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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
税込価格:-発売日:-
2021/2/5 22:21:24
第一印象は「甘っ。外国の駄菓子か?」
いつも参考にしているfragranticaだとビターオレンジ、公式サイトによるとビガラードの砂糖漬け。確かに、じゃりじゃりと結晶化した砂糖の質感がわかるようなガツンとした甘さだ。香水らしい深みとか複雑さよりも、西洋のオレンジ味のキャンディやガムから香ってきそうな、どちらかというとキッチュな印象のある甘さからスタート。
五分もすれば大味なオレンジキャンディのフレーバーは収まり、とろっと甘いシロップのようなアンバーがジンジャーやシナモンの清涼感を携えて顔を出す。スパイスはそこまでキンキン効いている様子はない。なんとなく風味がするかな?という程度。ここの香りをよくよく嗅いでみると、アンバーのシロップの中にマロンの香りが感じ取れる。時間が経つにつれマロンの輪郭がはっきりしてくるが、突出して感じられるほどではない。そこにヘリオトロープの少し粉っぽい甘さがフロリエンタルの要素をプラスする。
ドライダウンになると、アンバーの甘さにウッディ感の強いバニラが加わる。バニラの香りといえば、バニラアイスに使われるようなトロリとしたバニリンの甘い香りを思い浮かべるが、実際のバニラはそこまで甘くない。ざらっとしたウッディなニュアンスやスモーキーさもあって、むしろ甘さ控えめだ。マジャイナシンのバニラは、そんな天然バニラのような印象を伴ったタイプ。持続はだいたい5〜6時間程度で、レスプリコロンの中では長持ちする部類(シリーズ内では唯一のEDP)。トップのオレンジキャンディのような甘さから想像するに「ちょっと後味がくどくなりそうかな」と思っていたが、意外にサラッと消え去る。その辺りはやっぱりジャン・クロード=エレナが創設したブランドだと感じる。自らが去った後も色濃く影響を残すエレナはやはり偉大だ。
トップ:ビターオレンジ、ジンジャー、オレンジブロッサム、ネロリ、ベルガモット
ミドル:チェスナッツ、ヘリオトロープ、オーキッド、シナモン
ベース:バニラ、トンカビーン、アンバー、サンダルウッド
調香師は、エミリー・コッパーマン。(フレグランティカより)
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2021/2/19 12:55:22
ゲランのクラシックラインの中でも人気のフレグランスの内のひとつ、「ルールブルー」。夕闇が訪れる直前の情景を切り取った香り、というロマンティックなコンセプトはもちろん、三代目調香師ジャック・ゲランが最愛の妻のために作ったという逸話にも心惹かれる(お気に入りの香りになったそう)、ゲランファンならぜひ一度は嗅いでおきたい香りだ。
ゲルリナーデのひとつであるベルガモットと、暗い清涼感のあるアニス、ピリッとした辛みのあるスパイスとシナモンのような甘さ。トップから複雑でいかにもゲランの古典的ラインらしい、ノスタルジーを感じる出だしだ。
五分もするとミドルへ。特に際立っているのはカーネーションのスパイシーな部分とチュベローズのコクのあるフローラルが強く出ているように思える。少しねっとりした花粉のような質感も感じられる。ここの香りがニ、三時間程度続く。
ドライダウンはアイリスのパウダリーさが全面に出てくる。薄暗く静謐な印象だ。バニラやレジン、トンカビーンの甘さは脇役。ここの持続は一時間程度で、香り全体の持ちは四時間ほど。Pよりもパウダリーに転ぶため、アイリスが好きな方はEDTの方が好みなのでは。濃度が薄くてもさすがクラシックライン、しっかり複雑でゲランらしさを存分に味わえる。
ルールブルーは、P、EDT、EDPと三つの濃度展開があるが、日本にあるのはPとEDTのみ。Pの出来は非常にいいが、30ml四万はやはり高価(それだけの価格なら良くて当たり前)だ。価格に対するパフォーマンスという点では、EDPが一番。日本で売ってない理由は、Pの方が売れなくなってしまうからなのでは?という下衆な勘ぐりをしてしまう。
ちなみに、ジャック・ゲランの奥さんは後にシャネルの五番を愛用するようになったとのこと。
トップ:アニス、ベルガモット
ミドル:カーネーション、ネロリ、チュベローズ、ローズ
ベース:アイリス、ヴァイオレット、ベンゾイン、トンカビーン、バニラ
調香師は、ジャック・ゲラン。
(フレグランティカより)
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2021/4/2 13:10:10
香水の評価をする上で重要なファクターのひとつは香りの持ち。どれだけいい香りでも、すぐに消えたり褪せたりするととてもコスパが悪く感じてしまう。個人的には、EDTなら三時間、EDPなら四、五時間は持ってほしい。EDCなら三十分?一時間。そういう基準で考えるなら、ゲランのオーデフルールセドラは評価が難しいフレグランスだ。
