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doggyhonzawaさん
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シャネル / シャネル N°19 パルファム

シャネル

シャネル N°19 パルファム

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:15ml・31,350円発売日:-

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7購入品

2022/12/10 13:41:09

あなたをたった5秒で強く颯爽とした女性に変える。それは簡単なことだ。シャネルN°19のパルファムを1滴指にとり、耳たぶの裏につける。それだけでいい。

「また何言ってるんだ、大げさな」そう思うなら試してみるといい。香りが好きかどうかは別。N°19パルファムは、強き女性の代名詞として君臨し続けるココ・シャネルが「世界一売れたN°5を超える香りを!」と「自分のためだけに」作らせた最強のシグネイチャー香水だ。

ただしEDPやEDTでは効果は薄い。N°19の破壊力を実感するためにはパルファム一択だ。15mlで31350円。高い?そうだろうか。「なんでこんな香料でこんなに高いの?」と首を傾げるようなそのへんのニッチ香水に比べたら、100倍良心的な価格だと思う。まず歴史とブランド信用力と品質が別格だ。さらに、スプレーでなく指で1滴ずつつけるフラコンなので、本当に減らない。そして超至近距離でだけ高濃度香料がなめらかにずっと香る。実は香害に一番なりにくいのがこのパルファム濃度だ。これぞ本物の香水。香水に詳しくない方なら、なおさら「本物の凄み」というやつをまず体験すべきだろう。

ココ・シャネルはこのN°19を創るために、調香師アンリ・ロベールに何度も試作品を用意させ、香りを纏ってパリの街を歩いたという。そして人々が香りについてどんなふうに声を掛けてくるか確かめた。全く声を掛けられなかったときは、怒号と共に調香師を責めたという話もある。当時ココは86才。ある日、長年住んでいたリッツホテルから出てきた際、若いアメリカ人男性2人に引き留められ「その香水の名前をぜひ教えてください!」と迫られたことが決定打となってこの香りは生まれたという。

ではそんなN°19パルファム、いったいどんな香りなのか?世界的に「グリーンフレグランスの最高峰」と言われる香りの展開を追ってみる。

N°19パルファムを肌にのせる。するとまずはじめに立ち上るのは、ギリリと青臭いグリーンノート、そして粉っぽいアイリスの白い香りだ。そこにまろやかなネロリの甘さが加わり、キレのいいスッキリとした緑と白の香りが広がるトップ。

3分後、ジャスミンのふくよかさとグリーン香が相まって、スズラン様のフローラルが広がってくる。同時に下の方から冷たく青いヒヤシンスの香りも感じられる。ガルバナムのシャープなキレのある香りを軸としながら、ソリッドで青緑なフローラルが感じられてくるミドルになる。

このミドルは知的でスタイリッシュ。キリっとして本当にかっこいい。全くフェミニンじゃない。若々しく、怜悧で、背筋がスッと立っているイメージ。全てに妥協を許さず、自分のめざすベクトルを見定め、どこまでも一直線で闊歩してゆくような、潔さと強さを感じさせる草原と大地の香りだ。

リラックスというなら、それは大自然の中に放り出されたような心地よさがこの香りにはある。けれどそこには同時に、厳しい自然界の現実に対峙する強さもまた要求される。そんな苛酷さを感じさせる香りでもある。ミドルは、大草原に吹く風がオークモスのビター、ベチバーの土の匂いを運びながら3〜4時間続いていく。

ラストはとてつもなく優しい。土深く眠り続け、長年かけて香りを熟成させたアイリスパリダのパウダリーが優しく心と体を包みこむ。ほのかに甘いムスクとともに、小麦粉のようにきめ細かな白い香りを呈してドライダウン。ここまで5〜6時間。たった1滴で。

N°19はココ・シャネルの誕生日である8月19日から命名されたナンバーフレグランスだ。人は一人で生まれ、空と大地の狭間で必死に生きて、その短い生を全うする。「香水をつけない女に未来はない」と言い切ったココが、人生の最後に自分のためだけに徹底的にブラッシュアップして作り上げた香り、N°19。そこに込められたのは、世界中の女性が男性の下に屈することなく、自分自身を強く美しく保ち続け、欲しいものを欲しいと言い、自分の力で未来を貪欲につかみとれ、というメッセージのように思える。

