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Cookieyukiさん
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クリニーク (海外) / アロマティクス エリクシール

クリニーク (海外)

アロマティクス エリクシール

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

4購入品

2022/2/3 00:50:45

私の住んでいるアメリカのコスメショップには必ずといっていいほど置いてあってずっと気になっていた。新商品が出るたびに他の香水のディスプレイは入れ替わっていくけど、これだけはずっと棚に置かれている。1970年代に発売されているのでかなりのロングセラーだ。

早速試す。

香水そのものには性別はないということを実感。ユニセックスでも十分いけるのでは?

トップはカモミール、クラリセージが強く香りかなりハーバルな印象。アルデハイドは当時のアルデハイド香と比較するとかなり弱め。コリアンダーのクールなスパイシーさ、レモンバーベナの清涼感、ローズウッドの爽やかな樹木感がはっきりしているのでこれらの香りが好きな人にはドストライクだろう。特にカモミール好きにはたまらないかも。

初めからベチバー、パチュリ、オークモスが入っているのが分かる。表立って主張こそはしてこないものの遠いところでぼんやりと聞こえている音楽みたいな感じ。人形浄瑠璃で言うと黒子の役割か。

ミドルでは初めのハーバル感が薄らいでフローラルが少し加わる。一番はっきりとわかるのは薔薇。トップノートのゼラニウムからの流れが自然だ。花の香料は何種類も入っているようだが、ただのフローラルというより凛々しいフローラルと呼びたい。パーティなどのちょっとかしこまった席で気品と威厳のある女性がつけるのがしっくりくる。容易くナンパ出来なさそうなガードの硬さを感じる。ビジネスシーンでつけるのもデキる人になった気分がしていいと思う。

ラストは私の肌の上だと力強い母なる大地を感じさせる香り。逞しさと神々しい美しさが同居している。オークモス、ベチバー、パチュリの組み合わせはよくあるけどお互いそれぞれの良さを引き立てあっている。約束でもしたかのようにムスクが入っているがほとんど感じられない。

これって女性だけではなくアジア系の男性にもよく似合うんじゃないかな。アジア人男性は西洋人男性と比べると細身で毛深くない人が多いので、このような中性的な香りをつけてもお洒落にきまる。日本でモテる細マッチョタイプの男性だったらアロマティクスエリクシールを試す価値はあると思う。ビジネススーツと合わせると結構イケるんじゃないかと。

面白いことに国、文化によって人気のある男性像は大きく異なる。こちらアメリカでは髭を伸ばすのが流行ってる(ような気がする)。「日本では髭を永久脱毛する男がいるんだよー」と女友達に言ったら「えーっ!あのジョリジョリ感が男らしくていいのに、なんて勿体無いことを」と憤慨された。ほおずりした時の刺激がたまらないらしい。いわゆる男臭いタイプがモテるわけで、ゴリマッチョ+胸毛+豊かな髭のコンボは最強。それでいて性格がある程度よくて笑顔が素敵なら彼女が途切れない。そんな人にはアロマティクスエリクシールは違和感しかないが。

この香水は身体のどこにつけるかによって香り立ちが大きく変化する。どんな香水でもその傾向があるが、アロマティックスエリクシールは特に変化が大きい。

お勧めは服で隠れるところ。ウエスト、太ももにつけるとハーブ系とフローラル系の混ざったなんともいえない上品な石鹸のような香りが立ち昇ってくる。手首と胸につけるとベチバー、パチュリ、オークモスの苦味と一種独特な土臭さが悪目立ちしがちで良くない。

拡散性は高い方だし持続性が凄い。早朝につけて夜お風呂に入るまでばっちり香り続けるのでコスパがいい。最近流行りの香水とはかなり路線が違うので、試してみて気に入りさえすればいい買い物だと言えよう。ヨーロッパの高級香水と張り合うかの如く気合を入れて作ったのは明らかで、トップ、ミドル、ラストの香りの移り変わりといい香料間のバランスといい計算し尽くされている。

調香師はバーナード・シャン。エスティローダーのビューティフル、アラミスのアラミス、グレのカボシャールなど彼の作るものにはベストセラー、ロングセラーが多い。実力あるんだなあ。

