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doggyhonzawaさん
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イヴ・サンローラン / オピウム オーデトワレ

イヴ・サンローラン

オピウム オーデトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:50ml・13,750円発売日:- (2010/9/23追加発売)

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7購入品

2019/9/15 00:01:54

香水の歴史上、最も危険な作品といえばイヴサンローランのオピウムがまず挙げられるだろう。「阿片(アヘン)」というネーミングに絶対的にこだわったサンローラン。しかしその名前ゆえに各地でパニックや暴動に近い事件が多発したのも事実。それでも全世界で爆発的ヒットを記録し、1977年の発売以来、50年近くたってもいまだに売れ続けている伝説の名香オピウム。その官能的かつ退廃的なオリエンタルスパイシーな香りの中毒となった人は発売以来数知れない。

オピウムは、印籠型とされる特徴的な丸窓ボトルのパルファムと、縦長のシンプルなボトルのオードトワレが1977年に同時リリースされた。現在パルファムは作られておらず、オードトワレのみとなっている。このレビューもオードトワレの方だ。調香師は、後にディオールのプワゾンなどもブレイクさせた凄腕調香師ジャン・ルイ・シュザック。彼は、サンローランに中国王朝時代のオートクチュールコレクションに見合った皇后の香りの創造を託され、その危険で中毒性を感じさせるネーミングに負けない、強くて蠱惑的なオリエンタル系の香りを創り上げることに心血を注いだという。

では、この香水に一体どんな魔力が秘められているのだろうか?

オピウムを身に纏う。軽くスプレーしたとたん、レモン増し増しのコーラのようなスパイシーでフルーティーな香りがガツンと広がる。オピウムのトップは本当にコーラのようだ。慣れ親しんでいる香りだからだろうか。薬草っぽい樹脂の感じも、ベルガモットやマンダリンのシトラスに包まれて爽やかにはじける炭酸のようでとても心地よい。印象としてはかなりクラシカルで濃厚な部類。ゲランのシャリマーやエスティローダーのユースデューに近い系統。

5分後、さまざまなスパイスとフローラルのミックスが鼻を麻痺させるかのように広がってくる。まず感じられるのはカーネーションの香り、甘辛いクローブの匂いだ。そしてたおやかなローズ、誘うような白いジャスミンのふくよかさ。中でもスパイシーなカーネーションの香りがフローラルの中心となって広がってくる。なんという馥郁たるミドル。カーネーションとローズとジャスミンは、ベースにある樹液のくぐもった香りのようなバルサミックなノートの上に開いている。このバランスがとてもすばらしい。似たタイプで言うと名香シャリマーが挙げられるが、あちらはもっとべルガモットやヴァニラ、アンバーが強く、しっとりとしているけれど、オピウムはギリギリと乾いている。スッキリシャープなキレのあるオリエンタル、そんなイメージだ。

このバランスはすごい。昨今のシングルノートだのシンクロノートだの「あまり変化のない香料少なめ値段高めのニッチ香水」に慣れた方は顔をしかめるほどの出力の強さだが、この作品のミドルだけは何度もつけてじっくりと味わってもらいたい。オピウムの香料バランスは本当にすごい。薬草のようなくぐもった樹脂のノート、コーラのような甘辛い香り、キッチン香辛料のドライなノート、そして美しい花々とのコントラスト。人を酔わせ、快楽に誘い、そして、心地よい眠りへと誘う魔法の香り、そう、これは確かに麻薬の類だ。一度味わったらここから抜け出せないかもしれない。これぞ香水オブ香水。何年もかけて本物の調香師が何度も何度もバランスを調整して仕上げた最高水準の香りの十二単。音楽でいえば何だろう。弾き語り?バンド?いや、オーケストラフルボリュームの香りだ。

持続時間はなんと10時間をゆうにこえる。たったひとしずく、その手首の内側につけるだけでも、スパイシードライなコーラのようなフローラルが思いのほか優しくたゆたい続ける。もちろん香りじたいに好き嫌いはあるだろう。けれど、シャリマーやこの香りを知らずしてオリエンタル系香水は語るべきではない。そう思う。

