- doggyhonzawaさん 認証済
-
- 52歳
- 乾燥肌
- クチコミ投稿426件
2018/10/20 17:51:17
人恋しさに、あの人会いたさに、想いこがれる秋の夜は、純白のウエディングドレスさながらのうっとりするようなペンハリガンのガーデニアの香りに包まれるといい。
ペンハリガンのガーデニアは、1976年に誕生したガーデニア(クチナシ)のシングルフローラルのオードトワレだ。チュベローズ、ジャスミン、イランイラン、ガーデニアの花々に、スパイスとバニラを重ねた、クリーミーで悩ましい香り。いったんは忘れられた存在となっていたこの香りは、鬼才ベルトラン・ドゥショフールの手にかかってリファインされ、2009年にアンソロジー・シリーズとしてリリースされている。容量は100mlで定価は税込で2.3万円ほど。ただネットでは半額近くで取引しているところも最近では見られるので要チェックだ。
正直、このガーデニアにはしてやられた。香りこそ変化なく人工香料メインであるものの、数あるガーデニア系香水の中でも香料バランスが絶妙。そして人の心を惹きつける魔力をもっている香りだと感じる。さすがベルトラン。彼がラルチザンで創ったラペルトワなみのガーデニア香。さらには、シャネルのココマドやチャンス系に比べても負けない強い男性誘引力をも兼ね備えているように思う。
ペンハリガンのガーデニアをスプレーする。とたんに濃厚なジャスミン&チュベローズ系のホワイトフラワーブーケが強く空気を押し出してくる。甘くてしっとりしていてクリーミー。同時に背後からスッキリしたグリーンノートが広がってきて、全体の香調を引き締めている印象。この開幕5分のホワイトフローラルブーケのかぐわしいことといったらない。熱帯のフルーツのようなエキゾティックな甘さと乳製品のようなまろやかなコクをもち、そして男性の心を一瞬で奪うような妖艶な女性の色気も含んでいる。このフローラルブーケミックスは生花以上。あえていうなら、生々しい。ごめんなさい、参りました。なぜかそうあやまりたくなるようなしっとりしたグリーンフローラル。そんなトップ。
そしてそのトップの強烈なホワイトフローラルブーケが次第に柔らかくなっていくミドル。香りの変化はほとんどなく、香りじたいが引き波をたてながらゆっくりと時間の経過とともに柔らかくなっていく印象。ラストもまた然り。付けてから8時間たっても、まだ付けたところにうっすらとホワイトフローラルが漂っている感じの消え方。わずかに石鹸ぽいムスクの雰囲気は感じるけれど、全体の印象が確かにガーデニア。クリーミーで甘い。最初から最後まで肉厚な白い花の蜜の香りに包まれたままフェードアウト。
気を付けなければいけないのは付け方だろう。シングルフローラルながら本当に拡散力が強いので、この作品に関してはウエストより下に付けることを全力でお勧めしたい。くるぶし、ひざ裏、太もも、ウエストなどのお好みの場所に、左右1プッシュずつで十分だろう。それでも量が多いと感じる方は、ロールオンアトマイザーに移し替えて塗布量を調整するといい。
ペンハリガンのガーデニアは、ボトルこそカチッとしたこれまでの英国風ではあるけれど(リボンも立ってるし)、香りに関してはセンシュアルで男心を揺らめかせる甘く危険な香りだと感じる。久々の「あまりにいい香りなのでつい後ろからついてきましたええもしよかったらお茶でもいかがですかああすみませんそりゃそうですよねではせめてお名前とその香水だけでも教えていただけませんかそれとラインIDも」的な男に気を付けてほしいかもしれない香り。秋だからね、人恋しくて落ちてる人はたくさんいる。そんなときにこんなふんわりフローラルを纏った女性が目の前を通ったら、男たちの理性はあっという間に吹っ飛んでしまうかもしれない。いや失礼。俺は吹っ飛ぶ。香りにつられてついていったらごめんなさい。(←久々だな確かに。)
