- doggyhonzawaさん 認証済
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- 55歳
- 乾燥肌
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2021/4/3 13:58:56
最初はそんなに好きじゃなかった。いつの間にか一緒に過ごすようになった。気がついたら、自分にとって大事な友達みたいになっていた。そんな香水がある。フエギア1833のタイースだ。
「ん?セロリの匂い?」
タイースを初めて肌にのせたとき、トップのグリーンを嗅いで「これはないな」と瞬時に思った。それは、以前自分が酷評したラルチザンのゾンカのトップ、薬草っぽいセロリ香に似ていたからだ。
「セロリの匂いを身体につけたいとは思わない。」以前そう書いた記憶がある。野菜のセロリは嫌いじゃない。ただ当時は香水に別のファクターを求めていたんだろう。知性とか華やかさとかロマンティックとか。ところが、オリエンタルやフローラル、シトラスをさんざん追い求めていると、不意に青臭いグリーンノートが恋しくなることが多くなった。
「んー、何か鼻にキュンとくるような強烈なグリーン香がほしい」
そんなとき、考えるより先にタイースを手に取るようになっていった。そしてつけるたびに「おー、やっぱりセロリの匂いがするわ」と安心するのだ。つけたいのか、確認したいのか。自分がどちらなのかは今もわからないけれど。(←変な人)
タイースの名誉のために言っておくと、このグリーンなトップはセロリノートというわけではない。フエギア1833が公開している次のキーノートは次のとおりだ。
ファミリー:フローラル
1:マテの花 2:オスマンサス 3:グリーンティー
フエギア独特の香り展開イメージは、3がトップ、2がミドル、1が最も長く香るハイノートになるので、自分がセロリライクと感じているトップはグリーンティーのようだ。分かると納得がいく。おそらく南米で愛飲されているグリーンマテ茶の清々しい苦味を効かせたトップなのだろう。
そんな香味爽やかなグリーンノートが2分ほどするとフルーティー&クリーミーな花の香りに変わっていく。この変化が劇的で、とても面白い。ここからのフルーティーフローラルへの変化に、他にはないフエギア独特の美しい花の香りを感じる。
このミドルのフローラルは、オスマンサスと表記があるものの、やや塩みがある白い南国フローラル系の香りにも感じられる。それは、ガーデニアやティアレ、フランジパニを思わせるエキゾティックな雰囲気だ。そこにトップのマテ葉のグリーンな残香が混じることで、こんもりと葉を茂らせた高い樹木の様子や咲き乱れた花々を思わせるアコードに仕上がっているように思う。清涼感ある芳香を放つ森の木々、そこから水蒸気と共に蒸散されてゆく新鮮な空気が、もくもくと空へ立ちのぼっていくイメージ。タイースのミドルはそんな広大な森の息づかいを感じさせる。
塩みの効いたセロリの匂いを伴ったエキゾティックな白い花。ミドル〜ラストにかけては、このアコードが続いて収束する。手首につけて香りを個人で楽しんでる分にはよいが、食事時などは香りの強さが邪魔してしまうので、付ける場所は肌が露出していない部分がいい。
いつもながら感心するのは、香り立ちが強く8〜10時間ほども長く続くという点だ。フエギアの香りは濃くて強いところが好きだ。香料は数が少なめでシンプルレシピ傾向、香料じたいの香りがストレートに感じられる作品が多いと思う。その特徴をどう思うかは人によって違うだろう。パルファムが30mlで17600円。最近はオンラインショップでサンプルを販売しているのでそちらを試してみるのもいい。
かつてセロリや薬草湯系のトップを遠ざけた自分が、今は割とこの作品のグリーン香を欲しているから不思議なものだ。
してみると人と同じ。最初は優しそうに思えた人が、実は冷たく厳しい人だったとショックを受けることもあるけれど、最初に「なんだこいつ」と思った人が、意外に優しくてとても好印象になったということもある。タイースは誰にでも好かれる香りではないだろう。けれど、荒々しくも新鮮な空気をためこんだ森のように、そこにいるだけで心がニュートラルになれる。そんな自然の懐の大きさを感じさせる作品だ。
タイースとは、アルゼンチンの都市ブエノスアイレス市内の多くの公園や遊歩道等をデザインした著名な造園家カルロス・タイスへのリスペクトから付けられた名前だ。彼が作った広大な自然公園や植物園は、今も都市に暮らす人々の憩いの場として、また大気汚染が深刻な同市の大気を浄化する「肺」として、市民に愛されているという。
街の喧噪に疲れたとき、広大な森林公園でひと息つきたくなることがある。そんな気分で「何かつけたいな」と思ったとき、手にとることが多いグリーンな香りがある。その1つがタイースだ。そしてつけてまた安心するのだ。
だよな。やっぱりセロリっぽい香りがするよ。
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2022/7/2 13:43:14
タイース1-XXI
タイースをウィキペディアで調べるとカルロス・タイスという造園家に行きついた。
彼はフランスのパリ出身で1889年にアルゼンチンに移り、1934年で生涯を閉じるまでの45年間をこの地で過ごした。
アルゼンチンの主要都市の公園やブエノスアイレス市立植物園(園内に家を作って住んでいた)、観光レクリエーションのための農村施設なども手がけたのち、現在は世界自然遺産となっているイグアス国立公園も整備した。
すげー!!タイスってすげー!!!!
