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2016/10/29 18:03:37
まさかエルメスの「庭」シリーズに5作目が出るとは思っていなかった。「地中海」「ナイル」とヒットを飛ばしたものの、「モンスーン」で商業的にふるわず、「屋根の上」でフランスに戻って、「やっぱりここが一番」的な、チルチルミチルの青い鳥な楽屋オチで、旅は終わったと思っていたからだ。
しかも、今回の旅先は中国。以前から調香師エレナが並々ならぬ関心を寄せている国だ。かつて訪れた紫禁城で出会ったキンモクセイの香りの感動のみならず、漢字や中国文化、シノワズリ(中国の美術様式)への興味も高いようだが、正直「またそちらですか」という気がしないでもなかった。では、肝心の香りはどうか。
「李氏の庭」を肌にスプレーすると、まずトップで感じるのは、甲高い黄色い柑橘の香り。レモンの酸味にキンカンの香ばしい甘酸っぱさが穏やかに鼻をくすぐる。そしてすぐ消失。3分とせずに、これまでの「庭」系に共通するウォータリーなベースが香り始めてくる。ここからがミドル。
それは、内省的でややはかない印象のジャスミンと、フィグ系を思わせる少し青っぽい印象のウォータリーノート、藻や苔を思わせる暗めなグリーンノートのミックス。アーティフィシャルな香りだが、とてもしっとりとして、落ち着いた透明感あるミドルだ。まさに、これまでの「ナイル」「屋根の上」あたりに通ずる「庭ベース」ともいうべきみずみずしい香り。ただ、よく見ると、少し草木が枯れている。沼の水にもカーキの濁りがある。しだれ柳が作る翳りが思いのほか濃い。そんな印象。水墨画とまではいかないものの。
ミドルは思ったよりも短いと思う。1時間もせずに、柑橘やジャスミン、グリーンな雰囲気は消失して、気が付くと、透明感あるウォータリーな香りとほのかな木の香りとが相まった、庭系独特の艶のあるラストになっている。香料じたいがかなり少ない印象で、庭ベースを元に再チューンしただけのような印象も。そして、このラストがどことなく「モンスーンの庭」のようにこんもりした温かみのあるスパイス感をもっているように感じられる。ジンジャーやカルダモン、クミン系のスパイスがほんのわずかアクセントとして効いている、そんな感じがして、キラキラのスイレンアコードで終わる「ナイルの庭」や、甘ったるく終わる「屋根の上の庭」よりも、「モンスーンの庭」のインド寄りに思える。
ラストはほのかに7〜8時間も残っていて香るけれど、どこか入浴後のジャスミン系入浴剤の残り香のようにも感じられる。ジャスミンとウォータリーノートを合わせているのだから、さもありなんとは思うけれど。
全体に、とても落ち着いてしっとりした香りだと思う。であればこそ、やはり空気が乾燥してくる秋〜冬にかけて、シックな色合いの服やシーンに纏うとよい雰囲気になるだろう。そんな意味でも、この春に出た新作だけれど、自分にとっては秋のイメージの方が強い美しい香り。
ただ、いくつか言いたいことはある。
まずは、とにかくこのネーミング。どうにかならなかったのだろうかと言いたい。「李氏」は、中国や韓国で最も多い姓の1つであり、中国の架空の庭をイメージするための象徴として使用したようだが、「香水は何をお使いですか?」と聞かれて「あー、はい。『李さんの庭』です。」という会話だけは絶対にしたくないし、避けたい。欧米ではどうか知らないが、「李氏の庭」というネーミングは、明らかに日本人の心には響かない。響かなさすぎる。(←みんな遠慮して言わないから言ったな。パンクスめ。)
