2023/4/28 11:48:34
5月1日はスズランの日。フランスでは自分の大切な人にスズランの花を贈る習慣があって、贈られた人は幸せになれるそうだ。そんな日を祝って発売されるゲランの「ミュゲ」が今年も発売された。2006年に復刻して以来、2010年以外は毎年限定販売されている。2023年のボトルデザインは陶芸家のカレン・スワミと、今年のチェリーブロッサムのデザインを手がけたオートクチュールの刺繍メゾンのアトリエ・ヴェルモンのコラボレーションだ。
いつものように20mlサイズのパーススプレーが付属している。ビーボトルの方開けるのもったいないしね。さっそく付けてみると、ぱっと拡がる清々しく、みずみずしいグリーンノート。水分をたっぷり含んだ青葉を感じさせてくれる。ベルガモットはあまり感じないな、緑の青さが際立ったオープニング。
蕾が徐々に花開くように、ローズとジャスミンがミュゲの香りを形作っていく。ジャスミンがやや優勢か。スズランからは香料が採取できないため再現香だが、ゲランのミュゲのアコードは秀逸だと思う。高いけど。昨年よりさらに値上げして90,000円+税だけど。それでも可憐で控えめなミュゲのホワイトフローラルには抗えない魅力を感じる。
基本的にトップ→ミドルの印象をそのまま崩すことなくフェードアウトしていく。ムスキーにもウッディにもならない。持続はだいたい3、4時間程度。
近年は大半のクリエイションをNo.2パフューマーのデルフィーヌ・ジェルクが主体で作っているゲランだが、いくつかは五代目ティエリー・ワッサーの名で出されている。このミュゲももちろんワッサー名義の作品で、その名にふさわしい香りのクオリティだとは思う。しかし、いくら限定品とはいえ香水としてはかなり高額の部類であるため、購入する際はよく考え、納得した上で買うことをオススメする。
ノート:スズラン、ジャスミン、グリーンアコード、ローズ
調香師は、ティエリー・ワッサー。
(fragranticaより)
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Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)
容量・税込価格:50ml・14,850円 / 100ml・21,670円発売日:2023/4/7
2023/4/14 10:33:32
季節ごとの限定コレクションが多数あるジョーマローンのフレグランス製品の中で、いくども復刻はすれど決して定番入りしないものがいくつかある。そのひとつがこのオスマンサスブロッサムコロン。初出は2013年で、その後2017年と2020年に再販、そして今年の春に再び限定品として発売された。調香師は有名ファッションブランドの香水から高級ニッチな香水メゾンまで幅広く手掛けるマリー・サラマーニュだ。
球のようなキャップを外してスプレーしてみる。毎年春に出るブロッサムコレクションのボトルはこのタイプに統一されたようだ。酸味の強くない柑橘にプチグレンの乾いたウッディグリーンが香る。特別変わった香りではないが、とてもナチュラル感のあるスタートだ。
プチグレンから繋がる形でオレンジブロッサムの香りが目立ってくる。その後ろから控えめな印象で顔を出しているのがオスマンサス。オスマンサスの香りは通常、アプリコットのようなフルーティさを伴った甘さの強いフローラル調の香りだが、このコロンのオスマンサスはあまり甘くない。なぜかというとオスマンサスブロッサムコロンのオスマンサスは金木犀ではなく銀木犀を指すから。銀木犀も金木犀と似たような香りを放つが、その香りは金木犀よりもずっと控えめだそうだ。オレンジブロッサムに連れられて明るくライトなフローラルに仕上がった香りは、たしかにそう思えてくる。ふーん、銀木犀って金木犀に似てるのね、と思ったら銀木犀の方がルーツらしい。
ドライダウンはカシュメランのウッディムスクとアクアティックな香りが残る。持続は3、4時間程度。
綺麗めのライトフローラルからウッディムスクに繋がる流れはよくある香調で特段キャラが立っているわけでもないし、銀木犀と言われてもいまいちピンとこない印象はあるが、優しい香り立ちでいわゆる「万人受け」系であり、適度なナチュラル感もあるため淡めのフローラルを探している方の選択肢には入るのではないだろうか。
ただ、個人的な好みを言うとドライダウンのアクア調の残香は不要だと思う。フローラルのみずみずしさを演出しているのだろうが肌に付けると悪目立ちしやすく、せっかくライトに仕上げたオスマンサスの足を引っ張っているように感じた。
トップ:シトロン、プチグレン、ヴァイオレットリーフ
ミドル:オスマンサス、オレンジブロッサム、ホワイトピーチ
ベース:カシミアウッド、ホワイトムスク、シダーウッド
調香師は、マリー・サラマーニュ。
(parfumoより)
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2023/4/7 13:55:14
ウイエプールプル、なんだか聞き慣れない響きの言葉だ。特にプールプルの部分がそう思わせているのかもしれない。不思議な名前に感じるが、フランス語でウイエ=カーネーション、プールプル=赤紫色、なので「赤紫色のカーネーション」という直球ネーミング。元々は「ルイ」という名前で販売されていたが、2021年のコレクション再編の際に今の名前に変更されてラールエラマティエールに組み込まれた。
黒ずんだ紫色の香水をスプレーしてみると、トップにはフルーティーなイントロが流れる。これがペアーの香りなのだろうが、このペアーの香りはガスっぽく金属的なファセットがあって、あまり嗜好性はよくない。同シリーズでいうとアンジェリークノワールのトップにも感じる香りだ。
