19件中 16〜19件表示

doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 52歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
ディオール / タンドゥル プアゾン

ディオール

タンドゥル プアゾン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:- (生産終了)発売日:-

5購入品

2018/2/4 01:06:12

「なぜディオールはこの香水を廃盤にしたのか?」ここ何年も、世界中で常にそんな声が囁かれている。数ある廃盤香水の中でも、特に再販が強く望まれている作品、それがディオールのタンドゥル・プワゾンだ。

「優しい毒」。そう名付けられた2作目のプワゾンは、元祖プワゾンの驚異の大ヒットから9年後、1994年にリリースされた。日本ではバブルもすでに終わりが見え始めていた頃。正確な資料はないけれど、2002年くらいにはすでに生産が終了していたようだ。前作にはなじめなかったものの、この作品は好きだという新たなファンも獲得した香りだけに、懐かしさと稀少性から、保存状態のよい中古品を躍起になって探している方が多い作品としても有名だ。

そんなタンドゥル・プワゾンはどんな香りかというと。

ベロニク・モノがデザインした毒リンゴを思わせるボトルから、透明キャップを外してスプレーする。付けた瞬間、白い濃厚なフローラルが一気に花開く。誘惑するようなチュベローズ、そしてちょっと冷たい雰囲気のフリージアの香りが感じられる。グレのカボティーヌやアニエスbの旧ルベーのトップを彷彿させる白いフローラルの爆発だ。そしてすぐに背後からグリーンノートがスッキリと広がってきて、確かにクリアーな黄緑ボトルのイメージにかぶさる。

やがて、チュベローズの濃厚なセンシュアルとフリージアの背後に、どこか不思議な苦みが感じられてくる。ガルバナムではない。調べてみると、わずかに使用されているアサフェティダと呼ばれる樹脂様のスパイスのようだ。これは通常では腐ったニンニクやドリアンのような悪臭を放つが、加熱することでオニオン様の匂いに変化するという。そのわずかな「異臭」を効かせることで、グリーン&フローラルの小ぎれいなフェミニンさに、どこか不穏なテイストを醸し出しているよう。インドールっぽいように感じるのはこのスパイスではないかと思う。

トップで濃厚に花々が香り立つせいか。ミドルはどちらかというと、グリーンなさっぱりした香りが前面に出て、その背後にチュベローズ&フリージアが漂っている感じで流れていく。何度も鼻を近づけていると、確実に鼻が利かなくなる強烈な強さ。このへんは、オリジナルのプワゾンゆずり。どうしてどうして優しくはない。

それでも、甘くて暗い闇の世界へ誘うような元祖プワゾンに比べれば、これはまるで正反対。さながら昼に用いる対の香り。たぶんそういう位置づけなのだろう。2作目として発売された黄緑のタンドゥル・プワゾンはデイタイムに、そしてアフター5には濃厚な紫の毒を用いるというような。発売当時はそんなコンセプトだったのではないだろうか。

ラストは、石鹸様の香りが強く主張してくる。タンドゥルが多くの女性に人気があるのは、このミドルからラストにかけての穏やかな香りを好む方が多いせいかも知れない。フローラル&グリーンが減衰していくと、ラストはムスクが強く表出してきて混じり合う。これは濃密な花の蜜を混ぜた石鹸の香りだ。昔から石鹸は合成ムスクで香り付けされてきた経緯があるので、「石鹸の匂い=合成ムスクの香り」という場合が多い。タンドゥルには、ベースにかなりの量のムスクが配合されているように思う。このムスクが強く出てくる頃には不思議な苦みも消え、ただただ湯上りの肌から香り立つ清潔なシャボンの匂いに、ふくよかなチュベローズととろけるようなハニーノートが効いてくる。このあたりの残香が、女性には安心感とリラックス感を与えるのだろう。女性らしさと清潔さ、スッキリした感じが強く出てくるラストだ。