せめて仏語のまま「ムッシュリーの庭」、あるいは「シノワズリの庭」くらい、ぼかしてほしかった。加えて言うなら、もし日本をイメージして第6作を作ることがあれば、「佐藤さんの庭」なんて名前で出そうものなら、本気で青空に向かってあらん限りの罵詈雑言をシャウトします。(全国の佐藤さん、すみません。日本で一番多い苗字という意味で、他意はありません)
また、皇帝のイエローと呼ばれるボトルの美しいイエローグラデも、土色の黄河や、苔むした岩、よどんだ沼の色のイメージではやや残念だ。この香りやボトルから自分が思い浮かべるのは、陽に向かい、美しい黄色の扇を満開に広げたイチョウの木と、落葉が作る一面の黄色の絨毯。中国の観音寺には、樹齢1300年をこえると言われるすばらしいイチョウの木があるという。そんな紅葉ならぬ「黄葉の庭」のイメージが似つかわしい。
空が青くどこまでも高い。その空に向かって、鮮やかな黄色の葉をつけたイチョウの大木が、思い思いに気持ちよく枝を伸ばしている。その青と黄色のコントラストが目にまぶしい。
秋の午後、どこからかジャスミンティーの温かな湯気の香りがしている。柔らかな黄金色の日差しが降り注ぐシノワズリの庭で。
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2017/12/2 10:21:06
かつて「世界一高価な香水」「香水の女王」と呼ばれ、稀少な花の精油をふんだんに使用した最高に贅沢な香り。それがジャン・パトゥのJOYだ。
1929年世界恐慌の年に発売され、今なお世界中の女性に「歓喜」を振りまくJOY。このレビューはオーデパルファンのJOY、かつてオーデ・ジョイだったものだ。処方はパルファムと似ているものの、印象的に異なる部分はある。ではJOYのEDPは、一体どんな香りだろうか。
豪奢なガラスボトルは、アールデコ建築家ルイ・シューによる美しく落ち着いたデザイン。キャップもラベルも液色も金色で、ゴージャスこの上ない。そんなボトルから1プッシュすると。
トップ。花々の香りにきらめきのヴェールを与えるアルデハイドの香りが一気に拡散する。一瞬、シャネルの5番に似ていると感じるクラシカルな開幕。ツンとするようで、けれど花々が朝露に濡れたような雰囲気を感じさせるインパクトのあるオープニング。
2分後、かなり強いジャスミンの香りがしてくる。超濃厚。同時にやや甘いアニマリックな匂いが感じられてくる。一歩間違うと、し尿や体臭を思わせるインドールの匂い。インドールはどんなジャスミンにも含まれていているが、特に多く含まれているのはグラース産のジャスミンだ。金塊の2倍の額で取り引きされるという高濃度インドールを含むグラース産ジャスミン。それは世界のどのジャスミンよりも人の嗅覚に潜在的に働きかけ、リッチでフルーティーながら強く官能を呼び覚ますという。その濃縮されたエッセンスが、これでもかというくらい主張してくる。くらくらするほどに。
ほどなく、濃厚なインドールジャスミンの香りに他の花々のニュアンスが重なってくる。ユリの花粉のようなグリーンな苦み、チュベローズの妖しい華やかさ。さらにイランイランの蠱惑的な香りも感じられ、ホワイトフラワーの濃密な饗宴となる。これがジャン・パトゥの「花」の香り。まるで生花のエッセンスを凝縮したかのような強い出力に驚く。
さらに10分ほどすると、ホワイトフラワーブーケの陰から静かにクールフラワーノート、ローズの香りが感じられてくる。クレジットによると、こちらも稀少なグラース産ローズ・ドゥ・メ。このセンティフォリア・ローズの爽やかな香りが、ふわふわと垣間見られるようになる。ジャスミンが「私を見て。感じて。」と強く主張してくるのに対し、このスッキリした青みのあるローズは、物陰から時折そのピンクのドレスの一部をちらちらと見せるような現れ方だ。かつて中世の時代、ヨーロッパではジャスミンは娼婦の香り、ローズは貴婦人の香りとされていたが、強い誘惑の香りの後にこんなにも清楚で柔らかいローズが感じられると、逆に心が囚われてしまう。
