- doggyhonzawaさん 認証済
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- 56歳
- 乾燥肌
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2022/5/28 08:53:57
400本めの香水レビュー。ここまでちょうど9年間、書き続けてきた。週一度1本ペースだから、レビュー数じたいは多くはない。それでもその1本を書くために、香料分析、背景リサーチ、比較検討、推敲編集やらで、1本につき平均6時間はかかってるから、9年で400×6=2400時間は香水の勉強をしてきたことになる。←そのわりにわかってないけどな
珍しい機会なので、その400本の中から心に残っている香水をほんの少しまとめてみる。
◎最もリスペクトしたクラシック香水3本
・シャリマー(ゲラン) ・ルールブルーEDP(ゲラン) ・N°9(シャネル)
◎最も心に突き刺さった香水2本
・ラペルトワ(ラルチザンパフューム) ・フェミニテ・ドゥ・ボワ(セルジュ・ルタンス)
◎最も偏愛して日常使用してきた香水
・エンジェルEDP&EDT(ミュグレー) ・コローニュロワイヤル(ディオール)
◎出す作品どれも恐ろしくできがいいと思う香水ブランド
・ピュアディスタンス ・フラッサイ
◎400書いた中で心に焼きついているレビュー3つ
・ラペルトワ(ラルチザン・パフュ―ム) ・エンジェル(ミュグレー) ・ロストチェリー(トム・フォード)
世界中で年間何万本も新作が生まれる香水業界。その中にあって、これまで出会えた香水はまさに「ご縁」。そんな中、紹介する400番目の香水は、初めからちょっと「ごめんなさい」しておきたい作品。なぜなら日本未発売かつ限定品という超入手難しい系。たぶん自分も、この先もう1本ストックを入手することはできない。そういう意味では本来紹介するつもりはなかった香水。ただあまりにも香水としてできがよく、個人的にもラペルトワに匹敵するほど美しく、自分の性癖にぐっさり刺さった香りなので、このまま誰にも知られず消えていくのは悲しいと思ったから、そっとここに置いていく。
それは、フランシス・クルジャンが2015年にパリの百貨店プランタンの150周年記念のためだけに製作したル・ボー・パルファム。この香水は自分の中で特別すばらしい作品、極上品。星をつけるなら☆7満点のところ、☆70はつけたい香水。ただそれはもちろん自分にとっての超どストライクであって、貴方にとって好きな香り、またはベストマッチとは限らない。香水に「万人に好かれる香り」なんて存在しないからだ。
ルボーの香料イメージはシンプルだ。クレジットによると以下のとおり。
インドのチュベローズ&ジャスミン、チュニジアのオレンジブロッサム、マダガスカルのイランイラン。いわゆる濃厚なホワイトフローラルブーケ系統の香り。
ただ使用している花の香料はどれも高品質ですばらしく、同時にそれらを際立たせるための「つなぎ香料」が超絶いい。しかもナイスバランス。はっきり申し上げる。さすが天下のプランタン。これを作らせるために、クルジャンにどんだけ対価を支払ったのだろうというくらい、スペシャリティ香料をふんだんに使用しているように思う。つまり「売っても赤字」なくらいゴージャス&センシュアルな出来。だから周年記念の限定香水なのだろう。
ルボーを肌にのせる。その瞬間、あまりに甘くかぐわしい花の蜜の香に脳がよろめく。体がふらつく。矢吹ジョー渾身のクロスカウンター一発もらった気分。腰からくだけ落ちる。花園に倒れこむようにマットに沈む。お花畑で好きな女の子を追いかけるスローな白日夢を見る→人間終了。な開幕。それほど左脳崩壊で言葉にならない美しいフローラル爆弾なトップ。
それでも、カウント9でギリギリ立ち上がって香りを分析するなら
ルボーは偏愛するラルチザンのラペルトワにインスパイアされて創ったのでは?と思うくらい雰囲気が酷似している。クリーミーガーデニア&山椒という「花の優しさ&スパイスの棘」の取り合わせで、内面の感情を激しく揺さぶるラペルトワ。その山椒部分をごく微量のキャラメルノート&シナモンが代替するような形で、白い花束に甘いグルマンを補完している。これがたまらない。クルジャン、あなたさてはラペルトワのベースをヒントに、同ラルチザンのアムールノクターンを組み込みましたね?と言いたくなるくらい。わからない方はわからなくていい。これはほぼ自分にあてた周年記念レビューだ。
