまでも清らかで儚いうす桃色の香りがしていた。それは、スモモのように爽やかで、杏仁のように白く苦く、ふんわりとした淡いジャスミンのような香りだった。いつも隣で笑ってくれていた彼女のように優しく、それでいてどこかしらスミレのように影があり、どこまでもまっすぐ清楚な香りだった。

それはディオールのサクラの香りだった。

サクラの 匂いだった。

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Viktor and Rolf / SPICEBOMB

Viktor and Rolf

SPICEBOMB

[香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2020/1/25 13:51:04

人を非難するのは赤子の手をひねるより簡単だ。おちょくってバカにして、揚げ足をとってあざ笑うことは誰にでもできることだ。それを「いじる」などという言葉で擬態する醜悪な人間性を心から軽蔑する。そんな輩は心の中の爆弾で吹き飛ばしてやるといい。リングを引き抜いた手榴弾を放り投げて。木っ端みじんに跡形もなく。

ここに黒い手榴弾の形をした武骨な香水がある。名をスパイスボムという。日本ではあまりなじみはないが、オランダ発のファッションブランド、ヴィクター&ロルフ社が2012年にリリースしたメンズ香水だ。調香は現在シャネル4代目調香師として活躍しているオリヴィエ・ポルジュ。彼がまだNYのIFF社に勤めていた頃の作品。そしてこの作品は、同社のフラワーボム(2005)に続いて、世界中で大ヒットを記録した。

スパイスボムのボトルにはキャップがない。スプレーボタンのネック部分に黒いプラスティックリングがはめられている。このリングがあるので、たとえこのままバッグに入れたとしても勝手にボタンが押される心配がないという仕様だ。

このネックチャームを引き抜く動作が、まさに手榴弾からリングを外す動作そのもの。この仕様は地味にアーミーマニアの魂をくすぐる。ちなみに手榴弾は、その形状から俗にパイナップルと呼ばれるが、スパイスボムのボトルはまさにギミックも形もパイナップルそのものだ。時々本当に、吹き飛ばしたくなる輩に投げたくなる困った代物だ。

そんなワイルドな手榴弾ボトルをギュッと片手で握りしめ、リングを抜いてボタンを押し込む。その瞬間、爆煙のように広範囲に広がる香りのシャワー。その香りの硝煙に鼻を近づけると、予想外に洗練された繊細な香りが広がる。

はじめに感じられるのはシトラスの爆発だ。冷たいシトラス。オレンジとベルガモットのジューシーな開幕。すぐさま、冷たい樹脂系の辛みが一緒に立ち上ってくる。これはエレミのようだ。そしてピンクペッパーの少し酸味あるスパイシー。これらがストレートに拡散してくる。ストレートで小気味よい爆発だ。

5分後、シトラスの煙が消失するとともに現れるのは、焼けつくようなスパイスの静かな辛み、タバコとジンジャーのような熱を感じる風合いだ。トップは冷たいシトラスの爆風、それに続いてスモーキーな熱を感じる香り、つまり「冷」と「熱」のコントラスト。これはオリヴィエ・ポルジュのお家芸とも言うべき対比のアコード。

オリヴィエ・ポルジュは、どちらかというとメンズ香水で名を挙げた調香師だ。彼の最大のヒット作と言えば、まだ若い頃にエディ・スリマンの卓越したセンスの下で生み出したディオール・オム(2005)が挙げられるだろう。それは、冷たいアイリスのパウダリーと、ココアの温かみあるコクという相反するニュアンスを同時に織りこんだ画期的なメンズ香水だった。以来、オリヴィエの作品は、アルマーニコード・フォーメン(2006)、D&Gジ・ワン・フォーメン(2008)、DIESELオンリーザブレイブ(2009)と、男性用香水の分野で多くの名作を生んできた。そのノウハウがスパイスボム(2012)に生かされ、静かに爆発したのだろう。

