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doggyhonzawaさん
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ELLA K / オカバンゴの水面

ELLA K

オカバンゴの水面

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2020/8/22 15:43:47

ここに「オカバンゴの水面(みなも)」という名の香水がある。なんて詩的なネーミングだろう。オカバンゴとは、アフリカ南部にある内陸国ボツワナで一定期間だけ見られる「オカバンゴ・デルタ」という大湿原のことだ。日本の四国全体の面積以上に広いこの大湿地は、5月〜9月までの間だけ砂漠に出現し、さまざまな野生動物や植物の命を支えるオアシスとなる。それは、雨季に降った大量の雨を集めたオカバンゴ川がカラハリ砂漠に流れ込んでできる「砂漠にできた海」だ。

通常、デルタ(三角州)は河口部にできるものを指すが、オカバンゴ川はいくつもの支流に別れて網の目のようにカラハリ砂漠に広がり、巨大な水たまりを形成してゆく。これは、やがて砂漠の中に消えてゆく幻の海に注ぐ内陸デルタ。決して海にたどりつかない川の最後の姿だという。

アフリカの乾いた砂漠。丈の短いブッシュ。時折見られる高木。野生動物の群れ。そこに出現するとてつもない広さの「内陸の海」。もしあなたが調香師なら、そんなイメージからどんな香りを組み立てるだろう?熱いスパイス、乾いた木の香、灼熱の太陽を感じさせる香料、そしてアニマリックなアクセントあたりを持ってくるのが妥当な気はする。

だがこの「オカバンゴの水面」という香水を創ったソニア・コンスタン女史の調香はそれらを全く覆すものだった。では彼女はこのアフリカの「旅」から一体どんな香りを作ったのか?

美しく繊細なガラスボトルから、オカバンゴの水面をスプレーする。その瞬間、まず立ち上がってくるのは、ふんわり柔らかい黄色いミモザ様の香りだ。シャープで透明感ある風、わずかにくすんだ花粉のような匂い、それらをくるむ甘くパウダリーな黄色い花の香り。ヘリオトロープやアイリスといったパウダリー系香料よりも、もっと高いところでややスパイシーさを伴ったきめ細かいパウダリー香に包まれる。このトップがあまりにも意外過ぎて、思わず「これ、オカバンゴの水面だよね?」とボトル名を確認してしまうトップ。

3分ほどすると、透明感ある風は過ぎ去って、黄色いパウダリーな花粉のような香りがどんどん明確になってくる。同時に下の方で乾いた香ばしいウッディ系の香りが流れてくることに気付く。黄色いミモザ、そして乾いたウッディ、この2つが表現しているものは、アフリカに多く見られるアカシアの木の花の香りだ。

アカシアは水のない砂漠にも生育する高木で、背丈はゆうに15mを超えるという。日本で見られる通称アカシアは、白く甘い香りの花をつけるニセアカシアという品種で、本物のアカシアとは全く別物。アフリカのアカシアは黄色いぼんぼりのような花をつけるキャメル・ソーンという品種だ。カラハリ砂漠に見られるこの扇を広げた形をした高木は、キリンをはじめとしたさまざまな野生動物の食料となり、多くの鳥類の住みかとして、砂漠に生きる者の命を支える大樹と呼ばれている。オカバンゴの水面は、そのアカシアの花の香りを表現した香水だ。

胸がキュンとしそうなほど黄色くせつないパウダリー。一言で言うならそんな香りがする。全体的にシングルノートな雰囲気で大きく変化はしない。ラストもわずかにスパイシーなウッディが強くなってパウダリーなまま減衰し、つけてから4〜5時間ほどでドライダウン。価格は70mlで28600円(税込)。伊勢丹新宿店やオンラインショップで取り扱っている。

オカバンゴ・デルタの旅は、大自然と野生動物の姿に触れられる貴重なエコツーリズムだという。丸木を削ったモコロという小舟に乗り、水面ギリギリの目線で、緑の草木や水蓮があふれる水面を進んでいく。周囲にはさまざまな野生動物の姿や植生を見ることができる。水面から突き出たカバの鼻と目、水辺でくつろぐライオン、水あびをするゾウの群れ、そして巨大なアカシアの樹上、緑の葉を長い舌でからめとって食べる野生のキリンの親子。

それらを見つめた旅の甘美な思い出が、アカシアの花のパウダリーな香りをキーストーンに凝縮されたのだろう。これはアフリカの匂いでなく、水の匂いでもない。ソニア夫妻がかの地で体験した夢のような旅と冒険の日々を回想した香りなのだろう。

8月の朝、乾季のカラハリ砂漠に白い太陽が昇る。青空と入道雲の下、ひときわ大きなアカシアの木の緑色が目に鮮やかだ。櫂を使ったモコロがゆったりとまばゆい水面をすべる。黄金色の時間の中、アカシアの木の下を通る。そのとき、水面に映った自分の顔を見て思わず声が出そうになる。

鏡のような水面に映る顔。そのバックでアカシアの黄色い花が満開に咲き乱れている。まるでアカシアの花冠をかぶったかのように。

樹上から甘く切ないアカシアの香りのシャワーが降り注いでいる。幻の海、オカバンゴの水面に。

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