サイレージは5時間程度。ジャスミンの残香強めでルボーは消えてゆく。ルボーは「プランタンおめでとう!」で作られたけれど、その甘くてノーブルで、どこかノスタルジックなクリーミーな花束は、プランタンとクルジャンがあなたに贈る感謝の花束の香りだ。
いつもありがとう
あなたのおかげで 今があります
あなたの一日が 美しい香りに包まれますように
おめでとう あなたへ
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[美容液]
税込価格:- (生産終了)発売日:2016/1/12
2018/8/20 21:44:08
なんというか、これいろんな意味ですごい商品ですね。
トライアルサイズ使用
さすがは合成界面活性剤研究のパイオニア(笑)
私は普段、化粧品の成分はあまり気にしないタイプですが、これだけはさすがに躊躇した。
トライアルを1度使ってから気付いちゃったんですが、あまりにもヌルヌル感が強く
浸透するまでに時間がかかったので、なんだかなーと思いながらサクッとサイトで成分調べたら案の定。
シリコン系で誤魔化した化粧品は過去にかなりの虎馬がある為シビアです。
シリコンとポリマーがかなり上位の方に記載されてるのが気になりました。
ジメチコンという成分は乳化させるために化粧品には多少なりとも入ってる成分で特に毒性はないことで知られてるけれど、これブースターとして出してる商品だよね?
後の化粧水を浸透させるためのブースターに膜張ってどうすんだ!(笑)
土台というよりもむしろ、最後の蓋に適してるんじゃないのかっていう皮膜感。
さらに、外資に負けないくらいの香りの強さにも驚きます。
前にブログでも書いたことがあるのですが、この手のスキンケアにシリコンてんこ盛りされると
後に使う良い美容液も台無しになっちゃうんだよね。
大げさに言っちゃえば、落とすまでサランラップを顔に貼り付けてるようなイメージ。
改めて開きだすと怖いでしょ。
塗ってる間の気休めとは、まさにこういう商品なのだ。
最後の工程で使うような美容液に入ってる分にはまだいい。
表面がつるっとした感じに見えるし(全部錯覚だけど)笑
ブースターと謳ってるアイテムにここまでシリコン入れちゃいかんだろーと個人的には思った次第。外資系でもここまで、あからさまにシリコン入れてる商品ないわよ、奥さん。
あとね、これはやばいわと思わせたのは、これの後に高級な美白美容液を塗った翌日、得体の知れない消しゴムみたいなカスが多発。浸透を妨げたせいか、いつもはワントーン明るくなる肌が全く代わり映えしてなくてマジで泣けたわ(泣)
結論:全く土台の役目を果たしてなくて、トリッキー
土台というより、むしろクリーム代わりに使いたい。
日常的に使い続けたらインナードライまっしぐら。
実際には浸透していないが、ケミカルのおかげで浸透した錯覚を起こす。
目玉は二酸化炭素=炭酸くらいだと思うけど、化粧品開発に25年くらい携わっていた
人のブログでは、この商品には美容に効く有効成分は1つも入っていないと書かれてて更に盛り下がり。
バブの延長とドサクサで化粧品として出してみよっか!なノリで作っちゃったような商品かも
(がっくり)
参考までに:代表的な合成ポリマーは、ジメチコンの他に、PEGと頭に付くもの。
これは、ポリエチレングリコールのショートカットで水溶性合成ポリマーの一種です。
PEG 32, 400, 12 など。
これらの成分が表示のトップの方に記されているものほど、ツルスベっとして使用感こそは良いのですが、なかなかのクセものです。これプラス、エタノール入りの化粧水とくれば浸透した感は半端ないはず。しつこいようだけど、これも全部、錯覚(笑)
そんなわけで、非常に残念無念なお品でした。
なんだかんだで、ランコムのジェニフィックの方がよほど安心成分です。
補足:シリコン(ジメチコン)やクロスポリマーを多用しているブースターは他にもあります。代表的なのは、アルビオンのエクラフチュールという商品です。
DSなどでも買える安価な商品には、こういう成分配合は珍しくないので、常に見極めが必要ですかね。
「バカがつける化粧品」と一部の専門家たちがぶった切ってる書籍をたまに見かけますが、
ぶっちゃければ本当にその通りなんだと思いますよ。
化粧品変えたら、なんだか肌にハリ、ツヤが出て来て良い感じ!と思うのは一時のマヤカシ。
本来の肌は悲鳴を上げているのかもしれません。
estのThe ローションもサンプル使用後、検討中でしたが購入は見合わせるつもりです。
私は花王が作っているスキンケア商品は基本的に苦手です。
傘下に入っちゃったカネボウも、うーんな感じ。
なぜなら、本来必要ないでしょ?と思う美白美容液にまでシリコンを高配合させている商品が多いからです。