ビジネスシーンやかしこまった席でつける香水で他人と被らないものを探しているなら先入観抜きで試してほしい。案外似合ってるかも。

トップノート: カモミール、アルデハイド、コリアンダー、クラリセージ 、ベルガモット、ゼラニウム、ローズウッド、レモンバーベナ
ミドルノート: 薔薇、カーネーション、ジャスミン、オリスルート、イランイラン、オレンジフラワー
ラストノート: オークモス、ベチバー、パチュリ、サンダルウッド、インセンス、ムスク

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フラッサイ / ティアンディ

フラッサイ

ティアンディ

[香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

7購入品

2021/9/18 11:57:58

かつて「桃とシプレの名香」と言えば、長らくゲランのミツコだった。ただ、正直現代の女性に往年の名作ミツコは渋いと思う。リスペクトも含めてあえてそう言う。凛としたたたずまいが女性にも求められた時代は遠くなり、今は柔らかく華やかなスタイルの女性が多い時代。そして、そうした女性に似つかわしい最新型の「桃とシプレの名香」を見つけた。それがフラッサイのティアンディだ。

フラッサイは、NYのフレグランス業界でのキャリアを経て、母国アルゼンチンに帰ったナタリア・オウテダ女史が、2013年から展開しているニッチな香水ハウスだ。彼女は自分でも作品を調香できる技術と経験をもちつつも、かつて親交のあった信頼できる調香師に調香を任せ、珠玉の香水のみをリリースし続けている。

そんなナタリア女史が、自身の趣味である太極拳と道教の「不死の桃伝説」からインスピレーションを得て創った香りがティアンディだ。これは中国語で和訳すると「天と地」の意。天と地、とくれば中国の陰陽説が思い浮かぶ。そこに3000年に一度実を付けると言われる「不死の桃」の香り。いったいティアンディはどんな香りなのか?

ティアンディをスプレーすると、まず最初に広がるのはダークな洋酒ライクなプラムの香り、そこにシダーっぽい冷たいウッディが絡んで、セルジュ・ルタンスの名香フェミニテ・ドゥ・ボワの紫色のトップにとてもよく似た開幕。

ところが

そこからふわふわと香料が入れ替わって霧のようにただよい、あたりは深山の幽域といった具合になってくる。

まず温かくスパイシーなジンジャーの香りが広がってくる。かと思うと、冷たくひきこむようなアニスが主張してくる。この温と冷、これこそ陰陽説だ。天と地、善と悪。陰陽説はこれら正反対の事象が、互いになくてはならない関係のままこの世界を構成しているという考え方だ。さらに、ジンジャーは「外に拡散」する香り方をし、アニスは「内に引きこむ」ような香り方をする。この点でも対照的だ。よく考えている。

5分後、香りはさらに複雑に変化する。深山の霧の中に煙の臭いが立ちこめてくる。スモーキーなインセンスの匂いだ。それは炒った茶の香りのようでもあり、焦がしたコーヒーの香りのようでもある。焙煎茶のように香ばしく、どこかほろ苦い煙の香り。これは人がそこにいる気配を感じさせる展開。伝説に登場する崑崙山(こんろんさん)の頂上、美しき仙女、西王母の住まう地にたどり着いたようなイメージ。そんなふうに人が物を燃やす香りが展開してきて、もはや最初のフェミニテライクな気配がなくなったことに気付く。

そこは清涼感ある薬草の匂い、焙煎した茶の香り、そして香木を焚く煙たゆたう天上の園。生と死を司る双性の神、東王父と西王母の住まう地。

温かいジンジャーと冷たいアニス。白いアイリスのパウダリーと茶色いサンダルウッドのウッディ。そのコントラストの妙。なんという二律背反かつ対照的なミドル。これは生と死、陽と陰になぞらえた、天地の香りの四重奏だ。

そして

驚くべきことに、このミドル前半から香りはらさらに変化していく。それはつけて10分ほどして唐突に現われて本当に驚く。

3000年に一度咲く伝説の桃。その木に実る桃の香り。それがこのミドル後半から突如、出現する。

通常、桃の香りはトップで感じられるフルーティーだ。ラクトンの一種である通称ピーチアルデヒドは、女性特有の甘い匂いの成分とも言われるが、なぜこんなスモーキーで複雑な煙の香りの後で突然出てくるのか?全くもって信じられない。調香師はトム・フォードのPBシリーズ人気を一気に押し上げたタバコヴァニラの作者、オリヴィエ・ギロティン。まさかあんな武骨な香りを創る方がこんな繊細な作品を作るとは…。本気でお見それした。

