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doggyhonzawaさん
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ジャン ポール・ゴルチエ / ル・マル オードトワレ ETS

ジャン ポール・ゴルチエ

ル・マル オードトワレ ETS

[香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:75ml・7,700円 / 125ml・10,450円発売日:-

5購入品

2018/9/22 20:49:30

「その男がね、すごいきつい香水つけててさー」背後から聞こえたセリフに、思わず振り向きかける。週末の夜、狭くて騒がしい居酒屋でのこと。ついたてを隔てた後ろのグループは20代後半とおぼしき女性たち。自分は向かいの同僚の愚痴につきあいながら、背中ごしに聞こえる香水の話に聞き耳を立てた。

「うちの会社来るたびに用もないのに受付に寄ってきてさ、いい店知ってるから行かないかとか、昼間から誘ってくるのね。で、そいつのつけてる香水がきつくて耐えられなかったのー。」

「へー、どんな香りなの?」一緒の女性に聞かれると、背中越しの声は投げやりに答えた。

「なんかスパイシー的な?どこのブランドかわかんないけど、ボトルがさー、緑色で男の裸の形してんの。知ってる?」

思わずうんうんと頷きそうになった。『たぶんそれゴルチェのル・マルだよ。』教えてあげたかったけど、レモンサワーと共に飲みこんだ。そうか、ル・マルかあ。確かに強くてエロい香りかもな。そんなことを思いながら。

ル・マル・オードトワレは、ジャン・ポール・ゴルチェから1995年にリリースされた、ブランドのファースト・メンズフレグランスだ。調香は今をときめくフランシス・クルジャンで、彼自身のデビュー作でもある。男性のボディを型どったトルソーボトルは、そのままではヤバイくらいの造詣なせいか、缶ケースに入れて販売された。ちなみに発売当時はゲイの方々に大人気だった。

ル・マルをスプレーすると、まずトップから感じられるのは、クールなミントの香りだ。ラベンダー独特のじんわりとした清涼感もすぐに感じられる。ミントとラベンダーとくれば、ダビドフのクールウォーター(1988)の影響が見てとれる。ル・マルは、クールウォーターに比べるとネロリのこんもりした香りがない分、とてもスマートでシャープなイントロだ。クールな外国人イケメンといった風情。

5分ほどすると、暗いスパイスがじわじわ感じられるようになってくる。シナモンとクミンだ。これらがラベンダーの背後から妖しく香り出す。このミドルの暗いスパイスミックスがヤバい。心を惹きつけられる狂おしさがある。やがて、そんな清涼感ある暗さがヴァニラのベールに包まれてまろやかになってくるのが分かる。わずかに甘さが出てクリーミーなスパイス香になる。気難しいイケメンと思っていたのに、実は人あたりがマイルドで、何事にも臨機応変に対処できる柔軟性をもった男。そんなイメージのミドル。

そんなミドルが約4時間ほど続くと、香りは穏やかなウッディ&アンバーのやや焦げたような香りを呈して終息していく。最後までシナモンのスッとした感じを残したまま、ヴァニラとウッディに支えられて温かく終わる印象。枕やブランケットに残る男の体臭のようなセンシュアルな残香。驚くことに8時間ほど香りが残っていることもある。トワレにしてはかなりロングラスティングな部類だ。

してみると、ル・マルの創作にはメンズの名香といわれるゲランのジッキーとダビドフのクールウォーターの影響が少なからずうかがえる。ル・マルはジッキーの基本骨格であるラベンダー&ヴァニラのコンボを中心に据えつつ、クール・ウォーターやポロスポーツで印象的に使われたミント&ハーブをトップに持ってくるという合わせ技を用いている。そこにスパイスの辛みとウッディの温かみを効かせたことで、ミントとラベンダー、ヴァニラ、それぞれの長所をうまくつないでいる。

「でもさ、9月に入ってから、もうそいつ、来なくなったんだー、たぶん配置換え。」不意に思考が引き戻される。さっきまでひとしきりその男をネタに笑ったり、罵倒したりしていたトーンが少し変わったことに気付く。やや鼻にかかったような声。酔いが回ったのだろうか?いや、たぶん…。

ぐすっと鼻をすする音がした。女友達がなだめるように何かささやいている。たぶん彼女たちも察したのだろう。男がふだん使っている香水のボトルまで見ているということは、たぶんそれなりに親密だった関係。

「だからさ、もうあのくさい香水、かぐことないんだけどさ、でもなんかねー、時々なんかねー、思い出すっていうか…」

連れが会計のために立ち上がり、自分も居酒屋を後にしたのでその先を聞くことはなかった。

いつの間にか涼しくなった夜風を感じながら、ネオン街を歩き始めた。街にはくすんだ夜の匂いが漂っていた。あの子はいつかまたくだんの男と街ですれ違うだろうか。何年かたって互いに風貌が変わっても、そのとき気付くだろうか?そんなことを考えた。

きっと気付かないだろう。それでも同じ香りをつけた人と街ですれ違ったら、きっと振り向いてしまうんだろうな。そしてそのとき思い出すのだろう。

あのル・マルの男を。

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