一面の大地。草原が風に揺れている。湿ったベチバーの土っぽい香りがしている。濡れた苔類のビターな匂いが森から運ばれてくる。自然はどこまでも広く、容赦なく、そして気高い香りに満ちている。服が風をはらむ。草原と森の匂いが髪を洗う。

青いガルバナム。苦みばしったオークモス、乾草のベチバー、白いアイリスパリダ。それらが織りなす、今にも発火しそうな残虐なグリーンノート。クールで、スタイリッシュで、挑戦的。常に現代で戦い続けるハンサムウーマンの香り、実装完了。

最終戦闘に備えよ。
大地を疾走するパルファム「ナンバーナインティーン」発動。

5秒だ。5秒で未来にカタをつけろ。

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フラッサイ / ティアンディ

フラッサイ

ティアンディ

[香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

7購入品

2021/9/18 11:57:58

かつて「桃とシプレの名香」と言えば、長らくゲランのミツコだった。ただ、正直現代の女性に往年の名作ミツコは渋いと思う。リスペクトも含めてあえてそう言う。凛としたたたずまいが女性にも求められた時代は遠くなり、今は柔らかく華やかなスタイルの女性が多い時代。そして、そうした女性に似つかわしい最新型の「桃とシプレの名香」を見つけた。それがフラッサイのティアンディだ。

フラッサイは、NYのフレグランス業界でのキャリアを経て、母国アルゼンチンに帰ったナタリア・オウテダ女史が、2013年から展開しているニッチな香水ハウスだ。彼女は自分でも作品を調香できる技術と経験をもちつつも、かつて親交のあった信頼できる調香師に調香を任せ、珠玉の香水のみをリリースし続けている。

そんなナタリア女史が、自身の趣味である太極拳と道教の「不死の桃伝説」からインスピレーションを得て創った香りがティアンディだ。これは中国語で和訳すると「天と地」の意。天と地、とくれば中国の陰陽説が思い浮かぶ。そこに3000年に一度実を付けると言われる「不死の桃」の香り。いったいティアンディはどんな香りなのか?

ティアンディをスプレーすると、まず最初に広がるのはダークな洋酒ライクなプラムの香り、そこにシダーっぽい冷たいウッディが絡んで、セルジュ・ルタンスの名香フェミニテ・ドゥ・ボワの紫色のトップにとてもよく似た開幕。

ところが

そこからふわふわと香料が入れ替わって霧のようにただよい、あたりは深山の幽域といった具合になってくる。

まず温かくスパイシーなジンジャーの香りが広がってくる。かと思うと、冷たくひきこむようなアニスが主張してくる。この温と冷、これこそ陰陽説だ。天と地、善と悪。陰陽説はこれら正反対の事象が、互いになくてはならない関係のままこの世界を構成しているという考え方だ。さらに、ジンジャーは「外に拡散」する香り方をし、アニスは「内に引きこむ」ような香り方をする。この点でも対照的だ。よく考えている。

5分後、香りはさらに複雑に変化する。深山の霧の中に煙の臭いが立ちこめてくる。スモーキーなインセンスの匂いだ。それは炒った茶の香りのようでもあり、焦がしたコーヒーの香りのようでもある。焙煎茶のように香ばしく、どこかほろ苦い煙の香り。これは人がそこにいる気配を感じさせる展開。伝説に登場する崑崙山(こんろんさん)の頂上、美しき仙女、西王母の住まう地にたどり着いたようなイメージ。そんなふうに人が物を燃やす香りが展開してきて、もはや最初のフェミニテライクな気配がなくなったことに気付く。

そこは清涼感ある薬草の匂い、焙煎した茶の香り、そして香木を焚く煙たゆたう天上の園。生と死を司る双性の神、東王父と西王母の住まう地。

温かいジンジャーと冷たいアニス。白いアイリスのパウダリーと茶色いサンダルウッドのウッディ。そのコントラストの妙。なんという二律背反かつ対照的なミドル。これは生と死、陽と陰になぞらえた、天地の香りの四重奏だ。

