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クレ・ド・ポー ボーテクレ・ド・ポー ボーテからのお知らせがあります
[化粧下地]
容量・税込価格:30ml・7,150円発売日:2022/3/21
2022/7/3 20:03:06
3月21日に発売されたクレドの一番新しい下地。
クレドのベースメイクは大好きで、下地に関しては新しいものが出ると必ず購入しています。こちらは使用開始して3ヶ月ほど経ちますので、全種の比較と合わせてレビューしていきたいと思います。
ちなみにこちら、2022年上半期のベストコスメに挙げました。
まず特徴ですが、簡単にいうと美白効果の入った下地です。
今までも「ヴォワールブラン」というのがありましたが(今もあるのか分かりませんが、クレドの下地の中ではいまいち存在感が薄かったかな)、発売されたのが2011年ですから、配合されている美白自体も進化しているわけで。今回のは美白有効成分としては4MSK配合です。
価格もヴォワールブランよりちょっと上がっているんですけど(クレドの下地の価格アップはこちらのだけじゃなくで、気づけば全部値上げされてますが汗)、SPF値もちょっとアップしてますし、何よりテクスチャーも心地よく、仕上がりもキレイです。
現在のクレドの下地ラインナップで比較していきます。
※価格は全て同じで、7,150円。
■ヴォワールルミヌ
SPF38・PA+++
液状。現ラインナップで美白効果が入っているのはこちらだけで、紫外線防止効果も一番高いです。これをつけてシミが隠れるわけではないですが、トーンアップして目立たなくする効果は一番感じます。
ピンクに発光して、下地だけでもぷりっとした肌に。他の下地はファンデありきの仕上がりなので、下地に粉だけで仕上げたい、という方はこの下地がピッタリかも。
私はてっきりこの下地が一番高いのかと思ってましたけどそうじゃない、というのがちょっと驚きで。現ラインナップは価格が全て同じ、ということを考えると、一番お得感があるかもしれません。
崩れにくさに関しては、ヴォワールイドラタンロングトゥニュの次くらいに崩れにくい。
■ヴォワールイドラタンロングトゥニュ
SPF25・PA++
液状。4種の中で崩れ防止効果は一番高いです。他ブランドのものと比べても化粧持ちが抜群によい。美容液をつけているようなみずみずしいテクスチャーが大好きで、私が一番愛用しているのがこれです。
色はあまり出ないので、もっともファンデーションに影響を与えず(ファンデーションの仕上がりそのまま)、けれどメイク仕立ての美しさをキープしてくれるという。
■ヴォワールマティフィアンリサン
SPF25・PA++
クリーム状ですがかなりさらっとしていて、毛穴スムーザーを全顔につけているような不思議なテクスチャーというのは、クレドに全くなかったタイプ。
毛穴カバー効果はこれが一番。つけた直後のさらさら感も一番。
化粧持ちもこれが一番いいのかな、と思いきや、イドラタンロングトゥニュの方が皮脂に強いように感じます。
全体につける、というよりは、小鼻や頬、部分使いすることが多いです。でもマスクしているとこの辺手抜きしてしまうので、私はこの中では使用頻度低めかな。
■ヴォワールコレクチュールn
SPF25・PA++
クリーム状。一番人気の下地で、保湿クリームに包まれているようなしっとりしたテクスチャー。
私は乾燥する時期にのみ、使っています。これをつけていれば乾燥しない、という安心感があります。
わずかにトーンアップします。ヴォワールルミヌが発売される前までは、トーンアップ効果があるのはこちらのみでした。ヴォワールルミヌと比較すると、ヴォワールルミヌの方が光で飛ばしてくれる感じがあるのですが、ピンクっぽい光が好きじゃない方はこちらの方が肌になじむ感じはあるかも。
それぞれに特徴が全く違うので、季節や気分で使い分けたり、部分的に違うものを組み合わせたりなんてこともできると思います。
たとえば私は今は24時間美白したいので、ヴォワールルミヌを全体につけてTゾーンにヴォワールイドラタンロングトゥニュを重ねたり。
※添付画像は2枚目、左からヴォワールルミヌ 、ヴォワールイドラタンロングトゥニュ、ヴォワールマティフィアンリサン、ヴォワールコレクチュールn。画像3枚目は上からこの順です。
