2025/4/4 20:36:31
学生時代、ヴェルサーチのブルージーンズ(正確にはベビーブルージーンズ)をきっかけに香水好きになり、ドラッグストアや某激安の殿堂にて数千円台の香水を色々試す日々がスタートしました。就職してからはシャネルのメンズラインを買い漁った思い出があります。2010年代中頃〜後半のことです。同時期、ディオールやエルメスのメンズラインにも手を伸ばしました。2020年からはトムフォード一筋の時期もありつつニッチ香水にハマり始め、ラルチザンやディプティック、フレデリックマル、キリアン、ルラボ、クリヴェリ、ザディファレントカンパニー、BDK、ニシャネ、そしてクリードなど高価格帯の作品を香水棚がいっぱいになるまで買い集める日々。NOSE SHOPにも足繁く通っていたのが、半年前までのこと。
ただ、ニッチ香水というのは奥が深くいわゆる底のない「沼」であり、全てを知るにはあまりにも時間と労力と資金が必要になります。SNSにはニッチ香水やサロパの情報が溢れていますが、「ニッチ」という名に踊らされ過ぎな人たち(※選民思想強め)の推す香りが、必ずしも良い香りというわけではないんだよなぁ(お互い自己満の世界だよなぁ)……と、今年はじめに興醒めする瞬間が度々ありました。また(全てにあてはまるわけではありませんが)ニッチ香水特有の「摩訶不思議な香り」を必死に消化・吸収するのに疲れてしまった私は、ニッチとしばらく距離を置くことを決意し、1万円台で手に入れられオールシーズン・オールタイム、いつでもどこでも着ることのできる香りを探す旅に出ました。ここ数ヶ月は、一旦処分してしまったシャネルを(値上げ前のタイミングで)何本か買い戻したり、私の大好きな調香師であるジャック・キャヴァリエのブルガリを着てみたりと、肩の力を抜いて香りを楽しんでいます。
そして、最近とりわけヘビーユースするほど愛用している香りが、こちらのエルメス―H24オードトワレです。テールドゥエルメス以来、15年ぶりの新作メンズ香水として2021年に発表されたのですが、アットコスメのレビュー数が片手しかないくらい知られていません(2025年4月現在)。私がこの香りの存在を知ったのも、発売後1年以上経ってからです。最初はエルメスの店舗で見かけてムエットと地肌で試させてもらったのですが、当時はまだニッチ香水(しかもネットリ重甘系!)に没頭している時期だったためか「上品にまとまってるけど、軽くて存在感のない香り」という評価を安易に下してしまいました。「天下のエルメスも大したことないなぁ、香水は所詮片手間なのかな?」とさえ思った記憶があります。しばらくしてフランカーのEDP、そして昨年にはエルブヴィーヴが発売されたようなのですが、その存在も知らないまま先月ふとエルメスに立ち寄った際、再びEDTを試させてもらいました。
手首に鼻を近づけた刹那「あ、この香り好きかも」と思いました。それまで何とも思っていなかった香りをある日突然好きになる、というパラダイムシフトはシャネルのアリュールオムで体験したことがありますが、そのときにとてもよく似ています。青々し過ぎない適度なグリーンと、クラリセージのハーバルな安らぎ、奥から覗くナルシッサスの控え目なフローラル感、そしてスクラレンの不思議な安心感。強烈な個性があるわけでも複雑な香り方をするわけでもありませんが、高級なアロマのように心地よい気分にさせてくれます。とりあえず50mlを購入し、翌日仕事に着ていったのですが、付け直ししなくても10時間くらいは余裕で香ってくれることに驚きました。なぜなら、最初、それほど持続する香りにはとても感じられなかったからです。香りが持続する=適度に合成香料が入っている、というのは通説ですが、チープな香り方は全くせず、最初から最後まで上品に穏やかに香りを放ってくれます。
アリュールオムのときと同じで、パラダイムシフトを起こしてくれたこの香りとは長い付き合いになりそうな気がします。ニッチ香水の摩訶不思議な香りに疲れてしまった方や、タバコやヴァニラ、トンカビーン、アンバーの過剰投与で重甘系に食傷気味の方、ぜひこの香りをお試しください。フランカーであるEDP(モスがしっかり効いている)やエルブヴィーヴ(よりグリーンでフルーティー)も悪くありませんが、オリジナルのEDTが一番正統派でオールマイティーです。発売されて今年で4年目、香水界隈ではテールドゥエルメスほどの熱狂はありませんが、今のまま、知る人ぞ知る「隠れた名品」であり続けてほしいと思います。そして、エルメスの他の香りにも興味をもつきっかけを与えてくれたこの香りに感謝です。
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Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)
ダーク アンバー & ジンジャー リリー コロン インテンス
