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doggyhonzawaさん
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PARFUM SATORI / Hyouge/ヒョウゲ

PARFUM SATORI

Hyouge/ヒョウゲ

[香水・フレグランス(その他)]

容量・税込価格:50ml・13,200円発売日:2008年

6購入品

2021/12/25 14:13:37

「織部よ、人と違うことをせよ。」

師匠が点てた茶をいただいた後、手にした黒楽茶碗を拝見していたときだった。千利休はゆっくりとそう言った。二畳の数寄屋。わび数寄の精神を配した簡素な茶室の中には、これまで感じたことのない緊張感が漂っている。それでも師匠の利休は口元に静かな微笑を浮かべ、弟子の織部を見つめていた。一輪の花と茶の香りが静かに流れている。古田織部は心中こみ上げるものを飲み込むように、師に深々と頭を下げた。

1591年、天下人、豊臣秀吉の相談相手であり、影のフィクサーでもあった茶人、千利休は、茶に華やかさを求める秀吉と次第に対立するようになり、遂に堺への謹慎を命じられた。だが利休も弟子の織部も知っていた。秀吉は一度にらみつけた男に対して絶対に容赦しない男だ。近いうち切腹の沙汰があるだろうことを。織部は茶室で頭を下げたまま、どうにかして太閤に直談判せねば、と硬く唇を結んだ。最後の茶を頂いた質素な漆黒の楽椀を見つめながら…。

日本人調香師、大沢さとりさんが作られているパルファン・サトリの香水の中に、かつてこの古田織部の名を冠した香水があった。名はそのまま「織部」。安土桃山時代の茶人、千利休の弟子として可愛がられ、後継の茶人として秀吉、家康、秀忠に仕えた男、それが古田織部だ。その名をとった香水「織部」が「世界香水ガイド3」で香水の帝王ルカ・トゥリンに高評価を得たあたりから名前が「ひょうげ」に変わったことは記憶に新しい。

そして確かに、そのひょうげの香りがすばらしい。

ひょうげをスプレーする。開幕、うっかりユリの茎を手折ったときのような生っぽく青臭い香りが鼻をかすめる。同時に、その青さを包むかのように涼やかな白い花の香りがしている。シャープでみずみずしい茎や葉の香りと、ほんのり甘く冷たい花の香りが、ふわふわと拮抗し合いながら、見事なバランスで香り立つ。ルカ・トゥリンはこのフローラルを「ヒヤシンスとユリ」と表現したけれど、わからなくもない。とても低くて冷たくて、わずかに毒気すら感じる花の香りだ。それが緑の茎と葉の香りの上に咲いているようなトップ。

しばらくすると、冷たくふくよかな花の香りがより明確になってくる。ひょうげの感想を見ると、多くの方が「抹茶の香り」と言っているが、自分の肌の上では抹茶の香りにはならない。これは純然たる「花」の香りだ。花と葉と茎、それぞれが主張しながら調和した1つの花の香りになる。ただ、常に奥に「日本の煎茶」の香りがスッと流れている。

トップからミドルは、それほど変化する感じではない。香料イメージとしてジャスミンやヴァイオレットとあるので、おそらくヘディオンとβイオノンをミックスしてお茶の香りを再現しているのだろう。これはジャン=クロード・エレナが多用するグリーンティーノートの作り方だ。ただ、海外のグリーンティー香水と違って、ひょうげの緑茶ノートは、本当に日本のお茶らしく爽やかであっさりスッキリしていてとてもいい。花の香りに美しい透明な緑色の影を垂らしているようなイメージだ。まるで織部焼きに施された緑色の釉薬のように。

織部焼きは、古田織部が作った前衛的な陶器で、今なお人々に親しまれている。当時の茶碗の名品は「名物」と呼ばれたが、形もいびつで愛嬌のある彼の作品は「へうげ(ひょうげ)もの」と呼ばれた。

ひょうげを付けて1時間ほどすると、お茶の花を模したようなシトラス&ジャスミンっぽい花の香が次第に消失し、ベースにあったお茶の香りが穏やかに広がってくる。ラストはベースのお茶+パウダリーがゆっくりたゆたう。抹茶の香りと評されるのは、こうしたラストのあたりかも知れない。イオノンとアイリスのパウダリーが柔らかく感じられ、和服の装いや白粉の匂いにも感じられてくる優しいラストだ。パルファンサトリの香水は、どれも出力はそれほど強くないが、しっかり一点で香り続ける。持続時間は6〜8時間ほど。近くに寄ってプライベートゾーンに入れる者だけが、このお茶と花と和の装いの香りを聞くことができるだろう。

ひょうげには、西洋香水の「これでもか」とばかりに濃厚な花の香りを組み合わせるのではなく、最小限の厳選された香料を用いて注意深くバランスをとって組み合わせた繊細さが感じられる。まさに、ムダと虚飾を一切廃し、千利休が大切にした侘数寄(わびすき)の心を大切にして作った引き算の香水、彼の茶室そのものの香りだ。

千利休が大阪を去る日が来た。弟子達はみな秀吉の怒りに触れることをおそれ、淀の船着き場には織部と細川忠興の2人しかいなかった。船が出る。織部は見つめた。師の凛とした後ろ姿を。誰に対しても厳しく、そしてどこまでも優しかった師匠を

へうげものが いつまでも 見送っている

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