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doggyhonzawaさん
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ペンハリガン / ザ・ルースレス・カウンテス・ドロシア(ポートレート)

ペンハリガン

ザ・ルースレス・カウンテス・ドロシア(ポートレート)

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2020/2/1 16:42:38

こぼれ落ちている。

ティーポットから紅茶がカップに注がれる様子を見て、ドロシア伯爵夫人はそんなふうに感じた。彼女はティーを注ぐメイドの様子を冷ややかに見つめている。メイドは緊張した面持ちで夫人の前にカップを差し出す。その瞬間、夫人がメイドの横顔を見て言った。

「貴女、昨夜ボーレガードとすれ違いざま、首筋にキスされていたメイドね?」

婦人の突然の言葉に、メイドはビクリとして動きが止まる。紅茶がカップの中で揺れる。あわてふためいて何か言おうとするメイドの声を手の平で遮ると、夫人は呼び鈴を鳴らして女中頭のハウスキーパーを呼んだ。

「この娘、おいとまが欲しいそうよ。代わりのメイドにスコーンを運ばせなさい。」

彼女はザ・ルースレス・カウンテス・ドロシア(冷酷な伯爵夫人ドロシア)。ペンハリガンのポートレートシリーズから2017年にリリースされたオーデパルファムの名だ。75mlで35200円。

ポートレートシリーズは、広大なカントリーハウスで繰り広げられるイギリス貴族の架空の物語をベースにしたハイエンドな香水の作品群。その中でドロシア伯爵夫人は、物語の中心人物であるジョージ卿の母という設定。一族の家長として君臨する聡明かつ気高い完璧な女性、ドロシア。彼女は身内のスキャンダルの全てを知りつくし、憂慮している。しかしその一方で、自分は若きフランス人男性ボーレガードを友人と称して屋敷に招き入れ、特別懇意にしているという噂も。

そんなドロシア伯爵夫人のキャラクターはフクロウ。ふだんはじっとして動かないが、いったん獲物を見付けると決して逃さないどう猛な猛禽類。ではこの強烈な個性を秘めた女性の香りとは、いったいどんなものなのか?

ドロシアのトップは、穏やかで透明感ある洋酒の香りで始まる。ほのかに甘くスッキリ広がるシェリー酒の香り。同時に出てくるのは、ティーを思わせるベルガモット、そして温かみあるシナモンとジンジャーの美味しそうな香り。さながら英国のアフタヌーンティーの時間を思わせる。アールグレイの爽やかな香気、香ばしい焼きたてのスコーンの香り、そこにスパイスがほんのり混じったような。

次第にジンジャーとシナモンの風味が強くなってきてミドル。ミドルになると、ベルガモットの酸味やコクが消失する代わりに、より一層スコーンやビスケットを思わせるクリーミーな雰囲気が出てくる。わずかにスモーキーな良質のヴァニラ香だ。ドロシア夫人はことのほかスコーンが好きだという。英国式のアフタヌーンティーの様式の中で、特にティーとスコーンの組み合わせはクリームティーと呼ばれ、スコーンにはジャムと濃厚なクロテッドクリームが添えられる。そのヴァニラクリームの感じだ。彼女は広大な邸宅の中を悠然と散歩しながら、何十人もの使用人たちの様子をつぶさに見て取り、誰が誰と何をしているか見逃さない。「スコーンはいかが?」と優しく相手の懐に入っては、全ての情報を把握するのだ。だからメイドたちは夫人の気配を感じると蜘蛛の子を散らすように姿を隠すという。

そんなほんのりスパイシーなスコーンのような香りに、わずかに甘く軽やかなウッディムスクが感じられてくるとラスト。カシミアムスクと呼ばれるカシュメランの引き波だ。持続時間は4〜5時間程度。穏やかでエレガントなティータイムの終焉を迎える。

展開で見ると、ドロシア伯爵夫人は清涼感あるシェリー酒の香気から始まって、ティー&ジンジャービスケットのような香りへ移り、ラストはヴァニラと甘いウッディムスクで幕を引くセミオリエンタルな香調の香水だ。フクロウのようにとても静かで落ち着いたイントロ。けれど、常にどこかロースティーな影がちらつく香りだと思う。冷酷というほどではないけれど、冴えた知的な女性を思わせるクールさが感じられる香りだ。

