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2020/12/5 13:35:10
ビターピーチはあざとい。あざとすぎる。その名を「苦い桃」と額面どおりに受け止めてはいけない。これは間違っても「ビターピーチ大好き!ビターピーチ最高!」などと人前で大声で連呼していい言葉ではない。特に英語圏では。
2020年の発売以来「甘くて芳醇な桃の香りの可愛らしい香水」と巷で評判のビターピーチ。特に香水にあまり詳しくない方にも人気が高まっている。それはいい。ただこのネーミングに込められた裏の意味だけは少しかじっておいた方がいい。おトムの桃をかじる前に。
ビターピーチとは、英語で「汗をかいた男性の苦いアスホール」という意味のスラングだ。ということは、そういう行為をも暗喩する。もともとは200年ほど前の中国で、同性愛を「噛まれた桃の喜び」と隠語で表現したことが由来。「噛まれた桃」は英語で”Bitten peach(ビトゥンピーチ)“。”Bitter peach”とはたったひと文字違うだけだ。
さらに拡大解釈すると、ビターピーチには性的なニュアンスが他にも含まれていることに気付く。
“Bit her peach”ビットハーピーチ(ひとくち、彼女の桃を)
“Bite her peach”バイトハーピーチ(彼女のお尻をかじれ)
おトム壊れてるのでは?大丈夫か?と思うほどの言葉遊び。これはもう「攻めてる」というよりイッちゃってるのでは?と思うくらい。エロティックを越えてデンジャラスな狂気がほとばしっている。事実、英語圏では香りじたいよりも「ちょっとこの名前で戸惑う…」的な感想が多いようだ。そういう意味で、日本の婦女子の皆さんにおかれましては、どうか人前で大声で「ビターピーチ最高!最高!」的な連呼は厳に慎んでいただきたいと願う次第。あと間違ってバターピーチって言うのもアウツ。
ということでこのネーミングだけでごはん3杯はいけるんですが、肝心の香りはというと。
オレンジを基調にした半透明ボトルはロストチェリー継承。海外の桃は日本の白桃とは違い、やや固くて酸味が強い黄桃タイプのネクタリン系だ。だからボトルはネクタリン色のオレンジカラーなのだろう。そこから1〜2プッシュ。
ビターピーチを吹き付けてまず最初に感じられるのは、クールな清涼感のあるカルダモンの風だ。その後すぐに、甘くてややスパイシーな桃の香りが広がってくる。わずかにソリッドでキレがあるフルーティーな香りだ。背後にインセンスのお香感もじんわり感じられる。全体にシャープな香りと桃のフルーティーが拮抗しているイメージ。日本の甘々ふんわりジューシーな白桃の香りではない。これはキリッとハンサムなネクタリン香だ。
5分後、甘やかなピーチ香の下から、スッキリグリーンノートと酸味あるプラム系の香り、香ばしいウッディノートが明確になってくるとミドル。グリーンノートはダバナ(ヨモギ系)とラブダナムがイメージクレジットされているものの、はっきり分かる感じではない。プラム系の酸味はとても印象的で、全体の印象を桃より酸味の強いアプリコットに近い香りにしている。さらに、トップで感じたインセンスっぽさがサンダルウッド系であることもわかってくる。これらが1つになって、スパイシーアプリコットフレーバーのように感じられてくるミドル。これが7〜9時間続いてそのままドライダウン。
全体的にシングルノートのように展開し、香りの変化が少ない現代的な香水だと言える。もはや重ね付け前提PBシリーズの1本というより、1つの作品になってきた感がある。トップに吹き抜けるクールなカルダモンの後は、ずっとオレンジ色のアプリコット的な硬い桃の香が続くフルーティーノートがメインだ。ラスト近くで、ジャスミンのふくよかさが感じられることもあるし、サンダルウッドの乾いたお香が強めに出ることもある。