[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・オーデコロン・香水・フレグランス(メンズ)]
容量・税込価格:50ml・23,650円 / 100ml・33,000円発売日:- (2022/12/26追加発売)
2024/8/21 00:03:04
Jo Maloneといえば、清純を装った女子大生が、彼氏からもらう最初のプレゼント――大変申し訳ございません m(_ _)m(&名誉毀損や営業妨害のつもりは全くございません)、ただ、かつての私にはこのようなブランドイメージが根強くありました。なけなしの休日をはたいて、ひと月に一度くらいの頻度で徘徊させていただいているタカシマヤの4階フロアには、Diptyque、Kilian、FREDERIC MALLE、Chanel、L'atelier Des Parfumsとともに軒を連ねているJo Malone――ふと横目に見ると、並ぶのが憚られるくらい、10代後半〜20代前半のカップルで賑わっています。とくに売れているのは、透明なボトルのコロンシリーズ。アットコスメのランキングでも常に上位に入るような、ペアーとフリージアの香りや、ウッドセージとシーソルトの香りをみなさん好んで購入されているようです。人だかりが落ち着いたころを見計らって、私も何度かお邪魔したことがありますが、店員さんはとても気さくで親切で、すごくアットホームな印象を受けます(これは他のブランドも見習うべきかも?)。おもてなしいただいた感謝の気持ちとして、30mlサイズを1本買ってみようと思うのですが、香りの軽さと儚さがどうもネックになり、いつも躊躇しておりました。
自分の趣味嗜好とは距離感があると思い込んでいたJo Maloneですが、たまたまコロンインテンスシリーズのサンプルが手に入ったので、これを機に肌に乗せてじっくり試してみようと思い、お風呂上がりにDark Amber & Ginger Lily(※シリーズの中ではムエットでも嗅いだことのない香り)を首元にワンプッシュしました――その刹那、自分の意識がどこか別の時代にトリップしたかのような感覚を覚えました。前日までにお試し済みのMyrrh & TonkaやVelvet Rose & Oudは、同じような香りのもの(で、なおかつ上位互換品)を別ブランドで知っており「これじゃなくてもいいかな」という感じでしたが、この香りは今まで経験したことのない、深いけれど重くなくて、どこか乾いている(夏でも大丈夫)という不思議な印象を受けました。カルダモンやジンジャー、伽羅の香りが支えとなって、ユリの香りがこんなに生き生きと映えることがあるのだとは、知りもしませんでした。1000年前か、それよりもさらに昔、古代日本の風景がなぜか私の意識下に去来するのです。ユリは万葉集でも詠まれているように、いにしえより親しまれてきた花であることは間違いありませんし、そのころにはすでに仏教の伝来とともにお香の文化も広まりつつあったと思われます。身の回りの草花など、ほのかな香りを愛でつつも、大陸からやってきた新たな香りの概念も受け入れるというのは、昔からおこなわれてきたことなのでしょう。だとすると、異国生まれのJo Maloneの儚く淡い香りたちが、日本の(とくに若い)人たちに受け入れられているのは、なにも変なことではないのでしょう。
Dark Amber & Ginger Lilyは、コロンシリーズに比べるともちろん持続力はありますが、いわゆる一般的な、一日中香り続けるEDPに比べるとやはり儚いです(私の肌では、両脇腹と首の裏にワンプッシュずつして、5時間くらい)。複雑さもそこまでです。でも、そこがむしろいいのかも知れません。一日中プンプン香り続ける重厚な香水は周囲だけではなく着ている本人の鼻も知らず知らずのうちに疲れさせますし、私の経験上、すぐに飽きてしまうものです。香水は重くなきゃ嫌だ、複雑じゃなきゃ嫌だ、長続きしなきゃ嫌だ、そうじゃない香りは香水として認めない!、という、かつてのChanel & Tom Ford狂いだった私のような価値観をもつ人たちにはおすすめし辛いですが、一度は試してみるとよい名品です。
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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・オードパルファム・香水・フレグランス(メンズ)・香水・フレグランス(その他)]
税込価格:-発売日:-
2024/6/29 01:00:08
