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ゲラン / アンソレンス オーデパルファン

ゲランゲランからのお知らせがあります

アンソレンス オーデパルファン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:30ml・9,350円 (生産終了)発売日:2008/10/10

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2021/3/27 12:41:43

こじらせている。心の中でいつも何かが戦っている。闘争の赤と逃走の青。2つが混じり合って心はずっと紫だ。「そんなの絶対許せない」と赤く燃える一方で、「本当はどうでもいい」と青い斜陽を決めこむ。心の色はそのときどきの土によって紫陽花のように変わる。赤くなったり青くなったり。それでも100%の赤や青にはなれない。ただ、紫色でいれば心は落ち着く。だから人は、ときに紫の香りを心のどこかで求めることがある。

紫の香りと言えば、まずスミレの花の香りが思い浮かぶ。バイオレットフィズという紫のカクテルの香りや味わいを思う方もいるだろう。バイオレットフィズに使われるのはニオイスミレの香りを用いたパルフェ・タムールという紫のリキュールだ。ゲランのアンソレンス・オードパルファム(以下EDP)は、そんなスミレの香りがする。

では、スミレの香りと評されることが多いアンソレンスEDPは、一体どんな香りだろうか。

アンソレンスをつけると、まず立ちのぼってくるのはベリーキャンディ風の甘さだ。スミレのシングルノートで有名なグタールのラ・ヴィオレットは、トップからグリーンな苦味が立ちのぼってくるのに対し、こちらは甘くフルーティーなイントロ。ただその下にメランコリックな紫色の香りが広がっているのがわかる。さながら、いちごアメとスミレの砂糖漬けを同時に口に入れたような赤と紫のトップ。

アンソレンスはよく「スパイラルに変化する香り」と紹介される。これはどういうことかというと、調合香料がどの瞬間にどんな感じで出るのか予測がつかず「連鎖的な変動」をしていく、といった捉えでよいと思う。例えばアンソレンスを構成している香料のうち、特徴的なものは次の3つだ。

・不二家ポップのイチゴキャンディっぽい甘さ(赤)
・バイオレットフィズのようなスミレとローズ(紫)
・おしろいやベビーパウダーのふんわりパウダリー(白)

これらの香料が同時に出てくるタイプで、ときにどれかが強く香ったり全く感じなかったりと、連鎖し合いながらバランスを変えて香り続ける展開をする。「あ、いちごアメだ」と思った次の瞬間、スミレの香りが届いたり、不意にベビーパウダーを感じたりと、ふわりふわり螺旋状に旋回しながら登りつめていくイメージ。まさに初期ボトルの半球らせん3段型のように。

香料の割合的には、ベリー:スミレ:アイリス=1:5:4くらいなので、スミレのイオノンとアイリスのイロンの香料が強い香水ではある。この2つは親戚みたいな関係なので、混じり合うように香る特徴がある。同時に、スミレの香りのイオノンβはベリー系にも含まれるため、こちらも親和性が高い者同士。つまり、この3つは常にシンクロしながら個々に香ることで、幅広い嗅覚レンジを攻められるよう化学的にセットされているわけだ。まさに、どこから何が飛び出してくるかわからない紫色の波状攻撃、黒い三連星のジェットストリームアタックそのものだ。(←また言ったよ)

付けてから5〜7時間。イオノンもイロンも、重くて揮発の遅い香料なので、ゆっくりじっくり長く揮発する。清楚で控えめなスミレの香りにほんのりイチゴ味が寄り添っているので、成熟した大人の女性の香りになりすぎず、ほんのり可憐さを与えている。決してガーリーではないストロベリーの甘さ、この配合バランスが奇跡的にすばらしい。

スミレの香りは、心がやられているとき、曖昧な状況で先が見えないとき、心を安らげてくれる鎮静効果を持っている。香りにもバイタリティがあって、元気な香りは心が元気でなければつけられないし、華やかな香りは心がオープンに開いていなければ似合わない。けれど、スミレの紫フローラルは、心が辛いときに何も言わずただそばにいてくれる。寡黙な友だけれど、誠実な優しさに満ちている。