ラストは美しい煙のような樹液のこんもりした香りとアンバーの甘さの引き波を引いて静かに消えてゆく。衝撃的な名前よりなお、あらがいきれぬ愛の経験のアフタープレイのように、静かに狂おしく心に爪痕を残す香り。

忘れたいことも、悲しすぎる記憶も、ただいっときの夢に身を任せて、波間をただよう一輪の花のように、ゆらゆらと揺れてたゆたう時間があっていい。生きてる時間は何かと辛いことが多いもの。せめて一人、煙のような美しい香りに身をまかせて、泣きたいだけ泣ける夜があっていい。二胡の調べ。胡蝶の舞。

サンローランがその人生を賭してなお「この名前でなければノーネームでいい」とさえ言い切ったほど惚れ込んで、どうしても出したかった香水。知らないなら覚えておいた方がいい。

それはイヴサンローランの魂。オピウム。

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キリアン / グッド ガール ゴーン バッド オード パルファム

キリアン

グッド ガール ゴーン バッド オード パルファム

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:50ml・37,400円発売日:2019/3/15

7購入品

2019/8/24 19:22:40

香水界のロールスロイス、キリアン。その最高に贅沢な香水たちの中にあって、最も罪つくりな香りだと感じているのが、グッドガールゴーンバッド(「よい娘が悪くなった」以下略GGGB)だ。こちらは数あるキリアンの香水の中でも、世界中でベストセラーになっているといういわくつきの作品。

白地に金色の蛇をあしらったドキリとするようなクラッチケース。その中に納まった白いボトルは、まるで宝石のようにキラキラと輝いて美しい。クラシカルな香水のもつボトルやケースの豪華さを現代に蘇らせたいと願うキリアン・ヘネシーの美学そのものを象徴したこのラグジュアリー感こそブランドの矜持だ。GGGBは、“In the Garden of Good and Evil”「エデンの園で紡がれるアダムとイブの物語」シリーズの1つ。禁断の果実を食べたイブを良家の子女になぞらえ、少女が家族に内緒で羽目を外して一晩中夜遊びするイメージを香水で表現している。調香師はアルベルト・モリヤス。リリースは2012年。50mlボトル36720円。

GGGBをプッシュする。その瞬間、空気が変わり、甘くまろやかなフルーティー香に包まれる。それはわずかな酸味を伴った水蜜桃のようにジューシーな香りだ。この自然な甘さを伴ったトップのフルーティーな香りには本当に驚く。どうやったらこんなみずみずしい桃のような香りが作れるんだろうと思うトップだ。

ブランドのクレジットを見ると、このトップの香りはオスマンサス(キンモクセイ)の香料のようだ。といっても、かなりアプリコットの香りが強いフルーティーな物を使用しているのだろう。アプリコットの香りは桃の香りに少し酸味を伴ったようなとても芳醇な香りがする。

5分後、完熟した桃のようなしっとりした香りに、わずかにクリーミーな白い花のヴェールがかかってくる。これはチュベローズのふんわりしたファセットだろう。このクリーミーチュベローズの香料もいい。おそらくトップのフルーティーなラクトン系の香りに上質なチュベローズを合わせたことで、自分には桃のような香りに感じられるのだろうと思う。トップで感じた果実香にチュベローズのふくよかさが重なり、ジャスミンの華やかさ、軽やかなローズ香などもシンクロしながら出てきて、美しいフローラルミックスのミドルとなる。重たさがほとんど感じられず、とてもライトで繊細なフルーティーフローラルな中盤。

ラストはシダーとアンバーがクレジットされているが、自分にはほぼ感じられない。トップから香り全体の印象がほぼ変わることなく減衰してフェードアウト。付けて3時間ほどでフルーティーな甘さはなくなり、淡いフローラルミックスになって薄らいでいく。香りは真夏でも大体4〜5時間ほど持続する。

全体で見ると、トップの桃のようなあんずのような豊かな香り立ちがこの香水の最大の特徴で、フローラルよりもフルーティーをメインにした香水であることに間違いはない。この手の自然な香り立ちこそ「香水なんてきつくて複雑な香りがするから苦手」という方にぜひ試してみてほしいと思う。きっと今までの香水に対する固定概念がひっくり返るはずだ。(←値段も目ん玉ひっくり返るけどな)

もしこんなとろけそうな香りの果実が目の前にあったら、女性のみならず誰もがときめいて、思わず手に取ってかじりついてしまうかもしれない。GGGBはそんな香りがする香水だ。そしてそれがもし禁断の果実だったとしたら…?