すでに日は落ちていた。遙かな丘の向こうに日の名残りが感じられた。ひとしきり邸宅を巡り、情報収集を終えたドロシア婦人は、ホールに戻って巨大なウォールミラーに自身の姿を映した。そして思った。

こぼれ落ちている。 顔も、身体も、全身から若さが。

かつて、あまたの諸侯に言い寄られるほどの美貌を宿していた自分が、加齢と共に落ちている。その残滓のような姿がそこにはあった。

でも だからこそ

こぼれ落ちてゆく若さと引き替えに、自分はその何倍も手にしてきたのだ。地位も名誉も財産も。そしてあの男も…。ドロシア夫人の目だけが、暗闇で全てを見通す猛禽のナイトアイズのように光っている。

そのとき、来客を知らせる執事の足音が近付いてくるのが聞こえた。夫人の口元が微笑む。

私のお気に入りのスコーンが、今夜も会いに来たのね。

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ゲラン / アンジェリーク ノアール

ゲラン

アンジェリーク ノアール

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:75ml・35,200円 (生産終了)発売日:2006/11/15

6購入品

2019/10/19 18:07:33

この香りを嗅いだ瞬間、墜ちた。撃墜された。心が囚われてしばし真っ白になった。視線が虚空をさまよった。どこかで天使が笑っているような気がした。けれどそれは悪魔の嘲笑だったのかもしれない。

ゲランのアンジェリーク・ノアール(黒のアンジェリク)を初めて嗅いだときのことだ。今もはっきりと覚えている。それは黒の衝撃だった。バランスのいいゲルリナーデベースの上に、甘くてクリーミーで、わずかに苦いグリーンな香りがスッキリと広がっていた。そのバランス、その高貴な香り立ちに深く感じいった。

アンジェリークノアールは、ゲランの最高級ライン、ラール・エ・ラ・マティエールの最初の3本のうちの1本だ。2005年、このシリーズ最初の3本を作るために3人の外部調香師が招かれた。フランシス・クルジャン、オリヴィエ・ポルジュ、そしてプラダのキャンディなどを手がけたダニエラ・アンドリエ。彼女が作った香りがこのアンジェリークノアールだ。

価格は75mlで32000円+税。これまでこの価格がネックでもあったが、今後は20mlドロップが伊勢丹新宿店1F「ゲランパフュマー」でいつでも買えるようになる(10月23日以降)。これは嬉しいニュース。

では肝心の香りはどうかというと。

トップ。新鮮で酸味の豊かなベルガモットがまず感じられる。すぐにその下から出てくるのは透明でスッとするアニスの清涼感とスリリングなグリーン系のノート。さらに低音からはアンジェリクルート(根)のスパイシーな爽やかさが広がってくる。甘くて青くて、わずかに苦味が感じられるグリーンなトップ。ベルガモットとアーシーなアンジェリクルートの競演。拮抗。

ほどなくベルガモットの爽やかさは消失し、トップのフルーティーさを洋ナシ様の甘くコクのある香りが引き継いだなと感じると、香りはミドル。そしてアンジェリカの土っぽいスパイシー&ムスキーな香りと好対照を見せるようになる。さながら白と黒の二重唱。明と暗の妙なるコントラスト。

さらに、この甘くフルーティーな香りとベチバーっぽいベースを包みこむように、フローラルムスキーな香りが全体を包みこんでくる。ジャスミンとアンジェリカシード(種子)のムスク香だ。ややクマリン独特のキュンとくるせつないアーモンドノートも混じったような。ここまでくると、さまざまな香料の波状攻撃にあったような気分になり、何ともいえず穏やかな気持ちに包まれる。整理すると次のような感じ。矢印は変化を表す。

高音部:ベルガモットの酸味→ペアーの甘さ
中音部:清涼感のアニス、青いグリーンノート→花の香りのムスク
低音部:スパイシーな根の香り→コクのある苦いクマリン系ムスク