毒性はないと言ってもこれでは他社のスキンケア(有効成分豊富な)と併用しても大したパフォーマンスは期待できないでしょうね。
この時とばかりにボロクソ書いて申し訳ないのですが、、、はっきり言ってソフィーナの商品は合成ポリマー満載のイメージしかないです。すみません (>_<)
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- 現品
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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
税込価格:-発売日:-
2018/8/24 02:12:55
フォルテさんからバイアルを頂いた後に気に入り30ml の小さいヴェポライザーを購入。
最近こればかり使ってます。
コンポジションだけ見ると、クレメンティンやマンダリンの柑橘以外はチャイニーズアニスや花山椒など、ひと癖あるスパイシーメインの香水を想像しがちですが、これは良い意味でありふれてるというか、万人受けする良い香りで拍子抜けしました。
サークル仲間や家族にも、お風呂上がりみたいな良い香りだねーと好評で、私の選択に狂いはなかったと安心したところで評価入れに来ました。
アトリエコロンの作品は3年くらい前に知ってからとても好きになり、フォルテさんや海外のバイヤーさんからいろんな香りを取り寄せながら試させて頂きましたが、今まで試した中でこれが一番使いやすいかも。
私の肌だと、トップは本当に上等なフレッシュシトラスからスタート。クレメンティンを知らなければ、パッと嗅いだ瞬間はグレープフルーツやマンダリンを想像するのかも。
★クレメンティンとは?
柑橘では非常に珍しくアフリカ、アルジェリアで発生したみかんの雑種。育成者のクレメント神父にちなんで命名された。原産地はもちろん地中海諸国やイスラエル等で栽培されている。世界的にはみかん類では温州みかんに次いで栽培が多い日本では最近チリ産がよく店頭に見られる。
果実は小〜中果で、果形はやや腰高の扁球形、果梗部が時々ネックが出る。よくしまっているが剥きやすい。甘みが強く、濃厚な風味と特有の芳香に特長があり、 収穫は12月上中旬。
ミドルからは、甘めのフローラル調に変化していく感じ。
スターアニスや中国の花山椒って、精油を使ったことがある人なら知っていると思うのだけど
とても癖のある香りで中国では漢方薬や料理の香辛料にもよく使われるほど、薬草っぽい香りが
特徴。8角形の木みたいな形のあれね。
でも、不思議なことに、この香水ではその薬草っぽい要素を全く感じないのです。
むしろ上品な花の香りに近く、時間がたつほどに高級石けんのような香りにも感じたり、
はたまた、5つ星ホテルで使われているリネンコロンのような?要素もあるので、
一応、ユニセックス枠にはなってますが、女性用の香水と言われても不思議じゃない。
しかし、この手の香りを漂わせている白人男性、たまにいるけど、なかなか好印象です。
ファイナンシャル系のホワイトカラーの人なら尚更好感度が高い
ベースは、ジュニパーベリー、ベチバー、サンダルウッド、サイプレスなど、ウッド満載なのですが、これも控えめに支えてる印象で、ドライダウンまでウッディ!という主張がほとんどなく。全体的にとても甘めな仕上がり。
ベルガモットソレイユはメンズよりの印象が強かったけれど、これはどちらかというと女性っぽいかな。
カルバン・クラインのエタニティにすこーし似てる気がしますが、あれみたいな頭にキーンとくる金属的な感じは全くない。個人的に頭にキーンな感じの香りは一括りに金属系と呼んでますが、若かりし頃、流行りだけで試してみたエタニティもあまり好きではない。
これはもう完全な好みの問題になってくるけど、長時間嗅いでると頭が痛くなる香りと言えば生花の白百合=カサブランカ。花その物は実に贅沢だしプレゼントでもらえたらお猿のように喜んじゃうけど、香りだけはどうも苦手(笑)
あと、若干被るかな?と思ったのは、ゲランのマンダリンバジリックですが、クレメンティンのバジルはバジリックよりも主張が弱めでもっと透明感があって円やかな印象。
そして、アトリエコロンの最大の魅力は驚異の賦香率。体温の高い私でも5時間〜6時間は軽く持続するのでコストパフォーマンスも高いです。
シトラス系でここまで香りが持続する香水をクリエーションしてくれただけでも高評価したいです。
トップからラスト、ドライダウンまで全部自分好みの香りで、久しぶりに大満足しています!
