- doggyhonzawaさん 認証済
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- 54歳
- 乾燥肌
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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
税込価格:-発売日:2017/3/1
2020/7/25 08:30:17
「あー、紅茶の香りがする!」アールフレグランスのティーブレイク、この香水をつけた瞬間、そんな感想をもらす方が後を絶たない。
お茶の香りをモチーフにした香水は実はとても多い。緑茶、白茶、マテ茶、烏龍茶エトセトラ。そして紅茶をキーノートにしたフレグランスもたくさんある。だが、ティーブレイクの香りはその中でも群を抜いて「紅茶」だと思う。なぜならティーブレイクは、日本人に昔からなじみ深いあの黄色と赤のパッケージのティーバッグ紅茶の香りがするからだ。
テレビがまだブラウン管でお茶の間の主役だった昭和の頃、どこの家庭にもあった黄色と赤の直方体のパッケージ。中には黄色い袋の紅茶のティーバッグが行儀よく並んでいた。カップにティーバッグを入れて、熱いお湯を注いだ時にふんわり立ち上るコクのある香りと美しい紅色は、大人のみならず子どもたちの心もとりこにした。砂糖をたっぷりと入れて、ときどきレモンスライスを浮かべて楽しんだ家庭的な紅茶の味。ティーブレイクは家族の憩いの原風景のような、懐かしくて切ない香りがする。
アールフレグランスは、2017年に村井千尋さんが立ち上げた日本の香水ブランド。長年企業で調香に携わっていた方による日本香水のブランディングということで、伊勢丹サロンドパルファンで紹介された時も大きな話題となった。
縦長スクゥエアなボトルは全作品共通。全体に黒と金を基調にしたデザインはストイックかつオリエンタルな感じで深みがある。特に作品ごとに表現された幾何学模様は、その作品を最も象徴した図柄になっていて、想像をかき立てられる。ティーブレイクの模様は、縦に配置された波模様だ。いったいこれは何を表現したのだろう?
ティーブレイクをスプレーする。その瞬間、パッと広がるのはまごうことなきレモンティーの香りだ。それもお砂糖たっぷりの甘いやつ。子どもの頃、好んで飲んだ粉末状のレモンティー缶を思い出す人もいるはず。「わ、あっまーい!」と言いながら笑顔ですすったあの懐かしいジャパンレモンティーの風味そのもの。
ティーブレイクはやがてトップの酸味あるベルガモットが消失して、ひたすら甘い紅茶の香りが1〜2時間ほど漂い、わりとあっさり消えてゆく展開。だからこそ、トップ〜ミドルの「どこまでも淹れたてのレモンティーの香り」にこだわったような作りが、かえって潔く感じられる。よく「お茶の香り」と称しながら後半はムスクやサンダルウッドが出て「ごめん。香水だから変化するよー」とばかりに全くお茶らしからぬ香りに収束する作品はある。いや、むしろそちらの方が多いくらい。だからこそ、最初から最後まで自分たちが知っているレモンティーの香りで終わるティーブレイクは「ザ・紅茶の香り」に思えてならない。
それでもよくよく嗅ぐと、このレモンティーアコードはとても丁寧に作りこまれていることに気付く。ブランドの表記によるとダージリンやアールグレイと書いているが、まずこれらのティーノートの作り方が上手い。コクがあるのにスッキリしていて、余計なスモーキーがない。さらにほんのひとさじのフローラルを加えて、紅茶のもつ深みある香りに華やかさと清涼感を出す「かくし味」も利かせている。村井さんの前職は分からないけれど、もしかしたら食品関係の香り付けの調香をされていたのでは?と思うほどバランスのいいなめらかな調香だ。それとも単に腕のよさか?これは香水ではない。肌につけるレモンティーだ。
ティーブレイクの香りに包まれている時間は、ずっと紅茶の香りに癒され続ける至福のときだ。紅茶文化は英国経由で日本に紹介され、アフタヌーンティーの様式は明治の社交界を支えたという。やがて昭和の頃に茶葉の輸入が自由化され、一般の人々が気軽に楽しめる飲み物としてブレイクした。当時まだ高かった白砂糖をたっぷり入れた紅茶の味は、家庭の安らぎの香りとして広くあまねく浸透していった。
カップに入れたティーバッグ。そこに熱いお湯を入れる。コポコポと音を立てるお湯の流れ方は、ティーブレイクのボトルに描かれた波型模様そのものだ。そして立ちのぼるコクのある紅茶の香り。その湯気もまた波型のシンボリック。このゆらゆら描かれた模様にはダブルミーニングが感じられる。
一日の疲れも、一杯のおいしいお茶があれば、それだけですーっと抜けていくことがある。お茶は有史以前から不老長寿の霊薬として珍重されてきた飲み物。今日も一日がんばったな。そんなひと仕事のあとに、自分だけの大切な時間をおいしいお茶とともに過ごしたい。
ふー。爽やかなレモンの香り。芳醇でどこまでも晴れやかなコクのある風味。そして疲れをいやす甘さ。はー。思わず息がもれる。
さあ、おいしい紅茶を飲もう。心がほっとするティーブレイクで。
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