持続時間はとても長い。8〜10時間近くも残り香が漂う。トワレでもこの賦香率だ。間違っても手首やうなじなど、肌を露出している部分には付けてはいけない強さ。これは、初代プワゾンを作らせたモーリス・ロジェが、YSLのオピウムの大ヒットに対抗するために「今までになく持続する香りを作れ」という指示を調香師エドゥアール・フレシェに出していたからと言われている。優しい毒とは言いつつも、フレシェはこの点に関してはオリジナル同様の強烈な残香性を継承している。

付け方はウェストや内ももに1〜2プッシュ、これだけで十分だ。体温で温められた香りが上へ揮発していく間に、自然に柔らかくなっていって服の間からほのかに漂っていくことだろう。そんな上手な付け方をしたときのタンドゥル・プワゾンはかなりヤバい香りだ。誰かがフラフラとついてきても責任はもてない。

タンドゥル・プワゾン。それは、ほんのり甘くかぐわしい、花の蜜とシャボンの香りの誘惑。その優しさに柔らかく心うばわれ、人はいつしか緑の毒に体を染められてゆく。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 51歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
ディオール / ヒプノティックプワゾン

ディオール

ヒプノティックプワゾン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:- (生産終了)発売日:-

6購入品

2017/2/4 15:48:38

ヒプノティックプワゾンは、とても危険な香りだ。この香りを嗅いだ人は、その魅力にとり憑かれて偏愛するか、あるいは全力で嫌悪感を露わにするかのどちらかだという。まさに、毒にも薬にもなりうる妙薬。心のどこかでワーニングベルが鳴り響く。Fight or Flight? 足を踏み入れるのか、逃げるのか?ヒプノティックプワゾンは、理性の奥に潜む本能に、常にそう問いかける。

ヒプノティックプワゾンは、80年代にディオールを復活させた香りの立役者とも言うべき、プワゾン(1985)のシリーズ3作目にあたるオードトワレだ。プワゾンの大ヒットを受け、ディオールは、その後シリーズを加えていった。2作目に当たるタンドゥル(1994・現在廃版)を経て、ヒプノティックは調香師にアニック・メナルドを起用し、1998年にデビューしている。

ヒプノティック・プワゾン=催眠毒。英語でもフランス語でもどちらも表記は同じだ。再び世界中にプワゾンの中毒者を増やそうという強い意図が感じられるネーミングだ。それは、杏仁豆腐の香りを思わせるビターアーモンドと、まろやかなココナッツやジャスミン、ベースのスパイシーなヴァニラが心に残る香りだ。

ヒプノティックをスプレーすると、まずはじめに漂うのは、プラム系のフルーティーでダークな甘味と酸味。ちょうど、チェリーコークやドクターペッパーの一口めに鼻に抜ける雰囲気にも似ている。そしてすぐにツンとくるビターアーモンドエッセンスの香り。杏仁霜の代わりに杏仁豆腐に数滴入れる香料で、クリーミーさと粉っぽさが特徴の杏仁霜に比べると、刺すような苦みと独特の暗いコクがある。このトップは、上述のドリンクを薬っぽいと感じる方はすでに「あ、無理」ととらえるだろう。ヒプノティックはトップから明確に人を選ぶ。

3分後、ここからは、付ける場所やその人の体温、気温、湿度、その日の気分によって、感じられる香りがかなり異なる。つまり、日本語で言うところのシンクロノート。

例えばある日、それは杏仁豆腐の香りにペッパーのようなスパイスがきいた香り。それが長時間続く。暗かった甘さが少しずつ温かくなって、やがてセンシュアルなヴァニラとなって収束。

例えばある日、それはやや甘いジャスミンやココナッツの香りも漂わせたスパイシーなフローラル。シナモンのようなじわりと痺れるような香りをきかせたまま、甘くないヴァニラの香りで消失する。

また別の日、それは苦々しいアーモンドと暗いウッディの香り。お香のような凛としたスモーキーさをまとったまま、わずかにヴァニラのクリーミーさを伴ってドライダウン。

自分でさえこうなのだ。毎日、同じ場所に付けていても、その日の天候や気温、自分の状態で、感じられる香りがかなり異なる。ただ、共通項をくくり出せば、ビターアーモンドのギリギリした苦み、鼻がムズムズするようなスパイスの香り、そして、主張は強くないものの、一貫してベースに流れている優しげなヴァニラ。この3つは、強弱は異なっても、毎回感じられる特徴だ。そして、とてもドライ。ただ、出てくる甘さは人によって出力が異なるようだ。自分の肌は体温高めなせいか、あまり甘さは感じられない。人によってかなり香り立ちが異なる香り、それがヒプノティックだ。

