2022/3/4 10:45:52
トップに香るのはシトラスとハーブのミックス香。すーっとした清涼感のあるローズマリーとラベンダーの香りが顕著だ。ジッキ―のラベンダーは、近年のモンゲランに使われている硬質なラベンダーよりもぐっと柔らかい印象。合わせられているシトラスも、キンキンと酸味が強かったり果皮の苦い感じもしない。嫌みがなくあっさりとしていて、付けるとリラックス&リフレッシュできる出だし。
シトラスが抜けてくるとミドルになると、ラベンダーのアロマ感が強く出始める。ベースノートにあるクレジットを見ると、ゲランのクラシックシリーズによくある多層的フローラルがあるようだが、私にはあまりよくわからず、たまに少し顔を出すかな、という程度。現代のジッキーはひょっとしたらリフォーミュラされていてフローラルの部分が弱くなっているのかも。そしてちょっと腋臭っぽいニュアンスというか、クミンとバジルを合わせたようなスパイシーな香りが下から透けて香ってくる。
ドライダウンは、レジン系の甘さを背景にした粉っぽいバニラに落ち着く。乾いた甘さが心地いい。粉っぽさの正体はアイリスとクマリンだと思う。その甘さの下に、ジリジリとレザーのニュアンスも感じる。トップからミドルまでで1時間ほど、ドライダウンは7?8時間ほど香る。ビンテージのジッキーにはシベットが使われていたようだけど、現行品はあんまり入ってないか、オミットされているように思う。マニアからしたら、今のジッキーはただの同じ名前の違う香水で、オリジナルはとっくの昔に廃番扱いかもしれないけど、今のものもビンテージもそれぞれ良さがあると思う。
トップ:ローズマリー、ベルガモット、レモン、マンダリンオレンジ
ミドル:ラベンダー、トンカビーン、オリスルート、バジル、ジャスミン
ベース:バニラ、レザー、スパイス、ベンゾイン、サンダルウッド、アンバー、ブラジル産ローズウッド
調香師はエメ・ゲラン。
(fragranticaより)
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2021/11/26 13:08:26
ローリングインラブに引き続き真っ赤なボトルデザインで販売された「ア キス フロム ア ローズ」。キリアン・ヘネシー曰く「バラの花弁と棘を表現したかった」とのこと。担当調香師はキリアンの不動のベストセラーであるグッドガールゴーンバッドを完成させたアルベルト・モリヤスだ。
トップに拡がるのはムスキーなグリーン。これがひとくせあるというか、かなり特徴的。よくある嗜好性の高いすっきりした青葉の香りではなく、セロリのような好き嫌いの分かれそうな野菜を思わせる清涼感のあるグリーンだ。
トップから続くムスクを漂わせながら、タイトルにもあるローズが展開していく。真っ赤なボトルのイメージからフェミニンなローズの香りだと思っていたが非常にドライでクールな辛口のバラ。甘さがほとんどないグリーンローズ。辛口なローズというと、ブラックペッパーやクローヴのスパイシーさを添えた香りはよくあるけれど、これにはそういった香辛料っぽさは感じられない。例えるなら蕾は付いているけどまだ咲いていないバラ。
ドライダウンになると、トップからずっと続いていたムスクが主体になる。あとはほんのちょっとだけウッディなアコードを感じるくらい。fragranticaにはシプリオルオイルとあるけれど、言われてみればそうかな、という程度。トップからミドルまででニ、三時間、ドライダウンは五時間ほど。
クセのある清涼感のグリーンに甘さのないバラを合わせた香りは、キリアン・ヘネシー氏の言う通り、バラの棘という表現によく合うと思う。ローズの香りが欲しいけどフェミニンな香りは苦手、でもスパイシーなローズは飽きた、という方にはオススメ。
トップ:ブラックカラント、グリーンノート
ミドル:メイローズ、ジャスミンサンバック
ベース:ホワイトムスク、シプリオルオイル
調香師は、アルベルト・モリヤス。
(fragranticaより)
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2021/10/30 02:35:33
トップから非常に甘いベースノートが主張するが、それと同時にキーの高い柑橘も感じられる。オレンジの甘さとベルガモットのみずみずしい酸味をネロリのフローラルがまとめ上げ、カロリーの高そうな甘さをうまくいなしている。