年度の変わり目、季節の変わり目、新しい環境に飛び込んで、心が戸惑って居場所をなくしているとき、もし心がため息をついていたら、こんな香りとともに過ごしてみるのもいいだろう。心を二極化する必要はない。赤い闘争にも青い逃走にも疲れたら、白い繭の中にこもって、紫の夢を見てゆっくり沈んでみるといい。そんなとき、ゲランのアンソレンスはあなたのわがままにとことん付き合ってくれるだろう。

こじらせている。なんてすてきなことだろう。人間はもともとDNAの二重らせんでできているねじれた生き物だ。二極化を目指す世界は悲劇の色彩に満ちている。赤と青のらせんが紫の心になって世界を優しく沈静させるなら、空はいつでも紫色でいい。心も紫色のままでいい。

人間は不確かな生き物。あなたはあなたの心を守るためなら、もっと自分に傲慢でいい。アンソレンスの紫の香りがそっとささやいている。

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ペンハリガン / ガーデニア オードトワレ

ペンハリガン

ガーデニア オードトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:100ml・24,200円発売日:-

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2018/10/20 17:51:17

人恋しさに、あの人会いたさに、想いこがれる秋の夜は、純白のウエディングドレスさながらのうっとりするようなペンハリガンのガーデニアの香りに包まれるといい。

ペンハリガンのガーデニアは、1976年に誕生したガーデニア(クチナシ)のシングルフローラルのオードトワレだ。チュベローズ、ジャスミン、イランイラン、ガーデニアの花々に、スパイスとバニラを重ねた、クリーミーで悩ましい香り。いったんは忘れられた存在となっていたこの香りは、鬼才ベルトラン・ドゥショフールの手にかかってリファインされ、2009年にアンソロジー・シリーズとしてリリースされている。容量は100mlで定価は税込で2.3万円ほど。ただネットでは半額近くで取引しているところも最近では見られるので要チェックだ。

正直、このガーデニアにはしてやられた。香りこそ変化なく人工香料メインであるものの、数あるガーデニア系香水の中でも香料バランスが絶妙。そして人の心を惹きつける魔力をもっている香りだと感じる。さすがベルトラン。彼がラルチザンで創ったラペルトワなみのガーデニア香。さらには、シャネルのココマドやチャンス系に比べても負けない強い男性誘引力をも兼ね備えているように思う。

ペンハリガンのガーデニアをスプレーする。とたんに濃厚なジャスミン&チュベローズ系のホワイトフラワーブーケが強く空気を押し出してくる。甘くてしっとりしていてクリーミー。同時に背後からスッキリしたグリーンノートが広がってきて、全体の香調を引き締めている印象。この開幕5分のホワイトフローラルブーケのかぐわしいことといったらない。熱帯のフルーツのようなエキゾティックな甘さと乳製品のようなまろやかなコクをもち、そして男性の心を一瞬で奪うような妖艶な女性の色気も含んでいる。このフローラルブーケミックスは生花以上。あえていうなら、生々しい。ごめんなさい、参りました。なぜかそうあやまりたくなるようなしっとりしたグリーンフローラル。そんなトップ。

そしてそのトップの強烈なホワイトフローラルブーケが次第に柔らかくなっていくミドル。香りの変化はほとんどなく、香りじたいが引き波をたてながらゆっくりと時間の経過とともに柔らかくなっていく印象。ラストもまた然り。付けてから8時間たっても、まだ付けたところにうっすらとホワイトフローラルが漂っている感じの消え方。わずかに石鹸ぽいムスクの雰囲気は感じるけれど、全体の印象が確かにガーデニア。クリーミーで甘い。最初から最後まで肉厚な白い花の蜜の香りに包まれたままフェードアウト。

気を付けなければいけないのは付け方だろう。シングルフローラルながら本当に拡散力が強いので、この作品に関してはウエストより下に付けることを全力でお勧めしたい。くるぶし、ひざ裏、太もも、ウエストなどのお好みの場所に、左右1プッシュずつで十分だろう。それでも量が多いと感じる方は、ロールオンアトマイザーに移し替えて塗布量を調整するといい。