そして

驚くべきことに、このミドル前半から香りはらさらに変化していく。それはつけて10分ほどして唐突に現われて本当に驚く。

3000年に一度咲く伝説の桃。その木に実る桃の香り。それがこのミドル後半から突如、出現する。

通常、桃の香りはトップで感じられるフルーティーだ。ラクトンの一種である通称ピーチアルデヒドは、女性特有の甘い匂いの成分とも言われるが、なぜこんなスモーキーで複雑な煙の香りの後で突然出てくるのか?全くもって信じられない。調香師はトム・フォードのPBシリーズ人気を一気に押し上げたタバコヴァニラの作者、オリヴィエ・ギロティン。まさかあんな武骨な香りを創る方がこんな繊細な作品を作るとは…。本気でお見それした。

ラストはこの桃の香りにスモーキーなインセンスが絡み合いながら終息するというとても不思議なエンディングを迎える。つけて4〜6時間、ふんわり桃の香が残る平穏なラストだ。

永遠の命、不死の象徴、邪気や災厄を祓う神の食べ物とされてきた、桃。中国原産の原種に近い桃は大福のようにつぶれた形をしていて「幡桃(ばんとう)」と呼ばれ、今なお珍重されている。神の園で西王母がふるまう伝説の桃はこれに近い物であったらしい。食べたことはないが、その形からは想像もできない甘さをもち、味は格別だという。

神の山の入口を示すプラム酒の香り。ジンジャーの温かい吐息。アニスの冷たい大気。桃のまろやかさ、それは生。お香のスパイシー、それは死。

森羅万象の世界を生々流転せし者、神の桃源郷へとたどりつき、遂に不死の桃を食らう。

ティアンディ。天と地の間で。

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BYREDO / GYPSY WATER

BYREDO

GYPSY WATER

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

7購入品

2015/12/17 00:06:20

秋冬になると、なぜかしらウッディとヴァニラの香りが恋しくなる。もしその2つが、これ以上ないバランスで調合されていたら、それは自分にとってたまらない快感を呼び起こすはずだ。ただ、これまでの香りの旅では、まだ「そこまでの物」には出会っていなかった。そんなとき、ジプシー・ウォーターに出会った。

バレードのジプシー・ウォーターは、自分がこれまで出会った中で、最も柔らかく穏やかなウッディ&ヴァニラの香りだ。何よりも、ウッディ系の香りを苦手とする香水嫌いの方にも、「この香り、一度つけてみて」と勧められる点で、他のウッディの名香より1つ抜きんでる。それだけシンプルで、より多くの人に好まれやすい要素を持っていると思える香りだ。

ジプシー・ウォーターのトップは、一瞬のレモンが駆け抜けたかと思うと、アール・グレイそのものの香りと言った風情の、爽やかなベルガモットがパーンと鼻腔をくすぐる。同時に、サンダルウッドの香ばしい木の香りが、背後から乾いた風を運んでくる。そして、その瞬間、まるでガムシロップを1滴こぼしたような甘さが広がる。それはまるで、芳醇な紅茶の雰囲気。そして、このトップが意外なくらい長続きする。

自分は体温が高めなので、どんな香水でもあっという間にトップ系の香料は揮発していくが、この香りに限っては、5分ほどベルガモットの酸味が持続する。これはすごいなと思ってよくよく見ると、スプレーした手首のところがテカっているのだ。おそらく、粘度の高い甘い香料が、ほんのりベタついて肌にヴェールをかけることで、ベルガモットの揮発を遅らせているのだろう。

最初はそれを見て、「こんなにテカって跡が残るんじゃ、香水としてまずいだろう」と思ったが、5分もするとテカりや粘りはかなり薄くなることが分かった。気にならない程度になる。試しになめてみたが、甘くはない。一体どんな工夫で、揮発しやすいベルガモットを保留しているのか興味深い。

やがてシトラスが静かに消え、同時に、奥からとても落ち着いたお香の香りがしてくる。それは日本のお寺の香りではなく、どこか中東の寺院を思わせるインセンス。とても静かでくせがなく、ほんのり甘い上品なお香。有名なチャンダン(白檀のお香)の香りをかなり淡くして、ちょっと暗めにしたような芳香だ。

通常、ハーブやフローラルをもってくるミドルに、いきなりのインセンス。まるで、ど真ん中を省略して、トップからいきなりラストに飛んだように感じられる大胆な構成だ。

そして、奥からクリーミーでふくよかなヴァニラの香りが浸出してくる頃、インセンスの香りは、ベースのサンダルウッドと相まって、より温かく、マイルドになってくる。そして。