最高気温が25度を超え、梅雨入り前の夏日が本格的に幕を開けた5月某日、この香りをお迎えしました。以前、別のクチコミにも記しましたが、その年の夏香水を1本購入するのがここ数年の行事になっています。昨年はAcqua di ParmaのArancia di Capri、一昨年はTom FordのNeroli Portofinoとともに酷暑を乗り切りました。ネロリ、オレンジ、といったら夏に愛される香りの定番ですね。とくに摂氏30℃を超える真夏に「香害」という言葉に神経質になり、周りの目や鼻を気にするのなら、これらに勝るものはありません。ただ、わたしは2年連続で同じ夏香水を使うのは控えています。夏という季節は、他の季節に比べどこか刹那的なイメージがあります(まさに、柑橘系の香料の飛びが早いのと同じように)。その年に選んだとっておきの香りを、刹那的に、その年限定で浴びるように使うことで、ひと夏の思い出を香りと結びつけて忘れないように……、という願いを込めています。
今年の夏香水を選ぶにあたって、わたしがこだわった香りのノートがいくつかあります。まずはじめに「ティー」(お茶)です。Louis VuittonのImaginationやLe LaboのThe Noir 29の購入をきっかけに、今まで倦厭してきたお茶の香りが大好きになりました。リラックスタイムにお茶を飲むことが多いためか、わたしにとってティーノートは、穏やかな気持ちになれる、日常に融け込んだ安心感のある香りです。ImaginationとThe Noir 29はブラックティー(紅茶)ですが、Wulong Chaにはその名の通り「ウーロン茶」のノートが含まれています。ウーロン茶の産地といえば、福建省や広東省、台湾などのいわゆる華南文化圏。日本よりも緯度の低い暑い地域ですので、自然と「夏」の風景を想起させます。
続いてのノートは「フィグ」(イチジク)です。昨年、Diptyqueで香水を購入したときにPhilosykosのサンプルをもらい、フィグの香りに一目惚れしました。しばらく経ってから、記憶を辿りやっと思い出したのですが、かつて母は、旬になると近くの朝市でイチジクを籠いっぱいに買ってきては、わたしや妹たちのために皮を剥いてくれたのです。フィグの香りを嗅ぐと、その当時の懐かしい記憶が蘇ります。ミルキーで甘いけれど、どこか「青み」も感じられ後を引かない香りのため、バニラやトンカなどの重たさはなく、ネロリやオレンジとともに、夏香水にはぴったりのノートです。
最後に「ホワイトムスク」のノートです。職業柄、室内でも立ったり座ったり、動き回ったりする動作が多く、真夏になると否応なく汗ばんでしまうため、シンプルに「この人清潔そう」と周りの人に感じてもらうことが必須になります。経験上、清潔感=いわゆるお風呂周りの香り、という方程式に抗うことは並大抵のことではありません。わたしはベースノートにパチュリやベチバー、レザー、樹脂系が使われている香水も大好きなのですが、これらのノートは清潔感とは距離があります。石鹸の香り、と言われればそれまでですが、侮ることはできません。とはいえ、ムスクがメインの香りはいかにも「清潔ですよ♪」アピールが強すぎると個人的には感じており、あくまでも全体を陰から支える香りとして使われていることが条件になります。
この「ティー」「フィグ」「ムスク」のうち、少なくとも2点が含まれる香りのレビューを読み漁り、片っ端から試すところから今年の夏香水選びはスタートしました。すでに挙がっているThe Noir 29も候補に入れたのですが、真夏には重すぎると判断し、断念(こちらはのちほどフルボトルを購入し、休日用としては大変重宝しています)。同じくLe LaboのThe Matcha 26も検討しましたが、「ティー」の香りに求める透明感がなく、除外。最終的にEssential ParfumsのFig InfusionとWulong Chaの2つに絞り込み、サンプルをそれぞれ纏い、よく晴れたほぼ同じ気温・湿度の日に電車に乗りました。Wulong Chaを纏っていた日、某ターミナル駅で乗り込んできた女子高生の二人組に「この電車なんかいい匂いしない?」「わかる、それな!」と言われたことが決め手となり、こちらを選びました。
英語の公式サイトでは、100mlが335ドルで提供されています。これは、Louis Vuittonを1万円以上上回る価格です。わたしの場合、平行輸入のサイトで購入したのでもう少し求めやすかったのですが、この香りはまさにプライスレスです。3月上旬から夏香水を探す旅に出ましたが、やっと「辿り着くべき場所に到達した」という満足感でいっぱいです。
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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・オードトワレ・香水・フレグランス(メンズ)]
容量・税込価格:50ml・6,600円 / 100ml・9,790円発売日:-
2024/4/21 22:41:25