ペンハリガンのガーデニアは、ボトルこそカチッとしたこれまでの英国風ではあるけれど(リボンも立ってるし)、香りに関してはセンシュアルで男心を揺らめかせる甘く危険な香りだと感じる。久々の「あまりにいい香りなのでつい後ろからついてきましたええもしよかったらお茶でもいかがですかああすみませんそりゃそうですよねではせめてお名前とその香水だけでも教えていただけませんかそれとラインIDも」的な男に気を付けてほしいかもしれない香り。秋だからね、人恋しくて落ちてる人はたくさんいる。そんなときにこんなふんわりフローラルを纏った女性が目の前を通ったら、男たちの理性はあっという間に吹っ飛んでしまうかもしれない。いや失礼。俺は吹っ飛ぶ。香りにつられてついていったらごめんなさい。(←久々だな確かに。)

夏咲きのクチナシの木は、春のジンチョウゲ、秋のキンモクセイとともに「三大香木」と呼ばれるほど芳香の強い花を咲かせる。アジア原産のこのクチナシは海外に渡ってガーデニアと呼ばれ、欧米ではダンスパーティーに誘う女性へ贈る花として有名になり、プロポーズの時やウェディングブーケにも使われる幸福の花となった。花言葉も「優雅」「洗練」「喜びを運ぶ」などがあり、恋や愛の花としても知られている。ガーデニアの花の香りには、そんなたくさんのメッセージが込められているのだ。

クチナシの香り、メッセージ…。懐かしい歌のフレーズが浮かぶ。

「雨上がりの庭で クチナシの香りの…」

やさしさに包まれたなら、目に映る全てのものは愛のメッセージになるだろう。

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Sylvaine Delacourte(シルヴェーヌ・ドゥラクルト) / Dovana

Sylvaine Delacourte(シルヴェーヌ・ドゥラクルト)

Dovana

[香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

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2022/1/21 22:18:45

「香水沼をのぞいてみたら『寝香水』という概念が当たり前のように飛び交っていて驚いた」

少し前、SNSでそんなつぶやきを目にした。あー、そう言えばそうかもなと思う。ちょっと香水関連をのぞくと

「今夜はドゥーブルヴァニーユを寝香水に」とか「寝る前にミルクムスクをつけてオフトゥンへ」みたいなつぶやきが確かにある。どれくらい浸透しているかは定かではないが、確かに香水好きな方には当たり前に通じる気がする。

「寝香水」と聞くといくつか思い浮かぶ作品がある。特におすすめは?と聞かれたら、まずはシルヴェーヌ・ドゥラクルトのドヴァナを挙げる。

「ドヴァナ」とは、バルト海沿岸の国々で「プレゼント」を意味する言葉、と公式サイトにあった。シルヴェーヌ女史は動画でこう紹介している。

「ドヴァナは、夜ベッドに入る前にスプレーする香水。そうすれば絹の繭のようなコクーンムスクが、あなたをパシュミナのように柔らかく包みます。」

思いきり「寝香水推薦」している!

かつて香水帝国ゲランのクリエイティブ・ディレクターを務め、数々の試みで屋台骨を支えてきたシルヴェーヌ・ドゥラクルト。ドヴァナは、独立後に自身のブランドからリリースした「ムスクコレクション」の中の1本。ではいったいどんな香りなのか?

コロンとしたなで型の可愛らしいボトルからスプレーする。するとまず最初に感じられるのは、思いきりパウダリーでほんのり甘いアンブレットシードの香り。ちょっとクールなフローラルの風合いもあって、とてもスッキリしたイントロ。真っ白なベビーパウダーにほんのり花の蜜をくぐらせたかのよう。むせかえるほどのパウダリー。そして甘い。力が抜ける甘さ。

つけて5分ほどすると、甘さと白いパウダリーは、これでもかとふくらんでくる。まるでふわふわの水鳥のダウンに包まれているかのよう。軽くて、ほんのりくすんだ紫色のヘリオトロープの花の香りと、スミレの暗さを感じさせるアイリスの粉感が、どこまでもコナコナ攻めてくる。そこにほんの少しクマリンやココナッツも入っている。紫の花のわずかな影と真っ白な粉の匂いがオーバードーズしてくるミドル。思いっきりタルカム。悶絶級パウダリー。

これはもうなんというか、大きな愛情で全てを包み込むようなママの香りといってもいいくらいの包容力。柔らかな女性の肌に超絶合う香りだと思う。こんな香りの女性がそばにいたら、一流企業の社長でさえ「ばぶばぶ〜♪」と赤ちゃんプレイして甘えていってしまうのでは?(←やめなさい)