驚くべきことに、自分の肌の香りと混じり合って、何ともいえない甘くせつないウッディ&ヴァニラの香りに高まってくる。これには本当に感じ入った。

試しに、ファブリックと試香紙にも香りをのせ、手首との揮発の違いを確かめたところ、布地や紙では、いつまでもトップのベルガモットの香りがしていて、なかなかインセンス&サンダルウッドが出てこなかった。さらに、ヴァニラが出ても、とてもはかなく、手首に付けた時のような心地よい香り立ちにはならない。この結果から推測できることは何かと言うと。

1つには、体温高めの人に、このウッディ&ヴァニラは、よい香り立ちが出やすいのではないかということ。そして、もう1つは、人がもともと持っている匂い、それは動物っぽいアンバーのような香りと言っていいと思うが、それを合わせたときに、この香りが完成するのではないか、ということ。言い換えれば、これは、その人の肌の匂いをひきたてるスキン・セントの部類だ。

通常、ウッディは重ための香料が強く主張するので、あまり肌の露出しているところには付けないことが多いように思う。けれど、ジプシー・ウォーターなら、例えば、うなじや首筋、手首の内側などに付けても、香り立ちがシンプルかつフェミニンなので大丈夫だと思う。体温が低めの人であれば、紅茶の香りを思わせるベルガモットの爽やかさが続くだろうし、体温高めの人なら、サンダルウッド&ヴァニラのラストを長く楽しめるだろう。このオー・デ・パルファンは、香り立ちこそ淡いけれど、ミドル〜ラストが、かなり長い時間、ゆったりと香り続ける。ほんのりと、じんわりと。日によっては、5時間以上も。

ジプシー・ウォーター。それは、理想郷を求めて旅を続ける、流浪の民の象徴。かつてインドから欧州へと移り住んだロマたちの、荒ぶる魂と自然に寄り添う静謐さを思い描いた香り。その歴史の裏に見え隠れする、不当な差別や偏見、貧困や悲しみを超えてなお、自然や世界に対峙し続けるさすらい人たちに捧げる香りだ。

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Puredistance / RUBIKONA

Puredistance

RUBIKONA

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

7購入品

2020/10/17 12:19:04

あの人の心をどうしても惹きつけたい。誘いのポーズや言葉をあれこれ並べず、ただあの人の前で微笑むだけで抱きしめてもらえるようなワガママな魔法がほしい。そんなときに使ってみてほしい香水が世界同時発売された。香水はいつの時代も女性を魔法少女に変える。

ターゲット特定済み。出会う状況確認OK。髪とメイクを決めて、服と靴を実装したら、あとは禁断魔法を詠唱するのみ。すれ違いざま空気のようにふんわりと相手を夢中にさせる香水魔法。その名はルビコナ。

ルビコナは、2020年10月15日に世界同時発売されたピュアディスタンス最新の香水。ブランド代表フォス氏が、独立系調香師セシル・ザロキアンに「ルビーのように深く温かい香りを創ってほしい。まるで天地がひっくりかえるほどシックな!」というオファーをしたことで生まれたという。(←激アツ)

では、真紅のルビー色を思わせる香り、ルビコナとは一体どんな香りなのか?

ルビコナをプッシュする。まず立ち上るのは、ほんのりシャープなスパイスと柔らかな甘さの白い花の香りだ。「赤」のイメージに反して、予期せぬ白いソフトなイントロで力が抜けそうになる。気分がトロンとするクリーミーフローラルなトップ。わずかな酸味はグレープフルーツのようで、クリーミー香に輝くようなルミナスエッジを利かせている。白い濃厚な花々とスパイスの甘辛みとシトラスの酸味バランスが絶妙だ。

2分後、冷たい酸味は早々と消え、その下からフローラルミックスが妙なるハーモニーを聞かせてくる。まず感じられるのは明るいオレンジフラワーの香り。ほんのり甘くジャスミンを軽くしたような香りが心地よい。その下から低音で流れてくるのはちょっと驚きのフルーティーなイランイラン。このイランイランはとても果実っぽく感じて本当に鼻を疑う。例えるならバナナと桃のミックスジュースの香り。クリーミー&フルーティーフローラルで、昨今人気のテイストを感じさせるミドルになってくる。

