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シャネル / シャネル N°5パルファム

シャネル

シャネル N°5パルファム

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:7.5ml・17,380円 / 7.5ml・18,150円 / 15ml・31,350円 / 30ml・44,000円発売日:-

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2016/6/25 12:26:16

世界で最も有名なひとしずくの秘宝。そして、世界一せつない香り。

シャネルのNo.5パルファムは、妙なる花々の香りと野卑な動物臭をブレンドし、アルデハイドでそれら何百種という香料を輝かせる巨大な幻想庭園。他の模倣を許さない、高価な香料を用いた配合とその奇跡のバランス。まさに琥珀色の宝石。その一滴は極上のシャルトリューズのごとく、時代を越えて人を酔わせ続けるエリクサー。

1921年、調香師エルネスト・ボーが提示した10本の香りの中から、ガブリエル・シャネルがその類まれな審美眼と洞察力で選び取ったこの作品は、あらゆる意味で世界を変え、そして今なお変え続けている。その秘密を5つの”L”で探る。

1つめはレジェンド(Legend)。No.5は幾多の「伝説」を生んだ。なぜ10本の香りからこれが選ばれたのか?アルデハイドを過剰投与した本当の理由は?パルファム・シャネルの経営をめぐる闘争の裏側は?などなど、いまだ謎に包まれた部分が多い。後付けされた推測が語り伝えられ、いつしか本人たちの手を離れ、作品であるNo.5にミステリアスな魅力を加えていった。時間と人々の語りが、あの小さな一瓶に歴史と評判という年輪を積み重ねたのだ。

2つめはレディ(Lady)。シャネルがLBDをデザインし、窮屈だった女性たちのコルセットを外させ、魂と身体を解放したことは有名だが、この香りもまた「新しい時代の女性」に進化する役割を担っていたことだ。当時、良家の淑女は単一花香、特にバラの香をまとい、高級娼婦らはジャスミンなどを付けるのが一般的とされ、女性たちは香りによっても縛られ、住み分けされていた。だが、No.5はそれらをミックスして「女性の香り」のシンボルとし、彼女たちを古き時代から解き放った。これが女性の価値観やあり方を大きく変えた。

3つめはラスティング(Lasting)。いつまでも心に残り、「永続」する香りだということ。
好きか嫌いかに関わらず、この香りは女性の人生のときどきに何度か現れ、そのたびに最大限の熱量で語りかけてくる。トップのアルデハイドのきらめきは、ミックスフルーツにかけたリキュールのように個々の香りの本質を引き出し、さらにそれらを1つにまとめて拡散させ、人を酔わせる。多量のインドールを含んだグラース産ジャスミン、希少なローズ・ドゥ・メをはじめ、80種をこえる天然香料の饗宴。それらの中には、シベットやムスクなど、獣の匂いも相当量ミックスされている。だから香りが持続する。香料の良さのみならず、心に強烈な獣の爪痕(つめあと)を残すからだ。

4つめはリリカル(Lyrical)。No.5は、あまたの感情を揺さぶる「叙情的」な香りだということ。そこに人は、女性自身の美しさとともに、光と影のように一対となっている女性の醜さをも見る。清らかさとダーティーさ、高慢さと謙虚さ。純真さとずるさ。天真爛漫さと計算高さ。可愛らしさと憎らしさ。そんな矛盾を内包する人の心にストレートに響く香りだ。なぜならNo.5は、「美しい花」と「ダーティーな獣の匂い」が協奏曲を奏で、そこにアルデハイドがコーラスとリバーヴを与え、爆音でブラストし続けるからだ。そのときどきの心の在り様が、同じ音や響きに共振してしまうのだ。

そして5つ目は、ラヴ(Love)。この香りは意外にも、傷ついた心、不安に震える魂を全身全霊で包みこむような優しさと「愛情」に満ち溢れた香りだ。No.5の功罪を1つ挙げるなら、やはりマリリン・モンローの存在だろう。彼女のおかげでアメリカで爆発的に売れた半面、彼女のセリフが元で、No.5は「男を誘惑する香り」といったイメージを人々の心に刻んでしまった。だがもう一度よく考えてみたい。なぜモンローはNo.5を愛したのか?なぜ「ベッドで身につけるのはNo.5を数滴だけ」と答えたのか?