夏咲きのクチナシの木は、春のジンチョウゲ、秋のキンモクセイとともに「三大香木」と呼ばれるほど芳香の強い花を咲かせる。アジア原産のこのクチナシは海外に渡ってガーデニアと呼ばれ、欧米ではダンスパーティーに誘う女性へ贈る花として有名になり、プロポーズの時やウェディングブーケにも使われる幸福の花となった。花言葉も「優雅」「洗練」「喜びを運ぶ」などがあり、恋や愛の花としても知られている。ガーデニアの花の香りには、そんなたくさんのメッセージが込められているのだ。
クチナシの香り、メッセージ…。懐かしい歌のフレーズが浮かぶ。
「雨上がりの庭で クチナシの香りの…」
やさしさに包まれたなら、目に映る全てのものは愛のメッセージになるだろう。
- 使用した商品
- 現品
- 購入品
- doggyhonzawaさん 認証済
-
- 52歳
- 乾燥肌
- クチコミ投稿426件
-
[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
容量・税込価格:30ml・20,900円 / 75ml・30,800円 / 120ml・40,150円発売日:-
2018/6/30 11:08:49
梅雨明けのニュースが流れ、青い夏空が広がり始める頃には、もう体内の暑熱馴化(しょねつじゅんか)は始まっている。暑熱馴化とは徐々に体を暑さに順応させていくこと。具体的には発汗を促す運動をしたり、エアコンの設定温度をやや高めに設定したりして、新陳代謝の促進と発汗機能を向上させていくことを指す。そうすると汗はかいてもサラリとしていて塩分を無駄に消失せず、暑さに負けない夏対応ボディになっていく。熱中症の予防にも効果的だ。
クリードのオリジナル・ベチバーは、そんな暑熱馴化の時期に使いたい、爽やかでスッキリした香りがするオードパルファムだ。
クリードと言えば、まず「値段が高い」というイメージがある。このオリジナル・ベチバーも、30mlで実売価格1.8万円前後だ。もちろん250年以上かけて守り続けてきた歴史や伝統、加えて王室御用達という冠もついているのだからお値段もそれなりというのは分かる。ただ6代目調香師オリヴィエ・クリードが天然香料の抽出を自ら行い、時間と手間をかけて生産しているスタイルであるが故に、コストがかかっているというのが実情のようだ。特に超貴重なアンバーグリスを彼自身が抽出しているという点は刮目に値する。
同じ英国フレグランスのペンハリガンよりもワイルドで、メンズラインが充実しているクリードは、ボトルデザインもカッコよく、男性にプレゼントするにはもってこいのブランドでもある。持っていても、使っていても、ワンランク上の上質感を味わうことができる点で貴重な、ニッチメゾンの先駆けとも言える。
そんなクリードのオリジナル・ベチバー。こちらは2004年に七代目調香師アーウィン・クリードによってリリースされたユニセックスなオードパルファムだ。緑のグラデーションボトルが涼しげなオリジナル・ベチバー。では、どんな香りかというと。
トップ。爽やかなベルガモットの香り。コクのあるアールグレイを思わせる香りに、ややマンダリンのオレンジ風味が重なる。とてもスッキリしたシトラス系で気分が軽くなるオープニング。初夏の涼しげな風が葉を揺らし、キラキラと木漏れ日がまぶしい風景を思わせる明るいトップだ。
ほどなくベルガモットとマンダリンは消失し、ややグリーンな青みのある香りが感じられるようになってくる。そして温かみのあるスパイス系の香り。これは、ジンジャーやペッパーなどのようだ。体温の高いところにつけると、トップのシトラスが抜けてもジンジャーと酸味が効いていて、まだシトラスが続いているような印象。それに対して、体温が低めのところにつけると青草のような香りがほのかに続いていく感じ。これが、アーウィンが示した新解釈のベチバーの提案、ベチバーリーフの香りだろうか?