柑橘&ちょい甘めのフローラル&高級石けんのような香りが好きな人は是非お試しください。
【トップ】カリフォルニアのクレメンティン
イタリアのマンダリンオレンジ
マケドニアのジュニパーベリー
【ミドル】中国のスターアニス(八角)
中国の花山椒
エジプトのバジル
【ラスト】ハイチのベチバー
ニューカレドニアのサンダルウッド
フランスのサイプレス(すぎ、ヒノキ)
賦香率15%
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- 購入品
-
[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
容量・税込価格:40ml・14,850円 / 125ml・31,680円 / 250ml・45,100円発売日:-
2018/1/27 10:25:39
2017年10月にディオール表参道をはじめ、世界3店舗のみで再発売されたディオールのラ コレクシオン プリヴェは、パッケージを見ると、メゾン クリスチャン ディオールと記載されていて、どうやら新ラインとして発売されたようだ。
このTHE CASHUMIRE(テ カシミア オードゥパルファン、カシミアティーの意)は、元ラ コレクシオン プリヴェから移行された11品とは別に、新たに創られた香りの10品のなかの1つ。
尚、販売員さんに、テ カシミアがどんな香りが聞いたところ、新しい10品については、具体的にどのような香りの構成になっているのか、販売員にも明かされていないとのこと。
テ カシミアは、とても明るいシトラスティの香り。かなりメタリックなグリーンノートが少々荒っぽく香るものの、全体像はとても軽やかで爽やかな紅茶の香り。
トップはシトラス。最初はすっきりとしたレモン、次に紅茶を思わせるみずみずしいベルガモット、その奥からジューシーなオレンジのほんのり香る、とてもフレッシュな幕開け。
ミドルはグリーン-フローラル。シトラスの爽やかな印象を残しながら、ベルガモットとオレンジフラワーのような明るいフローラルと、少しメタリックグリーンが強い紅茶の香り。紅茶の甘さや苦味よりも、爽やかなフローラルグリーンが勝っていて、キラキラとまぶしい印象。
ベースはグリーン-ムスキー。エレミのような酸味と、キンキンしたメタリックグリーンが鼻に付くが、その奥から少しビターな紅茶が香る。青っぽいミントを葉を1枚入れたような、とてもすっきりしたレモンティの香り。最後はグリーンが効いたまま、乾いた紅茶の淡い香りと、軽いムスクやアンバー、セダーウッドが加わり、フィニッシュ。
カシミアを思わせる、冬にぴったりの、きめ細かく柔らなティノートをイメージすると、思い切り裏切られる。
最後の最後には柔らかいクリーミーでビターな紅茶感があるものの、トップからミドルはかなり爽やかで明るい香り。嗜好はとても良いため、少し鼻に付くキンキンとしたグリーンノートさえ気にならなければ、高温多湿な梅雨から真夏にかけて活躍するのではと感じる。
全体的に軽くタッチな香りのため、持続時間は3〜4時間程度。
個人的には、一気に10種類もの新しい香りが登場したにもかかわらず、悪く言えば当たりさわりのないティノートを選んでしまったことへの後悔と、ああやはり自分はティの香りが好きなんだと気づかされた1品。次こそは、大好きなシトラス系(TERRA BELLAなど)ではなくて、もっと違った香りにチャレンジしたい。
- 使用した商品
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- Cookieyukiさん
-
- 51歳
- 乾燥肌
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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)・香水・フレグランス(その他)]
税込価格:-発売日:-
2020/9/19 06:46:11
そういえばお茶系の香水をひとつも持っていない。お茶の香りが人気と知ると避けたくなる天邪鬼な性格が手伝って今まで試さなかった。
早速取り寄せたウーロンアンフィニをひと吹き。ベルガモット、ネロリ、ジャスミンがふんわり広がる。ゲランなどに代表される古典的で自己主張が強いものとは違い、柔らかさのある気取らない香りだ。ネロリの微かな酸味のあるフローラルノートも優しい。ジャスミンも穏やかでインドール臭が弱く万人受けしそう。
万人受けを嫌う私の心の中で葛藤が。本心は大好きだと言っているのに、ひねくれた自我がこれを嫌いと言えとささやく。どうしようと思っているところにお茶のいい香り。甘味、苦味、渋味、酸味のバランスが取れていて美味しそう。
あーいい香り。思わず深呼吸。
でも烏龍茶って香りあったっけ?