それは、モンローが幼い頃から孤児院や親せきの家で育ち、母の愛に恵まれない不遇な少女時代を過ごしたことを知れば、自明の理だ。彼女は生きるために、男性の肉欲の対象となっても、女性からのバッシングにあっても、人前では笑顔をくずせなかった。そんなモンローの孤独、悲しみを包んでくれたのがNo.5だとしたら?それは、求めても得られなかった母の添い寝の代わりではなかったろうか。赤子のように体を丸め、No.5の香りに包まれ、母を想いながら彼女が眠っていたとしたら。そう思うと、No.5の琥珀色は違った色に見えてくる。

強く厳しく、けれど子の心の内を全て見透かしてなお微笑み、優しくたたずむ人。No.5はそんな母の姿を思わせる香り。愛し、憧れ、たとえ憎んでも、永遠に心から切り離せない、自分を生んでくれた人を思う香り。

だから切なくなる。世界で一番せつない香りになる。

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ブルガリ / オムニア パライバ

ブルガリ

オムニア パライバ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:- (生産終了)発売日:-

7購入品

2016/4/30 01:12:19

「夏に向けて、気分を上げていくにはどんな香水がいい?」と聞かれたら、まず一番に薦めたいのは、ブルガリのオムニア・パライバだ。もちろん私見だが、調香師アルベルト・モリヤスの久々の「会心の一撃」だと思う。老若男女問わず、一度試してほしいと思う香りだ。

パライバとは、正式には「パライバ・トルマリン」と言い、1989年にブラジルのパライバ州、バターニャ鉱山で見つかった、希少なネオンブルーのトルマリンを指している。トルマリンではあり得ない色と言われたその美しい蛍光ブルーは、当時宝石業界を騒がせたが、次第にその産出量が極めて少ないことが分かるにつれ、「奇跡の宝石」と呼ばれるようになり、今なお高額で取引されているという。いわば、ブラジルが世界に誇る宝の1つだ。

折しも、今年は、ブラジルのリオで、南米大陸初のオリンピックが開かれる年。つまり、今回のオムニアのテーマは、そのへんの事情にあやかって「ブラジル」にしたということだろう。肝心の香りも、もう「これでもか」というぐらい、ブラジルらしさを詰め込んだものになっている。

パライバのトップは、ビターオレンジのスッキリした苦みから始まる。心地よいオレンジの香りだ。だが、2分もしないうちにすぐ、濃厚なフルーツの香りがとって代わる。

オレンジの香りの下からふくらんでくるのは、甘酸っぱく、突き抜けるようなパッションフルーツの香り。思わず、口内から唾液が出そうなほどフルーティーで、トロピカルムード漂う香りだ。この香りを色で表すなら、マンゴーやグアバ、パパイヤなどの果肉を彷彿させるクリーミーなオレンジ色や黄色だろう。ネオンブルーのボトルイメージとは思い切りかけ離れている。どこか南国のホテルのエントランスにでも入ったかのような、トロピカルフルーツの香りだ。

と書くと、「なんだ、トロピカル系か」と思われる方もいると思う。実は、自分もその部類だった。エスカーダや、フェラガモのインカント系によくある南国風の香りは、香料も構成もどこかチープに感じられるものが多く、これまでは食指が動かなかった。だが、パライバは同じトロピカル系なのに、何かが違う。とても上品で、大人っぽく仕上がっているのだ。一体それはなぜか?

パライバが、よくある安っぽいトロピカルと似て非なる点は、ミドルの構成に南国の花を上手に配置したこと、そしてやはり調香師の力量だろうと思う。パッションフラワーと、ブラジル産ガーデニア、そのふくよかでクリーミーな香りが、フルーティーな香り以上に、フェミニンで落ち着いたたたずまいを見せているのだ。白い肉厚の花弁を思わせるファッティーな南国の花の香り。まるで「クリーミー系」とでも呼びたくなるほどに、パライバのミドルは、まろやかでしっとりしている。どこにでもありそうな香りなのに、実はこれまであまりなかった香り、そんな印象だ。

そして、ラストもまた秀逸。ブルガリの香水やオムニア系のラストと言えば、よく「ブルガリ臭」と揶揄されるムスキーな香りを連想する方もいると思うが、このまったりしたクリーミーな香りのラストは、意外にもビターなカカオで終わる。カカオと来れば、あまりにブラジル過ぎてその取り合わせに笑うしかないのだが、これがとてもスッキリとしていていい。自分で「カカオだな」と気付けるほどのプレゼンスではないが、言われてみれば確かに、香ばしくビターなクラッシュカカオがほんのり香る。そんなこげ茶色のドライダウンだ。