通常ベチバーと言えは、根から抽出した土臭くスパイシーな香りがする香料を指す。色に例えるならこげ茶色の香り。そこでクリードはあえて根からではなく、ベチバーの細い葉から香料を抽出してベチバーリーフの香りをフィーチャーしたのだろう。色に例えるなら確かにグリーン系。
ミドルはそんな少し温かみのあるジンジャーとわずかにグリーンな香り、そしてスッキリした酸味がどこまでも続き、とても軽やかでさっぱりしている。このサワー感が何の香料のものかは定かではないが、わりにずっと変化せずに何時間も続くので、人工香料で引っ張っている部分かも知れない。真夏の太陽のまばゆさ、風に揺れる草原を思わせるミドル。
ラストは、酸味とわずかな塩気を含んだ風が去っていくような印象。クリードご自慢の天然アンバーグリスも入っているのだろうか?アンブロキサンっぽい潮風のような香りがわずかに感じられる。終息まで6〜8時間、つけたところで柔らかく香りが続いてドライダウン。
してみると「どこがベチバー?」と意外性を感じる香り。たえずシトラスとグリーンの風が吹いているような香調だ。ラストにわずかな土っぽさはあるものの、これなら女性も気軽につけやすいと思う。わざわざオリジナル・ベチバーと銘打ったのは、このベチバーの葉の青さと清々しさを前面に出したかったからだろう。まさに夏草を思わせるボトルイメージそのもの。
梅雨が明けると日本は本格的に高温多湿の夏を迎える。体は来たるべき夏に向けて馴化の準備を始めているが、この時期、実は心の暑熱馴化こそが大事だ。「夏をのりきるぞ!」「夏をめいっぱい楽しむぞ!」そう前向きにとらえることで、心の体力が夏の身体をけん引していく。
どこまでも広がる夏空。入道雲がもくもくと湧きあがり、緑の葉が風にさやさや鳴る。木々の葉や草の青い匂いが、水分とともに蒸散されてゆく。
クリードのベチバーは、そんな夏草と青空の匂いを心に運んでくれる爽快なシトラスグリーンの風だ。
- 使用した商品
- 現品
- 購入品
- doggyhonzawaさん 認証済
-
- 52歳
- 乾燥肌
- クチコミ投稿426件
2018/1/20 17:10:49
テール・ディリス。「アイリスの大地」という名のオードパルファム。香料でアイリスと言えば、3年育てた根茎をさらに3年じっくり乾燥させ、やっと抽出できるとされる最高級のエッセンス。ほのかにバイオレットの香気をもち、調合した香料にパウダリーな輝きを与える稀少な精油。ミラー・ハリスのテール・ディリスは、そんなアイリスが咲きみだれる春の大地を思わせるような、アーシーでアロマティックなフレグランスだ。
ミラー・ハリスは、若き調香師リン・ハリスが2000年に創業したフレグランス・メゾン。彼女が父のミドルネームであるミラーを冠してミラー・ハリスとし、「ボタニカル」をテーマにした香りを創作している英国のブランドだ。面白いのは、英国のブランドながら作品名がフランス語で付けられていること。作品によっては、ルカ・トゥリンに「意味不明な仏語」と揶揄されているようだが、これはリンがフランスで調香修行し、その後英国に戻って創業したことと関係がありそうだ。
アイリス(またはオリス)と言えば、世界的な産地はイタリアのフィレンツェとされる。かの地は昔からアイリスの花を図案化した「ジリオ」と呼ばれるシンボルが町の至るところで見られるほど、アイリスで有名な地だ。そんなフィレンツェのアイリスに思いをはせたのだろうか?テール・ディリスは、トップからイタリアのカラブリアン・ベルガモットの爽やかな香りで開幕する。
テール・ディリスをスプレーすると、一瞬、酸味とコクのある柑橘の風が吹く。ベルガモットのみずみずしさだ。同時に下の方から湿ったスパイシーな土のような香りがしてくる。やや墨っぽいパチュリ、そして苦みを押し出すオークモス系の香りだ。爽やかなのにじんわりと響く土の匂い、さながら朝露に濡れた果樹園の入り口に立ったようなオープニング。