さて香水としてのタイースに目を向けると、ラスト(トニックノート)に配置されているマテフラワーに馴染みがなく色々調べていくとマテ茶の花という事が分かった。
アルゼンチンの方はとにかくマテ茶を愛しているそうで、茶葉をぎゅうぎゅうに詰めたカップに65度くらいのお湯を注ぎ茶こしの様な先端の金属製ストローで飲む。
そしてお茶を出されたら飲み干すのがマナーだという。またマテ茶は愛を伝えるのにも使われる、ハチミツを入れた甘い甘いマテ茶はプロポーズ、冷たいマテ茶は別れを示唆するなど。
とにかくマテ茶は愛されている。
アルゼンチンの景観や環境に大きく貢献したタイスと、マテ茶の花とは大変興味深い。
一吹きするとマンゴーや桃、オレンジや柑橘のミックスジュースに少しミルクを入れたようなまろやかさ。これが比率を変えながらある時は金木犀、ある時は南国フルーツの様に香る。
甘過ぎないのはやはりお茶の渋さが引き締めているからと思う。
この濃厚ながら抜け感もある香りは、さながらフルーツヨーグルトゼリーやパッションフルーツのフルー〇ェの様。
このままで終わるのかと思いきやもうひと展開面白く変化する。
香りとしてはトニックノート(ラスト)に差し掛かったと思われる展開でスズランやインドールの少ないジャスミンの様な香りがしてくるではないか!これがきっとマテの花では無かろうか。
先ほどまでの甘みをスッと爽やかな香りで流してくれた。
これは夏に使いたいフルーティフローラルな香り、気温と湿度が下がるとトップにグリーンティが出てまた別の表情で楽しませてくれるだろう。
トニックノート(ラスト):マテフラワー
ドミナントノート(ミドル):オスマンサス
サブ ドミナントノート(トップ):グリーンティ
ジュリアン・ベデル
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- 37歳
- 敏感肌
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2014/10/8 15:16:37
若気の至り香水口コミ、その2です。
20代半ば過ぎからグリーンフローラル系香水にハマりはじめての購入。
想像した通りのグリーンフローラルでラストノートは石鹸風味。
何となく「今一生懸命お仕事覚えているところです」「私は人畜無害です」と、健気な女子新入社員時代を思い起こし、ちょっと居心地悪いというか、いたたまれなさを感じました。
万人受けする香りですが、あまりにもひねりとか、毒がない。
シャープで毒々しい程美しいシャネルNo. 19や、思い切りシャープで力強いパコラバンヌのメタル、優しいふりして小悪魔なディオールのタンドゥルプワゾン。クールな女らしさのグッチのエンヴィ。これ位捻りのあるのがグリーンフローラルの好みです。
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- doggyhonzawaさん 認証済
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- 50歳
- 乾燥肌
- クチコミ投稿426件
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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
税込価格:-発売日:-
2016/9/23 00:20:23
秋はスポーツがいい。清少納言のようだが、本当にそう思う。なぜなら、心地よい空気や風を感じて体を動かすと、高温多湿な夏よりずっと集中できて、心身ともに爽快な気分を味わえることが多いからだ。ディプティックのロー・デ・ゼスペリードは、そんなスポーツ後におすすめしたい、心身共にリフレッシュできる香りだ。