してみれば、トップのビターオレンジとラストのカカオの苦みで、全体をスッキリブラッシュアップしつつ、ミドルはこれでもかというほど、フルーティー&クリーミーな香りの競演を見せるといった、構成の妙が感じられるフレグランスだ。まさに、このパライバは、リオのカーニバルを思わせるブラジル香料の饗宴。冗談のような構成、なのに絶妙なバランス。

しかも、オムニアシリーズは流通価格も手頃で、全国どこでも入手しやすいというメリットがある。これは地味に重要な点だ。ここのところ、新作を発表するたびに評価を下げていた感のあったオムニア&アルベルト・モリヤスだったが、ここに来て起死回生の、突き抜けた夏っぽさ。やはりすごい人だ。

ブラジル、リオと言えば、コルコバードの丘に立つキリスト像も有名だ。リオの街と紺碧の海を見下ろすその両手は、自らの受難を顧みず、あまたの人に授幸するかのような抱擁の形に広げられている。パライバのミドルで、キーの香料になったブラジルのパッションフルーツの香り。そのパッションとは「情熱」ではなく、もともと「キリストの受難」を意味する言葉だという。どちらの意味も、ブラジルにとっては深くて大切な言葉なんだなと再認識しながら。

今夏、心は謝肉祭の地へ、ネオンブルーの風に乗って

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トム フォード ビューティ / ロスト チェリー オード パルファム スプレィ

トム フォード ビューティ

ロスト チェリー オード パルファム スプレィ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:10ml・15,400円 / 30ml・34,100円 / 50ml・52,250円発売日:2019/2/1 (2023/6/2追加発売)

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5購入品

2019/7/6 05:54:36

秘密。だれにも言えない秘密。大人が教えてくれなかった事実。大人になるために最も知りたかった事実。

快感。だれにも言えない快感。母のルージュをそっとひいた日の、何かいけないことをしてしているという甘美な記憶。あるいは女性の裸体に初めて硬直した少年の、絶対に親に知られてはいけないと感じた背徳の記憶。触れてはいけないところにさわったやましさ。

トム・フォードのロストチェリーは、そんな香りがする。

桜の香りがするトップは幼い日のノスタルジー。どこまでも甘美でキュートなチェリーシロップの香りが心を鷲掴みにして離さない。離れない。

次第に鼻腔の奥をツンと刺激するシニカルなアーモンドの苦みが訪れてミドル。ピュアなくせにギリギリするほど苦々しい。それは思春期の葛藤をフラッシュバックさせる香り。

ある日突然、胸をときめかせる人が現れたときの戸惑い、高揚感。鏡を見て自分の容姿に落ち込み、その顔をにらみ、変えられない顔に悲観し、せめてと思い髪をいじり、何度も髪を濡らしてはブローした日。ガラスのように壊れやすく、うすっぺらな自我に固執した思春期。青臭くて一人じゃ何もできないくせに大人にもなりきれず、不平不満を周囲にぶちまけ、毒づくことで己のレゾンデートルをわずかに保ち、自分も周囲も大嫌いで、自分の弱さを繕うために他者をあざ笑い、蹴落とし、心の中で全てを否定する。浅はかで脆弱な魂の彷徨。

けれどある日。そんな自分がなぜ生まれて来たのかを知る。どんなふうに命が紡がれてきたのかを知る。思いと肌を重ねることで言葉以上に感じ合えるものがあることを知る日が来る。信じ合えるもの、信じられないものの境界があること、快感と痛み、快楽と苦痛の狭間でスパイラルにのぼりつめる狂気があること、全ての生命の営みの輪の中に自分もいたこと、己の欲望に忠実に体が反応すること、そして心は身体の快楽に勝てないこと。それらを思い知る日が来る。人間の業。

ロストチェリーはそんな香りがする。

幼年期のチェリーの甘さ、思春期のアーモンドビター、そこに絡むシナモンの誘惑に身悶えし、ローストトンカの人肌の匂いに酔いしれてゆく。ラストに感じられるわずかなヴァニラは昨日までの自分との決別。ほろ苦く甘い、もう戻れない白い朝の追憶。