このミドル後半の香りの変化はとても美しい。ジャスミンがデクレッシェンドしていくにつれ、わずかにハニーのような甘みを伴ったローズ香がムスクのソーピーさと溶けあい、高級な薔薇石鹸の香りになって人肌に清潔さをしたためていく。ラストはこのクレオパトラが愛したというローズオイルとムスクのミックスでフェードアウト。EDPながら時間は短めだ。体温高めの自分の肌で3〜4時間くらい。
全体的にトップのアルデヒドの拡散から、ミドル前半のインドールジャスミンの濃厚な爆発、そして、ミドル後半からラストにかけての美しくつつましいローズ石鹸の香り、という黄金ピラミッド的展開の名香。過剰投与されているのはジャスミンで、しかもそこらの物とははっきり異なるクオリティだ。ただ、それが好きかどうかは別問題。全体の雰囲気はクラシカルだし、主張も強い。ライトでフルーティーな花の香りが好まれている今の時代には、敬遠する向きもあるだろう。
それでもこのJOYが見せてくれる女性らしさ、その優雅な柔らかさは、特筆すべきものだ。ジャスミンもローズもチュベローズも、付けるたびに出てくる花の色や香り立ちが異なっていておもしろい。1929年、世界恐慌によりこの天上に絶望と不安という暗雲が立ちこめた時、JOYはその黒雲を突き抜ける一条の金色の光のごとく世界を席巻した。まさに歓喜という名の香りで世界の色を塗り変えたのだ。
バラの花のクールで高貴な香りをかぐとき、ジャスミンのふくよかで濃厚な香りを感じるとき、女性は知らず知らず優しい表情になる人が多いという。女性はいつの時代でも華で、そしてどんな暗い時代でも花の香りに包まれていてほしい。それはきっと世界全体が見る夢だ。
ジャン・パトゥがJOYのボトルに詰めたのは、1万本のジャスミンと336本のローズ・ドゥ・メ。小悪魔の悦びと天使の歓び、そして、女性の永遠の喜び。
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スピリットオブアユーラ オードパルファム(ナチュラルスプレー)
税込価格:- (生産終了)発売日:2001/12/1
2018/9/8 13:55:50
汚れちまったな。服も心の中も泥だらけだ。誰かの手垢まみれの自分。こんな自分いやだ。好きになれない。心も体も洗濯して漂白したい。浄化してしまいたい。
なぜだろう。季節の変わり目にはそんな思いにとらわれることがある。ふだんは透明に見える心の水が本当は泥水だったことに気付くような。ただ泥が心の底に沈んでいて透明に見えていただけで、季節が変わって水がターンオーバーし、沈殿していた心の泥を撹拌してしまったような。そして心の中は視界ゼロの泥水状態。
スピリットオブアユーラという香りに出会ったのはそんなときだった。憂鬱、怠惰、慢性的な心の疲れ。人の心は弱い。たやすく落ちる。そして得てして、落ちたら長い。そんな長さを少しだけ短くしてくれたのがこの香りだった。
アユーラはサンスクリット語で「命」を表すコスメブランド。かつては資生堂の子会社だった。西洋科学と東洋叡知の融合をコンセプトとして、独自の商品を開発・展開している。 中でも2001年に発表されたスピリットオブアユーラ・オードパルファムは、発売と共にじわじわと人気になり、ブランド認知の大きなきっかけとなった作品だ。
スピリットオブアユーラ、「アユーラの精神」。まさにブランドの方向性や考え方をこの商品で語るという大役を担った作品。それは香りでどのように表現されているのか?