価格は50mlで税込40700円。やや単調な香水の割に値段はかなり高いと思う。ただ、安価なシャンプー等の桃の香りとは違って、確かに香料の層が厚くバランスはよい。それでいて香水っぽい複雑さが少なく、自然なフルーティーを感じるので、女性らしさを引き出す力は高いと思う。おそらくこのキリッとしたネクタリン香を好ましく思う人は、男女問わず多いだろう。
日向に完熟桃が転がっている。それを見て「桃を食べたい」は微笑ましい。だが、好きな人を見つめて「君の桃を食べたい」となると話は違う。トムはその言葉の狭間で笑っている。性別も人種も超えたところで。
ビターピーチは本当にあざとい香りだ。彼はシニカルなメッセージを甘く酸味あるフルーティー香でオブラートのように包みこむ。それは官能的な愛の世界に佇む彼からのオレンジ色のギフト。
トムが偏愛する”Bitch peach(ビッチピーチ)“な香り。
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2023/8/29 20:11:27
【2023/8/29追記】★6→評価なしに変更。
結論としては、もうTFのアイシャドウを買うことは当分ないかも…と感じています。
久しぶりにカウンターに行きましたが、店がガラガラなのは値段が高いせいとはもう思えない。
限定色の#43 #44狙いで見に行ったものの
モッサリボソボソした酷い粉質に変わっていて絶句した。
今回からタルクフリーのフォーミュラに変更されたらしいので代替材料に問題があるのでは。
だから極一部の消費者に媚び諂って余計なことしなくていいんだって…。
タルクが癌の原因と騒いでる人を調べるととんでもない使い方してるんだから相手すんなと。
次点で気になっていた#42A ヘイズィ センシュアリティは、
ラメ感は可愛いものの、水増し感が否めずまともに発色しなかった。
メイクが嫌いな人がとりあえずなんか塗っとくにはこれでいいかもしれないけど…。
トムフォード氏が自分のブランドを売り飛ばした結果、
予想道りの結果になってしまい、消費者としては非常に残念です。
※追記を書いてからLikeがすごい勢いで増えてるのですが、
大きな声で言えないだけで、私と同じ気持ちの方が多かったんだなと……。
値上げは品質維持が大前提であることをブランドは理解したほうが良いのではないかな。
________以前のクチコミ________
購入品・4色まとめてクチコミ。イタリア製。
先に書きますが、値上げがしつこすぎてもう定価ほどの価値はないです。
発売当時は店舗も少なく、1個7000円台で価格の割に質が良い、という評価でした。
円安を考慮してもポイントアップなどを利用して1万円くらいが質的に妥当じゃないですかね。
■#31 SOUS LE SABLE / スー ル サーブル (9g)★5
低彩度・中明度の仕上がりのニュートラルブラウンベージュ系シャドウ。
ミルクチョコベージュ系のマット3色+差し色。
差し色の右上のオレンジは非常に軽やかで
透明感のあるピンク系のニュアンスや艶感があり、ナチュラルで素敵です。
■#30 INSOLENT ROSE / インソレントローズ (10g)★4
セダクティブローズの改変。
上2色は白ラメマットパール&クリアラメのため陰影は下2色で作ることになります。
上は一旦無視して下の2色で決めたほうが良いです。
私の肌では左下のピンクは赤みが強く濃く出すぎ。
右下のモーヴは単色で重ねると老けて見える&〆色にするには弱すぎる。
■#3A NUDE DIP / ヌードディップ(※焼成粉/容量6g)★6
艶に特化したニュートラルなアイシャドウ。
マットが1色もないため仕上がりはツヤがメインになります。
艶は綺麗ですが、思った以上にナチュラルメイクになるので
ハッキリと作り込みたい時は他からマットシャドウを足すことになります。