それは通過儀礼。大人になるための痛み。少年少女との決別。小さな世界の喪失。広大な世界への不安。自分の中のエロスに気付く日。異性を誘う自分の秘密の匂いを知る日。しっとりと濡れたシロップの誘惑に、あくなき生と性の悦びをかいま見る日。自分の価値が揺らぐ日。自分の武器に気付く日。

その日を夢見ていたわけではない。その日を待ち望んでいたわけではない。ただある種のノスタルジーと悲しみは、小さな頃からずっと自分の中にあった。父と結ばれたいのに、母と同化したいのに、どこか拒絶された単体として存在しているちっぽけで儚い自分。その理由を知った日。

汚れた血。純潔な血。自分の中の不道徳を知る日。自分の中の清らかさを思う日。それでも唇をきゅっと結んで髪をかき上げて、さも何事もなかったかのように風の中を歩く日。何かを捨てたようで、何かに見捨てられたようで、全てを知った気になって、この感じを知らなかった自分を深い海に沈める日。

すれ違いざま、オヤジどもがなぜ濁った眼で自分をじろじろ見るのか、なぜ電車の中で痴漢されるのか、なぜこのロストチェリーが2〜3時間しかもたないのに3.5万円もするのか、そしてなぜこれまでになく売れているのか。その秘密を知る日。それは性が媚薬だからだ。愛情同様、性に困窮している餓鬼亡者が世界中にあふれているからだ。

こうならなくてもよかった。知らなくても生きられた。けれど知ってしまった。もはや永遠に心を奪われ、性の呪縛に囚われ、甘美な悦びに身悶えし、ときに燃えさかる業火のように嫉妬で相手を焼き尽くす。それは諸悪の根源。心の足かせ。神の手から最も遠い場所にあるダーククリスタル。仮面をつけて微笑み、仮面の下で己の外道を飼いならし、雑踏の中、風を切って歩き始めるために失ったヴァージニティー。SEXは甘く、かぐわしく、どこまでも心をとらえるけれど、その快感と感動は一瞬。あとに残る寂莫とした思い、荒涼とした大地にただ一人残された孤独。それらと向き合うことをたたきつけられ、人は自分の中の獣を知る。それでもまた、自分だけのチェリーを探し求めてこの世界をさすらう。

天使のように甘く、悪魔のように苦々しい。少女のようにほほえましく、遊女のように猥雑に誘う。チェリーボムはかじられた。したたる果汁は大人味のダークブラッド。

その血を煮詰めた背徳の香り、ロストチェリー。

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ディオール / メゾン クリスチャン ディオール ラッキー

ディオールディオールからのお知らせがあります

メゾン クリスチャン ディオール ラッキー

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:40ml・19,140円 / 125ml・39,600円 / 250ml・55,880円発売日:-

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5購入品

2020/4/25 14:10:12

最初はたくさんいる友達の1人だった。特にめだつ人でもなかった。けれど、気がつくといつもそばにいて笑っていた。そしていつのまにか、かけがえのない人になっていた。

そういう友達や恋人がいる人はとても幸せだ。そして、ディオールのラッキーは、どこかそんな大切な人を思わせる香水だ。

メゾンクリスチャンディオールを訪れると、いつも気分が華やぐ。清潔感あふれる白い店内、そこには色とりどりの香水ジュースで満たされたシリンダーボトルが美しく並んでいる。

たいてい最初に試香するのはサクラだ。そこからローズ系に移行する。ラコルノワール、ローズカブキ、ローズジプシーあたりを嗅ぎ比べする。ピンクジュース系からのグラデ。その頃合いで話しかけてくる店員さんに「全部ローズなのに結構違いますね」なんて話をちょっとする。すると詳しい方ならそこからいろんな事を教えてくれる。その話に耳を傾けながら、次々と他のボトルを試していくのがパターンだ。ただ、いつも通り過ぎてしまう香水があった。

ラッキーだ。

なぜラッキーはいつもスルーしてしまうのか?

1つはその淡いグリーン系カラーのせいかなと思う。色とりどりのジュースの中、なぜか淡い緑のジュース系には手が伸びにくい。不思議だ。それでも、テカシミアはティーのスッキリした香りで鼻をリセットしたくて必ず手に取る。ただラッキーは「うん、ま、今日はいっか」になっていた。なぜか?

