新真昼さんのゲラン / イリス トレフィエへのクチコミ |
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2020/10/9 18:19:27
まずはムエットでお試し(どうでもいいけど、ワッサーってゲランの先細りムエット持ってドヤ!としてる印象がある)。
あ〜、カルダモンわかる。アイリスとアンブレットも。ジェルクさんはホワイトムスクじゃなくてアンブレットだよねー、コーヒーはそこまで、かなぁ。確かに存在するけど、アイリスの後ろに隠れてる感じ。ちょっと淡いかな?
次は肌で。
甘苦いカルダモンのスパイシーさをまとった、「トレフィエ」の名の通り、しっかり焙煎されたコーヒーが香る。ムエットだとあまり主張を感じなかったが、肌だと存在感増し増し。コーヒーにカルダモンを入れて飲むのは中近東ではとてもポピュラーで、しかも、来客時に出すときはカルダモンを入れることが正式な作法だそう。奥から少しだけ感じるベルガモットの風味が、より爽やかさを添える。
コーヒーが落ち着くと、主役のアイリス。ふんわりと柔らかくて、パウダリーだけど粉粉しくない、とても滑らかなオリスバター。まるで灰色のベールをコーヒーに被せたようだ。少し浮遊感があるのはアンブレットのせいだろうか。「アイリスの天然香料はとても貴重で〜」と販売員さんはおっしゃっていた。香水好きならかなりの人が知っていると思うが、天然のアイリス香料を採取するには6年はかかる。現在では合成香料もあるが、やはり天然にはかなわないという。この「イリストレフィエ」に含まれるアイリスが、全部が全部天然だとは思わないけど、それでもとても魅力的な香りだ。ただ、このアイリスの香りは、コーヒーやベースの甘みに押され気味なのか、持ちが悪く行方不明になりやすい。
ドライダウンはレジン系の甘味やレザーの苦味が加わって、まるでビターチョコやココアを思わせる風味になる。そして、乾いたウッディバニラに変化して消えていく。アイリスの香りを楽しめるのはトップからミドルまでの一時間くらい、後は甘いアンバー+レザーの香りが四時間ほどで持ちは全体で約5時間ほど。
大人気だった「アイリスガナッシュ」以来のアイリスが主役のラールエラマティエールだが、正直判断が難しい香りだ。
ムエットだとアイリスのパウダリーな側面が楽しめて「名前の通りの香りだな」と思えるが、肌に付けるとアイリスよりもアンバーやコーヒーの香りが強く出やすい。パウダリーさを期待して付けると、その香りがすぐに色褪せ、ありきたりなドライダウンになりがち。単純にいい香りではあるし、いい材料も使っているのだけれど、それだけ。キレイにまとまりすぎているように感じる。もちろんそういった香りは使いやすくはあるが、最上級シリーズとしてのキャラクターに欠ける。せっかくの高級ライン、アレゴリアやモンゲランシリーズでは使えないようなクラスの香料も使っているはずなのにそれが買い手に伝わらないのは少々もったいない。
このイリストレフィエのメインの調香はワッサーではなくデルフィーヌ・ジェルクのようだ。彼女は今年これ以外にも、限定品「ルールブランシュ」も主導権を握って創作している。女性調香師が公に出ることのなかった昔のゲランとは時代が変わったんだな、としみじみ思う。マチルド・ローランとか、いまだにパンフレットに名前すら載ってないしね。
トップ:カルダモン、ベルガモット、コーヒー
ミドル:アイリス、アンブレット
ベース:バニラ、アンバー、ティー、レザー
調香師は、デルフィーヌ・ジェルク。
(フレグランティカより)
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