5分もすると、次第に薄れていくベルガモットの酸味と入れ替わるように、ドライハーブの香りが感じられるようになってくる。どこかでかいだようなクッキングハーブ系のミックス。クレジットを見ると、ローズマリーやセージのようだが、湿った土っぽいウッディの苦みの上にあるせいか、明確には感じ取れない。庭園に太陽が昇り、少し乾いた風が吹いてきて、ハーブの香りが漂ってきたようなイメージ。
そしてさらにその下から、シャープなローズが香ってくるようになる。パチュリ&モスの茶色い湿ったスパイスの上に、清涼感を運んでくるターキッシュローズの優しさ。そこにクリーミーなヴェールがかかっているような。そのベールこそアイリスルートのマジック。
割合で言うと、パチュリ&モス、ローズ、アイリスが、5:3:2くらいのミドル。ハーブの香りはいつの間にかアイリスのわずかなパウダリーの中に隠れていく。涼しげなローズの香りに、ほんのりバイオレットの香気を足して透明なベールでおおったような香りが、乾き始めた大地の上に広がっているような印象。
やがて香りはまろやかに、そしてほんのりとした甘さを伴って、パウダリーな輝きを増していく。アイリスの量はそれほどでもないかも知れないが、ミドル以降、おしろいのような香りに変わってくる。とても穏やかで、母性を感じさせるようなフェミニンなラストだ。ここまで大体4〜6時間。
全体的に見ると、トップで土や苔の香りが強く出るので男性用トニックのように感じやすいものの、徐々に女性的な優しい香り立ちに変化していくような展開。シトラス系もフローラル系も濃厚なオリエンタル系も苦手という方には、こんなグリーン&アーシーなシプレ系のアプローチが新鮮に感じられることもあるだろう。往年の激シブいシプレとは異なり、シャープながら次第にクリーミーな香りに変わってくるので、使いやすい部類だと思う。ときにマニッシュな雰囲気だけれど、ミドルでローズとパウダリーな輝きが出てくるので、次第に明るくなっていく庭園のようにも思えて趣深い。
イタリアのフィレンツェ、ミケランジェロ広場の脇には、4月下旬から1ケ月ほど、多種多様なアイリスの花を見ることができるアイリスガーデンがあるという。何千本と植えられたオリーブの木。その下で、イタリアの陽光が降り注ぐなだらかな斜面に色とりどりの花が咲くガーデンは、観光客よりもむしろ、イタリア国内の人々の憩いの場となっている隠れスポットだそうだ。
アイリスの花が風にそよぐ春の丘。オリーブの木陰、色とりどりの花々を愛でながらそぞろ歩きする人たち。不意に土の匂いを感じて足を止める。誰かがそっと掘り返したのだろうか?どこか懐かしく、切なさを呼びおこすような、春の息吹を感じさせる大地の香りがしている。
テール・ディリス。
- 使用した商品
- 現品
- 購入品
- doggyhonzawaさん 認証済
-
- 51歳
- 乾燥肌
- クチコミ投稿426件
2017/11/4 18:12:45
ペンハリガンのヴァーラ・オードパルファンは、天才調香師ベルトラン・ドゥショフールが2013年に手掛けた作品だ。舞台はインド、香調はオリエンタルと来れば、ちょっと香水に詳しい方ならゲランのシャリマーの向こうをはった作品?と思うことだろう。インドの大富豪がペンハリガンに創作を依頼したという香り。インド北方の都市ジョードプルに向かったベルトランは、城塞都市の青い家並み、マハラジャの大豪邸、マーケットの活気、美しい庭園の花々からさまざまなインスピレーションを得て、マハラジャの孫娘の名前であるヴァーラと名付けた香りを創った。それは一体どんな香りなのか?