それは、初めてラッキーを試したときにあっさり香りを覚えてしまったからだと思う。フルーティーでグリーンでジャスミンが強めのスズラン香。「これは洋ナシスズランだ!」そう鼻と脳にインプットされた。名香ディオリッシモの濃厚なスズランとは桁違いに淡くてスッキリしている。「なぜ今さらこんなに淡いスズランを?」そう思った。それ以来、ボトルを見かけてもすぐに香りが脳内再生され、試さなくてもわかる的なスルーを繰り返すことになった。

ところが。

それ以後、MCDのボトルを何本か所有してみて驚いた。MCD香水の中で、実際最もよく使うのはそのラッキーだ。店頭ではいつもスルーしていた香水。淡くてわかりやすくて、フルーティーなスズラン香水、ラッキー。

ラッキーをつけるときは2〜3プッシュする。MCDの香りの中でも「淡い」スタンスにある香りだからだ。つけた瞬間、まず華やかなホワイトフローラルがふんわりと広がる。ジャスミン、オレンジフラワーをメインに、わずかにチュベローズとイランイランの陰影も。

そしてすぐにフルーティーなファセットがフローラルを包みこんでくる。青リンゴのような洋ナシのような、人によってはメロンのような香りだ。この香りはかなりウォータリーで、花の香にみずみずしさを与えている。濃厚なホワイトフローラルのエッジをスッキリグリーンウォータリーで溶かしているイメージだ。

そしてこれがラッキーの全て。MCDの香りは基本シングルノートなので、このまま減衰する。ときどき、間違ったように苦めのグリーンがメンズっぽく出ることはあるけれど、基本的に「グリーンフルーティー>ホワイトフローラル」というシンプルなアコードのまま続いてドライダウン。時間はやや短めで、3〜4時間程度。もはやスズランのオーデコロンといった印象。なんかずっと昔、北海道で買ったすずらん香水を思い出すまろやかな感じ。

でも

だからよく手が伸びるのかもしれない。そう思う。スズラン香はグリーンでシャープなエッジとふんわりホワイトフローラルという相反する二面性をもつので、スッキリさと柔らかさ、どちらがほしいときにも重宝する香りだ。オンにもオフにも使える。

なんかシャキッとしたいな、そう思ったらラッキー。ちょっと優しい気分になりたい。そう思ったときもラッキー。確かに、気付けばいつもそばにいてくれる友達のようだ。派手ではないけれど、フランクで、優しくて、一緒にいて気持ちが穏やかになる。

例年5月1日は、親しい友人や愛する人に小さなスズランの花束を贈る「スズランの日」として、フランスでは昔から親しまれている。スズランの花言葉は「幸福の訪れ」「純粋」「繊細」だ。スズランをもらった人にはすばらしい幸福が訪れるという。

花はディオール。ディオールの花といえばスズラン。それほどまでにクリスチャン・ディオールに愛された花の香りスズラン。名香ディオリッシモの花束感とは違うけれど、調香師フランソワ・ドゥマシーは、創業者ディオールの心を香りにこめて、この幸運のお守りを世界の人々に届けたかったのだろう。

「いつもありがとう。あなたに幸福が訪れますように。」

スズランの花一輪のラッキーチャーム。ディオール、ラッキー。

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ゲラン / アクア アレゴリア ジンジャー ピカンテ

ゲランゲランからのお知らせがあります

アクア アレゴリア ジンジャー ピカンテ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:- (生産終了)発売日:2019/6/1

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5購入品

2019/7/26 22:49:49

長く続いた雨があがると、都会はギラギラ照りつける真夏の太陽にまばゆく塗りかえられた。ビルの壁一面に取りつけた室外機が音を立ててフル回転し、熱風をまき散らし始める。あんなに雨の街にうんざりしていたのに人は勝手なものだ。蒸し暑い炎天下の街を歩いたらこの暑さにもすぐ辟易して、どこかカフェに寄って冷たい飲み物で喉を潤したくなった。

ゲランのジンジャーピカンテは、そんなときに飲みたいキリッとしたジンジャーエールの香りがする。

ジンジャーピカンテは、2019年6月にココナッツフィズと一緒に発売されたゲランのアクアアレゴリアシリーズ最新作。アクアアレゴリアは、1999年に4代目調香師ジャン・ポール・ゲランが自然の美しさと様々な天然素材へのオマージュとして誕生させたライトフレグランスのカテゴリで、今年20年目になる。その間、まるで季節限定品のようにたくさんの作品が登場し、消えていった。