続いてメインのカーネーションの香りに移っていく。ところで、カーネーションって匂いしたっけ?花屋でよく見かけるような赤いカーネーションに際立った香りはないが、原種に近い薄ピンク色の芳香カーネーションには香りがある。クローヴやスターアニスのようなスパイシーなニュアンスとローズやスズランのようなフローラル、さらにバニラのような甘さもあるという。精油も採取できるらしいが採油率はよくないため基本的に再現香になるようだ。このウイエプールプルのカーネーションもおそらくそうだろう。クローヴのようなスパイシーさに青みの強いローズ、その脇をじわじわとベンゾインの甘さが固めていく。
ドライダウンになると、カーネーションの再現香はトーンダウンしてスエードのような滑らかなレザーとやや塩気のあるムスクが香りをまとめていく。持続はだいたい5、6時間程度で、香りの起伏が少ない現代的なフレグランスだ。ほぼカーネーションのシングルノートと言っていいだろう。旧名の頃と香りも変わっていないと思う。
トップ:クローブ、ペアー
ミドル:ベンゾイン、カーネーション
ベース:スモーク、バニラ、レザー、ウッディノート、ムスク
調香師は、デルフィーヌ・ジェルクとティエリー・ワッサー。
(fragranticaより)
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2023/3/17 18:38:00
ディオールのフレグランス部門のトップに就任したフランシス・クルジャンにより復刻を遂げたコロンブランシュ(販売名はコローニュブランシュ)。今まではオンライン限定のトリロジーコフレにのみ入っていたが、店頭でも最近単品売りされるようになった。価格・容量展開は他のメゾンクリスチャンディオールのシリーズと変わらない。
トップは杏仁豆腐を思わせるようなツンとビターなアーモンドの香り。スッキリとアロマティックなローズマリーのグリーンも香ることでとても抜け感のある心地いいスタートだ。
「白いコロン」というくらいだから、メインの香りももちろん白のイメージによく合うものが使われている。このコロンの主役はオレンジブロッサムだ。ローズマリーのアロマティックグリーンから繋がる形で徐々に花開き、ほんの少しアーシーな要素を感じさせながらその存在感を増していく。しかしその香りは満開にはならずに7分咲き程度でとまる。この控えめな感じは中々いい。豪奢なフローラルブーケももちろんステキだが、こういうのは日本の「侘び寂び」に通じるところがあるのでは、と思う。ここまでで2時間程度。
オレンジブロッサムをパウダリーなムスクとクマリンのほの甘さが包み込んでくればドライダウン。ここも白のイメージでまとめられていて収まりがいい。ドライダウンも2時間程度。
その名前に相応しく、全体的に白メインの淡い色彩で統一されていてとても好印象、リラックス感もあって日本人なら好きな香りだと感じる人も多いだろう。特に春先の暖かくなってくる頃が一番綺麗な香り立ちになるのではないかと思う。
トップ:スイートアーモンド、オレンジ、ベルガモット、ローズマリー
ミドル:オレンジブロッサム
ベース:バニラ、トンカビーン
調香師は、フランシス・クルジャン。
(fragranticaより)
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2023/2/24 10:38:35
日本人は桜が好きだ。春が近づけばドラッグストアやバラエティショップの店頭には桜の香りのシャンプーやボディソープが並ぶし、カフェを覗けば桜風味のドリンクのキャンペーン。古くからお花見という文化もあるし、日本人が桜にかける思いはひとしおだ。そんな桜にオマージュを捧げたフレグランスである「チェリーブロッサム」がゲランから今年も発売された。2023年バージョンのボトルデザインは1956年創業の刺繍メゾン、ヴェルモンが担当している。
今年も例年通り、125mLの本体に20mLのパーススプレーが付属している。香水自体の色は透明なピンクで、いかにも桜らしい。さっそくスプレーしてみると、ゲランらしいベルガモット、渋みのあるグリーンティが香る。ピンク色にだまされるとびっくりの緑色の香り。桜も緑茶も日本人には馴染み深いが、日本のメーカーのフレグランス製品でこのふたつを組み合わせたものは意外に少ない。
グリーンティの苦味は中々残るが、気付かない内に桜の香りにバトンタッチしている。ゲランのチェリーブロッサムのサクラアコードはたいしたもので、他ブランドだと「これはサクラじゃなくてローズ」「これはフルーティに寄り過ぎてチェリー」「これは桜餅」と感じるものがほとんどの中、かなりの桜の再現度だ。ひらひらと舞い散る桜の花びらをめいっぱい集めて顔を埋めたらきっとこんな香りがする。
サクラの香りに、パウダリーなホワイトムスクが加わってくるともうドライダウン。花の命は短いというけれど、ゲランのチェリーブロッサムの持ちも短い。トップからドライダウンまで3、4時間ほどで事足りる。
気温が低いとグリーンティの苦い香りが長く続きすぎてちっとも桜に感じないが、暖かくなってくると本領発揮。ふんわりと広がるサクラアコードが織りなす世界にしばし目を閉じてまどろみたくなる。日本だと4月?5月の頭くらいまでがちょうどよく楽しめるのではないだろうか。暑過ぎる季節はサクラの香りが爆速で散ってしまい情緒もへったくれもない。
2020年に復刻して以来4年連続発売されていて、すっかり春の風物詩になった感じもあるチェリーブロッサム。毎年毎年値上げされていて今年はついに税込十万近くになってしまった。もちろんそれなりの香りのクオリティではあるものの、やっぱりこれはゲラン好きのためのコレクターズアイテムだとしみじみ思った。
トップ:グリーンティ、ベルガモット
ミドル:チェリーブロッサム、ライラック、パウダリーノート、ジャスミン、チェリー、アーモンド
ベース:ホワイトムスク
(fragranticaより)
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