上段2色はハイライトとして使ってもとても綺麗です。
焼成粉なのでウェット使用も出来ます。
■#03 COCOA MIRAGE / ココアミラージュ(10g)※廃番★7
まるで「球体関節人形のアイメイク塗装」のようなマット系チョコレートシャドウ。
瞳が綺麗な人や眼力のある人ほど、ラメやパールの入ったアイシャドウで誤魔化さず
陰影のみで勝負したほうが美しいと思っているのですが、
この商品は特にそういう人に向いていると思います。
左上のマットアイヴォリーを鼻筋や顎に入れると自然なハイライトにもなります。
他の商品もとても素敵なのですが、ココアミラージュが一番TFっぽい。
_____________
一番濃い〆色についてですが、
少し削って小皿に取り、他社のアイライナーチェンジ用のジェルと混ぜてから
極細のアイライナーブラシで描くと耐水性のアイライナーになります。
私はイラマスカのシーリングジェルを個人輸入して愛用していますが、
メイクアップフォーエバーに似たものがあるのでそちらもおすすめ。
「アクアシール」で出てくると思います。
どのメーカーのパウダーシャドウでも使える為、アイライナーの色を自分で無限に作れます。
特にTFやCHANELのアイシャドウを使うと凄まじく綺麗に発色するので強くお勧めします。
目元の皮膚は本当に繊細なので、将来の美容について本気で考えている方は
アイライナーは自分でその都度アイシャドウの〆色等をジェル溶きするか
筆タイプで軽い筆圧で描けるリキッドアイライナーの使用をお勧めします。
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2021/6/12 00:02:03
なぜ誰も本当のことを言わないんだろう?この香水の名の本当の意味を。ローズ・プリック。「バラの刺し傷」?「バラのひと刺し」?違うだろ。プリックは英語のスラングで男性器のことだ。
F・ファビュラス、ロストチェリー(破瓜・童貞喪失)と、突然何を血迷ったかおトムさん、と言わんばかりのスキャンダラスネーミングな作品が続いた後でリリースしたローズプリックが、まんま「貫通するバラの棘」なワケがない。同じ「カンツウ」でも多分、漢字が違う。これは最も過激なネーミングの香水だ。
ローズ・プリック。直訳「バラの男性器」。一方で、かつて日本のゲイカルチャーを支えた「薔薇族」という雑誌名が語源となり、日本のゲイによる作品を欧米で”Bara”と呼んでいることから、うがった見方をすれば「男色のプリック」と訳しても差し支えないはず。自身のセクシャリティを公言しているおトムが、Baraを知らないわけがない。
もっと言うと。
“rose”は薔薇という名詞じゃないかもしれない。もしかしたら”rise”という動詞の過去形?だとすれば、一般的な「昇る」「上がる」といった意味でなく、「そびえ立つ」「増大する」「膨れあがる」の意味を匂わせている可能性も。
ああ。さすがにいかん。もうやめる。
確かにここまで曝露してきただけで、何かいたたまれない感じ。だから誰も言わないのか。どうりで海外サイトの女性達が「この卑猥なネーミングだけは×××!」と言ってるわけだ。
そんな究極の匂わせネーミング香水、ローズプリック。おトムによると「自身の薔薇園で育てている大切な薔薇の香りからインスパイアされた香り」だそうだ。ただそんな言葉も、つい裏読みしてしまいたくなる。そもそも薔薇族という雑誌のネーミングだって、かつて男色が当たり前だったギリシア神話の言葉「薔薇の木の下で男同士が契りを結ぶ」から来ているという。そこまで知ってると、おトムの言うことが全てそっち方面の秘密ワードに聞こえて仕方ない。一体、自身の秘密の薔薇園で、ふだん何を育てているのだろうか(←やめなさい)
ま。たいがいにしとく。やはり香りが大事。ではローズプリックはどんな香りなのか?