20年という節目にあたって、ゲランはマスターパフューマ―のティエリー・ワッサーの名前ではなく、ラ・プティット・ローブ・ノワールのベース香料を作って大ヒットさせた女性調香師デルフィーネ・ジェルクの名をクレジットしている。蛇足だが、こんなふうに女性調香師の名をフロントに出すのはかつてのゲランでは考えられなかったことで、はなはだ隔世の感がある。

では、彼女が作ったジンジャーピカンテとはどんな香りなのか?

ジンジャーピカンテを1プッシュする。すぐにジンジャーの辛み、わずかなハニーの甘味、レモンやベルガモットのスッキリした酸味、ペッパーの乾いたスパイシーが渾然となって広がってきて、何とも言えず爽やかな気分になる。とても美味しそうな香料ばかりだ。それは、よく晴れた日にごくごくと喉を鳴らして飲むアイスレモンティーにすりおろしたジンジャーを入れたような風味。あるいは辛口ジンジャーエールにスライスレモンをたっぷり入れて、むせかえるような炭酸のスプラッシュを味わうような。

やがて5分ほどすると香りは柔らかく変化する。ジンジャーとシトラスの奥からしっとりしたローズが顔をのぞかせてくるからだ。みずみずしい朝露をのせた柔らかなローズ香が、ジンジャーの辛み、ペッパーのドライな風味と相まって心地よく広がってくる。そのブレンドの妙。

ここでローズが出てくるところがこの香水の最大のポイントだ。昨今、柔軟剤のように付けた瞬間からラストまで一本調子で変化のない香水が多い中、さすがゲラン帝国、ライトでみずみずしいアクアアレゴリアの最新作でも、香りが変化する楽しさをしっかりとアピールしている。

レモンの香りが次第に消失すると、ベルガモットの緑色の爽やかな香りにキリリと辛いジンジャーが寄り添いながら、ほの甘いローズがふんわり全体をまとめているようなミドル香になる。隠し味はわずかな蜜の甘さを伴うハニーか。そのコクのある味わいは夏の日に喉の渇きをいやす冷たい飲み物や氷菓を連想させるに十分だ。

出力は全体にやや弱め。1〜3時間ほど穏やかに香るので、通常ウエストや内ももに香水を付けている方も、プッシュ数は増えると思う。最近のゲランの香水に対して、ティエリー・ワッサーが好むラストのホワイトムスクが苦手という方もいるようだが、ジンジャーピカンテのラストは爽やかな生姜の辛みとフェミニンなローズのミックスでフェードアウトするのでワッサー調とは異なる。スッキリしたエンディングで、夏以外にも使いやすく汎用性が高い香りだと思う。

価格は75mlボトルで8900円+税。昨今のラグジュアリーなニッチブランドの香水の値段を考えれば良心的な価格だ。同時発売されたベルガモットのボディローション(200mlで7500円+税)をシャワー後の全身にすりこんでからジンジャーピカンテを好きなところに重ねるミクソロジーが超おすすめだ。

真夏の強烈な日差しが降り注ぐ午後。ビルの谷を吹き抜ける熱風にやられ、いっときの涼を求めてカフェに入る。ひんやり乾いたクーラーの風に包まれ、ふーと息を吹き返す。冷たいジンジャーエールが運ばれてくる。ストローを寄せてゴクリとひと口すする。その瞬間カラカランと冷たい氷の音とともに口の中いっぱいに広がる甘酸っぱくてキリッとした辛みに、心と体から余計な力が抜けてゆく。

並木通りの緑がウィンドウの向こうでまばゆい光を浴びている。店内にはボッサの緩やかなリズムが流れている。まるでカリブの島に来たような気分でジンジャーとレモンの香りに包まれるリラグゼーション。店内に一輪挿しの夏薔薇の香りがほのかに漂っている。

シュワシュワはじける炭酸の泡から立ちのぼる、ピリッと辛いジンジャーと甘酸っぱいレモンの香りにほっとするひととき。ジンジャーピカンテの夏。

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ともるんさん
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  • ファッション
  • ガーデニング

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