doggyhonzawaさんのルイ・ヴィトン / カリフォルニアドリームへのクチコミ |
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- doggyhonzawaさん 認証済
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- 54歳
- 乾燥肌
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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)・香水・フレグランス(その他)]
税込価格:-発売日:-
2020/8/8 00:44:58
夕暮れの海。日が沈もうとしている。落日の光が、水平線に近い空を黄金色に染めている。イヤホンからイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」が流れてくる。
「暗い砂漠のハイウェイ 涼しい風が髪をなびかせる コリタスの温かい匂いが あたりにたちこめる」
コリタスは砂漠に咲く花だという。だが誰もその花を見たことがない。それはある葉っぱの隠語。メキシコ語のスラング。
一日を終えてぐったりとした心と身体、夢を見させてくれる香りがほしくなるひととき。
ヴィトンのカリフォルニアドリームを肌にのせる。眼前の夕日のようなオレンジの香りがあたりにたちこめる。しっとりとそして温かく、ジューシーで、ビターオレンジ果皮の苦みも感じられるトップ。それはまさに黄色からオレンジ色に変わってゆく夕日の香りだ。
空全体にうっすらと雲がかかっている。太陽は水平線までもたずに、金色の雲の合間に消えてゆく。みるみるうちに上方の空がペールピンクに染まってゆく。
見蕩れる。その空の色に。ピンクとブルーのグラデーションの美しさに。世界が今だけ、自分のためだけにこの風景を上映していると思えるほどに圧倒的な色彩。「ホテル・カリフォルニア」の哀愁を帯びたメロディーが歌う。
「ようこそホテル・カリフォルニアへ ここはすてきな場所 いつでもお部屋をご用意して あなたをお待ちしています」
暮れなずむ海。暗くなった水平線の上は、チェリーピンクとインディゴブルーに色を濃くしてゆく。太陽は静かに姿を消し、その残光が人生の最良の瞬間であるかのように美しくあたりをいろどるとき。マジックアワー。
カリフォルニアドリームの香りが、ほんのりスパイシーに変わり始める。上空から降りてくる夕闇のようにほの暗く、ピンクとブルーが混じりあった境界の紫のようにじんわり切ない色を呈してくる。それはひとさじのグリーンなプチグレン、アニスやカルダモンのミックスを思わせる冷たいスパイス、ホワイトムスクのようにパウダリーなアンブレットシード。そこにわずかにくぐもった甘い樹脂の香り、ベンゾインがにじみ出てくるミドル。この夕闇を表したような、やや内省的で涼しげなブルーのアコードが3〜4時間穏やかに続いてゆく。あたりがすっかり闇に包まれるまで。
夜のとばりがおりる。深いブルーのベルベットのような幕が、海と空の境界をぼかす時間、ブルーモーメントが訪れる。ほんのりヴァニラのようなクリーミーさを添えてアンブレットシードのはかなくパウダリーな残香が夜を連れてくる。振り返ると、遠くの街に色とりどりの灯がともっている。日中の暑さをはらんだムワンとした空気が次第に夜の闇に吸い込まれていく。黒いシルエットになった雲の影にいくつかの星々がまたたいている。夜の静寂を切り刻むように、ホテル・カリフォルニアのギターソロが鳴き、やがて歌が静かに核心を語り出す。
「ようこそホテル・カリフォルニアへ ここはすてきな場所 いつでもチェックインできます けれどここを去ることはできない」
昼と夜の境目。温かさと冷たさの狭間。自由と孤独の境界。希望と絶望の河岸。ピンクとブルーのボーダー。そこに閉じ込められた者の喜びと悲哀をツインギターがメロディアスに奏でている。
ピンクの世界。夢のカリフォルニア。太陽が沈むまでの刹那、今、ここで、自分だけを見つめていたい情熱的な夕日の香り。
ブルーの世界。憂いのカリフォルニア。夕日が落ちてからの長い夜、ここではないどこか、自分ではない誰かを探す虚無な闇の香り。
ピンク&ブルーの矛盾したスピリッツ。カリフォルニアドリーム。1969年以来、誰もその香りをここで見た者はいない。
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