そして同時に、布団や毛布、シーツや枕などからこの香りがしても、全く問題ないのではと感じる清潔感あふれるソーピーパウダリーでもある。心が優しく、とても穏やかになる系統の香りだ。聞くところによると、新型なんちゃらが始まってメンタルがかんちゃらしてしまったシルヴェーヌ女史が、マスク生活の中で一番つけていた香りがこのドヴァナだったという。

狂おしいほどのふんわりパウダリー、それが6〜8時間ほど続くと、ラストはカシミアムスクの甘くソーピーな感じで終息する。このへんはムスクコレクションの他の香りとも共通しているように思う。思えばシルヴェーヌがゲラン在籍時にリリースしたランスタンやランスタンマジーも濃厚パウダリーだったから、彼女は本当にこうした系統が好きなんだろう。自分の中ではシルヴェーヌ・ドゥラクルトは「最強パウダリー党党首」に君臨している。

人は心に不安が続くと、穏やかで優しいものを無意識に求めようとする。香りにも、そんなふうに自分を包み込んでくれるものを求めるのかもしれない。ドヴァナを購入した際についてきた小さなブックレットの方には「ドヴァナとは、リトアニア語で『贈り物』を意味する」と明確に書いていた。リトアニア?そうか。ネットの方ではいろいろ配慮して「バルト海沿岸の国々」とぼかしたんだなと気付く。

リトアニアはナチスドイツやソ連の侵攻を受け、そこから独立して立ち上がった共和政の国だ。そして、杉原千畝の偉業が残る地。ドイツ軍侵攻が迫る中、彼はユダヤ人を助けるため、自身の判断で寝る間も惜しんで日本経由のビザを発給し続けた。そして6000人ものユダヤ人の命を救ったという。

リトアニアの「贈り物」。そう聞けば、真っ先に思い浮かぶのは、杉原千畝の「命のビザ」だ。だが、誰もが彼みたいに多くの人を救えるわけではない。それでも、少なくとも自分の機嫌くらいは自分で救ってやりたいものだ。

ドヴァナはそんな人への贈り物だ。羽のように軽く、赤ちゃんの匂いのように甘く、そして女性本来の肌の匂いのようにどこまでもミルキー。

今宵シルクの繭のパウダリーに包まれて 
天使のように心安らかに いい夢が見られますように

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ゲラン / ローズ バルバル

ゲランゲランからのお知らせがあります

ローズ バルバル

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:100ml・49,500円 / 200ml・70,290円発売日:2006/11/15 (2021/9/1追加発売)

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2022/4/30 02:05:45

「カルメン!いつになったら振り向いてくれるんだい?」
「さあね、分からないわ。でも、今日でないことは確かね。」

世界中で愛されているオペラ「カルメン」の第一幕、大勢の男たちに言い寄られるジプシー娘、カルメン。彼女は鼻をツンとあげて次々と男たちを傷つける。棘だらけの野バラのように。

この歌劇「カルメン」をアートボードに据えた香水がある。ゲランの「最高素材による香水」シリーズ、ラールエラマティエールの最初の3作品として2005年に出たローズバルバルだ。ラールエラは2021年ボトル変更と共に、1つ1つの香水にアートイメージを添えて新生した。公式サイトでは『野生で反逆的な赤いローズ』と紹介されているローズバルバル、それはどんな香りなのか?

洋酒ライクな新型角ボトルからローズバルバルをスプレーする。つけた瞬間に広がるのは、爽やかに抜けていくハーブ様の透明な香り。これがフェヌグリークだろうか。ほんのりセロリ様の感はある。すぐさま追いかけてくるのはワクシーな薔薇の香り。薔薇の口紅によくある感じ。これはアルデハイドC-11の艶めいた香りだ。ピンク色のローズ・ド・メイを表しているのだろう。芳醇でボリューム感があり、ふんわりと漂う八重の薔薇の香り。けれど気を付けないとその棘で痛い目に合う。さながら官能的な見た目で男たちを魅了するカルメンの登場のような華やかなトップ。