アンジェリクの名が示すように、アンジェリクルート(根)とアンジェリクシード(種子)が使われており、このアロマティックな香気をもつ香料が過剰投与されている印象が強い。アンジェリクの香気の主な特徴は、強いムスク香とハーバルな甘苦さで、根の方はベチバーにも似た土っぽいスパイシーさが感じられる。同時に、桜餅の香り成分である白いクマリンの香り成分ももっている。白を連想させる甘さ&ふんわりパウダリーな種子のムスク、そして大地の黒を思わせる根のスパイシームスク、この両方を使っているということだろう。

このミドルがしばらく続いた後、クリーミーなヴァニラ&トンカビーンのコクが感じられるようになるとラスト。付けてから5〜7時間で柔らかく消えてゆく。なるほど。ゲランの秘伝ベースであるゲルリナーデの構成素材をきちんとおさえた作り。ベルガモット、ジャスミン、ヴァニラ、トンカビーン。この4つのキー素材に、アンジェリカを据えてバランスをとった香水といった風情だ。

全体的に香り立ちはやや強め。ラールエラマティエールの中でもくっきり個性を主張してくるタイプだ。柔らかい香りではあるものの、思ったより周りに主張しているので、付けるならウェスト以下がおすすめだ。ゲランのヴァニラ系がお好きな方、ランスタン系がお好きな方には特におすすめだ。ランスタン系はソーピーでややツンとしたムスクに傾くのに対し、アンジェリクノワールのムスクは甘くしっとりしたパウダリーに広がる。

アンジェリクは、もともとはラテン語で「天使」を意味する言葉だという。だから、アンジェリクノアールは「黒い天使」という暗喩も効かせていることになる。

黒い天使。それは清らかな姿とは裏腹に黒い羽根をもつ堕天使のよう。その神々しい微笑みの裏に、したたかに折りたたまれた黒い翼をもつ者。その禍々しいまでの美しさ。光と闇を統べる善と悪の双眸。

もしもアンジェリークノアールに出会えたら、貴方は墜ちるだろうか?

堕ちた天使の狂おしい香りに。

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ゲラン / ランスタン・ド・ゲラン オーデトワレ

ゲラン

ランスタン・ド・ゲラン オーデトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:2005/4/15 (17年11月頃追加発売)

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6購入品

2019/3/9 00:13:06

ランスタン・ド・ゲランEDTはかなり反則な香りだ。こんな香りをつけて女性に街を歩かれた日には、すれ違った男の心はざわつくだろう。もしかしたらすれ違いざまに振り返るかもしれない。あるいは怒り出すかも。前者はもちろん香りにときめいてしまうからだし、後者は「惚れてしまうからやめてくれ」と、歪んだ嫉妬心に駆られる可能性さえあるからだ。

そんな。まさか。そこまでの香りじゃないでしょう?そう思われるかも知れない。だが実際、ランスタンドゲランEDTをいい香りだと認識する男性は自分の身の周りでも多い。そしてそれ以上に女性ファンが世界中にいることでも有名な香りだ。ではなぜこれほどまでにランスタンは人気があるのか?パルファム、オードパルファム(EDP)、そしてオードトワレ(EDT)とそれぞれ香りが異なるランスタン。今回はその中でもフルーティーさに定評があるEDT、その人気の秘密に勝手にせまる。

最近はビーボトルに変わったが、ランスタンは厚底ガラスの旧ボトルの方が圧倒的にいい。淡いピンクオレンジのジュースカラーは夕暮れ空の柔らかな色合いで美しい。ほっとひと息つくような安息の空の色。そんなランスタンドゲランEDTをスプレーすると。

トップ。EDTはリンゴ系のみずみずしい香りが柔らかく広がってくる。このトップがとても印象的。酸味がなく、かぐわしいフルーティー。背後でマグノリアのこっくりした白い厚ぼったい花弁の香りがしている。リンゴ果汁を滴らせたような甘いフローラルがゆったりと花開く。

5分後、サンバックジャスミンのふんわりとしたコク、イランイランのわずかに暗い陰影、そしてエキゾティックなマグノリアの香りが明確になる。EDPの少し苦みを帯びたフローラルに比べて、EDTのミドルはクリアーでクリーミー、スッキリしていて透明感がある。ミドルのホワイトフローラルになっても、トップで感じたアップルの柔らかなフルーティーは続いており、とろけそうなハニー系の甘い香りも呈している。どこまでも心をほぐしていくようなミドルだ。

