Cookieyukiさんのゲラン / シャリマー オーデパルファンへのクチコミ |
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- Cookieyukiさん
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- 52歳
- 乾燥肌
- クチコミ投稿142件
2021/11/29 03:37:51
私は美人だ。
後ろ姿だけが。
よく後ろから早足で追いつこうとしてくる男性がいる。タッタッタッと追い越してチラッと私の顔を見てチッと舌打ちをして逃げていく。「なんだよ、野郎か」と言われたことも。私、女です。顔は絵巻物に描かれた下膨れの平安美人の目を大きく眉毛を立派にした感じ。平安時代にドラッグクイーンがいたら私みたいな顔なのでは。普段着もTシャツにジーンズより十二単衣が相応しいと思う。
それで昔は傷ついていたけど開き直ることにした。後ろ姿がとびっきりいい女なんだよって。
シャリマーをつけていると追いかけられることが増える。住んでいるところがアメリカなので西洋人にとってだけエキゾチックな私の魅力とやらが香りで底上げされるのだろう。
ここまで読んでいてきっとスタイルは抜群なんだろうと思ったでしょ。違うんだ、これが。中学校二年男子生徒とほぼ同じ体型。要するによく言えば少年体型、悪くいえば肩幅が立派になりかけた、寸胴で女性としてはちょっと…..でも蹴られたら痛いだろうなという筋肉質の身体をほこる。胸は無い。筋肉埴輪という表現が正しい。
じゃ、私の魅力ってなんなのよ?
シャリマー以外で考えられるとしたら髪。実は白人はボリュームのない細い髪が多く黒人は縮れた髪なので、日本髪を結ったときバッチリキマるボリュームのある黒髪に憧れる。彼らにはストレートな剛毛が羨ましいらしい。
ふっくらした女性らしいバストとヒップを育てるための栄養は全部髪の毛にいってしまった。頭蓋骨の中で止まってくれれば東大にだって入れそうな脳みそになったであろう莫大な量の栄養が髪の毛だけに注入された。肌はひからびてるのに腰まである髪の毛だけが漆黒でフサフサで艶々。何故か白毛も皆無。眉毛も立派で朝起きたら寝癖のついた眉毛を小さな櫛でとく。パンストを破ってはみ出すすね毛が哀しい。
そんな毛根一点豪華主義の五十過ぎの枯れかけた奴でさえシャリマーはいい女だと錯覚させるスゴイ香水。
トップでベルガモットが香り立つ。オリエンタルなので濃厚と思いきや、レモンと組み合わさって爽やかな柑橘系のスタートだ。私の場合ラストノートのレザーがなぜか初めから軽く香る。レザーの香りが強く出る体質のためだが高級感のある柔らかくて薄い革の匂いだ。
暫く経つとアイリスのパウダリーさが加わり典型的ゲルリナーデのメロディを奏でる。高級感と風格を感じさせるクラシックな香り。バニラも薄らと香り出す。エチルバニリンって食べ物に入れる合成バニラエッセンスの素のはずなのに、私がつけると食べ物感は余り出ない。他の人の口コミでよく触れられる芳しく香るはずのジャスミン、バラもバニラとアイリスに押されて大人しくしている。
他の人とは異なる香りに変化しているとは思うが、それでも匂いだけ嗅いだらいい女感が半端ない。華やかでありながら物腰が柔らかく優しそう、セクシーでありながらも母性も強く感じさせる。このタイプの女性は上流階級にかなりの割合で存在する。洗練されたレディの香りだ。
ミドルノートは余り変化しないまま延々と軽く半日続く。低体温、肉体労働に特化した超スローな脈拍、汗を殆どかかない体質の私が乾燥した気候でつけた場合。バニラに完全に溶け込んだ花の香りが素晴らしい。いい匂いの香水つけている人ではなくいい匂いの人になれる。
ラストはサンダルウッドとバニラの優しさにオポポナックスの甘いスパイシーさが組み合わさった身も心も溶けそうな香り。朝つけると夜寝る頃に上手い具合にこんな香りに変化している。これが好きでシャリマーをつけた手首だけお風呂に入っても水が触れないようにしているくらい。その手首の匂いを嗅ぎながら眠りに落ちるのは幸せそのもの。
年間を通して一番頻繁につけるシャリマー。こんなに大好きでも前から見た私には似合わない。シャリマーをつけた私の後ろ姿は西洋人にとっては東洋の神秘らしいのに、どうにかならないものか?
そっか、追い越されなければいいんだよ。
そして決して振り向いてはいけない。私は後ろ姿美人であって見返り美人ではないのだから。後ろ姿の美しさを殿方の心深くに刻み込んでやる。
かくして私は誰よりも早く歩くことにした。
ニューヨークでシャリマーの香りを振り撒きながら、うおおおおーと物凄い勢いで走るよりも早く歩いている腰まである艶々の黒髪の女がいたら、それは多分私。
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