ターコイズブルーのボックスは、オレンジ色のラベルの周りにカラフルなインド曼荼羅が描かれ、ことのほか美しい。ペンハリガンには珍しく、ボトルの首のリボンもゴールドメタル。そんなヴァーラのボトルから香りを1プッシュすると。
トップ。いきなりサンダルウッドの香りがふわあっと漂い、その酔わせるような木の香りに驚く。インドのマイソール産最高級サンダルウッドへのオマージュかなと思う予想外のイントロ。そして気付くとその背後からフルーティーな甘い香りがしている。透明感があって酸味のない柔らかな果実香だ。マルメロのようだが、サンダルウッドが強く出ているせいか、明確には感じとれない。
2分後、サンダルウッド&フルーツの下から、温かみのあるスパイスが出てきて、インドっぽい雰囲気が感じられるようになる。ブルーシティと呼ばれる青壁の街、ジョードプル。その狭い通りに広がる賑やかなマーケットから漂うスパイスの匂いを彷彿させる。じわりとくるスパイシーなコリアンダー、ややクリーミーな香りはサフランのようだ。そんなウッド&フルーツ&スパイスが複雑に変化し続けるトップが10分くらい続く。
やがてスパイスが薄れてくる頃、そっと下から顔をのぞかせてくるのは、シャープな香り立ちのローズ香だ。ピンク色のダマスク系の香り。爽やかでスッキリしている。ざわめくマーケットを抜け、旧市街を見下ろす巨大な宮殿の庭園にたどりついたような雰囲気。そびえ立つ巨大なベージュ色の宮殿、その庭園に咲き乱れる花々を思わせる。夏の朝、数時間だけ収穫できるローズから採取できる貴重なオイルの香り。そこにミントが混じったようなスッとした清涼感も出てくる。さながらローズミント系のガムのような印象。そして次第にローズにさまざまなフローラルが重なってくる。マグノリアのふんわりした柔らかさ、少しローストされたような甘い蜜の香り。つけてから3時間ぐらいだろうか。香りにウッディが混じるようになるとラスト。
ラストは、温かみのある柔らかなウッディで幕を閉じる。ローズの残香を残しながら、サンダルウッド系のこんもりとした木の香りでフェードアウト。世界一豪華ともいわれるマハラジャの宮殿、現在はホテルになっているウメイド・バワン・パレスでゆったりとお風呂に浸かり、入浴後に薔薇&サンダルウッドのアロマオイルで全身をマッサージしてもらっているようなリラグゼーション。4〜6時間で消える美しいラスト。
インド・アーユルヴェーダに用いられるアロマオイルには、ローズアッターという最高級のオイルがある。これはダマスクローズの原種であるインドローズと最高級サンダルウッドをブレンドしたもので、あまりに高級すぎるため、インド国内でもローズやサンダルウッドを希釈した物が販売されているようだ。ヴァーラにはそんなローズ・アッターがベースにあるように思う。そこにハチミツやマルメロのスイートさと各種のスパイスをブレンドした香りといった風情。濃厚な主張ではないものの、大富豪であるマハラジャの望みをかなえる最高級のクオリティであることは確か。ただ、香り立ちは淡い。これはペンハリガンの作品全般によくあることだが、ウエストやひざ裏に香りを付けると、ほとんど香らないと感じる方もいるかもしれない。人にもよるので、ぜひ香り立ちは確かめてみてほしい。
最後のマハラジャであるウメイド・ガジ・シン2世は、ペンハリガンに「ジョードプルへの自らの深い愛、そして家族と土地の強い絆を表現するようなフレグランスを」と依頼したという。富める者は貧しき者に施すことが当たり前ともされてきたインドにおいて、偉大なる王であった彼は、ジョードプルに私財を投じて学校や病院など幾多の施設を築き、年間平均気温40度を超えるかの地に貯水池も整備した。ヴァーラはそんなマハラジャに捧げられた香りだ。
贅の限りを尽くした巨大な宮殿、そのオープンエアーのテラスからは美しい庭園とジョードプルの町が見渡せる。それは、マハラジャが家族と同じくらい大切にしてきたもの。孫娘のヴァーラのように、愛してやまない宝物。
- 使用した商品
- 現品
- 購入品
- doggyhonzawaさん 認証済
-
- 51歳
- 乾燥肌
- クチコミ投稿426件
-
[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)・香水・フレグランス(その他)]
税込価格:-発売日:-
2017/7/22 15:59:48
夏のフレグランスには、シトラスの爽やかさとグリーンな青さ、そしてわずかなフローラルがミックスされているといい。シトラスだけだと10分で揮発してしまうし、グリーンだけだと飽きのくるのが早い。この2つが拮抗することで、まばゆい太陽を受けて熟した果実のジュースの匂いと、風に揺れる緑の葉の香りになって、きらめく夏のひとときを演出する。奥に広がるかすかなフローラルは、その瞬間を永遠に心に刻んでくれるだろう。
ここ数年、夏はシトラス系を中心にさまざまな物を試してきたけれど、中でもずっと気に入って使っている物がある。それがアトリエ・コロンのグラン・ネロリだ。
グラン・ネロリは、女性用のフレグランスのカテゴリではあるが、ジェンダーにとらわれず、世代を超えてどんな方にも一度試してみてほしい汎用性の高い香りだ。ただ、名前からふくよかな甘さとしっとりしたコクのあるネロリの香りをイメージすると、たぶん肩透かしを食う。ネロリと名を冠してはいるけれど、グラン・ネロリはネロリ本来の香りとかなり異なる。では、いったいどんな香りなのか?