世にフルーティーフローラルは数あれど、これほどソフトなフルーティーで、しっとりとした雰囲気を漂わせるフローラルはなかなかない。ベースのクリーミーなヴァニラ、キラキラと光が明滅するような特別なアンバーの香りが輝きすら添えている。エステル系のリンゴの匂いがなり持続することで、EDPよりもジューシーかつ透明感あるマグノリア香を表現している。

ラストは少し甘い蜜の香りと甲高いアンバー、そしてクリーミーなヴァニラでフェイドアウト。このラストは女性が好みそうなグルマン系だ。全体にキリッとしたところが何もなく、とかくマイルド。時間は6〜8時間ほど柔らかく続く。

たぶん男性の多くはこういう香りに弱い。香水っぽさが少なく、薔薇のシャープさもジャスミンの濃厚さもない。けれど柔軟剤よりもはるかにふくよかで優しいからだ。男性が女性に求めるような甘さと柔らかさとクリーミーさと透明感が絶妙なバランスで出ているように思う。

ただ、あえて言うならランスタンはいい子過ぎる。そつがなく、きれいにまとまりすぎている。360度どの方向からシャッターを切られても影一つできないまばゆいスタジオで微笑むモデルさんみたいだ。可憐で可愛らしくいつも笑顔。そのせいか、心が闇だらけの懐疑的な自分からは、かなりあざとくも感じられる香りだ。

ランスタンは、ゲラン社が90年代に経営危機に陥り、メゾン存続の危機を迎えた際、紆余曲折を経て遂に外部から調香師を招いて作らせた香りだ。当時、エルメスのヴァンキャトルフォーブールで名声を博したモーリス・ルーセルに白羽の矢が立った。モーリスはゲランの秘伝ともいうべき「ゲルリナーデ」の技術に敬意を払いながらも、それまでメゾンが得意としていた「オーバードーズ&ショートフォーミュラ」を見直し、「輝くような一瞬の光」をイメージしてこの香りを創作したという。

この香りにふれる度、モーリスは調香するにあたって「引き算」の考えを大事にしたのではないかと感じる。それはゲランが大事にしてきたオーバードーズ(過剰投与)と反対の仕事だ。彼はゲラン秘伝のゲルリナーデの6香料、ベルガモット、アイリス、ローズ、ジャスミン、ヴァニラ、トンカビーンのうち、本作ではジャスミンとヴァニラしか使用していない。しかも量もわずかだ。こうしてあえてゲランらしさを破壊しつつ、新しい香料を加えてゲランらしい香りをリボーンさせたかのように思えて興味深い。

女性のまとう香りが男性の心に刷りこまれるのは、ほんの1秒あれば足りる。ランスタンドゲランEDTはその瞬間に賭けた香りだ。

すれちがいざま。ふわり秒殺。

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グタール / ラ ヴィオレット オードトワレ

グタール

ラ ヴィオレット オードトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:100ml・28,050円発売日:-

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6購入品

2017/3/18 01:25:50

悲しいことがあると、革の表紙を開いたりしない。紫の香りをそっと嗅ぐ。それは、しぼんだ風船のような心にそっと寄り添う、美しいシングルフローラル。アニック・グタールのラ・ヴィオレット。

ラ・ヴィオレットは、2001年に、調香師イザベル・ドワイヤンとカミーユ・グタールによって作られた。1999年に世を去った母、アニックが好きだった菫。母と共に過ごしたフランスのアベロンの別荘「ラ・ヴィオレット」。その庭に咲いていた小さな紫の花の香り。それは、カミーユが亡き母を偲び、母にもらったあふれんばかりの愛や思い出に対する感謝をこめた、ノスタルジックなフレグランス。

ラ・ヴィオレットをスプレーすると、淡く透き通ったうす紫のせつない香りが広がる。一瞬、バイオレットフィズの暗く秘めやかな雰囲気、そしてすぐ、わずかにローズの口紅っぽいワックス香が浮かび上がり、ピンクがかった紫に変化する。それでいて、とてもクールでシャープだ。バイオレットリーフのグリーン香が甘くなり過ぎないようエッジを引き締め、濃い紫の陰影を形作っている。

