2021/12/10 18:45:21
ガリガリと粗く挽いたブラックペッパーのようなスパイシーさに、生っぽいベルガモット。でもそれはすぐに荒っぽいウッディムスクにかき消される。レザーっぽさもあって、ムスクといえばふんわり広がる優しい香りと思っていると少しびっくりする。
続いてラブダナムとバニラが展開していくが、かなり辛口な甘さ。シャネルのバニラは甘いけど食べられないバニラ。たしかに、シャネルのファッションにわかりやすいグルマンな香りは似合わない。そしてこの段階でも、荒々しいムスクの影は充分過ぎるほど感じ取れる。
ラブダナム+バニラの甘さとベースの力関係が逆転するとドライダウン。トップから感じていたウッディムスクが全面に出てくる。ここまでくるとサンダルウッドのウッディだけでなくパチュリもかなり効いているのがわかる。持続は10時間以上、とても長持ちだ。
海外レビューを見ていると、「ゲランのシャリマー(ヴィンテージ)に似てる」という意見があった。たしか、シャリマーも昔のレシピは今よりもっとムスキーだったとワサ夫も言っていた。
でも、やっぱりこれはシャリマーではない。遠目だとちょっと似ているだけの別人だ。どちらかというとフレデリックマルのムスクラヴァジュールに近いと思う。
トップ:ベルガモット、レモン
ミドル:ラブダナム、アンバー
ベース:パチュリ、マダガスカル産バニラ、ムスク、サンダルウッド
調香師は、オリヴィエ・ポルジュ。
(fragranticaより)
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2021/12/4 09:34:41
オーデバン=風呂の水。そう考えるとお風呂の残り湯か?と思ってしまうがもちろんそんなことはない。オードトワレ=身支度用の水と同じように、お風呂で使う用のフレグランス、という意味だ。バスルームに使用したり、風呂上がりにまとうための香水。
青い液体をスプレーすると、甘いオレンジブロッサムの香りが拡がる。この感じはどこかで嗅いだことあるなと思ったら、ワサ作のプティゲランのトップに似ている。でもプティゲランと比べると少し甘さ抑えめで大人びているのは、オレンジフラワーの後ろに少しグリーンの気配があるからだろう。
ミドルになると、オレンジフラワーの残香の下からふんわりとムスキーな香りが漂ってくる。ほんの少しアーモンドのツンとした苦味を伴いながら立ち上るムスクの香りは、ソーピー過ぎずパウダリー過ぎずふわふわとその中間をキープしている。
ムスキーな香りに、バニラの甘さが感じられるようになるとドライダウン。持ちはニ、三時間といったところ。
レビューの最初でプティゲランに似ていると言ったが、そちらと比べるとわかりやすい甘さやソーピーな印象は控えめ、よりファインフレグランスらしい香りに仕上がっているように感じた。
バスルームでも使えるものなのでもちろん実際に使用してみた。だいたいニ、三プッシュで充分とのこと。シャワーの湯気に温められてオレンジブロッサム、ムスク、バニラが一気に香り立つ贅沢なバスルームに。いつもの風呂なのになんだか広くなったような気がする(※気のせい)。
旧ボトルは終売してしまったが、今ではラールエラマティエールのEDTライン「レマティエールコンフィダンシエル」のひとつ、「オースクレット(秘密の水)」という名前で値上げして販売されている。オースクレットはキュヴェセクレットの改訂ではないのでご注意を。
※今は更に改名されて「オーデコトン」という名前で販売されている。
トップ:オレンジブロッサム、ベルガモット、レモン、グリーンノート
ミドル:アーモンド、ホワイトムスク
ベース:バニラ、プレシャスウッド
調香師は、ティエリー・ワッサー。
(fragranticaより)
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2021/11/26 13:08:26
ローリングインラブに引き続き真っ赤なボトルデザインで販売された「ア キス フロム ア ローズ」。キリアン・ヘネシー曰く「バラの花弁と棘を表現したかった」とのこと。担当調香師はキリアンの不動のベストセラーであるグッドガールゴーンバッドを完成させたアルベルト・モリヤスだ。
トップに拡がるのはムスキーなグリーン。これがひとくせあるというか、かなり特徴的。よくある嗜好性の高いすっきりした青葉の香りではなく、セロリのような好き嫌いの分かれそうな野菜を思わせる清涼感のあるグリーンだ。
トップから続くムスクを漂わせながら、タイトルにもあるローズが展開していく。真っ赤なボトルのイメージからフェミニンなローズの香りだと思っていたが非常にドライでクールな辛口のバラ。甘さがほとんどないグリーンローズ。辛口なローズというと、ブラックペッパーやクローヴのスパイシーさを添えた香りはよくあるけれど、これにはそういった香辛料っぽさは感じられない。例えるなら蕾は付いているけどまだ咲いていないバラ。