作り笑顔。社交辞令。上司や同僚、周囲の知人への必要以上の気遣い。なんかそんなもの全部取り払って、ドライに生きたい。勝手気まま、わがままに過ごしたい。ヒプノティックはそんなとき、自分の逆立った神経を落ち着かせてくれるような香り。プワゾンがどこか蠱惑的な媚薬の暗さをもっているとしたら、ヒプノティックは、いつの間にかとげとげしくなっていた感覚を麻痺させ、リラックスさせてくれるような温かみをもっているように思う。

催眠とは、心地よく人を眠らせることではない。人の意識レベルを顕在意識から潜在意識レベルに誘導し、治療者の暗示のままに動かすセラピーの一つであり、悪用すれば相手を意のままに操ってしまえる危険性をもはらんでいる。だからこそ、心理的な悩みを改善する目的で行われる催眠療法(ヒプノセラピー)は、十分に訓練を受けた者によって行われなければならない。そういう意味で、日本ではまだまだ医学的治療法として明確に確立できていない分野である。

赤い蝋燭の火が目の前に灯される。凝視するよう指示される。穏やかな声が語りかける。やがて数字がカウントダウンされる。フロイトはヒステリーの研究で催眠を行う過程で、無意識と名付けられる深淵な存在を知るにいたった。

ヒプノティック・プワゾンは、とろけるような甘苦い毒。無意識の領域に染みてゆく誘惑。その暗示にかかるのは、あなた?それとも…。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 52歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
メゾン フランシス クルジャン / ア ラ ローズ オードパルファム

メゾン フランシス クルジャン

ア ラ ローズ オードパルファム

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:35ml・22,440円 / 70ml・36,300円発売日:2014/10/1

ショッピングサイトへ

5購入品

2018/5/19 21:16:22

ここに一枚の肖像画がある。夜のとばりが下りた庭園で、一輪の薔薇を手にした貴婦人の姿が描かれている。ダチョウの羽を飾った盛りヘアスタイル。透明感あるレースやリボンが可憐な青のドレス。そして夜目にも白くなまめかしい肌の質感。この女性の名はマリー・アントワネット。これは彼女がフランス革命で処刑される6年前、宮廷画家であったヴィジェ=ルブランによって描かれた有名な肖像画だ。

絵画題は「薔薇を持つマリー・アントワネット(1783)」。原題は「マリー・アントワネット・ア・ラ・ローズ」。彼女が手にしている薔薇はセンティフォリア・ローズで、王妃がこよなく愛した強香種のオールドローズだ。マリー王妃は常に体のどこかに薔薇をあしらっていたほど、薔薇の香りを好んでいたという。

今をときめく調香師フランシス・クルジャンは、この肖像画からインスピレーションを得て、日本の女性のためにア・ラ・ローズを創作した。では、クルジャンはいったいこの絵からどんな香りを思い描いたのだろう?

ア・ラ・ローズをスプレーする。その瞬間、穏やかなシトラスミックスが一瞬感じられ、すぐにその酸味の下から柔らかくスッキリしたローズ香がただよってくる。透明感があるライチ様のフルーティーな甘さも感じられる、デリケートなピンク色の薔薇の香りだ。体温低めの方は最初にグリーンな香りが出るけれど、シャープさはひかえめで青臭くはない。逆に、体温高めのところに付けると、すぐにフルーティーな甘さが出やすい。そんなトップ。

3分後。柑橘は消え、とても上品なピンク色の薔薇の香りに落ち着いてくる。香り立ちは弱め。付けて5分なのに、つけた場所にかなり鼻を近づけないと香らないほどだ。それでもこの薔薇の香りじたいはとてもナチュラルで好ましい。女性の可愛らしさが感じられるフルーティーな薔薇の香りがしてくるミドル。