そしてそのまま、スミレの紫、ローズの赤、バイオレットリーフの青っぽさを7対2対1くらいの割合で展開させながら、パープル・グラデーションの落ち着いた香りが漂い続ける。シングルフローラル系統なので、とてもスッキリとしていて香り立ちはシンプルだ。バイオレットの香りを再現しているのは、イオノンや合成イリスなどだろう。大きく変化しないまま、6〜8時間ほど静かにたゆたう。

正直、このシンプルなアロマケミカルのコンボを思えば、価格はもう少し安くてもいいのではとも思う。特に、2013年に韓国資本となってからは、ボトルの簡素化、値上げ、さらに追い打ちをかけるように廃盤の嵐と、アニック・グタールじたいにいいニュースがなさすぎるので、なおさらだ。また、どうやら不定期に販売されているらしく、限定販売なのか通常販売なのかはっきりしない点も残念だ。現在はまた入手が難しくなっている。せめていつでもどこでも入手できるようにしつつ,値段も手頃にしてほしい1本だ。なぜなら、この香りはとても貴重で、時々どうしてもこれでなければならない時があるからだ。

それは、心が思いっきり滅入ってダウンしている時。そんなとき、これほど静かに、ゆっくりと心に沁みてくる香りはなかなかない。自分にとって、本当にかけがえのない香りだ。

人は元気が出ないとき、つらいとき、悲しくてやりきれないとき、顔がうつむき、呼吸が浅くなる。瞼が重くなり、心の窓も曇る。脳と体はリンクしているからイライラして疲れやすくなり、身体がズシリと重くなって何もしたくなくなる。肌はボロボロ、内臓の働きは悪くなり、ホルモンの分泌も異常をきたす。そして、夜に眠れなくなる。

そんなとき、ラ・ヴィオレットは、本当に効く。訳が分からず涙がこぼれるようなぐちゃぐちゃな心の隣で、静かに、静かに、ただそばに一緒にいてくれる。

嘘だ、たかがフレグランスにそんな効果があるわけない。そう思われても仕方ない。そして、ラ・ヴィオレットが、誰にとってもそんな香りであるとは言えない。それもそのとおりだ。けれど自分には薬以上に効いたのだ。この香りがトランキライザー代わりだった時期があった。その事実は自分の中で真実だ。そんな香りを一つでも見つけられた人は、本当に救われる。香りは、ときに人の心を確実に救うことがある。

夕暮れの町に一人。紫色の闇が刻々と色を変えるとき。春の宵は静かに深く、人の心を孤独に染めていく。別れも出会いも、本当はどちらも同じくらい重たくてきついものだ。だから、春はどこまでも心にくる。どうしようもなく心に紫色の影を落とす。

そんなとき、ラ・ヴィオレットは、一本の冬枯れの木のシルエットのように自分の前に立っている。黒く、魔女の手のような枝々を夕闇の空いっぱいに広げ、裸のままたたずんでいる。葉も花も実も、全てを失ってこんな姿になっても、それでもまだ空を引っ掻き続けるのだと、細い枝々を空に伸ばし、新芽の爆弾が破裂して葉が生まれ出づる時を虎視眈々と狙ってふんばっている。どこまでも虚空にその手を広げて。何も言わず、紫の雲の前で。

人ごみに流されて、変わっていく私を
ラ・ヴィオレットは遠くで叱らない。ただそばにいてくれる。ただずっと、心に寄り添っていてくれる。

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Etat libre D'orange / コロン(あぁ、いい香り)

Etat libre D'orange

コロン(あぁ、いい香り)

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

4購入品

2019/4/6 15:11:19

「香りなんて嗅ぎたくない。匂いなんてうんざり。世界が無臭ならいい。」もしそう感じているとしたら、申し訳ないが貴方の心は黄色信号かも知れない。なぜなら五感の中で嗅覚こそが最もダイレクトに本能や第一次欲求と結びついているからだ。香りや匂いを拒絶する状態は、自身の本能的な欲求「食事・睡眠・性欲」を面倒に感じ、心の抑圧状態が進んでいることを示唆するとも言われている。

人は本当につらくて悲しい時、身体の調子が悪いとき、香りや匂いを敬遠したり拒絶したりするものだ。言いかえれば、香りや匂いを楽しめている状態は心や体が積極的に外界の情報をインプットしようと外に働きかけているいい状態であるとも言える。香りの感じ方は心の健やかさのバロメーターという側面をもつ。