続いて主役のローズが展開していく。この「ラブエクストリーム」はローズがオーバードーズされているという。ローズは通常の「ラブ」にも含まれているが、あくまで脇役でそれ以上にハニーサックルやオレンジフラワーが強かった。エクストリームではミドルのメインに据えられている。甘美なローズに、ザラッとしたマルトール的な甘さが合わさっても甘さ一辺倒にならずしっかりフローラル感があるのはさすがキリアン。名前だけじゃなくて値段もエクストリームなんだからそれくらいしてもらわないと困る。
ドライダウンになると、ラブシリーズお馴染みの真っ白いムスクとマシュマロアコードのふんわりした甘さが香り全体を包み込む。ローズの赤に、白い甘さが溶けてピンク色に染まるイメージ。持続はオリジナルよりかは控えめだが、八時間は余裕だ。
キリアンの人気フレグランス「ラブドントビーシャイ」のフランカーとしては、ウードを合わせた「ラブローズウード」の二種を除けば二作品め。一作めの「ラブオーフレッシュ」は、マシュマロからインスパイアされたイメージを崩さない良アレンジであったが、このエクストリームもしっかりオリジナルを踏襲しつつ、新たな表情が付けられたイキのいいドジョウだ。さすがカリス・ベッカー。
トップ:ネロリ、ベルガモット
ミドル:ブルガリアンローズ、オレンジブロッサム
ベース:マシュマロ、バニラ、ムスク、ポメグラネート
調香師は、カリス・ベッカー。
(fragranticaより)
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2021/11/5 14:52:18
淡いピンクのジュースをスプレーすると香ってくるのは、控えめなベリーとツンとしたアーモンド臭。この鼻を刺す辛みすら感じる香りは、ベリー系の香りの再現にとても重要らしい。どことなく杏仁豆腐やアマレットにも似ている気がする。
ベリーの香りはすぐに抜けて、甘く華やかなローズが香り立つ。ローズウォーターやアブソリュートやら、まさに豪華絢爛と言わんばかりのローズ尽くし。拡散力は強く、まるでピンク色のバラの花びらのシャワーのよう。このリッチなフローラルの中に、メタリックなバイオレットがほんの少しグリーンのニュアンスを添える。
ローズの余韻をたっぷり残したままドライダウンへ。パウダリーなムスクがメインだが、肌に付けるとしっかりサンダルウッドが効いているのがわかる。持続は六、七時間といったところ。
ローズシェリーを初めて試したときは、「フレンチキスの使い回し?」と感じた。実際に両方をじっくり比較してみるとかなり違いはあるように思えた。フレンチキスはシンセティックなベリーとパウダリーなムスクが主体のいわゆるメイクアップ系の香りだが、ローズシェリーはローズをこれでもか!と言わんばかりに主張させ、ウッディなファセットで締めたリッチなムスキーフローラルウッディの香りだ。正直に言うと、フレンチキスはラールエラマティエールより高いシリーズにしては香りが少々キッチュだったが、このローズシェリーはフレンチキスのそういった側面を抑えてよりハイエンドラインらしい香りに仕立てられていると思う。
ノート:アーモンド、ダマスクローズウォーター、ダマスクローズ、ダマスクローズアブソリュート、ローズセンティフォリアアブソリュート、ラズベリー、ヴァイオレット
調香師は、デルフィーヌ・ジェルク。
(parfumoより)
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- doggyhonzawaさん 認証済
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- 55歳
- 乾燥肌
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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
税込価格:-発売日:-
2021/10/16 11:46:00
外は一面の曇り空。何となく重たい気分だったところに、パルファン・クリスチャン・ディオールの専属調香師フランソワ・ドゥマシーの引退ニュースが飛び込んできた。一瞬、目の前が白くなった。(←曇天だしね)