やがて30分ほどすると、薔薇の香りが変化して、しっとり落ち着いた低音を醸し出してくる。同時にパウダリーな柔らかさが広がってきて、心落ち着く香りになる。クレジットにバイオレットとあるけれど、スミレの香りそのものではなく、スミレ香料のパウダリーなファセットが出てくるイメージ。このミドル後半の香料のバランスがとてもいい。薔薇の香水というより、女性のお風呂上がりの上気した肌から薔薇石鹸とシャンプーの香りがほんのり立ち上るといった感じになってくる。清潔で大人っぽい落ち着きを感じさせるミドル後半。

そして付けて2時間もすると、薔薇の香りはかなりうすらいでラストになる。構成ではシダーとあるけれど、そんな香りはしない。柔らかな合成ムスクがたくさん使われているやや甘めのパウダリーなラストだ。クルジャン独特のまろやかなムスキーとでも言うのか。ラストは穏やかに長く5〜6時間は静かに漂っている。あるいはそれ以上。

香りの特徴をまとめると、まずはとても淡い香り立ちのオードパルファムだということ。このへんは値段との兼ね合いも含めて賛否両論分かれるところだろう。70mlで2.8万という値段を考えたとき、薔薇系の強い主張を求める人は香りに物足りなさを感じるかもしれない。ただ、そこから立ち上る2種類の薔薇の香りは、前半が可愛らしいフルーティーな薔薇、後半がしっとり落ち着いた薔薇といったように違いが明確で面白い。前半がピンクのセンティフォリア、後半がターキッシュローズアブソリュートだろうか。そこからヴァイオレットのパウダリーと相まって、まろやかムスクへとスライドしていくところはとても美しい変化。さながら、少女から女性へと変わっていく成長を2種類の薔薇で表し、その後のパウダリー&マイルドなラストで、母性への進化を表現したように感じられる香り。

それこそが、この肖像画からクルジャンの受け取ったイメージではなかったろうか。この絵には、オーストリアから輿入れして孤独だった少女の頃の可愛らしさ、フェルゼンに恋をして身に付けた華やかさと女性らしさ、そして最愛の子供らに注いだ母としての優しさ、全てがこめられているように思う。たとえそこに為政者の后としての自覚は少なかったにしても。

気高く咲いて美しく散った彼女の人生、それはまさに薔薇そのもの。かつてベルサイユ宮殿に咲いた大輪の花、マリー・アントワネット。

クルジャンのア・ラ・ローズは、そんな彼女に捧げた、フランス版「ベルサイユのばら」の香りなのだろう。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 52歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
ジャン ポール・ゴルチエ / ル・マル オードトワレ ETS

ジャン ポール・ゴルチエ

ル・マル オードトワレ ETS

[香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:75ml・7,700円 / 125ml・10,450円発売日:-

5購入品

2018/9/22 20:49:30

「その男がね、すごいきつい香水つけててさー」背後から聞こえたセリフに、思わず振り向きかける。週末の夜、狭くて騒がしい居酒屋でのこと。ついたてを隔てた後ろのグループは20代後半とおぼしき女性たち。自分は向かいの同僚の愚痴につきあいながら、背中ごしに聞こえる香水の話に聞き耳を立てた。

「うちの会社来るたびに用もないのに受付に寄ってきてさ、いい店知ってるから行かないかとか、昼間から誘ってくるのね。で、そいつのつけてる香水がきつくて耐えられなかったのー。」

「へー、どんな香りなの?」一緒の女性に聞かれると、背中越しの声は投げやりに答えた。

「なんかスパイシー的な?どこのブランドかわかんないけど、ボトルがさー、緑色で男の裸の形してんの。知ってる?」

思わずうんうんと頷きそうになった。『たぶんそれゴルチェのル・マルだよ。』教えてあげたかったけど、レモンサワーと共に飲みこんだ。そうか、ル・マルかあ。確かに強くてエロい香りかもな。そんなことを思いながら。

ル・マル・オードトワレは、ジャン・ポール・ゴルチェから1995年にリリースされた、ブランドのファースト・メンズフレグランスだ。調香は今をときめくフランシス・クルジャンで、彼自身のデビュー作でもある。男性のボディを型どったトルソーボトルは、そのままではヤバイくらいの造詣なせいか、缶ケースに入れて販売された。ちなみに発売当時はゲイの方々に大人気だった。