ラストはこの桃の香りにスモーキーなインセンスが絡み合いながら終息するというとても不思議なエンディングを迎える。つけて4〜6時間、ふんわり桃の香が残る平穏なラストだ。

永遠の命、不死の象徴、邪気や災厄を祓う神の食べ物とされてきた、桃。中国原産の原種に近い桃は大福のようにつぶれた形をしていて「幡桃(ばんとう)」と呼ばれ、今なお珍重されている。神の園で西王母がふるまう伝説の桃はこれに近い物であったらしい。食べたことはないが、その形からは想像もできない甘さをもち、味は格別だという。

神の山の入口を示すプラム酒の香り。ジンジャーの温かい吐息。アニスの冷たい大気。桃のまろやかさ、それは生。お香のスパイシー、それは死。

森羅万象の世界を生々流転せし者、神の桃源郷へとたどりつき、遂に不死の桃を食らう。

ティアンディ。天と地の間で。

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ゲラン / ルール ブルー 香水

ゲランゲランからのお知らせがあります

ルール ブルー 香水

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:30ml・49,720円発売日:-

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7購入品

2018/6/2 18:22:09

セーヌ川の岸辺一人、何度も立ち去りかけて、古いトランクを胸に夕暮れを見つめている。夕映えのパリ。茜色の夕日が、オルセー駅の巨大な長屋根を赤々と照らし出している。

今日の仕事を終えて家路へ急ぐ人々。ロワイヤル橋のたもと、語り合う恋人たち。ぬるびた風が川面を渡ってくる。遠く響く鐘の音。また一日が終わる。どこかもどかしい思いに胸がかき乱される。夜のとばりが心に静かにおりてくる。暗いシルエットになった下流の橋にも、もうすぐ灯がともるだろう。彼方のエッフェル塔は、堕天使の黒い矢のように、群青色の空を突き刺している。

やがて陽が沈む。残照が赤紫のインクを空と川面ににじませる。あたりは急速に光量を落とし、不意にひとときの静けさに包まれる。そして世界は一瞬、全ての光を失い、静寂の蒼に包まれる。

ルール・ブルー。

精一杯生きたとしてなお、たかだか100年にも満たないであろうこの命の道行きで、こんなにも切なくて美しい香りにめぐり会えたことを心から感謝している。

1912年、ゲラン3代目調香師ジャック・ゲランによる入魂の逸品。本レビューはオーデパルファム(EDP)の物。ルール・ブルーはパルファム(P)もオードトワレ(EDT)もあらゆる意味で他の作品を凌駕しており、どれも甲乙つけがたい。ただ、香りの変化が特に顕著で、黄昏どきの光と影の移ろいを表現しきったように思えるEDPが、個人的には一番のおすすめだ。自分がこれまで出会った中でも、最もドラマティックな映像美をもったフレグランスだと思う。さながら、時代の常識を塗りかえた印象派絵画の様式を香りにも取り入れたような前衛的作品。EDPは日本では未発売ながら、並行輸入品や海外通販により75mlボトルが1.3万前後で入手可能。

「たくさんの秘密が守れるように。」そんな意味深な思いをこめて中をくり抜いたという逆さハート型のキャップを外し、パフスリーブつきの女性用ドレスを模したアールヌーヴォー調ボトルからEDPをスプレーする。その瞬間の衝撃。

ベルガモットの酸味、ヘリオトロープの花粉の甘さ、カーネーションのスパイシー、薬っぽい樹脂香、ス―ッと引くようなアニスの冷たい香り。それらが渾然一体となって狂おしく空気を攪拌する。1つ1つの香料がクロード・モネの原色の点描のように明確にカラーを主張し合っている。それでいて、拡散力の強いアルデヒドによって各色の境界はぼかされ、全体的にはオレンジの光を照射しているイメージ。さながら沈む間際の太陽が、あたりを最も強い光で染めている情景。そう感じるトップ。