マットピンクのボトル。可愛いけどあざとい。海外では「ハローキティの持ち物みたい」とか言われている。そこに黒いラベルと黒いスプレーノズル。何か闇を感じる仕様。そこからプッシュされる霧は、実はとてもローズらしからぬ香りがする。
プッシュしてすぐ。鼻が感じ取るのは、パチュリのスパイシーな黒い香り。ターメリック(ウコン)のマイルドな土っぽい香り、そして鼻にくるペッパーの香りだ。そして、これらのウッディスパイシー・ミックスの裏から、品のよい暗いローズの香りがしみ出してくるといったトップ。黒いスパイス:ピンクのローズ=7:3くらいの比。かなり黒いトップ。ギリギリとパチュリの苦味が主張してくる。かなりだ。
そしてその後も、この黒いスパイシーな香りがメインで展開する。薔薇はそっと後ろで咲いている印象。とてもマニッシュな風合い。ガチで鍛え上げたメンズが、黒光りした上腕二頭筋や大胸筋、シックスパックをこれでもかとパンプアップしているかのような危険な絵柄な感じだ。あるいは、暗闇に咲き乱れる真夜中の薔薇といった印象のストイックブラックな香り。そんなシングル展開のまま、6〜8時間持続してドライダウン。ラストだけほんのりトンカの甘さが出て終焉。
夜の薔薇で思い出すのは、以前トムが「ジャルダン・ノワール(真夜中の庭園)」というシリーズで出していたカフェローズだ。紫ラベルで夜の庭園に咲く花の魔性をテーマにしたやつ。あれは、コーヒーと薔薇の香りを取り合わせた作品だった。カフェローズも暗くて黒い薔薇。どうやらトムは真っ黒い薔薇がお好みのようだ。
トムと夜の庭。そして薔薇。そう言えば、カーネギー賞をとった児童文学作品に「トムは真夜中の庭で」という本があったな。あれはもろジャルダン・ノワールだ。預けられた叔母の家の庭で、真夜中に時空を越えて一人の少女と出会う少年、彼の名もトムだった。その秘密の時間に出逢うたび、2人の時間はどんどんずれていき…、というファンタジックな話だった。
そうか。
きっとトム・フォードは、あの物語の少年のように、今もまだ真夜中の庭で何かを求めてさまよっているのだろう。暗闇で誰の姿も見えないけれど、かぐわしく香るピンクの薔薇の香りを頼りに。そう思ったら何だかローズプリックの香りが、急にせつなく思えてきた。
ローズプリック。それは確かに薔薇の棘に刺された者の香りなのかもしれない。痛くて、愛おしくて、狂おしい桃色の記憶。
あのかぐわしい黒い棘が 今も刺さったまま抜けない
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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
容量・税込価格:1.5ml・1,650円 / 15ml・18,480円 / 50ml・40,920円 / 100ml・66,000円発売日:2008年
2023/8/1 18:32:57
【追記:2023/08/29から値上げ】
◆新価格→100ml 69,850円/50ml 45,100円/15ml 20,900円
ルラボ公式オンラインでは既に値上げ後の価格で予約を取っているので
店舗に行ける方は8/28までに店舗で買った方が良いです。
100mlはこの1年で8,000円くらい値上がりしました。
ルラボもだいぶ前にELCに買収されたのでしょうがないのかなあと。
こういうことは書かない方が良いとは思うのですが、
私が買っていた頃は、GAIAC10は100ml/44,000円くらいでした。
元々5〜6万だったものが当時の円高で大幅値下げした経緯があるので、
今月末の値上げ価格でもリピーター割引が使える前提であれば許容範囲だと思います。
今年は9/1〜9/30までシティ エクスクルーシブシリーズのボトル販売をするようです。
サンプル(ディスカバリーサイズ)のみ8/1から販売。
__________
結論を言うと、
このGAIAC10はガイアックウッドがメインの香りではないと思う。
この商品はどちらかと言えば合成ムスクが主体であり、
激しく乱暴な言い方をするなら「最高級の柔軟剤のような香り」と言えば理解しやすい。
普段香水を買わない人が好む香りと言っている人も居るがとても納得出来る。
以前のレビューにも書きましが、
ルラボの開発者が来日した時のセミナーは本当にためになりました。
当時「天然香料だけを使っています」と言って
無知な客を騙して香水を売り付ける商売が流行していた。
そんな時代に、