こうやって比べてみると、テクスチャーも色も全然違いますよね。だからついつい集めてしまいます。
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- 50歳
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2016/6/25 12:26:16
世界で最も有名なひとしずくの秘宝。そして、世界一せつない香り。
シャネルのNo.5パルファムは、妙なる花々の香りと野卑な動物臭をブレンドし、アルデハイドでそれら何百種という香料を輝かせる巨大な幻想庭園。他の模倣を許さない、高価な香料を用いた配合とその奇跡のバランス。まさに琥珀色の宝石。その一滴は極上のシャルトリューズのごとく、時代を越えて人を酔わせ続けるエリクサー。
1921年、調香師エルネスト・ボーが提示した10本の香りの中から、ガブリエル・シャネルがその類まれな審美眼と洞察力で選び取ったこの作品は、あらゆる意味で世界を変え、そして今なお変え続けている。その秘密を5つの”L”で探る。
1つめはレジェンド(Legend)。No.5は幾多の「伝説」を生んだ。なぜ10本の香りからこれが選ばれたのか?アルデハイドを過剰投与した本当の理由は?パルファム・シャネルの経営をめぐる闘争の裏側は?などなど、いまだ謎に包まれた部分が多い。後付けされた推測が語り伝えられ、いつしか本人たちの手を離れ、作品であるNo.5にミステリアスな魅力を加えていった。時間と人々の語りが、あの小さな一瓶に歴史と評判という年輪を積み重ねたのだ。
2つめはレディ(Lady)。シャネルがLBDをデザインし、窮屈だった女性たちのコルセットを外させ、魂と身体を解放したことは有名だが、この香りもまた「新しい時代の女性」に進化する役割を担っていたことだ。当時、良家の淑女は単一花香、特にバラの香をまとい、高級娼婦らはジャスミンなどを付けるのが一般的とされ、女性たちは香りによっても縛られ、住み分けされていた。だが、No.5はそれらをミックスして「女性の香り」のシンボルとし、彼女たちを古き時代から解き放った。これが女性の価値観やあり方を大きく変えた。
3つめはラスティング(Lasting)。いつまでも心に残り、「永続」する香りだということ。
好きか嫌いかに関わらず、この香りは女性の人生のときどきに何度か現れ、そのたびに最大限の熱量で語りかけてくる。トップのアルデハイドのきらめきは、ミックスフルーツにかけたリキュールのように個々の香りの本質を引き出し、さらにそれらを1つにまとめて拡散させ、人を酔わせる。多量のインドールを含んだグラース産ジャスミン、希少なローズ・ドゥ・メをはじめ、80種をこえる天然香料の饗宴。それらの中には、シベットやムスクなど、獣の匂いも相当量ミックスされている。だから香りが持続する。香料の良さのみならず、心に強烈な獣の爪痕(つめあと)を残すからだ。
4つめはリリカル(Lyrical)。No.5は、あまたの感情を揺さぶる「叙情的」な香りだということ。そこに人は、女性自身の美しさとともに、光と影のように一対となっている女性の醜さをも見る。清らかさとダーティーさ、高慢さと謙虚さ。純真さとずるさ。天真爛漫さと計算高さ。可愛らしさと憎らしさ。そんな矛盾を内包する人の心にストレートに響く香りだ。なぜならNo.5は、「美しい花」と「ダーティーな獣の匂い」が協奏曲を奏で、そこにアルデハイドがコーラスとリバーヴを与え、爆音でブラストし続けるからだ。そのときどきの心の在り様が、同じ音や響きに共振してしまうのだ。
そして5つ目は、ラヴ(Love)。この香りは意外にも、傷ついた心、不安に震える魂を全身全霊で包みこむような優しさと「愛情」に満ち溢れた香りだ。No.5の功罪を1つ挙げるなら、やはりマリリン・モンローの存在だろう。彼女のおかげでアメリカで爆発的に売れた半面、彼女のセリフが元で、No.5は「男を誘惑する香り」といったイメージを人々の心に刻んでしまった。だがもう一度よく考えてみたい。なぜモンローはNo.5を愛したのか?なぜ「ベッドで身につけるのはNo.5を数滴だけ」と答えたのか?