夕暮れ時は刻々とその光と影のバランスを変える。同様にルール・ブルーはつけてから5分までの間に、最も複雑に香りの様相が変化する。心がとらえられ、常に香りを確認していないと気がすまないほど、前述の香料がたえず色と濃さと輝きを変えて明滅してゆく。その千変万化の洒脱さ。本当にうなるしかない。ライトな香りが好きな方にはこの複雑にゆらめくトップは敬遠されがちだろう。香水の秘密と深淵をのぞきこみたい者にのみ、ルール・ブルーは閉ざされたドアを開く。

強烈な残照を放っていたワックス香のようなアルデハイドと、アニスの暗い清涼感が次第に消失すると、ルール・ブルーは一転、静寂のミドルを迎える。メランコリックで静謐なアイリスのパウダリーな香りが、風景全体を青白く染め上げてゆく。それは、快活な昼と抑制の夜の狭間。一瞬の蒼い空白のとき。自分の全ての肩書を捨て、ただ一人、闇の中で己の深淵と向き合う時間。冥色の逢魔が時。

このアイリスの切なく美しい粉っぽさは、まるでクロード・モネが放った作品「印象・日の出」そのもの。対象を写真のように写実的に描くのでなく、全体の印象を光の具合で表そうと原色の絵の具を塗り重ねたモネ。彼のように、アイリスとヴァイオレットのくすんだ香り、ヘリオトロープの甘さ、樹脂のインセンス香、トンカビーンの甘苦み、ヴァニラのクリーミーさ、それらの色を虹のパレットから直接キャンバスに置いたような印象。その点描は、近くから見れば各色が明瞭に分かり、離れて見ると全体が蒼の風景に映るという、印象派が描く夕闇の抽象。甘くせつなくたゆたう至福のパウダリー。

そんな柔らかく穏やかなミドルが6〜7時間、静かに続く。それは、すっかり夜の闇が下りたパリの街にさまざまな色の灯火がともり、心が再び落ち着きを取り戻した夜の情景のよう。パリの街の灯が煌々と夜を彩り始める。橋上の街灯がセーヌの水面を映し、金色の波をゆらゆらと燃やす。

天上からおりたヴェールはいよいよ蒼を増し、星々が夜空にまたたき始める。そして人々は再び家路を急ぎ始める。

一人歩く夕闇のプロムナード。愛しい君が待つ家へ。ルール・ブルー。

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フレデリック マル / ロー ディベール

フレデリック マル

ロー ディベール

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:10ml・5,720円 / 30ml・15,730円 / 50ml・20,020円 / 100ml・28,600円発売日:- (2018年11月追加発売)

5購入品

2019/12/21 23:59:36

「冬の水 一枝の影も 欺かず(ふゆのみず いっしのかげも あざむかず)」

俳人、中村草田男の名句。フレデリック・マルのロー・ディベールの香りを感じるとき、いつもこの句を思い出す。「冬の水」と名付けられたこの香水は、厳寒の冬に冷たく横たわる、鏡のような水面のたたずまいを感じさせる。

「香りの出版社」フレデリック・マルの香水の特徴は、調香師の名を前面に出し、何物にもとらわれない作者の創造性あふれる作品を世に送り出すこと。ローディベールは、2003年にジャン=クロード・エレナによる調香でリリースされた。現在50mlボトルが税込20020円。それより安価なミニボトルも出ている。

ジャン=クロード・エレナといえば、香水に詳しくない方もわりと知っているブルガリのオパフメオーテヴェール(1992)やエルメス専属調香師として「ナイルの庭」などをリリースした凄腕調香師だ。そんな彼が、エルメス入社の少し前に試行錯誤しながら創っていたという「冬の水」、それはいったいどんな香りなのか?

ローディベールをプッシュする。その瞬間、最初にたちのぼるのはやわらかなベルガモットのシトラスノート、紅茶のアールグレイの爽やかな風味だ。同時にふわりと出てくるのがうす紫色のスミレの香り。ああ、アイリスのヴァイオレットに傾いてる系の香りだなという感じがする。一瞬、アプレロンデを思わせるスミレの香りがとても印象的なトップ。

3分もせずに下から感じられるのは、わずかにウォータリーな気配を感じさせる苦味。同ブランドから2000年にエレナが出していた「雨のアンジェリカ」で用いられていたキー素材、アンジェリカの風味か。内省的なスミレの香りとアンジェリカのやや湿った苦味はどこか冷たさを感じ、冬の水を思わせるには十分なイントロだ。