旧約聖書によると、イブは蛇にそそのかされ、エデンの園で絶対に食べてはいけないとされた「善悪の知識の木の実」を食べてしまった。そしてアダムにもそれを勧め、食べた2人は共に罰を受け、楽園を追放されたという。アダムより造られしイブはその瞬間、「悪い女」の烙印を押されてしまったのだろうか?それ以前に、誘惑した蛇こそが悪かったのではないのか?

GGGBはとても罪な香りだ。なぜなら、そのネーミングとは裏腹に、まるでエデンの園にたゆたう調べのごとく、甘美で優雅で人の心をうっとりさせる美しい香りがするからだ。だから、この香りをつけた女性が近くにいたらと思うと、実はちょっと気が気じゃない。なぜなら男どもはおそらくとろけてしまい、悪魔の化身である蛇のように誘惑したり毒牙をむいたりするかもしれないし、女は嫉妬の炎を燃やしてその女性を地獄に突き落とす算段をしないとも限らないからだ。だとすると…。

GGGBはたぶん少女を悪女にする香りじゃない。逆に、周囲の者を誘惑して悪の道に落としかねない危険な香りなのだろう。この美しく可憐な楽園の果実は。

グッドガールゴーンバッド。少女も香りも、美しいほど罪つくりだ。キリアンの金色の蛇は、この香りをまとったあなた自身なのかもしれない。

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ゲラン / ナエマオーデパルファン

ゲランゲランからのお知らせがあります

ナエマオーデパルファン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

7購入品

2017/3/5 23:05:23

もしも誰かに「薔薇の香りでおすすめはありますか?」と尋ねられたら、全力で「ゲランのナエマのパルファム」と即答したい。気に入ろうが、気に入らなかろうが、関係ない。それを基準にしてほしいという願いのようなものだ。けれどもう、その至高のローズを入手できる確率はかなり低い。惜しまれながらも2016年にこの世を去ったからだ。だから実際は、「ナエマのオードパルファム(EDP)」と答えるだろう。それは香水には及ばないにしても、これまで出会ったバラをモチーフにした香りの中で、最高の逸品だと思うからだ。

ナエマEDPは、ゲランの数ある名香の中でも、特に秀でて素晴らしい香りの一つだと思う。にも関わらず、知名度は圧倒的に低い。ジッキー、ルールブルー、ミツコ、シャリマー、ボルドニュイ(夜間飛行)。これら歴史的な名香のネームバリューに比べれば、本当に知る人ぞ知る香りだ。それでも、これらに比して全くひけをとらない、ゴージャスで洗練された美しい香り。個人的には、4代目調香師ジャン・ポールの最高傑作だと思っている。

映画「めざめ」(1968)でカトリーヌ・ドヌーヴに惚れこんだジャン・ポール・ゲランが、彼女のイメージをもとに架空の美しい姫の姿を作品に投影し、彼女に捧げた香り。それがナエマの出自だ。リリースは1979年。ただ、当時香水需要が高まっていたアメリカ向けに巨額の広告宣伝費を投じたにも関わらず、商業的には振るわなかったといういわくつきだ。

さらに、「千夜一夜物語」ふうの双子の姉妹のストーリーもよく語られるが、かの膨大な伝承の中にはそのような物語は見当たらないようだ。「千夜一夜物語」じたい、何がオリジナルかも不明なほど、各地でさまざま物語が作られ、付け足されていった経緯があるので、実際は口頭伝承のみで筆記されなかった逸話かも知れないし、ゲランによるオリジナルイメージストーリーなのかも知れない。

そんなナエマEDP の香りはというと。

オープニングは、名香シャネルN°5を彷彿させるアルデハイドのキラキラしたワックス香から始まる。ややクラシカルな出だしだ。そしてすぐにグリーンノートが広がる。シャープで青い薔薇の茎やとげ、細かいギザのついた葉を思わせるようなトップ。

