2023/8/19 19:01:56
香水好きを長くやっていると複雑で濃厚な香りにばかりフォーカスしてしまいがちになるが、それでも日本の夏はそんな香りを楽しむには暑い。暑すぎる。そんなときによく手に取るのがジバンシイの「トロブルフェット」。オンラインと一部店舗限定(新宿伊勢丹、G6、阪急百貨店うめだ本店)のシリーズから発売されているもののひとつで、調香師はジョーマローンやマルジェラのような人気ブランドだけでなく、ニッチで高級なフレグランス専門ブランドからもひっぱりだこなマリー・サラマーニュだ。
淡いグリーンの香水は見た目からも涼しげ、さっそくスプレーしてみる。ほんの少しフィグリーフのイントロが流れるが、クセのある感じはなくすっきりとした青葉の香りだ。
すぐにフルーティでみずみずしいイチジクの香りにバトンタッチする。イチジクからは香料が採取できないため、基本的には再現香になる。簡単に言うと、グリーンとココナッツのような甘い香りを組み合わせて作っている。このトロブルフェットのイチジク香はグリーンは控えめ、ココナッツというよりはピーチのような明るいライトフルーティな要素が強い。ときおりジャスミンサンバックの存在も感じられる。
ドライダウンもミドルのままあまり変わらずにイチジク+ジャスミンのミックスを保ったままフェードアウトしていく。ウッディにもムスキーにもならない。持続は4、5時間ほど。
全体としてすっきり明るいフルーティフローラルの香りがドライダウンまで沈まずに展開していくため日本人なら好きな人は多いと思う。ミルキーに偏りすぎてココナッツ香になるイチジク香水が苦手な方にもよいだろう。
私も春夏はよく手に取るしなかなか気に入っているのだが、ひとつ気になるのがローストセサミ。発売当初はキーノートとしてアピールされていたのだが、実際の香りからは存在がわからない。「香ばしいローストセサミが親しみやすさをプラス」から「サンバックジャスミンが親しみやすさをプラス」に書き換えられてしまった。もしセサミの香りがもっと際立っていたら、万人受け系フルーティフローラルじゃなくてちょっと変わったスパイシーフルーティになったんじゃないかなと。それこそまさに「トロブルフェット(非凡な人)」だ。
トップ:フィグリーフ
ミドル:インド産ジャスミンサンバックアブソリュート、ローストセサミ
ベース:ソマリア産フランキンセンス
調香師は、マリー・サラマーニュ。
(parfumoより)
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2023/8/3 13:00:15
個人的に今年はゲランの当たり年で、発売される限定品がどれも例年よりグレードの高いものばかり。この「アビルージュ ルージュプリヴェ」もそのひとつ。相変わらず公式オンライン以外は一部店舗限定(G6、日本橋高島屋、新宿伊勢丹、うめ阪)だが、そのクオリティはゲランファン必見だ。
デカい、硬い、ゴツい、赤い、と四拍子揃った漢のボトル(?)、まさにアビルージュだ。トップはゲランらしいみずみずしいベルガモットから始まる。ベルガモットは元のアビルージュと変わらないが、違う点は少しジンジャーのスパイシーなファセットが加えられているところ。
続いて立ち昇ってくるのはパチュリの土っぽい暗さとレザーの苦味。フランカーといえどしっかりオリジナルは踏襲していく展開。ただ、パチュリもレザーもかなりモダナイズされていて重苦しい雰囲気はない。ときおり顔を出すオレンジブロッサムがより明るさをプラスしている。
ドライダウンからじわじわとバニラが出てくるのもオリジナル通り。パウダリーで甘くないバニラ。この香りはかなり待たないと出てこない上、プンプン拡散もしないのでかなり注意深く嗅がないと気付けない。ゲランの他のフレグランスに例えると夜間飛行のラスト辺りに出てくるバニラだ。アビルージュはメンズ版シャリマーとよく言われているけど、個人的にはメンズ版夜間飛行だと思う。
オリジナルを丁寧になぞりつつ、程よいモダナイズとひねりを加えたアビルージュルージュプリヴェはアビルージュファミリーに加わるに相応しい作品、まさに現代のアビルージュ。昨年のHabit Rouge L'Instinct(日本未発売)は、「こんなの全然アビルージュと関係ない香りじゃん!」と評価がさんざんだったので、やはり良フランカーの基準は「元の香りを大きく変えない」に限る。
実はアビルージュはゲランの五代目調香師のティエリー・ワッサーもご愛用の香り(ポケットにいつもアビルージュ入りのアトマイザーを持ち歩いている)。きっとこのルージュプリヴェも気に入っているのだろう、アップデートされた赤い乗馬服を。
トップ:ベルガモット、ジンジャー
ミドル:アイリス、オレンジブロッサム
ベース:レザー、バニラ、パチュリ
調香師は、デルフィーヌ・ジェルク。
(fragranticaより)
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2023/7/25 08:42:05
近年アクアアレゴリアの中でも猛プッシュされているのがローザロッサ。昨年のフォルテバージョンに引き続き、ハーベストバージョンも発売された。調香師は近頃のゲラン作品の多くを担当しているNo.2パフューマーであるデルフィーヌ・ジェルクだ。
ハーベストのボトルは、日本で通常販売されているアクアアレゴリアより大きいサイズなだけでなく、ボトルネックにチャームが付いていて少しおめかしされている。通常版より濃いピンク色の中身(着色)を付けてみると、うん、みずみずしいライチのジューシーな感じはオリジナルそのまんま。違いはやはりローズの部分だな。このローザロッサハーベストは、香水に含まれる水の一部がローズウォーターに置き換えられている。同ブランドのラールエラマティエール「ローズシェリー」やディオールの「ミスディオールローズエッセンス」と同じ手法だ。オリジナルより明らかにローズのリッチさや甘さが強くなっている。さすがのゲランなのでローズの品質はお墨付き、思わず笑顔になってしまう。