春、4月は特に新しい環境や変化が多い時期だ。年度の始まりは激務にさらされ、心身が極度に疲れやすいときでもある。心と顔は知らず知らず暗くなる。そして色をなくす。そうなったらどんなにいい化粧品を顔に塗っても無駄だ。顔と身体は心とつながっている。心をケアしなければ顔に生気が戻ることはない。

色をなくした心には3つの水が効く。それは涙と汗と香水だ。哀しければたくさん泣くといい。涙は心を静かに落ち着かせる。次に外に出て散歩をしたり、スポーツしたりして汗を流すことが大切だ。つまりいったん自分の中の黒い毒をアウトプットすることが重要だ。身体のデトックスができれば、心は少しだけ柔らかくなる。そのあとで自分が心地いいと思う香りを探してかいでみるといい。香水でなくてもフルーツや食べ物の香りでもいい。「いい匂いだ」そう感じたとき、落ちた心はまた一段階ギアを上げられるはず。

そんなときにお勧めしたいのが、エタ・リーブル・ド・オランジュ(「オレンジ自由国」以下ELDO)の「コロン(あぁ、いい香り)」という作品だ。コロンという名前なのに和訳が「あぁ、いい香り」で、オードパルファム表記というのはどこか皮肉めいている。それはいったいどんな香りなのか?

「あぁ、いい香り」をスプレーする。(←わざと和訳だろ)トップ、透明感のあるグリーンノートが一瞬感じられる。すぐさまコクのある酸味が心地よいベルガモットの香り。そして苦みの強いオレンジの皮の香りが続く。かなり甲高い酸味もあるのでグレープフルーツかなと思いきや、クレジットによるとブラッドオレンジのようだ。違いは香りだけでは分からない。レモンのようにはじけるシトラススプラッシュなトップが爽やかだ。

3分もすると下からまろやかなフローラルが感じられるようになってくる。柔らかく包み込むようなオレンジフラワー系の香りだ。少しずつ減衰するシトラスミックスの下から、オレンジの花&ジャスミンのホワイトフローラルミックスが穏やかに香ってくるようになる。ミドルはこのオレンジフラワーとジャスミンが、アフターバスの入浴剤の残り香のようにふんわり香り続ける。

やがて1時間ほどすると香りはかなり薄れてくる。賦香率は12%なのでEDP濃度だけれど、実際に付けると、体温高めの自分の肌で1時間ちょっとしかもたないことが多い。ラストはわずかなレザー香を伴ってほの甘いホワイトムスクでフェイドアウト。香り立ちは終始穏やかだ。

ELDOの「あぁ、いい香り」は伝統的なオーデコロンのレシピを踏襲しつつ、トップにブラッドオレンジの酸味、ラストにわずかなレザーを効かせた作品だ。穏やかで春〜夏向きの香りだと思う。ただ50mlで1.3万円前後という値段はどうか。EDP濃度とはいえ、持続時間が短いこととあっさりした香り立ちなので、ここは判断が分かれるところだろう。それでもこんな柔らかい香りを1本は持っておくと便利だ。

春は心身ともに本当に疲れる季節だ。気がつくと心と体が沈んで動けなくなっていることもある。それでも世間はおかまいなしにタスク処理を要求してくる。動きたくない、食べたくない、眠れないの「3ない」になったら心は要注意だ。

心が辛くてたまらないときに効くのはジャスミンやオレンジの花の香りだ。これらは副交感神経を活発化させ、鬱症状を改善したり、精神性負荷を柔らげたりする効果をもつことが知られている。暗い心には白い花が効く。そこにリフレッシュ効果の高いシトラスをミックスすると、少しずつ心は切り替え方を覚え、自己回復していくようになる。

オレンジ自由国の「あぁ、いい香り」はそんなときに試してほしい香水だ。「あれもこれもしなくちゃ!」と激務に追われ、新しい変化で心と身体をすり減らして何も感じなくなる前に、薬のような香りをそっと付けてみるといい。

「あぁ、いい香り。」

もしちょっとでもそう思えたら大丈夫。貴方はまだもう少しいけるはずだ。

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ミランダ27さん
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