ロー・デ・ゼスペリードは、2009年に発売された「ヘスペリデスの水」という意味のオーデコロンだ。調香師は、オリヴィエ・ペシュー。ディプティック創業者の一人であるデズモンド・ノック・リーが最初のオードトワレ「L'Eau(ロー)」を作り出してから40年目を迎えた記念に制作されたロー・シリーズ3本のうちの一本。
ヘスペリデス(黄昏の娘たち)とは、ギリシャ神話に出てくる「黄金の林檎」の木が植えられたヘラの果樹園を守る聖霊たちを指す。ヘラという妻がありながら、次々と恋の相手に黄金の林檎をプレゼントしようとするゼウスからその実を守るために、精霊たちは百の頭をもつ竜ラードーンと共に樹の守り人をしている。そんな精霊たちの水というのは、果たして楽園の水のことなのか、それとも、黄金の林檎からしたたる雫の意味なのか。
ロー・デ・ゼスペリードをプッシュすると、オレンジの果皮の爽やかな香り、葉の苦み、そして、冷たいメントールの香りが漂う。付けたところがひんやりとする。かなりミントが入っているように感じるトップ。冷感マックス。
すぐに、オレンジの香りと入れ替わるように緑色のハーブが出てきてミントと合流。どこかで確実にかいだことがあるグリーンなフルーティーミント風になる。ハーブの香りとオレンジの苦みと冷たいメント―ルと言えば、例えるなら、シ―・ブリーズのシトラスやオレンジ系の香り。あるいは、ヴィックスドロップのオレンジミントっぽい雰囲気。または、夏に大活躍するデオドラントボディペーパーのアイスフルーティーの香り。これらのどれとも同じではないけれど、どれにも似ている。そんな香りのミドル。
香りの変化はそれほどなく、付けたときのオレンジの皮とミントのすっきりした香りが、ややハーバルな雰囲気に移ってそのままドライダウンといった印象。ハーブは、タイムやローズマリーがクレジットされているが、それほど明確には感じられず、グリーンノートといった程度。むしろ、ベースにクレジットされているイモーテル(ヘリクリサム)というキク科の花の香りが出ているよう。イモーテルは、ウッディさとほのかなハチミツ様の甘さがあって、ハーブ系に分類されることもあるアロマティックな香り。強いミントの下から出ているほんのりした甘さとハーバルな感じに一役買っているのだろう。
全体の印象は、シトラス系ミントガム風の同社のオイエドに似ているものの、こちらの方がミントが強く、グリーンな雰囲気が出ている。ミント、ビターオレンジ、ローズマリー、タイム、イモーテルなどが配されていることから、心身のリラグゼーション効果、新陳代謝の促進、殺菌効果などが高く、スッキリとした穏やかな気持ちになれる香りだと思う。
賦香率は10%ほどなので、1〜2時間は香りが続く。一番おすすめの季節は夏だと思うが、それ以外のシーズンでも、スポーツ後にシャワーを浴びて、ちょっとクールダウンさせた頃合いに、好きなだけ体に面付けすると、とても心地よく香る。ただし、付けたところが、ボディペーパーほどではなくてもクールな肌感になるので、付ける場所に注意は必要。制汗効果はないけれど、暑かったり汗をかいたりすると、背中側の腰のあたりから体臭が強くなることが多いので、付ける部位は、背中側の腰付近や左右のウェストがおすすめだ。ちょっとした匂いをマスキングしつつ、さっぱりした香りが柔らかく立ち上るだろう。
季節外れの避暑地の朝。まだ冷たく青い空。草原を吹き抜ける風を感じながら、ジョグで心地よく疲れた体にアイスティーを流しこむ。少し汗ばんだ肌から、ロー・デ・ゼスペリードのミントの香りがする。湖面にキラキラと秋の朝日が反射している。それは、黄金の林檎のようにまばゆく、思わず目を細めた。
涼やかな風と草原の青さをたたえた楽園の水の香り、水面に映えた金の果実とともに。
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