オリジナルは付けたてのライチ×ローズの香りは色褪せるのが早くてすぐに淡いサンダルウッドとムスクの当たり障りないドライダウンになってしまうが、ハーベスト版はローズの部分がかなりしっかりしていて長持ち。サンダルウッドも強調されていてよりファインフレグランスらしい香りになっている。持続は4、5時間程度。ムエットで比べてもわかるくらいには違いがある。
昨年発売されたローザロッサフォルテは、ローザロッサの名を冠していながらも香りとしては別物だったが、このローザロッサハーベストはオリジナルを踏襲しつつも香水としてより完成度を高めた作品。ハーベストの流通は今年いっぱいのため、今買うなら間違いなくハーベストバージョンがオススメだ。
ノート:ブラックカラント、ブルガリアンローズ、ターキッシュローズ、ライチ、フレンチローズウォーター
調香師は、デルフィーヌ・ジェルク。
(parfumoより)
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- モニター・プレゼント (提供元:未記入)
2023/7/10 12:47:37
日本におけるゲランの香水関連の広告は、高額な限定品とラールエラマティエール以外は基本的にアクアアレゴリア推し。この「ロムイデアルプラティーヌプリヴェ」も特になにかプレスリリースがあるわけでもなく、「今度ロムイデアルシリーズの新作(限定品)が3年ぶりに出ますよ」とカウンターで軽く案内されただけであった。個人的に、今年発売の限定品の中で買うなら間違いなくこれを推したい。
日本のゲランカウンターで取り扱いのあるロムイデアルは50ミリサイズだが、プラティーヌプリヴェは100ミリ。ボトルカラーはブラックでちょっとシックな面持ち。100ミリだとさすがにゴツいな、と思いながら付けてみるとトップはキレのいいシトラス。苦味の強いグレープフルーツが顕著だ。今のロムイデアルシリーズはだいたいトップからけっこう甘いので新鮮に映る。
そして、シリーズ共通の香りのアーモンド。プラティーヌプリヴェからももちろんその香りは感じられる。アロマティックかつ青さが強めでクールな印象だが、ときおり顔を出すネロリのフローラル感がその冷たさをうまく緩和している。
ドライダウンはうっすらとしたムスクをベチバーが引き締めて収束していく。持ちは4、5時間程度。前述の通り、現行のロムイデアルシリーズはトンカビーンやらバニラやらでわりと甘めに香るものばかりのなか、このプラティーヌプリヴェはほぼ甘さがない。かといってメンズ寄りになりすぎることなくいい塩梅に仕上がっている。よくあるメンズフレグランスは男っぽ過ぎて苦手、でも甘い香りには抵抗がある、という方にはうってつけだろう。
甘くないロムイデアルはクール以来かー、でもなんか似たようなものあったなーと感じていたら、これはロムイデアルクールと入れ替わりでディスコンになったロムイデアルコローニュの調整版だと気づいた。fragranticaでもそういう意見が多いのだが、たしかによく似ている。まんま同じというわけではなく、プラティーヌプリヴェの方がより甘くなく、シトラスとベチバーでコローニュよりキレのよい香りになっている。評価の高かったコローニュの廃番の際にはがっかりしたが、限定品ではあるがこうして戻ってきてくれて大変嬉しい。
もう、定番にしません?
トップ:グレープフルーツ、ベルガモット
ミドル:グリーンアーモンド、ネロリ
ベース:ムスク、ベチバー
調香師は、デルフィーヌ・ジェルク。
(fragranticaより)
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イヴ・サンローランイヴ・サンローランからのお知らせがあります
容量・税込価格:75ml・26,400円 / 125ml・38,500円発売日:2023/6/2
2023/6/27 12:10:37
イヴサンローランの一部店舗限定ライン、ルヴェスティエールデパルファムのニューフェイス、キュイール。このシリーズは新作が発表されても導入されないことが多いが、今回は珍しく日本でも発売された。よく似た名前で以前取り扱いのあった「ニュイ キュイール」とはまた別物。
このシリーズは今までは125mlサイズしか日本では取り扱いがなかったが、キュイールは75mlサイズも販売されている。今回は75mlを購入したがやはりキャップとボトルのバランスは125mlサイズの方がいいな、と思いながら付けてみる。キャップはマグネット式で、戻すときは磁力でバチンとはまるのが気持ちいい。ふんふん、トップはヴァイオレットリーフのもったりしたグリーンと、カルダモンの清涼感のある苦味。同シリーズのグレインドプードルに通ずるものがあるが、キュイールはこの後すぐにスモーキーなレザーとウードの黒さがすぐに押し寄せてくる。
このレザー×ウードの部分がかなり続くため全体的にハンサムでマニッシュな香り立ちになる。ほんの少し、バニラの白い甘さが出てくればドライダウン。持続は7、8時間ほど。夏前に発売されたが、本領を発揮するのは涼しい季節になってからであろう。
個人的にこのシリーズは刺さるものが多く、香りの組み立て方が巧み(原料が高級とは思わない)に感じてもっと日本にも浸透してほしいのだが、いかんせん取扱店が少ない。さらに供給も不安定で、売り切れたら半年以上入荷しないこともザラにある。
しっかりしてくれよ、日本ロレアルさん!
トップ:マンダリンエッセンス、カルダモンエッセンス、ヴァイオレットリーフ
ミドル:クローヴエッセンス、ウードエッセンス、スウェードアコード
ベース:パチュリハート、シダーウッドハート、バニラ、サンダルウッドハート
調香師は、ファブリス・ペルグラン。
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