3分もせずに下から、甘い蜜の存在を花弁の奥に感じさせるスッキリした薔薇の香りが広がってくる。ライトなピンクの薔薇を思わせるようなフルーティーな香りは、パッションフルーツの酸味、ピーチアルデヒドによる桃のふくよかさに彩られている。ところが。

驚くべきことに、次第に薔薇の香りが濃厚になってくる。ヒヤシンスのグリーンの消失と共に、一枚、また一枚と花弁が増えていくようなイメージ。それは、爆弾の弾頭を思わせる薔薇のつぼみが開くにつれ、こんなにも多層の花弁がどこに隠されていたのだろうと驚く瞬間にも似ている。コクのあるジャスミンの花弁、妖しく誘うイランイランの花弁、可憐なスズランの花弁。そして、わずかにバルサミックな香りの花弁。それらは遂に、フルボディの極上のワインとなって、複雑かつ多層的に香り出す。これぞダマセノンを用いた秘伝のローズ香料の成せる業。至福は6〜8時間程度。

ラストは、柔らかく穏やかに薔薇の余韻を残しつつ、ヴァニラのクリーミーさとピーチのほの甘さを絡ませながら消えていく。ときにサンダルウッドの温かみをも伴いながら。不思議なことに、香りを鼻から早く吸い込むと、グリーンでシャープなローズの主張が感じられるし、ゆっくり深く吸い込むと、イランイラン様のダーク&甘い口紅のような残り香が感じられる。ナエマは最後まで本当にたくさんの香料がせめぎあっている。

拡散力はあるものの、かなりプライヴェートな距離に近づいた時に感じられるタイプ。いわば、香りのA.T.フィールドのようなイメージ。多層な花弁の奥に隠された秘密は、誰もがおいそれとのぞき見ていいものではない。ナエマには薔薇のもつ密やかなたたずまいさえ表現されているように思う。

自分には高貴すぎるとか、早すぎるとか、窮屈な型にはめてしまうのはもったいない。好きな時に好きなだけ、好きなようにつけるのがナエマには似合うだろう。

一人の天才調香師が、それでも4年もの歳月をかけて500回以上の試行錯誤を経て創り出した香り、それがナエマだ。「千夜一夜物語」ふうになぞらえたのは、ジャン・ポール自身が、シェヘラザードの語り紡ぐ伽話に夢中になったスルタンのように、千の夜を越えてやっとこの香りに出会えたからに相違ない。

短い人生でこの香りに出会えてよかった。そう思う。ナエマを越える薔薇を探すなら、覚悟した方がいい。それは幾千幾百もの夜を越え、幻の薔薇のナマエを探す壮大な旅になるかも知れないのだから。

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メゾン フランシス クルジャン / Le Beau Parfum

メゾン フランシス クルジャン

Le Beau Parfum

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

7購入品

2022/5/28 08:53:57

400本めの香水レビュー。ここまでちょうど9年間、書き続けてきた。週一度1本ペースだから、レビュー数じたいは多くはない。それでもその1本を書くために、香料分析、背景リサーチ、比較検討、推敲編集やらで、1本につき平均6時間はかかってるから、9年で400×6=2400時間は香水の勉強をしてきたことになる。←そのわりにわかってないけどな

珍しい機会なので、その400本の中から心に残っている香水をほんの少しまとめてみる。

◎最もリスペクトしたクラシック香水3本
・シャリマー(ゲラン) ・ルールブルーEDP(ゲラン) ・N°9(シャネル)

◎最も心に突き刺さった香水2本
・ラペルトワ(ラルチザンパフューム) ・フェミニテ・ドゥ・ボワ(セルジュ・ルタンス)

◎最も偏愛して日常使用してきた香水
・エンジェルEDP&EDT(ミュグレー) ・コローニュロワイヤル(ディオール)

◎出す作品どれも恐ろしくできがいいと思う香水ブランド
・ピュアディスタンス ・フラッサイ

◎400書いた中で心に焼きついているレビュー3つ
・ラペルトワ(ラルチザン・パフュ―ム) ・エンジェル(ミュグレー) ・ロストチェリー(トム・フォード)

