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doggyhonzawaさん500人以上のメンバーにフォローされていますメゾン・ヴィオレ / コンプリマンへのクチコミ

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doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
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メゾン・ヴィオレ / コンプリマン

メゾン・ヴィオレ

コンプリマン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

6購入品

2021/7/17 10:30:31

ムンとした夏の夕暮れ。夜のとばりが下りると、インディゴブルーの空の手前に、ビル群のシルエットが巨大な黒い墓標のように浮かび上がる。悼むのはどれほど大きな死なのだろう。

そんな時間にメゾンヴィオレのコンプリマンの香りをまとった女性とすれ違った。高架下の風の中で。誰もが足早にかけ抜ける暗がりで、一瞬、心と足が止まった。「邪魔」の舌打ちと侮蔑の視線と共に人々は過ぎてゆく。あの香りはコンプリマンだ。そう思って振り返った。そこには点滅する信号機と幽霊たちの行列と、強いビル風しか見当たらなかった。

あれは確かにコンプリマンだ

電車の窓の外、薄暮の広大な河川敷が自分の暗いシルエットに重なって流れてゆくのを見つめながら、さっきすれ違った香水のことを考えていた。部屋に帰るなり、香水棚の奥からサンプル箱を探した。

あった。メゾン・ヴィオレ。コンプリマン。

コンプリマンは、“COMPLIMENT”と表記する。「ほめ言葉」。元が英語なので前は「コンプリメント」と呼んでいたが、仏語発音だと「コンプリモン」に近いことから、香水サイトではコンプリマン表記となっている。

すぐさま左手首にプッシュした。その瞬間、濃厚な白い花の香りに包まれ、そのあまりの美しさに意識が遠のきそうになった。すぐにネットを開き、メゾン・ヴィオレについて確認した。クラシカルな香水にめっぽう詳しいサイトに次のようにあった。

「メゾン・ヴィオレは、かの香水帝国ゲランより1年早い1827年に創業し、香水の黄金時代に人気の絶頂を迎えて、戦後、次第に消えていったフランスの香水ブランド。今から68年ほど前に最後の香水をリリースしたのを最後に、香水界の歴史からその名が消えた。」

そうだ。そして調香学校を出たばかりの若いイケメン3人がこのメゾン・ヴィオレを再興したんだった。

経営者の子孫でもなく、ブランドとも何ら関係のなかった20代の若き調香師たち。彼らはメゾン・ヴィオレのクラシックボトルを世界中からかき集め、失われつつあった香水レシピの復元に挑み、そしてアドバイザーの協力も得て、「古くて新しいメゾン・ヴィオレ」をリブランディングしたという。

そうか。一度死んだ者の骨を拾って再生させた、ってことか。

新生メゾン・ヴィオレが始まったのは2017年。代表作であったプープル・ドートンヌをはじめ3作品をリリースして、ヴィオレは再び世界に産声を上げた。さらに過去作品のレシピを基に再調香し、2021年にコンプリマンが上梓された。現在はフランスの公式サイトから世界中にオンラインで販売されていてサンプルも購入することができる。

改めてコンプリマンの香りを嗅いだ。スプレーした瞬間から、濃厚な白い花々の香りに包まれるハイエナジーな作品。スパイシーな暗さももったとろけそうなチュベローズ香水。それが一番の印象。同時に、トップからふくよかでインドールの影をもった力強いジャスミンも寄り添っている。この2つの香りが核となって、ボリューム感のあるホワイトフローラルブーケを彩っている。トップにシトラスも何もない。最初から濃厚チュベローズクライマックス。例えるならそう、泥沼に降り立った白いワンピースの女性。

漆黒の闇に包まれた全ての欲望で淀んだ世界。その中を優雅に歩く貴婦人のような香り。あたりには腐臭さえ漂っているのに、その女性が通り過ぎたところだけは、美しく華やいだ香りの引き波が空気を浄化していくイメージ。コンプリマンにはそんな「ほめ言葉」が似合いすぎる。

この香水は、白い花々の美しくかぐわしいエッセンスと同時に、ユーカリの清涼感、インドールのゴムっぽさや樟脳っぽい匂い、そしてヴァニラの茶色い香りをも併せ持っており、明暗の対比がとても効いている。そう思う。うす汚れた高架下の闇。そこでこんなにも白くて強い光のような香りとすれ違った。彼女は誰だったのだろう?しばし香りの向こうにその女性の姿を思い浮かべた。

あたりはすっかり夜になっていた。手狭な部屋の窓の向こうには、夜の街の灯りが、地上の星々のように散らばってまたたいていた。

街は今日も人の心を殺した。無言の雑踏の中でぼくの心も死んでいた。いつもそうだ。人はあんなにも多いのにとても冷たくて遠い。でもそこに一羽の白い鳥が舞い降りた。闇夜に咲いた真っ白なチュベローズの香りに、ぼくの心は息を吹き返した。

そして夜。弔われた幽霊たちは、日中死んだ自分の骨や残滓を拾って、再び夜の街で何かを求め、さまよい歩くのだろう。

そんな亡者の街を、白いワンピースの貴婦人が優雅に歩いてゆく。
黒い墓標の街に、コンプリマンの美しいシヤージュをたなびかせ。

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