- doggyhonzawaさん 認証済
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- 49歳
- 乾燥肌
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2015/7/9 22:11:05
香水ってきついし、くさい。だから嫌い。そういう人は存外多い。
つけると頭が痛くなる方もいる。そして、満員電車や混み合った場所で、つけすぎの香水をかがされて辟易する人もいる。そんな経験のある方は、当然ながら、「香水なんて」と思ってしまう。それはある意味当然だろう。
さまざまな香料のブレンドである香水は、香りを印象的にし、残香性を高めるために、たくさんの人工的な香料を使っている。そのため、強く濃くなりがちだ。また、香りが多層的で複雑であるがゆえに、「トップの香りはいいけど、ミドルで嫌いな香りが出てくる」といったことも往々にして起こる。香りがどんどん変化すること、そこになじめない方もいるだろう。だから、シンプルで自然な香りを好む人ほど、香水嫌いになりやすい傾向がある。
ならば、香りの構成をシンプルにしたらどうか?もちろん長年の歴史の中で、そうした試みもなされてきた。通称シングルノートと呼ばれる単一香料をきわだたせたもの、精油のみを希釈したものなどなど。
オーデフルールセドラは、そんな挑戦によって生まれた香りだ。今から95年前に作られたこの香りは、誕生以来さまざまな評価を受けてきたようだ。まさに賛否両論。「この香りしか使わない」と称賛する人がいる一方、これをゲランの香水とは認めたくないと首を横にふる人もいる。それはいったいなぜなのか?理由はこの香水の大胆な構成にある。
オーデフルールセドラは、たった5分で揮発するシトラス系の香料だけで作られている。ミドルもベースもない。これは、当時の香水作りのセオリーを全く無視した、大胆なオーデ・トワレなのだ。
付けたて。通常、プレリュードとも言うべきこの出だしの香りは、このオーデフルールセドラにとっては、何よりも重要だ。なぜならこの香りのまま消えていくからだ。
トップ。全ての憂鬱を吹き飛ばすかのようなレモンのシャワー。ベルガモットのふくよかさ以上に軽く、心地よい苦み。グレープフルーツのような酸っぱい黄色の柑橘ジュースが、脳天を直撃する。思わず唾液が出そうなほど生っぽい。これが、セドラ(英名シトロン)の香り。セドラは、「太陽の果実」と形容される柑橘系の果物で、レモンの原種と言われる。形はごつごつしているが、果肉をおおう白いわたの部分が分厚く、これが心地よい香りを放つ。これは本当に、そんな肉厚レモンの白いわたのところに、鼻でキスをしたかのようなシトラス。絶頂フレッシュ&ジューシー。
つけて3分で、柔らかく煮詰めた蜜のような、それでいてややグリーンな香りがほんのり背後に漂う。ヴァーベナのハーバルな部分か。前面では酸味が、さながら炭酸の飛沫のように軽やかに揮発し続け、天上に向かって立ち上るかのよう。シトラス系の香りが好きな人には、たまらない瞬間だと思う。そして。
5分で美しい夢は消える。ファイブ・ミニッツ・オンリー。←いいよ英訳せんで
オーデ・コロンの始祖と言われる4711でも、王妃の水でも、もっと香りは続く。それは、シトラスの次に揮発していくハーバルな香料がミックスされているからだ。そして、精油の希釈のようなパシャ!やシュパ!でさえも、もう少しは続く。けれど、時間じゃない。純粋にシトラス系の香りとして味わったとき、このセドラの5分間は・・・。
至福。
気持ちをすっきりさせたいとき、アッパーな気分になりたいとき、鬱々とした気持ちを切り替えたいとき、この潔いシトラスオンリーな香りは、一瞬で自分の影を拭い去り、リフレッシュしてくれる。すぐに揮発するから、周囲に香害も与えにくい。スポーツで汗をかき、シャワーを浴びた後にも使える。汗ばんだ肌も何だか中和してくれそうな爽やかさだ。ただ、体温高めの自分で、ファイブ・ミニッツ・オンリーだが。←やめろ
日本では長らく販売されていなかった期間もあり、入手困難な香水の1つだったが、2015年7月より全国店舗で発売が決定。1920年に作られたシンプルな香りが、ついに95年の時を経て、多くの人々の前に姿を現すこととなった。
より入手しやすくなったという点は喜ばしい。ただ、この超刹那的な香りに、1万円前後の価値をもてるかどうかは微妙だと思う。それでも、「毎年夏はセドラのみ」といった熱烈なファンがいるのは事実だ。機会があったら試してみるといいと思う。特に、「香水なんてきつい、くさい、複雑でいや」という方には。
オーデフルールセドラは、梶井基次郎が愛した「檸檬」だ。
それは、黄色い時限爆弾。鬱々とした気持ちを一瞬で吹き飛ばす、よく熟れたレモン・ダイナマイト。
ただし、セットされたタイマーは短い。わかってるな?何といっても、体温高めの自分で、ファイブ・ミニ・・←バキッ!ボキッ!
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