Cookieyukiさんのラルチザン パフューム / DZING!へのクチコミ |
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- Cookieyukiさん
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- 51歳
- 乾燥肌
- クチコミ投稿142件
2021/5/1 21:28:19
新品のバスケットボール?
ドリブル、パス、シュートなんて元気な掛け声まで脳内再生される。ツーンとした合成皮革の匂いと黒い線と滑り止めについたポツポツの手触りまで記憶の奥底から蘇ってくる。もしかして調香師、オリビア・ジャコベッティさん、元バスケ部?
やばい香水をつけてしまった。どうしよう、このまま変化しなかったら。
やがてゴムを思わせるケミカルな匂いはおさまり、新品の革製品ほどに大人しくなった。飼い慣らされた馬みたいに。分厚くゴツい革ジャンというより薄く柔らかいイブニング用の手袋のような香り。とてもエレガントで洗練されている。
よく嗅いだらバーチタールとトンカビーンズの組み合わせが革感を演出しているようだ。最近トンカビーンズの精油を手に入れた。トンカビーンズといえば90%も含まれるクマリンという成分が桜餅の葉っぱの匂いの成分ということがよく知られている。確かにそうも思えるが、単体で嗅ぐと多少ゴムっぽいとも思う。
ジンジャーの香りも隠し味として使われている。新生姜の搾り汁というような瑞々しさはなく、スパイスとして使われる乾燥した粉、ジンジャーの香りだ。トンカビーンズや革の香りと意外に相性がいい。
Dzing!は商魂とモテからは限りなく遠いところに位置する。ラルチザンのプロデューサー、ディレクター、調香師が自分の興味をとことん追求した大変潔い香水。サーカスの情景を見事に描き切っている物語性が他の香水にはない魅力。普段使いにしようとは思わないが時々無性につけたくなる。
私が初めてサーカスを見たのは北米だった。交通機関の影響で30分も遅れて会場に到着したのに、まだチケットを買っている人多数。会場の外にある屋台で買い物をして会場に戻る人も。どうやらいつ来ても、途中で出てまた中に入ってもいいらしい。日本では考えられないフリーダム状態だ。
会場は色んな匂いでごった返している。ポップコーン、キャラメルのかかったりんご飴、綿飴の匂い。象、馬、トラ、ライオンなどの動物の匂い。観客の体臭、香水の匂い。古いテントの匂い。Dzing!のミドルノートはそんな香りが交錯する。
色々な香水サイトで口コミを読むとアメリカ人にとってストリートフェスをも連想させるようだ。綿飴、キャラメルがけりんご飴はここでもお約束。都心部や都市郊外のお祭りには必ずある動物と触れ合うコーナー。羊、山羊、アヒル、鶏、ポニーが定番で、家畜貸し出し専門業者か知り合いの牧場から借りてくる。午前中子供たちにモフり倒されて午後の彼らはご機嫌斜め。仕方ないので干し草でつってさらにモフる。そうした連想をする人はDzing!は干し草の匂いも入っているという。
やがて革の匂いが薄まるとムスクが目立ちだす。ムスクと一言で言っても香りのタイプは様々だ。石鹸のように爽やかで美男美女の風呂上がりを連想させるムスクとは異なる。決して不潔というわけではない。媚薬のようにねっとりとしていて野生的、動物的、肉体的、官能的だ。程よくついた柔軟な筋肉、艶やかなきめ細かい肌を思わせるムスク。一瞬触ってみたいとイケナイ想像をして、理性でそれを慌てて掻き消すような気分になるアブナイ香り。フレデリックマルのムスクラバジュールと共通点を感じる。雑な言い方をすればエロい体臭ムスク。
その色気ムンムンムスクも次第に石鹸のような清潔感溢れる残り香に変化し、段ボールか古本を思わせる乾いたバニラと合わさって静かに消えて行く。木とバニラの匂いを足して二で割った感もある。
全体を通して見ると子供の頃に行ったサーカスやストリートフェスを思い出しているみたいだ。共通点はテントと動物と甘いお菓子。綿飴、キャラメルがけりんご飴の匂いも食べている時のキツくて安っぽいグルマンというより、遠くにいて間接的に嗅いでいるよう。記憶の中にある香りを探しているようにさえ感じる。その二つが混合した匂いは身近なものに例えると森永ハイソ◯トの柔らかい匂いに似ている。今も販売されているかどうかは分からないが。
慌ただしく過ぎて行く毎日。でも時々立ち止まって過去を振り返ってみたくなる。サーカス、ストリートフェスって子供の頃大好きだったな。古いアルバムの中に綿菓子を持って満面の笑顔で動物と誇らしげに映る私がいる。Dzing!は大人が子供の頃の情景を懐かしく思い出しているようなノスタルジー溢れる香り。
レザー、キャラメル、トフィー、サフラン、綿飴、ホワイトウッド、りんご飴、クマリン、ジンジャー
(Fragranticaによる)
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