doggyhonzawaさんのモルトンブラウン / ミルクムスク オードトワレへのクチコミ |
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- doggyhonzawaさん 認証済
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- 54歳
- 乾燥肌
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2020/9/26 12:07:05
ミルクムスク。これはやられた。この名前を聞いただけで超絶嗅ぎたくなるすばらしいネーミング。もう名前で勝利確定系。閉塞感と孤立感、不安感が強い今の時代に、ミルクのように安らぎを与える香りだろうか?ミルクムスクは世界を救うだろうか?(←そこまで言うか)
ミルクムスク。この単純にして今まで誰も思いつかなかった魅力的な名前の香水をリリースしたのはモルトンブラウン。英国のブランドで、どちらかというとトータルバスケア製品で有名だ。かのエリザベス女王のロイヤルワラント(英国王室御用達認証)を持ち、世界中の名だたる高級ホテルのアメニティにも採用されており、信頼度は抜群だ。
ミルクムスクは2020年4月に発売されたばかりの香水。やや拡散力が強いオードトワレ(EDT)と、付けた場所で香りが続くオードパルファム(EDP)の2種類を同名で展開している。EDTは50mlで税込11000円、EDPは100mlで税込22000円。EDTとEDPは香料の構成も印象も結構異なるので、単に濃度の違いではないことは留意したい。このレビューはEDTの方だ。
では、そんな名前でつかみOKなミルクムスク、実際の香りはどうなのだろうか?
可愛いたまキャップを取ってスプレーする。ほんの一瞬、アルコールの冷たい香りが抜けていくと同時に、ふんわり現れるクリーミーな柔らかい甘さ。何だろう?わからない。その下からは割合スッキリした石鹸のような香りも出ている。よくある白い石鹸の香りのようだが、ツンとしたソーピーさではない。もっと控えめでパウダリーに傾いた香りだ。
柔らかくてクリーミーで、ほんのり甘くてフルーティーな気配もする白い香り。それがミルクムスクEDTのトップだ。ブランドは構成イメージを次のように示している。
トップ:ペアー、ピーチ
ミドル:ソフトムスク、アンブロキシド、ヴァニラ
ベース:ホワイトシダー、トンカビーン
トップにペアーとピーチとあるけれど、どちらの香りも明確ではない。ただ桃のもつ柔らかな風味、洋ナシのみずみずしさあたりは感じ取ることができる。同時にソフトムスクのマイルドな清潔感&白いパウダリー感もトップから感じ取れる要素だと思う。そこに柔らかなヴァニラの白いヴェールがかかっている感じ。この白くてマイルドクリーミーな香りが、しばらく続くミドルになっていく。
トップ〜ミドルで大きな変化はないものの、次第に見えてくる香料がいくつかある。特にミルクノートの部分。その1つは乾いた粉っぽいクマリン、いわゆる杏仁霜の香りだ。それからほんのわずかナッティーなココナッツ香もかいま見える。ただ、ミルクムスクという名の「ミルク」の部分がEDTでは実はそれほど強くなくて、その白いブレンドの下からかなりエアリーでスッキリした風が流れている点が特徴的だ。これは、アンブロクサン等でウォータリーなベースを作っている感じ。
この作品を創った女性調香師マーヤ・レヌは、今回のミルクノートが特別なオリジナルであることをフィルムで語っている。その秘密はおそらく、ミルクノートの下に流れるこのスッキリした水のような香りとの配合にあるのだろう。
「ミルク」を感じさせる香りはこれまでにも多くあった。例えばディメーターのコンデンスミルクやフエギア1833のキロンボなどは、かなり練乳寄りなミルクノート系。これらは濃く煮詰めた甘さが引き立つ感じ。これに対して、ヴァニララスト系の香水は数多くあって、ほぼ2種類に分かれる。一つはヴァニラアイスクリーム系の甘く白い香り、もう一つはローストしたヴァニラビーンズ系の焦げた茶色い香りの系統だ。だが、ミルクムスクのミルクノートは確かにそれらのどれとも違う。
なぜなら、ミルクムスクのミルクは液体で流れているからだ。
これまで「ミルキー」と称されてきた香りは、割にアイスクリームやミルクキャンディを思わせる個体系の香りが多かった気がする。マーヤ・レヌは、そこにウォータリーノートを交えることで、流れる液体イメージのミルクにしたのではないだろうか。
ミルクムスクの香りは、桃でもなく梨でもない。石鹸でもなく海の香りでもない。練乳でもなく牛乳の香りでもない。それらのどこからも等距離にあって、香りの円環の中心でソフトなムスクの毛布にくるまれているピュアな香り。赤ちゃんを包みこむ柔らかなおくるみの匂い。
赤ちゃんの顔にそっと顔を近づける。干し草のようにあったかくて、ちょっと酸っぱいようなミルクの匂いがする。いつまでも嗅いでいたい不思議な香り。そして自分が遠い昔、どこかで味わって忘れかけている大切なものを思い出させてくれる根源的な匂い。
ミルクムスク。それは大人になった貴方に捧ぐ、聖母の愛の香り。
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