doggyhonzawaさんのラルチザン パフューム / ミュール エ ムスク オードトワレへのクチコミ |
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- doggyhonzawaさん 認証済
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- 53歳
- 乾燥肌
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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
容量・税込価格:100ml・22,220円発売日:-
2020/1/6 15:07:38
香水に使われるムスクって一体どんな香りなの?答えは簡単だ。それは誰にも答えられない。なぜなら現在香水に使用されているのは多種多様な合成ムスクであり、それらは全て異なる香りで千種類以上もあるからだ。
唯一オリジナルと言えるムスクは、ジャコウジカの腹部から採取&精製したほの甘く濃厚なアニマリック臭。だがこの天然ムスクはもう使用されていない。現在ケミカルで作られているムスクは香水のみならず、石鹸やシャンプー、洗剤等ありとあらゆる香り製品に使用されている香りの保留剤。だから「これがムスクの香り」と共通認識できる単体の合成香料を指摘することは難しい。
そんなとらえどころのない香り、ムスク。かつてその名を冠して大ヒットした香水がある。
ミュール・エ・ムスク。和名「黒イチゴとムスク」。1978年、既存の香水を縛るさまざまな制約からの脱却を目指して、J・F・ラポルトが作ったフランスのパフューマリー、ラルチザン・パフューム。その立ち上げの際、ラポルト自身が調香したオードトワレがこのミュールエムスクだ。
ラルチザンはこの香りの大ヒットによって人気を博し、国内外からその評価が高まった。そのオリジナル調香は世界香水ガイドを執筆したルカ・トゥリンも絶賛するほどクリーミーでフルーティーなムスクであったという。だが時が流れ、ラポルトはラルチザンを去り、EU香料規制も進み、現在ではオリジナルとはかなり異なった香りにリファインされたようだ。つまり、今手にとって楽しめる黒ボトルはこのリファイン後の作品ということになる。
では現在のミュールエムスクは、いったいどんな香りなのか?
「黒いちごとムスク」をプッシュする。その瞬間まず立ちのぼるのは、透明感あるややスパイシーな香り。ほんのりレモンの酸味とオレンジの風味が効いたキッチンスパイシーだ。ペッパーのツンと鼻にくる感じが出ているイントロ。
5分もすると、やや塩味の効いたバジルの香料が出てくる。香水に使われるバジルは少し独特で、さながらお風呂上がりの蒸気のような透明なグリーンが立ちのぼってくる。レモンの爽やかさはまだ少し残っていて、夏から秋にかけて少しずつ高度を上げてゆく日射しのように高いところで明滅している。やがてペッパーとレモン&バジルの下から、メシャンルーのミドルを思わせるかすかなセロリ調ウッディが顔をのぞかせてくる。全体に支配しているのはとても透明感のあるムスクだ。それはシトラスの消失とともに明らかになってくる。
ここで感じられるムスクは、クリアーであたたかみのあるスッキリした香りだ。ルカ・トゥリンに言わせるとラルチザンはラポルトのオリジナル調香からムスクを変更したとのことで、現在のブランドの作品紹介にはホワイトムスクと書いてある。それでもボディショップなどの鼻にツンとくるようなかん高く熱っぽいホワイトムスク系ではない。ほんのり甘く上品で、ややウッディな雰囲気だ。ただ、この作品をつける度にいつも思う。
黒イチゴってどこなの?
オリジナル調香はミュール(ブラックベリー)の甘さとレッドベリーのフルーティーさがしっかり出ていたというけれど、現在の作品ではミドルでもベリー系の果実っぽさがほぼ感じられない。爽やかな秋の空気に、ほんのりセロリ様の苦味あるウッディが感じられるといった気配。この香りのまま、付けて3〜4時間で薄れてゆく。終始レモン&バジルにスッキリしたややソーピーなムスク香が柔らかく香り続けてドライダウン。
総じて現在のミュールエムスクは、ブラックベリーの影がほぼ見あたらない、穏やかで透明感あるムスキーな作品といったイメージだ。これは多くの方も指摘している点。同名のエクストリームになるとベリーが若干感じられるので、ベリー系の甘さにこだわりたい方はそちらをチョイスするといいだろう。こちらは清潔感あるクリアーでややウッディな気配のムスクがメインの作品。澄みわたった風が、森の木々や花々、果実の匂いを時折運んでくる。そんな風景を思わせるような。
フランスの片田舎。秋になると村人達は森の入口で実をつけ始めたミュールに思いをはせるという。赤いつぶつぶの果実が熟れて黒くなるのを今か今かと待ちこがれる。ミュールの黒い果実を煮詰めてコンフィチュールを作るのは、彼らの大きな楽しみの一つだ。
風に乗って、森の入口から鳥の声がしてくる。まだ誰にも採られていないはず。もう少し。もう少しして実が黒く熟したら、カゴいっぱいにミュールを摘んでこよう。
柔らかな金色の日射しの下、黒い真珠のような果実がツヤツヤ輝いている。ムスクのようなあたたかい風が、たわわに実ったミュールをそっと揺らしている。
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