このミドルのハーモニーは本当に美しいと思う。甘くソフトなスパイシー、ソプラノのふんわりオレンジフラワー、アルトのフルーティーイランイラン。これらの3部合唱にクリーミーなヴェールがかかっていて、全体に白のシースルー素材を通して見る女性の肌のように、なめらかでなまめかしい。

あまりに力が抜けてとろんとした気持ちになるので、自分がおかしいのかな(←変態?)と思って同ブランドのホワイトと何度もつけ比べてみた。ホワイトは美しいホワイトフローラルの中にも上気してスッと抜けるシャープさがあって、どこか背筋を正した女性性を感じるけれど、ルビコナのミドルは真逆だと思う。ちょっと微笑んだだけで恥じらうような、少女のあどけなさやピュアな可愛らしさが感じられる。これは、ある意味異性の心をぐっと引きずりこんでしまう香りだ。愛らしい少女の姿をした場末の娼婦のように感じられる。いったい何なんだ?なぜだ?

ずっと答えが分からなくてつけ続けていたある日、唐突にその答えを知った。パチュリがいた。黒い墨のようで、土のようなスパイシーさをもったパチュリが、常に白いフローラルの影に寄り添っていることに気付いた。それは巧妙に隠された秘密の暗号のように。そうか。これはとても伝統的なシプレの骨格に基づいたコンサバティヴな誘惑剤だ。イランイランのエロティック、オークモス代替パチュリのミスティック。さらにクリーミーヴェールから引き継いだパウダリームスクのカーテンによって、それらは上手く隠されていた。とてもナチュラルを装って。濃厚極まりない麻薬的な誘引剤の数々が、白いヴェールで柔らかく半透明にぼかしメイクされている構成だ。

例えるなら、口当たりのいいミルキーなお酒ほど、グイグイいって酔いつぶれやすい。あれと同じだ。この香水は、付けている人に対して知らず知らず体中の赤い血が騒いでしまう香りだ。ルビコナは相手をやさしく、けれどしっかり酔わせる。標的として狙われた者は、あなたの前で、ただその真紅の血を沸騰させ、のぼせるしかない。これはたまらない。

まとめると。

ルミナスなエッジをもつクリーミーなトップ
ビューティフルな果実系フローラルなミドル
コンサバで伝統的なシプレ&オリエンタル構成
ナチュラルに酔わせ、赤い血を沸騰させる香り

それがピュアディスタンスのルビコナだ。知らなくていい人は知らない人生を歩めばいい。

全方位ナチュラルエロス分子充填完了。赤外線自動香水追尾システム作動。香撃対象座標データセット。近距離誘引型香水スモーク噴射量及び範囲確認。対象ロックオン完了。発射コード「ルビコナ」入力OK。オールレディ。スプレーボタンプッシュ。

最終兵器淑女、ルビコナ出現。

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ゲラン / ルール ブルー 香水

ゲラン

ルール ブルー 香水

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:30ml・49,720円発売日:-

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7購入品

2018/6/2 18:22:09

セーヌ川の岸辺一人、何度も立ち去りかけて、古いトランクを胸に夕暮れを見つめている。夕映えのパリ。茜色の夕日が、オルセー駅の巨大な長屋根を赤々と照らし出している。

今日の仕事を終えて家路へ急ぐ人々。ロワイヤル橋のたもと、語り合う恋人たち。ぬるびた風が川面を渡ってくる。遠く響く鐘の音。また一日が終わる。どこかもどかしい思いに胸がかき乱される。夜のとばりが心に静かにおりてくる。暗いシルエットになった下流の橋にも、もうすぐ灯がともるだろう。彼方のエッフェル塔は、堕天使の黒い矢のように、群青色の空を突き刺している。

やがて陽が沈む。残照が赤紫のインクを空と川面ににじませる。あたりは急速に光量を落とし、不意にひとときの静けさに包まれる。そして世界は一瞬、全ての光を失い、静寂の蒼に包まれる。