5分後、わずかに蜜の香りが奥から感じられてきて、バラの香りがフルーティーに変わってくる。それはライチのようにみずみずしくピーチのようにふくよかな2つめの薔薇香だ。先ほどのワクシーローズよりも軽く、甘くかぐわしい。色に例えるならこちらの方がピンクだけれど、これが真っ赤なローズダマッセナの香り。公式サイトに「ダーマシーナローズ」と書かれているダマスクローズの香りだ。このフルーティーさは本当にすごい。もともとダマッセナが持っているフルーティーさに、ピーチ香がするアルデハイドC-11を合わせて増幅しているように思う。ミツコに使われた手法だ。

このミドルのフルーティーローズがこの香水の全て。これはバルバル(野蛮)ではない。男心をメロメロにする完熟果実ローズボムボムだ。

どんな男も、ひと目でカルメンに恋してしまう。それでもただ一人、群衆の中で彼女を見もしない男がいた。カルメンはその兵士に心を惹かれる。なぜ彼はあたしを見ないの?つかつかと歩み寄って、胸の谷間に入れていた花を男に向かって投げつける。それは弾丸のように男の心を撃ち抜いた。有名なアリア、カルメンの歌う「ハバネラ」が、兵士ホセを恋に引きずり落としてゆく。

”愛してくれない男を好きになる でも私に惚れられたらその時はご用心”

絡み合う視線。火傷しそうな心の熱量。カルメンの棘はホセの身体を貫き、真っ赤な血潮をたぎらせる。その噴き出す血を浴びた喜びのように彼女は歌い踊り、赤いドレスをひるがえす。

2人は激しく燃え上がり、そして互いに傷付け合い、やがて破局を迎える。

野蛮な薔薇。

つけて30分、ローズバルバルはこの上なく柔らかくセンシュアルなライチ&ピーチの薔薇になって続いていく。どこまでもカルメンを愛そうとするホセの心のように。ラストは、ほんのりパチュリのアーシーが効いたまっすぐなフルーティーローズの香りが引き波を作ってゆく。時間にして8〜9時間。どこまでも緩やかに優しく。

カルメンはすで新しい男、闘牛士に恋をしていた。すがるホセを冷たく突き放すカルメン。それでもホセは彼女の匂いから離れられない。復縁を迫り続ける。

彼女のローズ口紅の香りが忘れられない。ライチのような薔薇肌の匂いが狂おしく心をかき乱す。彼女が愛した2つの薔薇の匂いが憎しみを増大させる。その妖艶なのに清純な薔薇&薔薇への嫉妬にあらがえず、ホセは遂に短剣を握りしめる。彼女の匂い全てがあの闘牛士の元へ行くなら、いっそこの手で…。

闘技場の中でひときわ大きな歓声が上がる。カルメンの新しい情夫となる闘牛士が、赤いムレータで牛を誘いこみ、鋭い剣で牛の肩を突き刺したのだ。カルメンはホセの腕を逃れて闘技場の中へ入ろうとする。

そのとき

ホセの短剣がカルメンの赤いドレスに突き刺さった。地面にぽたぽたと薔薇の花びらが広がってゆく。

闘技場の中で、赤い布に包まれて牛が倒れる。
闘技場の外で、赤いドレスのカルメンが手折れる。

一人の男が歓声を上げる。男の一人が天を仰いで慟哭する。
2人は 出会った頃の女の歌を思い出している。あの日 真っ赤な薔薇は自分に微笑えんでいた。

”あたし好みの男はそうは居ない 週末だというのに 私を愛する人はいないかしら?”



いいところにいたわ

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ラボラトリオオルファティーボ / ヌン(Nun)

ラボラトリオオルファティーボ

ヌン(Nun)

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

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2019/6/22 13:29:37

「はじめこの世界には『原初の水』ヌン(Nun)しかなかった。やがてその水面に美しい太陽のような形のハスの花が咲き、そこからラーが誕生した。ラーはヌンより出でて他の神々を生み出し、自身は太陽神として世界を支配した。」

古代エジプトにはさまざまな神話がある。中でもひときわ興味を惹くのがこの太陽神ラーの誕生に関する話だ。そこには原初の水と呼ばれるヌンが世界の最初にあったこと、そしてハスの花が咲き、世界を統べる神が誕生したことが語られている。

その世界創造の「原初の水」をモチーフにした香水がある。ラボラトリオ・オルファティーボのヌン・オードパルファムだ。

ラボラトリオ・オルファティーボは、2010年にイタリアで誕生したニッチフレグランスメゾン。かのメディチ家の時代からイタリアには星の数ほどの香水メゾンが存在しているが、この「嗅覚の研究室」と銘打った新進気鋭のブランドは、マーケティング度外視で力のある調香師に自由に作品を創ってもらおうという主旨で香水をリリースしている。ではそんなラボラトリオから2016年にリリースされたヌンとはどんな香りだろうか?