香水は天然香料と合成香料を掛け合わせることで良い物が出来る。
合香なしの香水はありえないし、だからこそ合香は良い物を使うべき。
うちの合成香料(主にムスク)は天然香料より遙かに高価な最高グレード品を使っている。
だからファッションブランドが出している香水とウチの商品は原価も素材のレベルも全く違う。
と言い切った彼は凄いと思う。
単一香料を色々試させて貰えたのも有難かった。
GAIAC10がバカ高い理由は、
賦香率がルラボの他のフレグランスの2倍で、分類的にエクストレなので納得ではあります。
柔らかな香りが静かに寄り添うように長く長く続きます。
付けると自分では香りがしないと感じる方が多いようなのですが、
実際はきちんと香っています。
ブランド側は1年で使い切ることを推奨していますが、
きちんと低温暗室で管理すれば素人が分かるレベルの劣化はないので100mlを購入しても良いと思います。
注意点としては、
このブランドの特性として、Made to Orderというシステムを採用しており、
注文後に香料とアルコールを合わせているため香りが安定するのに1ヶ月ほどかかります。
最近は店員さんからこの説明がないようですので一応記載しておきます。
ルラボのフレグランスの空き瓶を持ってくればその日に買う香水がどれでも10%OFFになる、
「リサイクル週間」というキャンペーンが以前はありましたが、
現在は割引が適用されるのは「同じ香りのリピート購入のみ」だそう。
ただし割引率は昔より良いのでリピーターに優しくなったと思います。
【以前のクチコミ・2013/10/10購入】
GAIAC10-100mlをルラボ代官山本店で現品購入。
東京限定の香りなのですが、
「北海道の温泉の湯煙を連想するような香り」
というニュアンスで公式サイトで紹介されています。
ガイアックウッド、ムスク4種、シダー、乳香などの香料が合計10種類入っています。
どんな香りかを文章で説明するのは本当に難しい。
ひとつ言えることは、ルラボで香水を買うならまずGAIAC10を買うべきかなと。
何故なら値段に妥協して他の香りを買ってもいずれ必ずGAIAC10が欲しくなるから。
知的で、寡黙で、穏やかで、静寂。
価格は正直高いと思いますが、
以前新宿伊勢丹でセミナーがあってルラボの経営者が来日したので参加しましたが、
かなり楽しかったことや、国内にちゃんと路面店が存在することを考慮すると
それに対して評価すべきと思いますし、今の価格も納得ではあります。
ムスクが好きな人には向いているフレグランスメゾンだとは思います。
ラベルに文字が入れられますが、
私は過剰なサービスを求めていないので完全ブランクでお願いしました。
余計なものは何も要らないし、この香りがそこにあるだけでとても美しいから。
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2021/1/30 13:36:53
参りました。素直に。これはすばらしい香り。誰もが是非一度は肌にのせてみてほしい香水。超お薦め。
ゲランのシャリマー・フィルトル・ドゥ・パルファン。この見事なバランス感覚に脱帽。ゲラン5代目調香師ティエリー・ワッサーと彼の調香チームの真の実力を見た。もうワサ夫とか言わない。(←最初から言わないように)
世界初のオリエンタル香水として今なお燦然と輝くゲランのシャリマー。フィルトルはその亜種で、星の数ほども出されてきたフランカーの1本。2020年12月発売の数量限定品。50mlで税込13800円。初めてだ。1本使い切らないうちにもう1本キープかなと思った香水は。
シャリマーは、香りも含めてコーラと共通点が多い。オリジナルのコーラは百年以上前に発明され、今なお世界中で愛飲されている。シャリマーも同様だ。そしてどちらもシトラス、スパイス、ヴァニラなど、多くの共通香料が使われていて香り的にも近い。さらに、チェリーやレモンやシナモンなど、構成フレーバーの一部をあえて過剰投与した限定品を次々に出している点もだ。シャリマーはいわば、薬草と樹脂と花の香りを添えたコーラのような香水だ。
ただし、シャリマーは香水の名作だけあって、亜種作品に対する愛香家の気持ちと鼻は、コーラの味以上に手厳しい。「また亜種か」という冷笑と一瞥が必ずあり、新作の度に「これはシャリマーじゃない」「オリジナルよりピンとこない」など、猛烈な批判に晒される。そして「ワサ夫、何でもオレンジフラワーとホワイトムスク入れてごまかすなよ?」などと言われる始末。(←それは貴方の意見では?)
