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doggyhonzawaさん
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フレデリック マル / アウトレイジャス

フレデリック マル

アウトレイジャス

[香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:10ml・5,720円 / 30ml・15,730円 / 100ml・28,600円発売日:- (2018年11月追加発売)

4購入品

2020/2/8 15:46:10

かつて、街をゆくとかなりの頻度で同じ柔軟剤の強烈な匂いに出くわすことがあった。ダウニーのエイプリルフレッシュの香り。ダウニーの大ヒットは、良い悪いは別として「柔軟剤は香りで選ぶ」という流れを作った感がある。あの個性的な香りを作った調香師は、アメリカのIFFという香料会社の調香師だったソフィア・グロスマンだ。

ソフィア・グロスマンといえば、男性ばかりのIFF調香師の中、その卓越した能力で名を挙げ、女性調香師の先駆けとなった人物。エスティー・ローダーのホワイトリネン(1978)でチャンスをつかみ、YSLのパリ(1983)、カルバンクラインのエタニティ(1988)と次々にヒットを飛ばし、ランコムのトレゾア(1990)でその名声を確実にした。こうした活躍によって元シャネルのジャック・ポルジュ、現ルイ・ヴィトンのジャック・キャバリエらと共に「世界三大調香師」と称された。

彼女の調香師としての活動は50年ほどにわたり、クリエイションは2009年頃に幕を閉じているようだ。そんな彼女の晩年のしめくくりとなった作品の1つが、フレデリック・マルからリリースされたアウトレイジャス(2007)だ。

アウトレイジャス。意味はいろいろあるが、フレデリック・マルは「常識はずれ」という和訳を用いている。いったいどんな香りなのだろうか?

アウトレイジャスをプッシュする。最初に広がるのはとてもジューシーなオレンジの皮の香りだ。やがてその下から、より苦みの効いたライムやグレープフルーツのシトラスミックスが感じられてくる。特にライムの苦みが強い。さもありなん。このアウトレイジャスは、ブラジルの伝統的カクテル、ライムを使ったカイピリーニャの香りからインスパイアされたものだ。

カイピリーニャは、サトウキビ原料の蒸留酒カシャッサをベースに、ぶつ切りにしたライムと砂糖を加えてつぶしたロングカクテルだ。サトウキビの蒸留酒といえばラムが有名だが、ブラジルでは別物らしい。度数の高いスピリッツにフレッシュなライムの酸味と苦味、そこに砂糖の甘さが効いて、暑い夏には病みつきになるカクテルだという。

ライムを香水に使うことはよくある。ただ使う際は、独特のグリーンな苦みが強くて他の香料とのバランス調整が難しいようだ。このアウトレイジャスのトップでは、アップルの自然な甘さを砂糖に見立てることで、苦みの強いライム感を上手くジューシーにまとめているイメージだ。

使いなれないうちは、このトップのシトラスミックスで、何だか黒い不穏な香りがするなあと感じていたけれど、何のことはない。ライム、グレープフルーツの苦みに混じって、ある種のアルデハイドがアルコールっぽい香りを演出していたせいだ。それが際立って感じられ、どこかダークな色彩に感じられる。それでもそれはすぐに消えて、快活ではじけんばかりのフルーティーミックスに変わる。

やがてライムの苦みは薄らいで、しっとりとした透明感ある香りに変わってくる。アクアっぽい香りだ。トップからほのかな甘さと苦みを受け継いだウォータリーな雰囲気は、まさにサトウキビから作られる蒸留酒の風合い。スッキリとして透明感あるアルコールのような香りに変わってくる。そこに柔らかいオレンジフラワーの香りが重なってくるミドル。ここからの香りがとても心地良い。

ただラストは思いのほか早い。ムスクでも主張の弱い方だろう。わずかにシダーの温かみをのぞかせながら、甘さと苦さとスピリッツのようなえぐみを連れて減衰していく。全体的にコロンのようにあっさりとした香り立ちなので、持続時間も短め。体温高めの自分の肌では2〜4時間ほど。パッと広がってスッと消えてゆく夏の夜の花火のようにスプラッシュする香りだ。

「とんでもない!常軌を逸してる!」とも訳されるアウトレイジャス。スラングでは”That’s great!!”的に用いる言葉でもあるので、若い人向けに逆説的なネーミングにしたという感じだろう。ソフィアの作品と言えば、フェミニンムンムン系の濃厚な作品が多かったせいか、どこか肩透かしをくったようにも思うシンプルな香り。ただその透明感あるミドル〜ラストの展開は美しく、オレンジフラワーのふんわりした香りに心が和む。

熱帯の夏の浜辺、濃厚なフルーツの匂い、火照った肌を過ぎる風、ライムの苦みが効いた冷たいカクテル。そんな風景を思い浮かべたソフィアの晩年は、こんなにもシンプルで穏やかだったのだろう。まるで何かの呪縛から解放されたかのように。心ときめかせる南国の風に吹かれて。

アウトレイジャス。それは「常軌を逸する」ほどの大ヒット柔軟剤を手がけたソフィア最後の置きみやげ。香水界の女王がそっとパレットを置いて傾けた、心に沁みるライムカクテルの味。

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