グラン・ネロリをスプレーする。スプレーした瞬間に広がるのは、目が覚めるような柑橘ミックスの香りだ。ここ数年味わってきたさまざまなシトラス系フレグランスのトップの中でも、個人的に一番好きなブレンドだと言っていい。
それは、レモンの果汁とベルガモットの果皮のオイルがはじけるシトラスシャワー。そこにプチグレンの青くシャープな苦みがわずかに効いて、奥にネロリのフルーティー&ビターな花の香りがふわりと広がる。このトップは本当に心地よい。まさに珠玉。
そんなシトラス&グリーン&ビターオレンジの花のトップが約30分ほど続く。これがオレンジ・サングインのようにずっと続くのかと思いきや、次第にシトラスとグリーンはやや苦みを伴ったムスクのような香りに変わってくる。通常ここからがミドルかと思うが、アトリエ・コロンの作品はわりに変化が少なめなので、前半が終わって後半の香りに変わったという雰囲気。
モス系のような苦み、そしてソーピーにもパウダリーにもふれない明るく甲高いムスクの香りがこの後半の中心となる。前半の香りがレモン&グリーンといった感じで、後半はややランドリー系のクリーンな香りになったといった印象。色で言えば、オフホワイト。この香りが大体3時間〜4時間ほど淡く続く。比較的長時間シトラスが香るアトリエ・コロンにしては、前半のシトラスやネロリは早く収束するように思う。できれば前半の香りがずっと続いたらいいのに、と思うけれど、後半のムスキーな香りも、あまり合成っぽさを感じさせず、ツンとしたり、妙にロースト香になったりしていないのは好感がもてる。
ただ、いかんせん、後半のムスク&アンバー系の香りはメンズ寄りな感じがするので、女性はこのへんがセレクトするかどうかの分かれ目になるかも知れない。前半の香りにしても、好きな香りにはもちろん個人差があるから、是非試香して自分の肌でどのように香り立って後半まで変化するか確かめてみてほしいと思う。シーズンとしては春から秋までがおすすめ。香り立ちもさっぱりしているので、さまざまなシーンで使いやすいと思う。気に入れば、バーサタイルな1本として重宝するだろう。
日本の夏はただでさえ高温な上に多湿だから、夏のデイタイムに肌にのせるフレグランスは、本当に自分が付けて心地よい物、汗などに干渉されてもなお好みの香り立ちとなる物を選ぶ必要があってシビアだろう。もしデオドラントスプレーがこのグラン・ネロリの前半の香りならどんなにいいだろうと、そんなことも考えてしまう。それほどグラン・ネロリは、自分にとって夏の一番厳しい日中であっても心地よく使え、邪魔にならない希少なフレグランスの一つだ。
夏にイタリアを訪れるなら、長くつの半島の西に広がるアマルフィ海岸までの複雑な海岸線を旅してみたい。30kmに及ぶ海岸線には、海に突き出した緑の断崖が絶景を繰り広げ、斜面に張り付くように小さな美しい町が点在しているという。白亜の建物と降り注ぐ太陽。木々のむせかえる香り。地中海の風に揺れるレモンの果実。オレンジの木陰、シーフードパスタの香り。見渡せば、どこまでも青いティレニア海。
まるで映画「グラン・ブルー」の情景。心躍らせるイタリアの太陽の匂い、グラン・ネロリ。
- 使用した商品
- 現品
- 購入品