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doggyhonzawaさん
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アゴニスト / ソラリス

アゴニスト

ソラリス

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

4購入品

2019/11/9 14:21:00

アゴニストのソラリスの香りに包まれていると、夕暮れの海をずっと眺めていたい、そんな気分になる。夏じゃない。ほとんど人がいない季節はずれの海。晩秋の夕暮れなら、なおいい。澄み切った冷たい空気の中、残照が空を赤々と染め、遠くの半島が黒いシルエットに浮かび上がる。そんなトワイライトの中、ただ海を見ていたい。

アゴニストは、2008年にスウェーデンで起業した香水メゾンだ。スウェーデンの香水といえばバイレードが有名だが、北欧インテリアのようにシンプルで美しく機能的なスクウェアボトルは、どこかバイレードにも共通して、生活のどのシーンにもさりげなく調和するデザインになっていて好ましい。

美しいガラスボトルに収まったジュースは、天然由来の香料を多く使ったユニセックスな香水だ。北欧の気候風土や文化、歴史からインスパイアされた作品をリリースし続けている。日本ではノーズショップに紹介されて以来、またたく間にその名を広めつつある注目のブランドだ。

「ソラリス」と言えば、映画通の方ならピンとくるはず。映画監督タルコフスキーの名を一躍世界に知らしめた「惑星ソラリス(1972)」が有名だ。この作品は、同年のカンヌ映画祭審査員特別賞を受賞し、以後の映画界に多大な影響を与えた。アゴニストのソラリスは、この映画や原作「ソラリスの陽のもとに」からイメージを広げて作られた作品だという。北欧では夏至の頃、夜になっても太陽が沈まない百夜が訪れる。オレンジ色の太陽が水平線の上をずっと移ろい続ける白夜。ソラリスにはその情景が投影されているという。

ではいったいどんな香りなのか?

ソラリスをプッシュする。トップ。最初に爽やかなグレープフルーツの苦味とマンダリンのオレンジ香が「キン!」と香る。その下からバブルガム様の甘い香りが出てくる。これはブラックカラントのジューシーな甘さだろう。とても高音のシトラスミックス。かなり元気のいいオープニングなので金属的な風合いも感じるほど。逆に言うと、自分の気持ちがダウンしているときには、このはじけるような元気のよさは辛いかも的なイントロ。

3分もするとレモンとマンダリンのオレンジ香が消失し、グレープフルーツの苦味とブラックカラントの深いコクの下から、ピーチのフルーティーが感じられるようになってくる。全体のアコードを色にたとえるならまばゆい金色だ。夕暮れの海、黄金色の太陽の破片が波頭にはじけてキラキラと明滅しているような黄金の光の香り。これがミドルの中心になる。

1〜2時間ほどすると、シトラスミックスの減衰とともに、潮風を思わせるマリンノートが感じられるようになり、冷えた空気の中、ふんわりと潮の香りが漂うような雰囲気になってくる。太陽の光を受けて輝く水面とは裏腹に、あたりは次第にブルーの闇に包まれてくるイメージ。アクアやオゾンを思わせるノートがそれを表し、やがて黒い墨の香を思わせるスパイシーなパチュリと相まって静かに香るようになる。暗くなりつつある海を思わせるラスト。香りが消えるまで大体3〜5時間。

香りの展開を色で表すと、金色から青、最後は黒に変わるグラデーション。それは太陽の光を受けて、刻々と移り変わってゆく空と海の色だ。アゴニストとはもともと「作用薬・作動薬」といった意味合いをもつ医学・薬理学上の用語だ。つまり、香りに包まれることで生態機能を活性化させるというニュアンスを大事にしているということ。オレンジや金色を思わせるこのシトラスミックスは、夕暮れの光を連想させ、アンバーグリス様の潮の香りで海辺のイメージを喚起させる意図だろうか。アゴニストの創始者であるニクラスとクリスティーンの夫婦は、ストックホルム沖に何万もの小島が浮かぶ群島、アーキペラゴのアトリエで作品をクリエイトしているという。彼らの芸術は一日中海の風景とともにあるのだろう。

小説や映画に描かれた「ソラリス」は空想上の惑星の名前だ。惑星ソラリスに広がる広大な海は、知的活動を行う巨大な生命体として形而上的に描かれている。「思考する海」は、人間には全く想像すらできない未知の形成活動を行う。その意味を人間が理解することも、寄りそうこともできないほど超然と、あるがままに。古代、命は海より生まれたと私たちは頭では理解しているが、宇宙の果てで出会ったソラリスの海と人類が邂逅することは、永遠に不可能なのかもしれない。ソラリスの冷たいシトラスとスパイシーな潮の香りを感じていると、そんなよしなし事をつい考えてしまう。

アゴニストのソラリスに包まれていると、夕暮れの海をずっと眺めていたい、そんな気分になる。それは未来永劫、人類と交わることなく、ただそこにたゆたい続ける、全ての思考を生み出す魂の存在。ソラリスの海の香り。

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