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doggyhonzawaさん
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キャロン / ル トロワジエーム オム

キャロン

ル トロワジエーム オム

[香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2021/11/6 00:36:11

今年のサロパは、老舗キャロンの新シリーズが大きな話題になった。そんな感じがする。

香水の祭典「サロンドパルファン2021」。各香水ブランドが打ち出してくる限定品や新作の荒波の中、100年以上の歴史をもつキャロンの香水が、懐中時計型の円いボトルで人気を博し、新たな客層をつかんだ。「このボトル可愛い!」「これはもうボトル買い」そんな声がSNSでも飛び交っていたし、実際ものすごい人だかりだった。

このリニューアル人気がきっかけで、久々に取り出した香りがある。メンズ香水のトロワシエム・オムだ。これは、名作プールアンオムやヤタガンとともに「世界香水ガイド2」で最高評価を与えられていたキャロンのメンズ香水。選者のタニア・サンチェスはこの作品をして「使わないとしても、この香水はぜひ買ってみるべきだ」と辛口の彼女にしては珍しい推しコメをしていた。

2021年、キャロンの香水が新しい世代に広がろうとしている。そんな嬉しい予兆を感じながら、トロワシエム・オムの香りを久々につけた。1985年リリース。現在は日本で発売していないレアもの。調香はディプティックのオイエドなどを手がけた日本人調香師、亀井明子。

トロワシエム・オムをスプレーする。その瞬間、まず広がるのはパッと咲いたようなレモン。すぐさまコーラのような香り。シナモンとともにスパイシーなクローブが香るちょっとクラシカルなイントロ。昔よくあったカーネーションノート。その下から甘くアロマティックな紫のラベンダーノートが広がってくる。とてもなめらかなオープニング。

3分後、スイートなラベンダーが丸みを帯びて揮発してくると、ドライなスパイス香が下からせりあがってくる。スッと冷たく抜けるアニス、ホットでピリッと乾いたコリアンダー、ニッキ飴なシナモンあたりが茶色いミックスで広がってくる。ここまではかなりアロマティック・スパイシーな展開だ。

10分後、甘いラベンダーが消え、ギリギリとした苦味と乾いたスパイスが強くなってきて、ミドル前半となる。かつて酷評したヤタガンのゴリゴリウッディな香りを思い出す。あー久しぶりだ。これはオークモスのコクと強い苦味だと感じる。かつてメンズ香水には必ず使われていた苦味の強いウッディベース。そのモスのギリギリしたビターとドライスパイスが渾然一体となって、コーラよりも強烈なスパイスチャイ風の香りになってくる。

ところが、このスパイシーウッディなミドル強い香りは30分もせずにあっけなく減衰してゆく。甘くて辛いクローブ特有の香りを残して。つけて40分ほどすると、先ほどまでの苦味も辛みも、くしゃみの出そうなスパイシーも柔らかくなり、次第にミドル後半に変わってゆく。

このミドル後半は、やや女性的だ。ここまでの香料が強いせいで鼻が麻痺しがちだが、よく嗅ぐとヴァニラの甘さ、ジャスミンのふくよかさ、そしてトンカビーンの粉っぽさに支えられていることがわかる。何?突然女性的になった?さっきまでゴリゴリ、ゴン攻めしてたメンズはどこに行ったの?的なくらいに。

そして香りは、つけて2時間ほどであっという間に消えてゆく。何事もなかったかのように。してみると、コーラ&ラベンダーを思わせるトップはどちらかというと中世的、ドライスパイス&カーネーションなミドル前半はかなり男性的、ジャスミンやクマリン&ヴァニラが感じられてくるミドル後半からラストはとても女性的、と、くるくるジェンダーチェンジしてくるような不思議な展開の香水。

そうか。だから「第三の男」なのか。

トロワシエム・オム。これは映画「第三の男」を元に名付けられたという。前述のタニア・サンチェスはこの香水に最高点をつけているが、彼女によるとこの香りは「女の子のように可愛らしく、何より美しい少年」を彷彿させるらしい。だが、自分的には逆だなと感じる。

これは少年のように自由奔放な少女の香りだ。または男装の麗人、あるいは心から男性でありたいと思っている女性のための。ステレオタイプの「男性らしさ」「女性らしさ」といったジェンダーの枠に押し込まれることをよしとしない方々。これは、そういった方々が自由に楽しめる「3番目の性の香り」ではないかと思う。

考えてみれば、性は遠い昔から本質的には自由だった。誰がどんな髪型をし、服を着て、誰を好きになろうと自由。そういう意味では、この香水の「オム」も、この時代、リニューアルして削除してよいワードかもしれない。

「可愛いらしさ」で再び注目を集めている新生キャロン。ただその香りは歴史と伝統に裏打ちされていて、なかなか一筋縄ではいかない物も多い。一過性の人気に終わらぬようにと願う。

トロワシエム、男と女と”X”の香りの余韻を楽しみながら。

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