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doggyhonzawaさん
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ロシャス / ビザ−ンス

ロシャス

ビザ−ンス

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:- (生産終了)発売日:-

5購入品

2017/2/11 01:56:47

ロシャスのビザ―ンスは、静かな秋冬の夜に似つかわしい、ややクラシカルなパウダリー・フローラルの香りだ。現在、廃盤となって久しいが、いまだ世界中で人気があり、再販を望む声が多いフレグランスの一つだ。

ビザーンスという名は、かつて世界の中心と言われたビザンツ帝国に由来している。正確に言うと、ビザンツ帝国とは東ローマ帝国の別称だ。これは、この時代の文化的特徴を他の時代と区別するために、19世紀以後に人々が呼び始めた呼称であり、当時の人々は自分たちの国を単にローマ帝国と認識していたという。

紀元前から地中海に広大な領土を広げてきた古代ローマ帝国は、4世紀頃になると東と西に分断統治されるようになった。ときの皇帝コンスタンティヌスは、330年に現在のトルコのイスタンブールに、コンスタンティノープルという首都を遷し、東のペルシアに対する防備を固めた。ここが昔ビザンティウムと呼ばれていた地であること、さらに、この地を中心に、ギリシャ色の強い新しいローマ文化と東方文化の稀有な融合が見られたため、後にビザンツ帝国やビザンツ文化と呼ばれるようになったというのが実情である。

1987年にリリースされたこのオードトワレには、そんな東ローマ帝国の栄華に対する思いが捧げられている。調香師は、ロシャスの一連の名香を手掛けたニコラス・マモーナス。トップにアルデハイド系の香料をもってくるのが得意な調香師だ。

では、ビザ―ンスの香りはというと。

トップ。香り立ちは、暗いアルデヒドのエクスプロージョンから始まる。わずかに柑橘を伴いつつも、青い炎が燃えるように、ローズ、イランイラン、スパイシーなカーネーションなどのフローラルミックスが立ちのぼり、強く拡散する。それらの境界を溶かし、ギラギラとさせながら強く印象付けるアルデヒド。かなりクラシカルなアルデヒディック・フローラルで始まるトップだ。

やがて20分ほどすると、アルデヒドがだんだん穏やかになり、それにつれて、ややツンとしたソーピーな雰囲気が出てくる。ムスクのベースやウッディな雰囲気に支えられて、シャープなローズ石鹸の趣になる。さらに、少し重たげで、濃厚なふくよかさをもったフローラルが中心になってくる。生花の匂いとは異なるし、わずかにイランイランの妖艶さをまとってもいるが、チューベローズの雰囲気だ。このあたりから、香りはソーピー&パウダリーな清潔感が感じられるフローラルに変化してくる。このミドルが5〜6時間続く。

そして気が付くと、石鹸っぽかったフローラル香から、甘いアンバーの香り、クリーミーなヴァニラの香り、わずかに花粉っぽいヘリオトロピンのミックスに変わったことを知る。トップの暗いアルデハイドの主張から見れば、天と地ほどの差を感じるほど、マイルドなラスト。さながら、羽毛の布団や、柔らかな毛足のブランケットに包み込まれるようなリラグゼーションを感じる香り。このラストは、ことのほか美しいオリエンタル調の余韻を残す。

全体の印象で見ると、トップは、ややクラシックなアルデハイド系フローラル。それがミドルでパウダリーかつスパイシーなチューベローズに変わり、最後は、アンバーの温かい甘さとクリーミーなヴァニラでフェードアウト。というように、かなり変化が楽しめる構成になっている。香調はセミオリエンタル。前半がフランスの古典的な香水を思わせるフローラルで、後半がインドやトルコを思わせるスパイス調に変わるため、確かに西洋から東洋へと文化の交易が進んでいった道筋を思わせる。まさに、ローマから東ローマへ、そして、ヘレニズムやオリエントと融合していったビザンツ文化の流れを感じさせる展開だ。

トルコのイスタンブールには、周囲をイスラムのモスクに囲まれる中、そこだけキリスト教の威容を示す大聖堂がある。ビザンチン建築の最高峰と呼ばれるこの美しい丸屋根の聖堂の名は聖ソフィア聖堂(アヤソフィア)。悠久の昔、東ローマ帝国時代に、正統派キリスト教の大聖堂として建てられ、後にオスマン帝国の支配下にあってはモスクに改修され、世俗化された。

アヤソフィアは、月下の晩に、特に美しく人の心をとらえて離さないという。月の光にその巨大な丸屋根の威光を輝かせるアヤソフィア。それは、トルコを訪れた者の心に、忘れ得ぬ風景を見せてくれるという。人と文化は、時の流れの中で千変万化し、絶えず流転し続けていくもの。輝く銀色の月は、そっと頭を傾げた月下香のつぼみのように、そう語りかける。

ロシャスのビザ―ンスは、そんな静かな夜に似つかわしい香りだ。凛として美しく、退廃的で包みこむように柔らかい、蒼いビロードの夜の香り。

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