フランソワ・ドゥマシー。シャネルの香水を大きく格上げした名調香師、ジャック・ポルジュの右腕として30年近く彼をサポートし続けた男。そして2006年にディオール初の専属調香師となって一躍脚光を浴び、ディオールのフレグランス部門を一気に高みに押し上げた世界最高の調香師。
その彼が現役を退くという。思わず目の前が暗くなった。(←目をつぶったらしい)
彼の功績はあまりに大きくて枚挙にいとまがない。それでも何か一つ挙げるとしたら、シャネルの高級香水ライン、レ・ゼクスクルジフに対抗して、ラ・コレクシオン・プリヴェという高級ライン香水を出したことだ。これが一番記憶に残っている。
ムッシュ・ディオールの過去と栄光を表現した香水、それがラ・コレクシオン・プリヴェだった。花の香り、ウードの香り、シトラスの香り、パウダリーな香り、一気に12本が並んだ。2014年表参道のディオールブティックの開店もあって、これまで香水を手に取ることが少なかった方も、次々に香りを試しては楽しげに感想を語り合う姿が日本で見られるようになった。その1本にミリー・ラ・フォレがあった。
ミリー・ラ・フォレ。正直、当時は一番印象に残らない香りだった。それ以外の作品がとてもキャラ立ちしていたせいもある。ミリー・ラ・フォレの香りはそのとき以来、自分の中で忘れ去られていた。
ところが
フランソワ・ドゥマシー引退。このニュースを聞いたとき、一番最初に思ったのは「あ。ミリー・ラ・フォレ、どんな香りだっけ?」ということだった。
ミリー・ラ・フォレは、華やかなファッションショーを終えたムッシュ・ディオールが、いっときの安らぎを求めて訪れていたパリ校外の村の名前だ。彼は別荘で自然と共に過ごし、親しい友人たちと語り合うことを心から大事にしていたという。彼にとってミリー・ラ・フォレは、幼小時に過ごしたグランヴィルと共に大切な心のオアシスだったようだ。
だから
リタイア宣言したドゥマシーが、当時どんな心境でミリー・ラ・フォレを作ったのか、とても気になった。
久々にボトルを出した。淡いピンクグレーのジュースカラー、マグネットキャップを外してスプレーする。
すぐにわかるのは香りの淡さ。とても透明な香り立ち。最初はベースのサンダルウッドがかすかに広がって、次にシトラスのふんわりした優しい香りがする。次第にオレンジフラワーの柔らかい香りも鼻をかすめる。トップからさまざまな香料が、とてもうっすらと香ってくる。
3分後、ローズマリーをほんの一滴垂らしたような薄いハーブが寄り添ってくる。花の香りはオレンジフラワーにわずかなジャスミン、そしてローズといった感じ。メインはまろやかなホワイトフローラル様だ。だが、とにかく薄い。思わずつけて5分で追い足ししてしまう。これなら上半身に10プッシュしても周囲も気付かないのではというほど。
それでも各香料のバランスはよい。シトラスの酸味は静かで、フローラルは真綿のように柔らかい。次第に浮かび上がってくるサンダルウッドは、ほんのり香ばしく、ナチュラルに森や庭園の香りが漂ってくるよう。まるでアロマウォーターを肌にのせたかのような風合い。そんなミドル。
ミリー・ラ・フォレはラストも儚い。つけて30分で香りがほぼしない。とてもナチュラルでバランスもいいのだけれど、これで当時125mlボトルが3万円以上したのだから、廃番になったのも分かる気がする。
そう。この作品は、シリーズ中最も短命で廃番となり、安価なメゾン・クリスチャン・ディオールに商品が再編されてからも、もうその姿を見ることがなくなった香りだ。
それでも。
何も主張しない。何も邪魔しない。そんなナチュラルでひっそりした香りが欲しいときもある。ちょっと疲れたときなどは特に。上げたくても心が上がらないとき、人は無臭を求める。けれど、心がどんよりと曇って息をしていることすら自分で気付かないときは、気付け薬代わりにこんなナチュラルなアロマで自分を取り戻したい。そう思うことがある。
そんな優しさがこの香りを創ったのだろう。売れる売れないは別として。
ミリー・ラ・フォレ。それはディオールの心が帰る場所。
親愛なるフランソワ・ドゥマシー様。貴方のミリー・ラ・フォレはいずこに。
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