世界中で年間何万本も新作が生まれる香水業界。その中にあって、これまで出会えた香水はまさに「ご縁」。そんな中、紹介する400番目の香水は、初めからちょっと「ごめんなさい」しておきたい作品。なぜなら日本未発売かつ限定品という超入手難しい系。たぶん自分も、この先もう1本ストックを入手することはできない。そういう意味では本来紹介するつもりはなかった香水。ただあまりにも香水としてできがよく、個人的にもラペルトワに匹敵するほど美しく、自分の性癖にぐっさり刺さった香りなので、このまま誰にも知られず消えていくのは悲しいと思ったから、そっとここに置いていく。

それは、フランシス・クルジャンが2015年にパリの百貨店プランタンの150周年記念のためだけに製作したル・ボー・パルファム。この香水は自分の中で特別すばらしい作品、極上品。星をつけるなら☆7満点のところ、☆70はつけたい香水。ただそれはもちろん自分にとっての超どストライクであって、貴方にとって好きな香り、またはベストマッチとは限らない。香水に「万人に好かれる香り」なんて存在しないからだ。

ルボーの香料イメージはシンプルだ。クレジットによると以下のとおり。

インドのチュベローズ&ジャスミン、チュニジアのオレンジブロッサム、マダガスカルのイランイラン。いわゆる濃厚なホワイトフローラルブーケ系統の香り。

ただ使用している花の香料はどれも高品質ですばらしく、同時にそれらを際立たせるための「つなぎ香料」が超絶いい。しかもナイスバランス。はっきり申し上げる。さすが天下のプランタン。これを作らせるために、クルジャンにどんだけ対価を支払ったのだろうというくらい、スペシャリティ香料をふんだんに使用しているように思う。つまり「売っても赤字」なくらいゴージャス&センシュアルな出来。だから周年記念の限定香水なのだろう。

ルボーを肌にのせる。その瞬間、あまりに甘くかぐわしい花の蜜の香に脳がよろめく。体がふらつく。矢吹ジョー渾身のクロスカウンター一発もらった気分。腰からくだけ落ちる。花園に倒れこむようにマットに沈む。お花畑で好きな女の子を追いかけるスローな白日夢を見る→人間終了。な開幕。それほど左脳崩壊で言葉にならない美しいフローラル爆弾なトップ。

それでも、カウント9でギリギリ立ち上がって香りを分析するなら

ルボーは偏愛するラルチザンのラペルトワにインスパイアされて創ったのでは?と思うくらい雰囲気が酷似している。クリーミーガーデニア&山椒という「花の優しさ&スパイスの棘」の取り合わせで、内面の感情を激しく揺さぶるラペルトワ。その山椒部分をごく微量のキャラメルノート&シナモンが代替するような形で、白い花束に甘いグルマンを補完している。これがたまらない。クルジャン、あなたさてはラペルトワのベースをヒントに、同ラルチザンのアムールノクターンを組み込みましたね?と言いたくなるくらい。わからない方はわからなくていい。これはほぼ自分にあてた周年記念レビューだ。

サイレージは5時間程度。ジャスミンの残香強めでルボーは消えてゆく。ルボーは「プランタンおめでとう!」で作られたけれど、その甘くてノーブルで、どこかノスタルジックなクリーミーな花束は、プランタンとクルジャンがあなたに贈る感謝の花束の香りだ。

いつもありがとう
あなたのおかげで 今があります
あなたの一日が 美しい香りに包まれますように

おめでとう あなたへ

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Puredistance / WHITE

Puredistance

WHITE

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

7購入品

2019/12/8 12:29:34

ピュアディスタンスのホワイトを知らなければよかった。この香水に出会わなければ、今も目の色を変えて世界中の香水を集めまくり、あれこれ試してはあーだこーだとくだらない能書きを垂れることに夢中になっていただろう。でもこの香水と出会って変わった。もうそんなにあれこれ探さなくていいかもしれない。そう思うようになった。だからちょっとだけこの香水に対する思いは複雑だ。この香水はあまりに美しくて少し哀しい。

ホワイトの第一印象は驚くべきものではなかった。初めて手首の内側にのせたとき、「柔らかくて、とてもなめらかで、どこかでかいだことがある香りだな。」と思った。静かに始まって、一日中ほんのり甘いパウダリーフローラルな香りが鼻を喜ばせ、自分の周りだけが特別な白いヴェールに包まれたように感じた。賦香率38%はすごすぎる。付けた手首をハンドウォッシュで洗ってもいい香りが残っているほど。この香りをウェディングドレスに例える方が多いのも頷ける。永遠の白。永遠に続く幸せ。欧米では、結婚される女性にプレゼントする方も多いと聞く。わかる。この香水はあまりに美しくてやさしい。