ル・マルをスプレーすると、まずトップから感じられるのは、クールなミントの香りだ。ラベンダー独特のじんわりとした清涼感もすぐに感じられる。ミントとラベンダーとくれば、ダビドフのクールウォーター(1988)の影響が見てとれる。ル・マルは、クールウォーターに比べるとネロリのこんもりした香りがない分、とてもスマートでシャープなイントロだ。クールな外国人イケメンといった風情。

5分ほどすると、暗いスパイスがじわじわ感じられるようになってくる。シナモンとクミンだ。これらがラベンダーの背後から妖しく香り出す。このミドルの暗いスパイスミックスがヤバい。心を惹きつけられる狂おしさがある。やがて、そんな清涼感ある暗さがヴァニラのベールに包まれてまろやかになってくるのが分かる。わずかに甘さが出てクリーミーなスパイス香になる。気難しいイケメンと思っていたのに、実は人あたりがマイルドで、何事にも臨機応変に対処できる柔軟性をもった男。そんなイメージのミドル。

そんなミドルが約4時間ほど続くと、香りは穏やかなウッディ&アンバーのやや焦げたような香りを呈して終息していく。最後までシナモンのスッとした感じを残したまま、ヴァニラとウッディに支えられて温かく終わる印象。枕やブランケットに残る男の体臭のようなセンシュアルな残香。驚くことに8時間ほど香りが残っていることもある。トワレにしてはかなりロングラスティングな部類だ。

してみると、ル・マルの創作にはメンズの名香といわれるゲランのジッキーとダビドフのクールウォーターの影響が少なからずうかがえる。ル・マルはジッキーの基本骨格であるラベンダー&ヴァニラのコンボを中心に据えつつ、クール・ウォーターやポロスポーツで印象的に使われたミント&ハーブをトップに持ってくるという合わせ技を用いている。そこにスパイスの辛みとウッディの温かみを効かせたことで、ミントとラベンダー、ヴァニラ、それぞれの長所をうまくつないでいる。

「でもさ、9月に入ってから、もうそいつ、来なくなったんだー、たぶん配置換え。」不意に思考が引き戻される。さっきまでひとしきりその男をネタに笑ったり、罵倒したりしていたトーンが少し変わったことに気付く。やや鼻にかかったような声。酔いが回ったのだろうか?いや、たぶん…。

ぐすっと鼻をすする音がした。女友達がなだめるように何かささやいている。たぶん彼女たちも察したのだろう。男がふだん使っている香水のボトルまで見ているということは、たぶんそれなりに親密だった関係。

「だからさ、もうあのくさい香水、かぐことないんだけどさ、でもなんかねー、時々なんかねー、思い出すっていうか…」

連れが会計のために立ち上がり、自分も居酒屋を後にしたのでその先を聞くことはなかった。

いつの間にか涼しくなった夜風を感じながら、ネオン街を歩き始めた。街にはくすんだ夜の匂いが漂っていた。あの子はいつかまたくだんの男と街ですれ違うだろうか。何年かたって互いに風貌が変わっても、そのとき気付くだろうか?そんなことを考えた。

きっと気付かないだろう。それでも同じ香りをつけた人と街ですれ違ったら、きっと振り向いてしまうんだろうな。そしてそのとき思い出すのだろう。

あのル・マルの男を。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品

19件中 16〜19件表示

ルイーサさん
ルイーサさん 認証済

ルイーサ さんのMyブログへ

プロフィール
  • 年齢・・・40歳
  • 肌質・・・混合肌
  • 髪質・・・普通
  • 髪量・・・多い
  • 星座・・・牡牛座
  • 血液型・・・O型
趣味
  • 食べ歩き
  • ダイエット
  • マンガ
  • 旅行
  • 音楽鑑賞

もっとみる

自己紹介

イエベ秋(自己診)の地黒奥二重しじみ目。 最近太ったので鋭意ダイエット中。 続きをみる

  • メンバーメールを送る