10分ほどすると香りはミドルに移る。このへんの展開はとても繊細で美しい。スミレに傾いていたアイリスの下から桜餅のような苦味のある香りが出てくる。クマリンほど白い粉感がないのでビターアーモンドだろう。この杏仁豆腐のような独特の苦味感がアンジェリカからつながり、パウダリーなアイリスと相まって穏やかでしっとりしている。

空気がキリリと冷え込んだ放射冷却の朝、湖の水面の上には放射霧と呼ばれる幻想的な霧が立ちこめる。それは一気に冷えた地表近くの大気が、それよりも温度の高い水にふれるからだ。冬の水は、ときに大気の冷たさよりも温かいことがある。ローディベールは、そんな冬の朝の澄んだ霧のような香りをたなびかせる。

ただ。

この柔らかくしっとりとした美しい霧は、香り立ちがとても淡く、そして持続時間もとても短い。まるで冬の太陽がゆっくり山際に顔をのぞかせた瞬間に、スッと消えてゆく朝霧のよう。アーモンドノートとパウダリーなアイリスに、やがて黄色い花粉の匂いのようなヘリオトロープが混じった香りは1〜2時間でそのまま消失してゆく。

かなり調べても香料濃度は確認できなかったが、この香りに関していえば他のマル作品よりも香料濃度はうすいと思う。オーデコロンからオードトワレレベルかと。だとすれば、他のマル作品よりやや安価な設定も納得できる。「水」を表すためにあえてアルコールを多めにし、主張の弱い柔らかい香り立ちを目指したという見方もできるだろう。それでもこの淡さは日本人的には使いどころは多いかもしれない。値段と香り立ちの淡さ、このあたり評価の分かれるところだろう。

全体的に見ると、ふんわりとしたベルガモットのシトラスノートで始まり、アイリスのヴァイオレット風パウダリー、ドライで苦いアーモンドの香りが感じられてきて、ラストにヘリオトロープの黄色い花粉のパウダリーで終息していく展開。それらが織りなす静謐な水のアコード。それは、エレナによれば「冬のお湯の香り」だという。その意味は不明だが、冬だからこそ温かく感じる水のモチーフ、蒸発する霧や湯気から感じたイメージなのかもしれない。

明鏡止水という言葉がある。心に邪念がなく澄みきった水のように一転の曇りもない様子を表す言葉だ。冷え込んだ冬の朝、昇った太陽が山あいの湖に光を投げかけると、霧は煙のように消え失せて、周囲の山容を鏡のように映した美しい湖面が姿を現す。樹の枯れ枝が湖面に映る。それは冬を越すために全てをそぎ落とした骨のごとき姿。

冬の水はその姿も影もどこまでも残酷なまでに映し出す。その虚飾を廃した厳しさを草田男は「欺かず」の下句に込めたのだろう。自然と自分をあるがままに受け止めた作者の生きざまを表した言葉だ。枝の霜がとけて水滴となって流れ、枝先から垂れている。この涙のようなひとしずくもまた、まごう事なき冬の水。

ローディベール。

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ゲラン / シャリマー フィルトル ドゥ パルファン

ゲランゲランからのお知らせがあります

シャリマー フィルトル ドゥ パルファン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:50ml・13,860円 (生産終了)発売日:2020/12/1

7購入品

2021/1/30 13:36:53

参りました。素直に。これはすばらしい香り。誰もが是非一度は肌にのせてみてほしい香水。超お薦め。

ゲランのシャリマー・フィルトル・ドゥ・パルファン。この見事なバランス感覚に脱帽。ゲラン5代目調香師ティエリー・ワッサーと彼の調香チームの真の実力を見た。もうワサ夫とか言わない。(←最初から言わないように)

世界初のオリエンタル香水として今なお燦然と輝くゲランのシャリマー。フィルトルはその亜種で、星の数ほども出されてきたフランカーの1本。2020年12月発売の数量限定品。50mlで税込13800円。初めてだ。1本使い切らないうちにもう1本キープかなと思った香水は。

シャリマーは、香りも含めてコーラと共通点が多い。オリジナルのコーラは百年以上前に発明され、今なお世界中で愛飲されている。シャリマーも同様だ。そしてどちらもシトラス、スパイス、ヴァニラなど、多くの共通香料が使われていて香り的にも近い。さらに、チェリーやレモンやシナモンなど、構成フレーバーの一部をあえて過剰投与した限定品を次々に出している点もだ。シャリマーはいわば、薬草と樹脂と花の香りを添えたコーラのような香水だ。