ルール・ブルー。

精一杯生きたとしてなお、たかだか100年にも満たないであろうこの命の道行きで、こんなにも切なくて美しい香りにめぐり会えたことを心から感謝している。

1912年、ゲラン3代目調香師ジャック・ゲランによる入魂の逸品。本レビューはオーデパルファム(EDP)の物。ルール・ブルーはパルファム(P)もオードトワレ(EDT)もあらゆる意味で他の作品を凌駕しており、どれも甲乙つけがたい。ただ、香りの変化が特に顕著で、黄昏どきの光と影の移ろいを表現しきったように思えるEDPが、個人的には一番のおすすめだ。自分がこれまで出会った中でも、最もドラマティックな映像美をもったフレグランスだと思う。さながら、時代の常識を塗りかえた印象派絵画の様式を香りにも取り入れたような前衛的作品。EDPは日本では未発売ながら、並行輸入品や海外通販により75mlボトルが1.3万前後で入手可能。

「たくさんの秘密が守れるように。」そんな意味深な思いをこめて中をくり抜いたという逆さハート型のキャップを外し、パフスリーブつきの女性用ドレスを模したアールヌーヴォー調ボトルからEDPをスプレーする。その瞬間の衝撃。

ベルガモットの酸味、ヘリオトロープの花粉の甘さ、カーネーションのスパイシー、薬っぽい樹脂香、ス―ッと引くようなアニスの冷たい香り。それらが渾然一体となって狂おしく空気を攪拌する。1つ1つの香料がクロード・モネの原色の点描のように明確にカラーを主張し合っている。それでいて、拡散力の強いアルデヒドによって各色の境界はぼかされ、全体的にはオレンジの光を照射しているイメージ。さながら沈む間際の太陽が、あたりを最も強い光で染めている情景。そう感じるトップ。

夕暮れ時は刻々とその光と影のバランスを変える。同様にルール・ブルーはつけてから5分までの間に、最も複雑に香りの様相が変化する。心がとらえられ、常に香りを確認していないと気がすまないほど、前述の香料がたえず色と濃さと輝きを変えて明滅してゆく。その千変万化の洒脱さ。本当にうなるしかない。ライトな香りが好きな方にはこの複雑にゆらめくトップは敬遠されがちだろう。香水の秘密と深淵をのぞきこみたい者にのみ、ルール・ブルーは閉ざされたドアを開く。

強烈な残照を放っていたワックス香のようなアルデハイドと、アニスの暗い清涼感が次第に消失すると、ルール・ブルーは一転、静寂のミドルを迎える。メランコリックで静謐なアイリスのパウダリーな香りが、風景全体を青白く染め上げてゆく。それは、快活な昼と抑制の夜の狭間。一瞬の蒼い空白のとき。自分の全ての肩書を捨て、ただ一人、闇の中で己の深淵と向き合う時間。冥色の逢魔が時。

このアイリスの切なく美しい粉っぽさは、まるでクロード・モネが放った作品「印象・日の出」そのもの。対象を写真のように写実的に描くのでなく、全体の印象を光の具合で表そうと原色の絵の具を塗り重ねたモネ。彼のように、アイリスとヴァイオレットのくすんだ香り、ヘリオトロープの甘さ、樹脂のインセンス香、トンカビーンの甘苦み、ヴァニラのクリーミーさ、それらの色を虹のパレットから直接キャンバスに置いたような印象。その点描は、近くから見れば各色が明瞭に分かり、離れて見ると全体が蒼の風景に映るという、印象派が描く夕闇の抽象。甘くせつなくたゆたう至福のパウダリー。

そんな柔らかく穏やかなミドルが6〜7時間、静かに続く。それは、すっかり夜の闇が下りたパリの街にさまざまな色の灯火がともり、心が再び落ち着きを取り戻した夜の情景のよう。パリの街の灯が煌々と夜を彩り始める。橋上の街灯がセーヌの水面を映し、金色の波をゆらゆらと燃やす。

天上からおりたヴェールはいよいよ蒼を増し、星々が夜空にまたたき始める。そして人々は再び家路を急ぎ始める。

一人歩く夕闇のプロムナード。愛しい君が待つ家へ。ルール・ブルー。

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プロフィール
  • 年齢・・・58歳
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  • 血液型・・・O型
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自己紹介

いつもご覧いただき、ありがとうございます。香水について細々とレビューしています。 最近はTwitterでも時折つぶやいています。香水好きな方がた… 続きをみる

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