それは、モンローが幼い頃から孤児院や親せきの家で育ち、母の愛に恵まれない不遇な少女時代を過ごしたことを知れば、自明の理だ。彼女は生きるために、男性の肉欲の対象となっても、女性からのバッシングにあっても、人前では笑顔をくずせなかった。そんなモンローの孤独、悲しみを包んでくれたのがNo.5だとしたら?それは、求めても得られなかった母の添い寝の代わりではなかったろうか。赤子のように体を丸め、No.5の香りに包まれ、母を想いながら彼女が眠っていたとしたら。そう思うと、No.5の琥珀色は違った色に見えてくる。
強く厳しく、けれど子の心の内を全て見透かしてなお微笑み、優しくたたずむ人。No.5はそんな母の姿を思わせる香り。愛し、憧れ、たとえ憎んでも、永遠に心から切り離せない、自分を生んでくれた人を思う香り。
だから切なくなる。世界で一番せつない香りになる。
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2017/4/16 19:36:10
2017年 4月更新:
新作、Lip Tattoo のクレジットがまだないようなので、ここに貼付けておきます。
ある時から私は目的買いの女に徹する決意をしました。デパートでの衝動買いに今までどれだけ後悔した事か(笑)
で、今回の目当ては、マキシマイザーの限定とリップタトゥのタッチアップだけ。
ここでは追記してませんでしたが、4年前に出たスパークリングは、ラメが少しジャリジャリする感じが気になって、今回もそれと同じようなテクスチャーだったらちょっとな思っていましたが、今年の限定は、それがなく滑らかな付け心地でした。
薄らピンクの中に、シルバーラメ入り。
で、5月3日、伊勢丹先行発売のリップタトゥですが、ネーミングからしてすごいですねー
カラーパレット以外に今季、目新しいものといったらこれくらいしかないでしょ。
10時間落ちないって、大げさだなと最初思ったけど、
いや、これ、本気で落ちねーわよ。参った(笑)
超チェリーレッドを付けてもらって、その後中華料理店で広東麺平らげてきたんですが、色素はがっつり残ってる感じでしたね。
当然、付けたてのような鮮やかさはステイしないけれど、クレンジング後もまだ、うっすら赤く残るくらいのステイン力です。
これはポイントメイクリムーバー必須。
塗り直しがいらないから、コスパはかなり良さそうだけど
うーん、唇への負担を考えると、どうなのかな。と言ったところ、
LIP TATTOO! のネーミングとロゴが小洒落てて良いですね。
私は、この最強に落ちないリップの上に、マキシマイザー008をレイヤーして使う予定です。
ベースをタトゥでしっかり塗り込めば、塗り直しも008だけで良さそう。
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2015年 6月更新
いつでも買えるわ、と思っていたのは甘かった。
ストックが減ってきたので買い足そうと、デパートと化粧品専門店を何件か回ったけれど007ピンクサンセットの限定はどこも完売でした。
ネット通販を検索したら在庫がまだ残っていたショップがあったのでそちらで頂く事にしましたが、これにもそろそろ飽きてきましたね。
このアイテムはあまりにも有名になりすぎた。
あまり人と被らないような、これよりも上を行く優秀なプランパーってどこかにないかしら?