その瞬間ふっと90年代初めのある場所の記憶が蘇った。この匂いは確かにそこで嗅いだ。アメリカに来て間もない頃だった。
ニューヨーク、チャイナタウン。なんとしても生き抜いてやるという情熱が渦巻くパワフルな場所。
警察官の友人から聞いた、中華街とんでもエピソード。ある事件捜査のため上官命令でアパートの一室に踏み込んだら、十畳ほどの部屋に三段ベッドがぎっしりあって、20人ほどがそこで寝泊まりしていた。彼らはひとりっ子政策で戸籍さえ持たない貧しい人達。生存を懸けて10万ドルで悪徳業者に身売り。アメリカに貨物に紛れて密航し、治外法権な中華街で無賃金で朝から晩まで労働。彼らの賃金は代わりに悪徳業者に支払われ、それが10万ドルになったら晴れて自由の身という契約らしい。
言葉も習慣も違う場所に来て、八方塞がりに思えて落ち込んでも、チャイナタウンに行くと勇気が出た。そんなふうに命からがら異国に来て、朝から晩まで必死に働く彼らより、ずっと恵まれている私は甘えていると思った。
ひしめき合う人混みの中をぶつからないように歩く。小綺麗な横浜の中華街とは異なりゴミがたくさん散らばっていて、怪しい偽造品を売る店の呼子の声がうるさい。下手に横道に足を踏み入れると生きて出られそうもなく、昼間でも薄暗く感じる。しばらく歩いていると何処からかお茶のいい香りが漂ってきた。日本のお茶屋さんとはまた違った、お茶を炒るような香りが道路まで広がっている。そこだけ透明な空気に包まれたかのように。
今思えば高級なジャスミン茶や烏龍茶の混ざった匂いがウーロンアンフィニのミドルにそっくり。ふらふらと吸い込まれるように店内に入る。量り売りのお茶の入ったガラス瓶がずらりと並んでおりその前にサンプルのお茶葉が置かれている。中国系の他のお客さんの真似をして私も片っ端から嗅ぎまくった。100gあたり数万円するお茶のサンプルも出ていて容赦なく匂いだけ味わった。
値段もピンキリで高いものは茶葉の段階からフルーツのような僅かな発酵臭を伴った不思議な清涼感がある。ウーロンアンフィニからはお茶だけではなくて古びた、でもよく手入れをされたカウンターのような木の香りも感じられる。ガイアックウッドらしい。ベチバーが渋味と苦味のある調味料的に僅かに使われていて、ガイアックウッドとお茶をうまく結びつけている。レモンに似た柑橘系の香りがドライダウンで蘇ることも多々あり。
大人気を博した漫画「美味し◯ぼ」にあった「いいかい学生さん、トンカツをいつでも食えるくらいの身分になりなよ」という名言と自分がかぶる。その時私はお茶屋さんで高級茶をいつでもサラッと買えるくらいの身分になりたいと思った。
今チャイナタウンはどうなっているんだろう?
早速行ってみるとシャッター街と化し全く元気がない。前述のお茶屋さんは閉まっていたが、ポツポツと営業している店もある。そこそこの品質のお茶を売っている店を見つけて、昔飲んだことのある凍頂烏龍茶を少し買った。
家に帰ってお茶葉にお湯を注ぐ。手揉みで丸めた濃い緑に焦げ茶色が混ざった葉がゆっくり開いていく。マスカットやジャスミンに似た芳香が立ち昇る。途端に透明な空気がサッと広がる。
緑色がかった薄黄色の透き通ったお茶をすする。ほんのりした甘味の奥底にある心地よい苦味。ウーロンアンフィニは高級烏龍茶の芳香、味、透明感を香水として見事に再現したようだ。
お茶を味わいながらウーロンアンフィニをつける。私を奮い立たせてくれたチャイナタウンが立ち直ることを願いながら。
トップノート: ベルガモット、ネロリ
ミドルノート: 烏龍茶、レザー、ジャスミン
ラストノート: ガイアックウッド、ベチバー、タバコフラワー
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