ともあれシャリマーフィルトル、この作品はどこか超えた。少なくとも自分はそう感じた。では一体、どんな香りなのか?
フィルトルをスプレーする。その瞬間、わきあがる金色の雲。爽やかなレモンの香りに包まれる。同時にほんのりハーバルな清涼感も寄り添っている。フローラル調のラベンダーの香りだ。レモン&ラベンダーは香料的にとても相性がいい。まばゆい春の陽射し。レモン色の雲。吹き抜ける青い風。それらが世界に色彩を与えてゆく季節、春を思わせる明るいイントロ。
5分後、レモンの高い酸味の下からベルガモットのシトラスが広がってくる。ベルガモットは豊かな酸味と苦みを加えつつレモンの黄色い香りを引き継いでいる。さらに、ラベンダーとカルダモンのスッキリ感、甘辛いクローブのほのかにスパイシーな風をはらみながら、春の庭園の様相を呈してくる。光。春の光。植物のシャープな葉の香り、風に揺れる野の花の香り、そして傷ついた樹木が出すツンと甘い樹脂の香り。そんな広大な野に出でて、少女が一人、若菜を摘んでいるようなイメージ。
このトップ〜ミドルは、シャリマーシリーズでいうとパルファム(P)の雰囲気に近い。ベルガモットを過剰投与したPに対して、フィルトルはコーラで言うなら、グラスコーラにレモンを丸ごと一個しぼって入れた超生絞りレモンコークな香りだ。フィルトルは、かなりPのイントロのシトラスの爽やかさにこだわって創っている。そしてこのシトラスが想像以上に長く続いてとても驚く。ミドルは、レモン&ベルガモットが5、ラベンダー1、スパイス1、フローラル1、トルーバルサム1、パチュリ1、的な構成で展開する。この比率が凄まじくいい。PとEDPは、次第にアニマリックとアンバー&ウッディが強く出てきて温度を下げ、艶っぽい夜の密会的雰囲気になるけれど、実際そこが濃厚で苦手という方も多かった。フィルトルは、P前半の爽やかさとスッキリ感をずっと保ち続けている印象。光に満ちた庭園の香り。これはデイタイムシャリマーだ。
やがて30分ほどすると、香りはさらに変化する。このままシングルノートで終焉かと思いきや、まさかのヴァニラアイス大量投入。さらにアイリスの甘いベビーパウダー香添え。レモン色の爽やかさを落とすことなく、白いヴァニラのわた雲な香りが広がってくる。そこにほんのり香るシナモン様トルーバルサムが超絶アクセント。これは悶絶級のクリーミー&パウダリー。そのまま、まろやかクリーミーな香りでドライダウン。付けてから5〜6時間。香り立ちは柔らかく使いやすい。これはPのシトラスとヴァニラを強調して重さを除いた、いいとこ取りの香水だ。
灰色の空の切れ間。突然現れた太陽の光が、雲のエッジを金色に染めてゆく。庭園の緑が鮮やかに色を取り戻す。あたりは瞬く間に光が満ち満ちてゆく。鳥が歌い、花々が揺れ、流れる水音が聞こえる。レモンとハーブと甘いバルサムの香りがしている。少女の白い服がホリゾントの光にまばゆく浮かび上がる。そして移ろうヴァニラホワイトの夢。
それは、太陽も恋する香水。光の庭園の媚薬、シャリマーフィルトル。
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