2013 4月:
1ヶ月で1本無くなるヘビーユーザーです。
Diorの秘密兵器、マキシマイザー限定色スパークリング試しました。001に細かいラメを散りばめたような質感。
上質な唇美容液+ラメのデコラティヴタッチが楽しめます。贅沢な逸品です。
ひと塗りでパッと華やかな印象になりますがコスパはさほど良くないのでいつものマキシマイザーに重ね塗りして2ヶ月くらいは持たせたいところ。
こちら、できれば限定ではなくレギュラー販売してほしいですね。
アディクトリップスティックの上に重ね塗りしたら更に可愛いかった。
2011年 11月更新:
リップグロウのクチコミを書いていて思い出したのでここで更新。 1度知ってしまったら最後。いっきに1ダースくらい買いだめしたくなること間違いなし。今年の冬も縦皺レス目指してみんなで依存(アディクト)しちゃいましょう。
最近ふと思ったことだけれど、他のリップと合わせてREDOしすぎるとすぐにチップを汚してしまい、(少なからず科学変化を起こしてる場合もあるんでしょう)本来の美容成分の効能が早く薄れる事が判明。有効成分であるカプサイシンやコラーゲンの効果をなるべく弱めたくないし最大限にたっぷりうるおいと栄養を与えたいですからね。
そんなわけで、今年からは、洗顔後の清潔なスッピン用(寝る前用)とリタッチ用、2本キープし徹底して使い分けるようにしました。
チップは常に清潔な状態にしておくって大事だよね。
これはホントに優秀!
はじめの唇にピリピリくる刺激がまたたまらない。まさにアディクト、やみつきになります。ベースにこれつけて→ほんのり色づく明るめのリップを重ね付け→もう1度軽くこのグロスでコーティングしておけば縦ジワ消えてぷっくりツルルンが長時間持続するから何度もつける必要なし。
美容成分のお陰かな?、使えば使うほど潤う感じ。ナチュラル派のわたしにとってはすっぴんでも縦ジワが気にならなくなった事が一番嬉しかったりもする。
ロングセラーはうなずけますね 。
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2016/10/29 18:03:37
まさかエルメスの「庭」シリーズに5作目が出るとは思っていなかった。「地中海」「ナイル」とヒットを飛ばしたものの、「モンスーン」で商業的にふるわず、「屋根の上」でフランスに戻って、「やっぱりここが一番」的な、チルチルミチルの青い鳥な楽屋オチで、旅は終わったと思っていたからだ。
しかも、今回の旅先は中国。以前から調香師エレナが並々ならぬ関心を寄せている国だ。かつて訪れた紫禁城で出会ったキンモクセイの香りの感動のみならず、漢字や中国文化、シノワズリ(中国の美術様式)への興味も高いようだが、正直「またそちらですか」という気がしないでもなかった。では、肝心の香りはどうか。
「李氏の庭」を肌にスプレーすると、まずトップで感じるのは、甲高い黄色い柑橘の香り。レモンの酸味にキンカンの香ばしい甘酸っぱさが穏やかに鼻をくすぐる。そしてすぐ消失。3分とせずに、これまでの「庭」系に共通するウォータリーなベースが香り始めてくる。ここからがミドル。
それは、内省的でややはかない印象のジャスミンと、フィグ系を思わせる少し青っぽい印象のウォータリーノート、藻や苔を思わせる暗めなグリーンノートのミックス。アーティフィシャルな香りだが、とてもしっとりとして、落ち着いた透明感あるミドルだ。まさに、これまでの「ナイル」「屋根の上」あたりに通ずる「庭ベース」ともいうべきみずみずしい香り。ただ、よく見ると、少し草木が枯れている。沼の水にもカーキの濁りがある。しだれ柳が作る翳りが思いのほか濃い。そんな印象。水墨画とまではいかないものの。