ホワイトの香りに包まれていると、どこか近くで聞こえないくらいの美しい音色が優しく鳴り響いている。そんな感じがする。まるで一流の交響楽団の音出しのようだ。弦楽器が静かにフェードインして、個々の楽器の高さでチューニングをはじめる。やがて木管や金管が唇の湿り具合と空間の響き具合をみるようにゆっくりと楽器に空気を送りこむ。あの静謐で、まろやかで、上質な音空間にふわりとそよぐノーブルな香りだ。あるいは幼い頃に添い寝してくれたあたたかな母の匂い。この香水はあまりに美しくてほんのり切ない。

きっとこれを創った人はとても優しい人だ。ホワイトの香りをかぐたびにそう思うようになった。そのシームレスでどこまでもスムースな香料のシンフォニーに耳を傾けていると、いつしか調香師の魂にシンクロしていく。これを創った方は、とても繊細で傷つきやすく、それでもその分、弱い相手の気持ちをおもんばかれる人だろう、そう思う。調香はアントワーヌ・リー。少しワイルドな見た目の男性調香師だ。2004年にアルマーニコードを発表したことで一躍注目され、以後多くの作品を手がけている人気調香師。彼が一年をかけてじっくりと取り組んだ作品、それがこのホワイトだ。

だが、真に熱狂的な方は別にいる。彼のような人気調香師をして一年かけてじっくり納得いくまで作品を創らせ続けたピュアディスタンス社長、ヤン・エワウト・フォス氏だ。このホワイトは彼の情熱の賜物だと思う。アントワーヌ氏は、フォス氏の強烈な圧しと情熱に全身全霊で応えたのだろう、そう思う。本当にすごいのは彼だ。

フォス氏はこの世界にただすばらしい物を生み出したいと願うパッションの塊のような人だと思う。たとえ自分で調香はできなくとも、持ち前の感性で本物を明確にかぎ分けられる天性の芸術家なのだろう。そして最高の作品を創るためならつぎこむ資金にも糸目をつけないような。だからすごい香水ができるのは必然なのだ。彼がお金儲けのために香水を創っていないことは、その美しい化粧ケースに触れた瞬間からはっきり分かる。彼は仕事に一切の妥協を許さない方だろう。ピュアディスタンスはたとえサンプルセット一つをとっても、天蓋付きのふかふかのベッドに横たわった美しい宝石のように大切に大切に提供している。ボトルの箱の方には社長自らのサインを入れて。彼はそうやって作品に魂を注いでいる。だから、この香水はあまりに情熱的すぎてぐっとくる。

最高の調香師に最高の香料を与えて、何度も納得いくまで作品を創ってもらう。香水好きな方にとってこれ以上の喜びはないだろう。そして生まれた美しい香りを世界中の人に届ける。そこにあるのは拝金主義とは全く逆の志だ。それは愛を与える行為そのものだから。

興味を持たれたらホワイトについてぜひ調べてみてほしい。この香水に関しては、香料がどうだとかトップがどうだとか言うつもりはない。ただ、ただ、試してみてほしいだけだ。自分の肌から立ちのぼる世界最高クラスの香りを。そして感じてほしい。そのとき見える世界の美しさを。そばにいて微笑んでくれるかけがえのない人の大切さを。

一人でいてはいけない。一人心を閉ざしてうつむいていてはいけない。嫉妬や憎しみで心を黒くしてはいけない。あなたがこの美しい世界にいられる時間はとても短い。愛する家族、友人、恋人と手をたずさえ、心を抱きしめ、その笑顔とともに、あなたにはいつも笑顔でいてほしい。

ピュアディスタンスのホワイトはそう語りかける。この香水はあまりに美しくて、あなたが愛しい。

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プロフィール
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自己紹介

いつもご覧いただき、ありがとうございます。香水について細々とレビューしています。 最近はTwitterでも時折つぶやいています。香水好きな方がた… 続きをみる

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