古典的シトラスコロンであるオーデフルールセドラの発売は1920年。ゲラン三代目調香師であるのジャック・ゲランの作品。百周年であった昨年、とても豪華な記念ボトルも発売された。
プッシュすると、爽快なシトラスミックス!眩しいばかりに輝く鮮烈な柑橘類の香りだ。このEDCの一番いいところは、この付けた瞬間。弾けんばかりの爽やかなシトラスの香りが一番際立っているとき。柑橘を皮ごとギュッと目の前で絞った香りだ。本当にレモンそのまんま。レモンより段違いに高いけど。
付けて2、3分もするとかなり香りが減衰してくるのがわかる。体感で付けたてから50%ほど。そして、目まぐるしい勢いでどんどん弱くなる。そのまますっきりさっぱり、残香もなく消え去る。持ちは肌に付けると5分(!)、ムエットでも10分持つか持たないか。シトラス系香料ばかりで作るとこうも持続が短いのか。EDCとは言え、こうも短命だと(5分持つだけ某ヒーローよりマシか)少々悲しい気がするが、このフレッシュさは短命さと引き換えにあるのだろう。後残りしない分、他のフレグランスを使っていても気兼ねなく使える。暑い日に服の上から満遍なくスプレーするのもいい。個人的には、起床時等リフレッシュしたいときや、他の甘い香りに重ねて使うのが好きだ。
ノート:ベルガモット、レモン、シトロン
調香師は、ジャック・ゲラン。
(フレグランティカより)
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2020/8/21 13:55:04
ゲランの香水をあまり知らない人でも「夜間飛行」という名は1931年発表のアントワーヌ・サン=テグジュペリ作の小説として知っている人は多いと思う。小説の発表の二年後の1933年にゲランの「夜間飛行」は発売された。濃度展開は現在PとEDTの二種類(EDCは廃番)。「夜間逃避行(Vol de Nuit Evasion)」といういかにもフランカーのような香水は「アトラップクール(Attrape Coeur)」の改題のため香りとしては無関係。
プッシュするとまず感じるのは、アルデヒドで増幅されたシトラスミックスとガルバナム。Pはガルバナムをオーバードーズされているようだけど、EDTは比較的穏やか。ベースのモスやアニマルっぽさも少し透けているもの、心地よい酸味とクラシカルな苦味を感じる。Pのトップが荒れ狂う暴風雨なら、こちらは風は強いけれど危険はさほど感じない空模様。
少し経つと、トップのガルバナムとシトラスの合間から香っていたミドルのフローラルへ。Pのミドルはいかにも古典的香水にありそうな多層的フローラルで、クレジットにあるたくさんの表情をたくさん感じるが、EDTはそんなにコロコロ変わらないと思う。メインはナルシスとアイリス。ピリピリとした刺激とスモーキーさ、そしてグリーンな香り。アイリスの粉っぽさでなんとなく暗い印象だ。
ドライダウンになると、アイリスとナルシスの残香を抱えつつパウダリーなバニラへ。Pはもっとどっしりモスやウッディ、アニマルっぽさが効いていて、どシプレっぽい香りになるけど、EDTはもっと柔らかくて静か。トップ〜ラストまでせいぜい3時間ほど、もっと速い人もいるかもしれない。こういった古典的名香はPこそ至高、なんていう人もいるけれど、PにはPの、EDTにはEDTの良さがあると思う。
ゲランの「夜間飛行」は、テグジュペリの小説だけでなく実在の女性飛行士、エレーヌ・ブーシェにも捧げられた香り。25歳で連続12時間飛行に成功した彼女は当時の女性の自立、社会進出を後押しした存在だ。彼女も小説内のパイロット(ファビアン)やテグジュペリ自身と同じく、飛行中の事故で命を落としてしまう(死後にレジオンドヌール勲章を授与された)。
そんな生きるか死ぬかの瀬戸際に生きていた人々へ捧げた香りは、思いの外静かなドライダウンに落ち着く。雷雨の中、下に向かわなければならないにもかかわらず雲の上に出た小説の主人公のファビアンが最期に見た景色、荒れ狂う暴風雨を抜けて出た雲の上の真っ白な世界はひょっとしたら静寂に包まれたこのドライダウンに似たものだったのかも。
一時期廃番の噂が流れていたが、容量とボトルが変更になって(100mL→75mL、ビーボトル風スプレーボトル→逆さハートボトル)再販されている。
トップ:オレンジ、オレンジブロッサム、ガルバナム、マンダリンオレンジ、ベルガモット、ナルシス、レモン
ハート:アルデヒド、アイリス、ナルシス、バニラ、ヴァイオレット、インドネシア産カーネーション、ジャスミン、ローズ
ベース:スパイス、サンダルウッド、ムスク、オリスルート、オークモス
調香師はジャック・ゲラン。
(フレグランティカより)
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