ミドルは思ったよりも短いと思う。1時間もせずに、柑橘やジャスミン、グリーンな雰囲気は消失して、気が付くと、透明感あるウォータリーな香りとほのかな木の香りとが相まった、庭系独特の艶のあるラストになっている。香料じたいがかなり少ない印象で、庭ベースを元に再チューンしただけのような印象も。そして、このラストがどことなく「モンスーンの庭」のようにこんもりした温かみのあるスパイス感をもっているように感じられる。ジンジャーやカルダモン、クミン系のスパイスがほんのわずかアクセントとして効いている、そんな感じがして、キラキラのスイレンアコードで終わる「ナイルの庭」や、甘ったるく終わる「屋根の上の庭」よりも、「モンスーンの庭」のインド寄りに思える。
ラストはほのかに7〜8時間も残っていて香るけれど、どこか入浴後のジャスミン系入浴剤の残り香のようにも感じられる。ジャスミンとウォータリーノートを合わせているのだから、さもありなんとは思うけれど。
全体に、とても落ち着いてしっとりした香りだと思う。であればこそ、やはり空気が乾燥してくる秋〜冬にかけて、シックな色合いの服やシーンに纏うとよい雰囲気になるだろう。そんな意味でも、この春に出た新作だけれど、自分にとっては秋のイメージの方が強い美しい香り。
ただ、いくつか言いたいことはある。
まずは、とにかくこのネーミング。どうにかならなかったのだろうかと言いたい。「李氏」は、中国や韓国で最も多い姓の1つであり、中国の架空の庭をイメージするための象徴として使用したようだが、「香水は何をお使いですか?」と聞かれて「あー、はい。『李さんの庭』です。」という会話だけは絶対にしたくないし、避けたい。欧米ではどうか知らないが、「李氏の庭」というネーミングは、明らかに日本人の心には響かない。響かなさすぎる。(←みんな遠慮して言わないから言ったな。パンクスめ。)
せめて仏語のまま「ムッシュリーの庭」、あるいは「シノワズリの庭」くらい、ぼかしてほしかった。加えて言うなら、もし日本をイメージして第6作を作ることがあれば、「佐藤さんの庭」なんて名前で出そうものなら、本気で青空に向かってあらん限りの罵詈雑言をシャウトします。(全国の佐藤さん、すみません。日本で一番多い苗字という意味で、他意はありません)
また、皇帝のイエローと呼ばれるボトルの美しいイエローグラデも、土色の黄河や、苔むした岩、よどんだ沼の色のイメージではやや残念だ。この香りやボトルから自分が思い浮かべるのは、陽に向かい、美しい黄色の扇を満開に広げたイチョウの木と、落葉が作る一面の黄色の絨毯。中国の観音寺には、樹齢1300年をこえると言われるすばらしいイチョウの木があるという。そんな紅葉ならぬ「黄葉の庭」のイメージが似つかわしい。
空が青くどこまでも高い。その空に向かって、鮮やかな黄色の葉をつけたイチョウの大木が、思い思いに気持ちよく枝を伸ばしている。その青と黄色のコントラストが目にまぶしい。
秋の午後、どこからかジャスミンティーの温かな湯気の香りがしている。柔らかな黄金色の日差しが降り注ぐシノワズリの庭で。
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2017/3/5 23:05:23
もしも誰かに「薔薇の香りでおすすめはありますか?」と尋ねられたら、全力で「ゲランのナエマのパルファム」と即答したい。気に入ろうが、気に入らなかろうが、関係ない。それを基準にしてほしいという願いのようなものだ。けれどもう、その至高のローズを入手できる確率はかなり低い。惜しまれながらも2016年にこの世を去ったからだ。だから実際は、「ナエマのオードパルファム(EDP)」と答えるだろう。それは香水には及ばないにしても、これまで出会ったバラをモチーフにした香りの中で、最高の逸品だと思うからだ。
ナエマEDPは、ゲランの数ある名香の中でも、特に秀でて素晴らしい香りの一つだと思う。にも関わらず、知名度は圧倒的に低い。ジッキー、ルールブルー、ミツコ、シャリマー、ボルドニュイ(夜間飛行)。これら歴史的な名香のネームバリューに比べれば、本当に知る人ぞ知る香りだ。それでも、これらに比して全くひけをとらない、ゴージャスで洗練された美しい香り。個人的には、4代目調香師ジャン・ポールの最高傑作だと思っている。