ドライダウンになると、トップからずっと続いていたムスクが主体になる。あとはほんのちょっとだけウッディなアコードを感じるくらい。fragranticaにはシプリオルオイルとあるけれど、言われてみればそうかな、という程度。トップからミドルまででニ、三時間、ドライダウンは五時間ほど。
クセのある清涼感のグリーンに甘さのないバラを合わせた香りは、キリアン・ヘネシー氏の言う通り、バラの棘という表現によく合うと思う。ローズの香りが欲しいけどフェミニンな香りは苦手、でもスパイシーなローズは飽きた、という方にはオススメ。
トップ:ブラックカラント、グリーンノート
ミドル:メイローズ、ジャスミンサンバック
ベース:ホワイトムスク、シプリオルオイル
調香師は、アルベルト・モリヤス。
(fragranticaより)
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2021/11/20 12:53:31
ムッシュー・ディオールが愛したと言われるディオラマグルマン。バニラ、オレンジ、ビターチョコが使われていたこと以外は写真もレシピも残っていない謎に包まれたデザート。そんなディオラマグルマンにオマージュを捧げたバニラディオラマは延期に延期を重ねようやく発売された。幻のスイーツに思いを馳せた香りは、いったいどのようなものだろうか?
ピリッと華やかなピンクペッパーに甘いオレンジ。このオレンジはジューシーというより、甘さが凝縮されたオレンジピールやマーマレードに近い。
続いてほろ苦いカルダモン、粉感のあるココアに白っぽいバニラの甘さが重なってくる。香りの上の層では華やかなスパイスがキープされているため、甘さ一辺倒にはならずさらりと軽やか。
ドライダウンになると、バニラの甘さがさらに立ってくる。ムエットだとそこまで感じられないが、肌に付けるとパチュリやサンダルウッドの暗いウッディが主張し、インセンスのような雰囲気がある。トップからミドルまでで約二時間、ドライダウンは四、五時間程度。
幻のデザートにインスパイアされたという触れ込みのフレグランスだが、思いの外グルマンな香り立ちにはならず、オリエンタル寄り。おそらくサンダルウッドのせいだろう。段々とわかりやすい「美味しそうな香り」にそこまで食指が動かなくなってきた自分としては構わないのだが、デザートの香り=グルマン系を求めると少し違うのかな、という印象。
トップ:オレンジ、ピンクペッパー、レモン
ミドル:ラム、カカオ、カルダモン
ベース:ブルボンバニラ、サンダルウッド、パチュリ
調香師は、フランソワ・ドゥマシー。
(fragranticaより)
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2021/11/5 14:52:18
淡いピンクのジュースをスプレーすると香ってくるのは、控えめなベリーとツンとしたアーモンド臭。この鼻を刺す辛みすら感じる香りは、ベリー系の香りの再現にとても重要らしい。どことなく杏仁豆腐やアマレットにも似ている気がする。
ベリーの香りはすぐに抜けて、甘く華やかなローズが香り立つ。ローズウォーターやアブソリュートやら、まさに豪華絢爛と言わんばかりのローズ尽くし。拡散力は強く、まるでピンク色のバラの花びらのシャワーのよう。このリッチなフローラルの中に、メタリックなバイオレットがほんの少しグリーンのニュアンスを添える。
ローズの余韻をたっぷり残したままドライダウンへ。パウダリーなムスクがメインだが、肌に付けるとしっかりサンダルウッドが効いているのがわかる。持続は六、七時間といったところ。
ローズシェリーを初めて試したときは、「フレンチキスの使い回し?」と感じた。実際に両方をじっくり比較してみるとかなり違いはあるように思えた。フレンチキスはシンセティックなベリーとパウダリーなムスクが主体のいわゆるメイクアップ系の香りだが、ローズシェリーはローズをこれでもか!と言わんばかりに主張させ、ウッディなファセットで締めたリッチなムスキーフローラルウッディの香りだ。正直に言うと、フレンチキスはラールエラマティエールより高いシリーズにしては香りが少々キッチュだったが、このローズシェリーはフレンチキスのそういった側面を抑えてよりハイエンドラインらしい香りに仕立てられていると思う。
ノート:アーモンド、ダマスクローズウォーター、ダマスクローズ、ダマスクローズアブソリュート、ローズセンティフォリアアブソリュート、ラズベリー、ヴァイオレット
調香師は、デルフィーヌ・ジェルク。
(parfumoより)
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