スピリットオブアユーラは、まずボトルがとてもいい。大きさも色も形も夏の朝に咲くハスの花のつぼみそのものだ。ハスの花は泥水の中から茎を伸ばして水上に突き出て、やがて大きなピンク色の花を開かせる。それゆえに昔から「聖なるもの、清らかさの象徴」とされ、宗教において珍重されてきたアイコンだ。このつぼみの中にはどんな香りが隠れているのだろう?ふだん香水などに縁遠くても無意識に誘われる意匠だ。
ボトルキャップを軽くつまんで外し、スプレーする。その瞬間、ふんわりと心地よい風が吹く。どこか懐かしいような、あたたかさに包まれているような優しい香りだ。たとえるならお風呂上がりの匂いだ。ジャスミンの入浴剤の蒸気、シャンプーしたてのフローラルの残り香、クリーミーなボディーシャンプーの香り。そうしたものが自分の体から湯気とともに立ちのぼってきたような香りがする。
このトップをよく嗅ぐと、まず酸味のあるハーブの香りがしている。クレジットで見れば、ローズマリーやカモミールなどのハーブが引き立っている印象。そしてその背後からグリーンティーのスッキリした香りが広がってくる。トップからお茶の香りが強く出てくるので、ふーっと安心感を与えてくれる。マイルドハーブ&グリーンティーなトップ。
やがてわずかな清涼感を伴ってほんのり甘いフローラルが感じられてくる。みずみずしく、少しだけ酸味と苦みをもったひかえめなフローラルだ。クレジットによると匂いナデシコと沈丁花とある。匂いナデシコの香りを嗅いだことはないが、カーネーション系のクローブ香をもっているようで、実際、甘くてややツンとした感じの香りだ。ジャスミンとミュゲも背後に感じられ、ミドルは穏やかで柔らかい低音のフローラル香になる。
ところが。
このお風呂上がりの入浴剤みたいなリラグゼーション香は、あっという間に消えてしまう。体温高めの自分の場合は、30分程度であとかたもなく。ラストは淡くまろやかなムスクが残っているばかりだ。同時に樟脳のような暗いシャープな香りがずっと続いていたことが最後にわかる。これがアユーラの言うところの墨の香りだろう。アニス香に似たスッとした香りとして最初からベースに感じとれる。
全体的に見ると、これはとてもニッチな香りだ。香水とアロマテラピーの中間。嗜好品と薬の中間。高価と安価の中間。30分間の癒し&気分転換のための気付け薬的な使い方がメインとなるフレグランス。落ち込んだとき、心がもやもやしているとき、イライラしてスッキリしたいとき、ほっと一息つきたいとき。そんなときにこんな穏やかな香りが心を救ってくれる。「心につける香り」というキャッチから見ても、この作品は自分が香気を吸ってくつろぐための香りなのだろう。うつむいてしまった自分を再び立ち上がらせ、凛として背を正してまた前へ進むための。
「蓮(ハス)は泥より出でて泥に染まらず」という中国の古い言葉がある。いつしか積もったストレスの澱は、いわば心の泥だ。だがそんな泥からも育つ植物がある。ハスは泥水が濃ければ濃いほど大輪の花を咲かせるという。たとえ今が苦しくても、そんな時こそ必ず心の中で伸びている茎がある。それはやがて大きなつぼみとなる。
だから、あなたはいつか必ず咲く花だ。
スピリットオブアユーラは、そんなメッセージと共に心に寄り添ってくれる香りだ。
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2021/1/10 07:45:40
なんてお得感笑(´^ω^`)ブフォwww
店頭で試したところ、もう香りが良すぎて、素敵
過ぎて…すぐさまオンラインで購入。←
サイズ変わらずのボディーヨーグルト、ハンドクリーム、シャワージェル、の三点。+ミニサイズ持ち運びやお試しサイズのボディースクラブ一点の計四点。
ボディーヨーグルト→お風呂上がりに濡れていても使いやすいヨーグルトシリーズ、いい香り
ハンドクリーム→うーんいい香り、ザ、冬の朝!
乾燥し少し寂しい感じの冬の香り。
シャワージェル→洗い上りもしっとり。本当にいい香り
ボディースクラブ→最高
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