スパイスボムのミドルは、シナモンのスパイシーを中心に、タバコやレザーのスモーキーな風合い、そしてエレミの辛みを巧みにブレンドしながら、冷たく熱く、混沌と展開してゆく。爆弾というネームほど強烈ではない。どちらかというとMCDが最近リリースした「スパイスブレンド」という名の方が似合う穏やかな香りだ。主張も柔らかく、大体4〜6時間ほど静かに香り続ける。トワレなので、上半身にうっすら付けるか、下半身にたっぷりつけるかで香り立ちはかなり異なる。フルーツや調味スパイスの香りをブレンドしているので、意外にも食事を邪魔しない香りだ。ただし、付け過ぎには注意。

いつの間にか人付き合いにネットが大きく関わるようになった。今まで自分の耳には届かなかった心ない言葉も、見なくて済んでいた衝撃的な画像も、見ようと思えば簡単にエゴサーチできる時代だ。己はともかく、自分の大切な人を傷つけるような言葉や画像が飛び交う今、人ははたしてどうやって大切なものを守るのだろう?守りきれるのだろう。

そのとき、心の中で静かに投げる爆弾があったっていい。実際に投げてはいけない言葉、本気で着火してはいけない炎が、現実世界にはあるからだ。

スパイスボムは、その見た目とは裏腹にマイルドスパイシーでセクシーな香りだ。ただ知っておいた方がいい。その武骨な手榴弾ボトルを握りしめた手が、本気で起爆リングを引き抜くことがあるかもしれないことを。

人はいつもパイナップルのリングを指にかけ、ギリギリのところで日々を戦っているから。

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ゲラン / アクア アレゴリア ジンジャー ピカンテ

ゲランゲランからのお知らせがあります

アクア アレゴリア ジンジャー ピカンテ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:- (生産終了)発売日:2019/6/1

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5購入品

2019/7/26 22:49:49

長く続いた雨があがると、都会はギラギラ照りつける真夏の太陽にまばゆく塗りかえられた。ビルの壁一面に取りつけた室外機が音を立ててフル回転し、熱風をまき散らし始める。あんなに雨の街にうんざりしていたのに人は勝手なものだ。蒸し暑い炎天下の街を歩いたらこの暑さにもすぐ辟易して、どこかカフェに寄って冷たい飲み物で喉を潤したくなった。

ゲランのジンジャーピカンテは、そんなときに飲みたいキリッとしたジンジャーエールの香りがする。

ジンジャーピカンテは、2019年6月にココナッツフィズと一緒に発売されたゲランのアクアアレゴリアシリーズ最新作。アクアアレゴリアは、1999年に4代目調香師ジャン・ポール・ゲランが自然の美しさと様々な天然素材へのオマージュとして誕生させたライトフレグランスのカテゴリで、今年20年目になる。その間、まるで季節限定品のようにたくさんの作品が登場し、消えていった。

20年という節目にあたって、ゲランはマスターパフューマ―のティエリー・ワッサーの名前ではなく、ラ・プティット・ローブ・ノワールのベース香料を作って大ヒットさせた女性調香師デルフィーネ・ジェルクの名をクレジットしている。蛇足だが、こんなふうに女性調香師の名をフロントに出すのはかつてのゲランでは考えられなかったことで、はなはだ隔世の感がある。

では、彼女が作ったジンジャーピカンテとはどんな香りなのか?

ジンジャーピカンテを1プッシュする。すぐにジンジャーの辛み、わずかなハニーの甘味、レモンやベルガモットのスッキリした酸味、ペッパーの乾いたスパイシーが渾然となって広がってきて、何とも言えず爽やかな気分になる。とても美味しそうな香料ばかりだ。それは、よく晴れた日にごくごくと喉を鳴らして飲むアイスレモンティーにすりおろしたジンジャーを入れたような風味。あるいは辛口ジンジャーエールにスライスレモンをたっぷり入れて、むせかえるような炭酸のスプラッシュを味わうような。

やがて5分ほどすると香りは柔らかく変化する。ジンジャーとシトラスの奥からしっとりしたローズが顔をのぞかせてくるからだ。みずみずしい朝露をのせた柔らかなローズ香が、ジンジャーの辛み、ペッパーのドライな風味と相まって心地よく広がってくる。そのブレンドの妙。