ただし、シャリマーは香水の名作だけあって、亜種作品に対する愛香家の気持ちと鼻は、コーラの味以上に手厳しい。「また亜種か」という冷笑と一瞥が必ずあり、新作の度に「これはシャリマーじゃない」「オリジナルよりピンとこない」など、猛烈な批判に晒される。そして「ワサ夫、何でもオレンジフラワーとホワイトムスク入れてごまかすなよ?」などと言われる始末。(←それは貴方の意見では?)

ともあれシャリマーフィルトル、この作品はどこか超えた。少なくとも自分はそう感じた。では一体、どんな香りなのか?

フィルトルをスプレーする。その瞬間、わきあがる金色の雲。爽やかなレモンの香りに包まれる。同時にほんのりハーバルな清涼感も寄り添っている。フローラル調のラベンダーの香りだ。レモン&ラベンダーは香料的にとても相性がいい。まばゆい春の陽射し。レモン色の雲。吹き抜ける青い風。それらが世界に色彩を与えてゆく季節、春を思わせる明るいイントロ。

5分後、レモンの高い酸味の下からベルガモットのシトラスが広がってくる。ベルガモットは豊かな酸味と苦みを加えつつレモンの黄色い香りを引き継いでいる。さらに、ラベンダーとカルダモンのスッキリ感、甘辛いクローブのほのかにスパイシーな風をはらみながら、春の庭園の様相を呈してくる。光。春の光。植物のシャープな葉の香り、風に揺れる野の花の香り、そして傷ついた樹木が出すツンと甘い樹脂の香り。そんな広大な野に出でて、少女が一人、若菜を摘んでいるようなイメージ。

このトップ〜ミドルは、シャリマーシリーズでいうとパルファム(P)の雰囲気に近い。ベルガモットを過剰投与したPに対して、フィルトルはコーラで言うなら、グラスコーラにレモンを丸ごと一個しぼって入れた超生絞りレモンコークな香りだ。フィルトルは、かなりPのイントロのシトラスの爽やかさにこだわって創っている。そしてこのシトラスが想像以上に長く続いてとても驚く。ミドルは、レモン&ベルガモットが5、ラベンダー1、スパイス1、フローラル1、トルーバルサム1、パチュリ1、的な構成で展開する。この比率が凄まじくいい。PとEDPは、次第にアニマリックとアンバー&ウッディが強く出てきて温度を下げ、艶っぽい夜の密会的雰囲気になるけれど、実際そこが濃厚で苦手という方も多かった。フィルトルは、P前半の爽やかさとスッキリ感をずっと保ち続けている印象。光に満ちた庭園の香り。これはデイタイムシャリマーだ。

やがて30分ほどすると、香りはさらに変化する。このままシングルノートで終焉かと思いきや、まさかのヴァニラアイス大量投入。さらにアイリスの甘いベビーパウダー香添え。レモン色の爽やかさを落とすことなく、白いヴァニラのわた雲な香りが広がってくる。そこにほんのり香るシナモン様トルーバルサムが超絶アクセント。これは悶絶級のクリーミー&パウダリー。そのまま、まろやかクリーミーな香りでドライダウン。付けてから5〜6時間。香り立ちは柔らかく使いやすい。これはPのシトラスとヴァニラを強調して重さを除いた、いいとこ取りの香水だ。

灰色の空の切れ間。突然現れた太陽の光が、雲のエッジを金色に染めてゆく。庭園の緑が鮮やかに色を取り戻す。あたりは瞬く間に光が満ち満ちてゆく。鳥が歌い、花々が揺れ、流れる水音が聞こえる。レモンとハーブと甘いバルサムの香りがしている。少女の白い服がホリゾントの光にまばゆく浮かび上がる。そして移ろうヴァニラホワイトの夢。

それは、太陽も恋する香水。光の庭園の媚薬、シャリマーフィルトル。

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プロフィール
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  • 血液型・・・O型
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自己紹介

コスメと映画が好きな女子。オタク性質。 プチプラ:デパコス=8:2ぐらい。 続きをみる

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