今年の「夏香水」の候補に入れたうちのひとつ。こちら、仮面で顔を隠している某ユーチューバーの元マネージャーさんが愛用していることで有名です。90年代からある香りなので、使い古された香り、といえばそれまでですが、それは決して「古くさい」という意味ではありません。現代的でとても瑞々しく、フルーティーで軽やか。ノートには入っていないのですが、アンバーグリスっぽい甘さもあります。持続力にやや欠けるというデメリットがありますが、真夏にバシャバシャ付けるのなら、これくらいがちょうどいいかも。1.2mlの公式サンプルを購入したのですが、今年の夏のうちに使い切りそうです。ただ、フルボトルを購入するか?、と言われると、そこまでではないかな……。お値打ちなので、高校生&大学生におすすめです。
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2024/4/16 00:32:39
みなさんは、何のために香水を纏いますか?――日本において、一年のなかで香水が最も売れるのは、クリスマスやバレンタインのシーズンではなく(つまり、恋愛成就の験担ぎとか、大切な人へのプレゼント用とかではなく)、あろうことか「夏」なのだそうです。とある有名ブランドで長年働いているフレグランスアドバイザーさんが仰っていたことなので、かなり信憑性のある情報です。日本では、夏になると香水を使う人が増える――ここには、海外の香水文化と日本の香水文化の大きな違いが顕れている、と申し上げても過言ではありません。日本において香水とは、あくまでも身だしなみのひとつとして、夏の高温多湿にさらされた汗臭い自分をマシにするための「デオドラント」の類として使用されることが多いようです。だから、海外の売れ筋とは異なる、無難な柑橘系の香水がもてはやされるのでしょう。
わたしの場合、香水を纏う理由は単純に「香りが好きだから」です。帽子の好きな人が、何十個というコレクションの中から、その日の気分に合わせてお気に入りのものをチョイスするのと同じような感覚です。自分が気に入れば使うし、そうでなければ使わない。普段は気に入っていても、今日の気分と合わなければ使わない。わたしはこの原則を守っているので、ある日突然、香水を変えることさえあります。「なんか違うかも……」と思ったら、たとえ何年も愛用している香水であったとしても、一旦その香りとは距離を置きます。唯一、その原則を破って手を出してしまった香水――それがこの、L'Homme Ideal EDPなのです。
一昨年の12月初旬、L'Homme Ideal EDPが海外で評価の高い作品であることを知りました。海外の香水情報サイト「Fragrantica」でも4.4という高評価がついていますね(ちなみに日本で大人気のSauvage EDTは4.0を下回っています、汗)。普段ならサンプルの手に入るものは取り寄せて、肌に乗せて何日か試すことにしていますが、この香水はサンプルを取り寄せないまま百貨店に突撃(!)し、肌に乗せることなくムエットだけで済ませ、フルボトルを即決するという荒技に出てしまったのです。そういう場合は必ず、数パーセントの例外を除いてブラインドバイしたことを後悔します。翌週、この香りを着て仕事に行ったのですが、自分にとってどこか違和感のある香りが漂ってきて、すでに買ったことを後悔し始めていました(売ることも検討しました)。悪い香りではないのですが、自分が着るにはちょっと違うかも……、という感じなのです。ただ、なぜかこの香り、周りの人(とくに女性)からの評判は異常にいいのです。いい香り、いい香り、いい香り、と会う人毎に言われ、自分の感覚とのギャップに悩まされました。
そして、ネーミングにふと気付かされたのです。L'Homme Ideal――「理想の男」とは、自分にとって理想的な香りという意味ではなく、女性にとって理想的な存在になれる、女性が好きでいてくれる香り、という意味なのだと。一応、メンズ香水として売られていますが、女性の愛用者も多いのがこのL'Homme Idealシリーズ。自分ウケよりも他人ウケが優位なので、Fahrenheitのように寝香水に使ったり、オフの日に自ら進んで愛用したりすることはありませんが、とりあえず手元に置いておきたい一品です。ゲラン香水特有の、フェミニンな、丸みを帯びた、穏やかな甘さがスキンセントとして残り、相性によっては「これは女性ものぽくてちょっと苦手」と思うかもしれません。ついでにお伝えすると、持続力・拡散力については「可もなく不可もなく」という感じ。それを踏まえて、★は4つ。ちなみに、同じL'Homme Idealシリーズであれば、Extremeのほうをおすすめします。プラムが入っていてEDPよりも甘さは強いのですが、タバコとパチュリが使われているため、ちゃんとメンズ香水らしく香ってくれますよ。ただ、こちらはかなり大人な香りなので、他人ウケ(とくに若い女の子ウケ)は今ひとつです。親戚の中学生に「なんか変な匂いする」と言われたときは大変ショックを受けました(涙)。EDPを着ていると、すごく褒めてくれるのにね……。
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50ml