ここでローズが出てくるところがこの香水の最大のポイントだ。昨今、柔軟剤のように付けた瞬間からラストまで一本調子で変化のない香水が多い中、さすがゲラン帝国、ライトでみずみずしいアクアアレゴリアの最新作でも、香りが変化する楽しさをしっかりとアピールしている。

レモンの香りが次第に消失すると、ベルガモットの緑色の爽やかな香りにキリリと辛いジンジャーが寄り添いながら、ほの甘いローズがふんわり全体をまとめているようなミドル香になる。隠し味はわずかな蜜の甘さを伴うハニーか。そのコクのある味わいは夏の日に喉の渇きをいやす冷たい飲み物や氷菓を連想させるに十分だ。

出力は全体にやや弱め。1〜3時間ほど穏やかに香るので、通常ウエストや内ももに香水を付けている方も、プッシュ数は増えると思う。最近のゲランの香水に対して、ティエリー・ワッサーが好むラストのホワイトムスクが苦手という方もいるようだが、ジンジャーピカンテのラストは爽やかな生姜の辛みとフェミニンなローズのミックスでフェードアウトするのでワッサー調とは異なる。スッキリしたエンディングで、夏以外にも使いやすく汎用性が高い香りだと思う。

価格は75mlボトルで8900円+税。昨今のラグジュアリーなニッチブランドの香水の値段を考えれば良心的な価格だ。同時発売されたベルガモットのボディローション(200mlで7500円+税)をシャワー後の全身にすりこんでからジンジャーピカンテを好きなところに重ねるミクソロジーが超おすすめだ。

真夏の強烈な日差しが降り注ぐ午後。ビルの谷を吹き抜ける熱風にやられ、いっときの涼を求めてカフェに入る。ひんやり乾いたクーラーの風に包まれ、ふーと息を吹き返す。冷たいジンジャーエールが運ばれてくる。ストローを寄せてゴクリとひと口すする。その瞬間カラカランと冷たい氷の音とともに口の中いっぱいに広がる甘酸っぱくてキリッとした辛みに、心と体から余計な力が抜けてゆく。

並木通りの緑がウィンドウの向こうでまばゆい光を浴びている。店内にはボッサの緩やかなリズムが流れている。まるでカリブの島に来たような気分でジンジャーとレモンの香りに包まれるリラグゼーション。店内に一輪挿しの夏薔薇の香りがほのかに漂っている。

シュワシュワはじける炭酸の泡から立ちのぼる、ピリッと辛いジンジャーと甘酸っぱいレモンの香りにほっとするひととき。ジンジャーピカンテの夏。

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イヴ・サンローラン / オピウム オーデトワレ

イヴ・サンローラン

オピウム オーデトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:50ml・13,750円発売日:- (2010/9/23追加発売)

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7購入品

2019/9/15 00:01:54

香水の歴史上、最も危険な作品といえばイヴサンローランのオピウムがまず挙げられるだろう。「阿片(アヘン)」というネーミングに絶対的にこだわったサンローラン。しかしその名前ゆえに各地でパニックや暴動に近い事件が多発したのも事実。それでも全世界で爆発的ヒットを記録し、1977年の発売以来、50年近くたってもいまだに売れ続けている伝説の名香オピウム。その官能的かつ退廃的なオリエンタルスパイシーな香りの中毒となった人は発売以来数知れない。

オピウムは、印籠型とされる特徴的な丸窓ボトルのパルファムと、縦長のシンプルなボトルのオードトワレが1977年に同時リリースされた。現在パルファムは作られておらず、オードトワレのみとなっている。このレビューもオードトワレの方だ。調香師は、後にディオールのプワゾンなどもブレイクさせた凄腕調香師ジャン・ルイ・シュザック。彼は、サンローランに中国王朝時代のオートクチュールコレクションに見合った皇后の香りの創造を託され、その危険で中毒性を感じさせるネーミングに負けない、強くて蠱惑的なオリエンタル系の香りを創り上げることに心血を注いだという。

では、この香水に一体どんな魔力が秘められているのだろうか?

