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doggyhonzawaさん
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セルジュ・ルタンス / La Dompteuse Encagee

セルジュ・ルタンス

La Dompteuse Encagee

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2022/4/16 15:04:25

はじめに自由を奪われた。

気がつくと、手足を縛られていて身動きできなかった。ぼんやりした意識の中、あたりを見渡して気付いた。ここは猛獣の檻だ。自分が調教している奴らの檻。ど、どうなってんだ?

次に味覚と嗅覚を奪われたことを知った。冷たい鉄の床から身体を起こそうとした。頭全体が締め付けられていて息がしづらい。どうやら目あきの拘束ラバーマスクをつけられているようだ。猛獣調教用の口輪。なんてこった。ずっと奴らを調教してきた自分が、逆に檻の中に閉じこめられている。一体何が起きたんだ!?

”ラ・ドントゥーズ・アンカジェ(檻の中の調教師)”

不意に高い鉄窓の外から声が聞こえた。そしてその瞬間、身体中に戦慄が走った…。

ラ・ドントゥーズ・アンカジェ。和訳「檻の中の調教師」。これは、2021年にセルジュ・ルタンスからリリースされたコレクション・ノワールの香水だ。価格は50mlで14300円(税込)。この香水は、耽美でダークサイド偏愛なルタンス作品にあって、初めて南国の花フランジパニの香りを使用したという点で話題になった作品。

まるで南国リゾートのウェルカム・レイのような花の香り。なのにその名は性癖に刺さる「檻の中の調教師」というアンビバレント。一体どんな香りなのか?

「檻の中の調教師」は、シングルノートな展開をする濃厚なフローラル系の香水だ。ただ、わずかではあるが、香りは変化する。

ドントゥーズをスプレーすると、最初にたちのぼるのは、熟したバナナのファセットをもつイランイランの低音、その上からは甘く華やかにフランジパニの花の香りが強烈に広がってくる。フランジパニはハワイではプルメリアと呼ばれ「神が宿る花」とも言われる。そして、その間で両者の香りを引き立たせているのは中音のインドールジャスミン。この3音のアコードが濃厚に香る。イメージはとても明るくまばゆい。檻の中?いや真逆だ。これなら南国リゾートホテルの、開放感あふれるラナイだろう。

ただそう思う反面、どこか違和感があることにも気付く。なにか暗い。せっかくリゾート地に来たのに、明るいビーチが望めるラナイにも出ず、暗い室内でじっとしているような抑制された暗いヴェールがかかっている。その理由は、ギリリとしたビターアーモンドの苦味だ。

香水で使われるビターアーモンドは、杏仁の香りのような香料。独特の暗い苦味があって粉っぽい甘さもあるベンズアルデヒド。こちらは揮発しやすいトップ系の香料で、サクラ香やチェリー香の再現にはよく使用される。この暗いヴェールが南国フローラルにダークさを醸しだし、さながら「光と影」を演出しているかのような香料構成となっている。

このアーモンドの苦味は15分ほどで消え、その後は次第に明るくまろやかな南国フローラルとなって落ち着く。そしてドライダウン。持続時間は8〜10時間程。かなりロングラスティング。

なるほど。ふだんは華やかなサーカスでスポットライトを浴びる調教師が、暗い猛獣の檻に入れられている。そこに込められた意味を思う。

新型ウイルスの蔓延による世界中の沈黙、イベントの自粛、不自由なマスクや引きこもり生活。それらをルタンスは「檻の中」と表現したのだろう。多くの方が命を失い、味覚や嗅覚が鈍くなった方もいる。それは今なお出口の見えない暗澹たる世界。狭い檻…。

調教師は戦慄した。高い小窓から白い雪が降りそそいでくるのが見えた。まるで白いジャスミンの花弁のようにひらひらと舞い落ちる雪。遠い地響き。もしや雪崩が来るのでは!?そして白い悪魔の渦に飲み込まれて、この檻の中で息絶えてしまうのでは?恐怖や不安などのネガティヴが、心の中でパンデミックに加速してゆく。

そのとき

小窓の鉄柵の向こうが突然明るくなり、そのまばゆさに調教師は目をつぶる。雪崩だ!だが、そこには白い服を纏った真っ白な顔の少女が一人、宙にたたずんで冷たい目で男を見下ろしていた。少女の手には、自分が猛獣の調教に使っていたカギ爪と革の鞭が握られている。何だ?何をするつもりだ!あいつは天使か、それとも悪魔か?男の胸がドクンドクンと早鐘のように鳴る。

カ、カギ爪で刺す気か!?俺が猛獣にしたように!鞭で痛めつける気か?や、やめてくれ!!だが声は出ない。

その瞬間、目の前に少女のカギ爪が振り下ろされた。男の顔マスクが引きちぎれ、鉄柵に吹っ飛んだ。男の鼻に嗅覚が戻った。動物たちを縛り付け、傷つけ、恐怖で支配してきた。その全ての血の臭いが蘇った。

檻の中の調教師は、身体を震わせて泣き叫んだ。涙と汗と体中の体液を放出しながら

「もうやらない!やらない!!」


あたりには光と、美しい天上の花の香りが満ちていた。

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