ヌンをスプレーする。その瞬間、立ちのぼってくるのは透明感のある優しいホワイトフローラルだ。水のようにスッキリした香り、柔らかな甘さを伴ったペアー、そしてクチナシ様のクリーミーな白い花の香りが豊かに広がる。

何だろう。何度かいでもこのトップには心がとろけそうになる。←お前だけな

メゾンによる香りの構成を見ると、トップの香料はベルガモット、レモン、洋ナシ、ネロリなどのよう。ただ一緒にハスの花のみずみずしい香り、ロータスノートが出てくるので、実際はかなりウォータリーに感じられる。ウォータリーといえば、これまでのキュウリやスイカ、メロンを思わせるもわっとした野菜系の香りを思い浮かべる方もいると思うが、ヌンのウォータリーは全く違う。

これまで数多くウォータリーな香りを体験してきたけれど、ヌンほどみずみずしくスッキリ感じられる水系の香りはなかった。そう思う。

ポイントはわずかに使用していると思われる洋ナシ、ペアーのジューシー感だろう。それがロータスの少し冷たい感じと相まってリラグゼーションを引き出している。この取り合わせはありそうでなかったかも知れない。

やがて5分もするとトップでわずかに感じられたシトラスは消失し、クリーミーなホワイトフローラルがふんわり広がってきてとてもフェミニンな雰囲気になる。わずかにグリーンのエッジをもっている花の香りだ。チュベローズの感じやヒヤシンスの感じもあるちょっと涼しげなアコード。トップの香りが水だとすれば、ミドルは明らかに水面に咲いた白く輝くようなスイレンの趣。

一般にロータスといえば、水面から長い茎を伸ばしてピンク色の花を咲かせるハスを思い浮かべることが多いが、古代エジプトで神々の花とされたのは水面で咲くスイレンの方だったようだ。1億4千万年も前からこの地球上にあるといわれる最古の花、ロータス。まさに原初の水から生まれた世界最初の花といっても過言ではないだろう。ヌンのミドルは水とスイレン、両方のアコードを持っている。

やがて4〜5時間すると香りは全体にうすれてくる。香りがほぼ変化せず、ミドルの白い花の香りのままドライダウン。終始ココナッツのようなクリーミーなヴェールがかかっているようにも思うが、試しに別ブランドのココナッツウォーターと同時につけ比べたら、そんなことはなかった。ココナッツにある特有の塩バター風なテイストがなく、ヌンの方が温度感も低くよりみずみずしい。

全体的な香調は、ペアーの効いたフルーティーなウォータリーと、ミドルのエキゾティックなホワイトフラワーに支えられている。それがそのままドライダウンというイメージ。原初の水から日の出とともに白い花を咲かせ、やがて静かにその花弁を閉じていくロータス。まさに盛夏にふさわしい香りだと思う。同じロータス系ならエルメスのナイルの庭より水辺の雰囲気がある。

夏。水面に広がるまるい緑の葉は、人の心にいっときの涼を与えるとともに、命についてふと考えさせる。ロータスは古代エジプトにおいても、命の再生を司る神々の花だった。やがて仏教などでも神々しい花として珍重されていったロータス。原初の水ヌンとは、人にしてみれば母の胎内で自分を包んでいた羊水といっても過言ではない。その絶対的な安らぎとぬくもりの中で命は育まれ、脈々と紡がれてゆく。人もまた水の中から生まれ、水を体内に巡らせ、水と共に生きている生き物だ。その本質はハスやスイレンと何ら変わらない。

原初の水ヌン、それは世界のはじまりの水の香り、泥中にあってなお清らかに咲く命の花の香りだ。

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Neroli&Jasmineさん
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