オピウムを身に纏う。軽くスプレーしたとたん、レモン増し増しのコーラのようなスパイシーでフルーティーな香りがガツンと広がる。オピウムのトップは本当にコーラのようだ。慣れ親しんでいる香りだからだろうか。薬草っぽい樹脂の感じも、ベルガモットやマンダリンのシトラスに包まれて爽やかにはじける炭酸のようでとても心地よい。印象としてはかなりクラシカルで濃厚な部類。ゲランのシャリマーやエスティローダーのユースデューに近い系統。

5分後、さまざまなスパイスとフローラルのミックスが鼻を麻痺させるかのように広がってくる。まず感じられるのはカーネーションの香り、甘辛いクローブの匂いだ。そしてたおやかなローズ、誘うような白いジャスミンのふくよかさ。中でもスパイシーなカーネーションの香りがフローラルの中心となって広がってくる。なんという馥郁たるミドル。カーネーションとローズとジャスミンは、ベースにある樹液のくぐもった香りのようなバルサミックなノートの上に開いている。このバランスがとてもすばらしい。似たタイプで言うと名香シャリマーが挙げられるが、あちらはもっとべルガモットやヴァニラ、アンバーが強く、しっとりとしているけれど、オピウムはギリギリと乾いている。スッキリシャープなキレのあるオリエンタル、そんなイメージだ。

このバランスはすごい。昨今のシングルノートだのシンクロノートだの「あまり変化のない香料少なめ値段高めのニッチ香水」に慣れた方は顔をしかめるほどの出力の強さだが、この作品のミドルだけは何度もつけてじっくりと味わってもらいたい。オピウムの香料バランスは本当にすごい。薬草のようなくぐもった樹脂のノート、コーラのような甘辛い香り、キッチン香辛料のドライなノート、そして美しい花々とのコントラスト。人を酔わせ、快楽に誘い、そして、心地よい眠りへと誘う魔法の香り、そう、これは確かに麻薬の類だ。一度味わったらここから抜け出せないかもしれない。これぞ香水オブ香水。何年もかけて本物の調香師が何度も何度もバランスを調整して仕上げた最高水準の香りの十二単。音楽でいえば何だろう。弾き語り?バンド?いや、オーケストラフルボリュームの香りだ。

持続時間はなんと10時間をゆうにこえる。たったひとしずく、その手首の内側につけるだけでも、スパイシードライなコーラのようなフローラルが思いのほか優しくたゆたい続ける。もちろん香りじたいに好き嫌いはあるだろう。けれど、シャリマーやこの香りを知らずしてオリエンタル系香水は語るべきではない。そう思う。

ラストは美しい煙のような樹液のこんもりした香りとアンバーの甘さの引き波を引いて静かに消えてゆく。衝撃的な名前よりなお、あらがいきれぬ愛の経験のアフタープレイのように、静かに狂おしく心に爪痕を残す香り。

忘れたいことも、悲しすぎる記憶も、ただいっときの夢に身を任せて、波間をただよう一輪の花のように、ゆらゆらと揺れてたゆたう時間があっていい。生きてる時間は何かと辛いことが多いもの。せめて一人、煙のような美しい香りに身をまかせて、泣きたいだけ泣ける夜があっていい。二胡の調べ。胡蝶の舞。

サンローランがその人生を賭してなお「この名前でなければノーネームでいい」とさえ言い切ったほど惚れ込んで、どうしても出したかった香水。知らないなら覚えておいた方がいい。

それはイヴサンローランの魂。オピウム。

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開運まねきネコさん
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プロフィール
  • 年齢・・・61歳
  • 肌質・・・乾燥肌
  • 髪質・・・未選択
  • 髪量・・・未選択
  • 星座・・・山羊座
  • 血液型・・・A型
趣味
    未選択
自己紹介

お化粧大好きですが 体質が変わり 摩擦と刺激が少ないものが好みです   慎重に選んでいるつもりが きれいになりたい欲と購入ポイントアップに弱く 時々… 続きをみる

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