映画「めざめ」(1968)でカトリーヌ・ドヌーヴに惚れこんだジャン・ポール・ゲランが、彼女のイメージをもとに架空の美しい姫の姿を作品に投影し、彼女に捧げた香り。それがナエマの出自だ。リリースは1979年。ただ、当時香水需要が高まっていたアメリカ向けに巨額の広告宣伝費を投じたにも関わらず、商業的には振るわなかったといういわくつきだ。
さらに、「千夜一夜物語」ふうの双子の姉妹のストーリーもよく語られるが、かの膨大な伝承の中にはそのような物語は見当たらないようだ。「千夜一夜物語」じたい、何がオリジナルかも不明なほど、各地でさまざま物語が作られ、付け足されていった経緯があるので、実際は口頭伝承のみで筆記されなかった逸話かも知れないし、ゲランによるオリジナルイメージストーリーなのかも知れない。
そんなナエマEDP の香りはというと。
オープニングは、名香シャネルN°5を彷彿させるアルデハイドのキラキラしたワックス香から始まる。ややクラシカルな出だしだ。そしてすぐにグリーンノートが広がる。シャープで青い薔薇の茎やとげ、細かいギザのついた葉を思わせるようなトップ。
3分もせずに下から、甘い蜜の存在を花弁の奥に感じさせるスッキリした薔薇の香りが広がってくる。ライトなピンクの薔薇を思わせるようなフルーティーな香りは、パッションフルーツの酸味、ピーチアルデヒドによる桃のふくよかさに彩られている。ところが。
驚くべきことに、次第に薔薇の香りが濃厚になってくる。ヒヤシンスのグリーンの消失と共に、一枚、また一枚と花弁が増えていくようなイメージ。それは、爆弾の弾頭を思わせる薔薇のつぼみが開くにつれ、こんなにも多層の花弁がどこに隠されていたのだろうと驚く瞬間にも似ている。コクのあるジャスミンの花弁、妖しく誘うイランイランの花弁、可憐なスズランの花弁。そして、わずかにバルサミックな香りの花弁。それらは遂に、フルボディの極上のワインとなって、複雑かつ多層的に香り出す。これぞダマセノンを用いた秘伝のローズ香料の成せる業。至福は6〜8時間程度。
ラストは、柔らかく穏やかに薔薇の余韻を残しつつ、ヴァニラのクリーミーさとピーチのほの甘さを絡ませながら消えていく。ときにサンダルウッドの温かみをも伴いながら。不思議なことに、香りを鼻から早く吸い込むと、グリーンでシャープなローズの主張が感じられるし、ゆっくり深く吸い込むと、イランイラン様のダーク&甘い口紅のような残り香が感じられる。ナエマは最後まで本当にたくさんの香料がせめぎあっている。
拡散力はあるものの、かなりプライヴェートな距離に近づいた時に感じられるタイプ。いわば、香りのA.T.フィールドのようなイメージ。多層な花弁の奥に隠された秘密は、誰もがおいそれとのぞき見ていいものではない。ナエマには薔薇のもつ密やかなたたずまいさえ表現されているように思う。
自分には高貴すぎるとか、早すぎるとか、窮屈な型にはめてしまうのはもったいない。好きな時に好きなだけ、好きなようにつけるのがナエマには似合うだろう。
一人の天才調香師が、それでも4年もの歳月をかけて500回以上の試行錯誤を経て創り出した香り、それがナエマだ。「千夜一夜物語」ふうになぞらえたのは、ジャン・ポール自身が、シェヘラザードの語り紡ぐ伽話に夢中になったスルタンのように、千の夜を越えてやっとこの香りに出会えたからに相違ない。
短い人生でこの香りに出会えてよかった。そう思う。ナエマを越える薔薇を探すなら、覚悟した方がいい。それは幾千幾百もの夜を越え、幻の薔薇のナマエを探す壮大な旅になるかも知れないのだから。
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